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第5話 ルベリーは奮闘する
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ルベリーは散々だった。
学院を追い出された事を知ると、母は近所に自慢しまくってたらしく、町を歩けないと毎日泣いた。
それがあまりにもうっとおしく、近所の張り紙にマグロ漁船の募集がしてあり、乗ってくると言うと、どこにでも行け、とまで言われ、ルベリーは黙って家を出た。
(いいわよ。氷の海でマグロと格闘よ!)
ルベリーは少ない荷物を担ぎ、勇気を持って家を出た。
漁船に乗る気満々のルベリーだったのだが、案の定、審査に落ちた。
「がんばりますから!」
「そういう問題じゃないんだよ。妊娠なんかされたらこまるんだよ!」
なんで?とルベリーは首を傾げた。
しかし、人の良い船長が、事情を聞くと同情してくれて、実家で妻がやってる牡蠣の殻剥きでよければ雇ってやる、と言われ、ルベリーは喜んだ。
(うまくいけば、毎日牡蠣が食べられる)
船長の船で三日ほど海の上で過ごし、船旅を楽しんだ。船員達と仲良くなった。
彼らはこれからマグロを釣りに半年の航海に出るのだ。
(羨ましいー。マグロ食べたいな)
と、船員達に妙に熱い握手をかわされ、ルベリーは船長達を見送った。
今度こそ安住の地にしたい、とルベリーはがんばった。船長の妻、レジュからは気に入られ、朝早く起きて牡蠣の作業場に行く。
ゆっくりでいいので牡蠣の身を傷つけないように剥いてね、というレジュの教えを守り、水を弾くエプロンを来て、早朝から昼まで牡蠣の殻を剥く。
牡蠣向きナイフを使って、殻を開け、牡蠣がくっついているほうの殻を持ち、優しく貝柱を切って身を落とす。
隣のレジュの神業には到底及ばないが、丁寧な仕事だ、と誉められている。
昼になると、牡蠣の浜焼き目当てのお客が来るので、その接客に追われる。
「ルベリー!三番に牡蠣二十個!」
「はい!ありがとーございまっす!」
注文が入ると必ず、ありがとうございます、を言うシステムである。
焼きすぎたものや、残したものをいただきながら、ルベリーの目には涙が浮かぶ。
「美味しい!まるで天国!」
と、いう食べてる彼女を見たくて、来店するお客も出てきた。
「ルベリーちゃん、ここに座ってよ」
接客中のルベリーに、青年達が話しかけた。見るからにチャラい男達である。
「どうかしましたか?」
ルベリーが尋ねると、男達はにやにやしながらルベリーの手首を掴んだ。
しかし、ルベリーは掴まれた方の手を開き、前に身体を踏み出し、肘を高くあげた。
簡単に解かれ、男達は顔を見合わせた。
「ルベリーちゃん、格闘技でも、してるの?」
首を傾げてルベリーは答える。
「格闘技なんて、まさかー」
手をふる。
「そうだよねー」
「簡単な暗殺術ぐらいですよ」
男達は二度と店に来なかったらしい。
牡蠣小屋の可愛すぎる店員の噂を聞いて、いろんな身分のものが顔を出すようになった。
ルベリーは身分が高そうな者にも、見るからにみすぼらしい服を着ている者にも、同等に応じるため、評判が良かった。
(王様やお父様の威圧感に比べたらねー)
赤ちゃんみたいなものだ。
暇なときは海で貝を採ったり釣りをしたり、ルベリーは生活に満足していた。
が、
「えっ?結婚ですか?」
突然、順風満帆ライフが終わりを告げた。
マグロ漁船から帰ってきた船長に、断れなかったと縁談話を持ちかけられた。
「まだ、わたし十六なんですがー」
(誕生日聞くの忘れてたから、実際はわからないけどー)
「ちょっと、断れないんだー、頼むよ」
「わかりました」
ルベリーは言った。
「よかった~。じゃあ、返事をしてくるな」
「今日でやめさせていただきます!」
ルベリーははっきりと言い切った。船長が慌てる。
「頼むよ!断ればうちが潰れてしまうんだ」
「これだけ流行ってるのに?」
しかも、船長は漁業組合のトップだ。その人が潰されるなんてー。
「すごいぞ!なんと王太子様の近衛兵なんだ!」
ルベリーは引きつった。
これは逃げるしかない。
ルベリーは夜中にこっそりと起き上がり、レジュが寝ているのを確かめてから荷物を担いで外に出た。
「お世話になりました」
ルベリーは頭を下げた。
「どういたしまして」
びっくりして顔をあげると、レジュがいた。
「あー、あのー」
「わかってる。旦那が悪いんだから気にしないで。ここから南へ行けば、ヤイル修道院がある。そこならどんな子でも保護してくれるよ」
恩知らずなルベリーに、レジュは笑顔を見せてくれた。
「わかりました!本当にありがとうございました!」
「またおいで」
ルベリーは頭を何度も下げた。
さて、どうしてこうもうまくいかないのか。ルベリーは眉をへの字にした。
だが、原因はわかっている。
学院を追い出された事を知ると、母は近所に自慢しまくってたらしく、町を歩けないと毎日泣いた。
それがあまりにもうっとおしく、近所の張り紙にマグロ漁船の募集がしてあり、乗ってくると言うと、どこにでも行け、とまで言われ、ルベリーは黙って家を出た。
(いいわよ。氷の海でマグロと格闘よ!)
ルベリーは少ない荷物を担ぎ、勇気を持って家を出た。
漁船に乗る気満々のルベリーだったのだが、案の定、審査に落ちた。
「がんばりますから!」
「そういう問題じゃないんだよ。妊娠なんかされたらこまるんだよ!」
なんで?とルベリーは首を傾げた。
しかし、人の良い船長が、事情を聞くと同情してくれて、実家で妻がやってる牡蠣の殻剥きでよければ雇ってやる、と言われ、ルベリーは喜んだ。
(うまくいけば、毎日牡蠣が食べられる)
船長の船で三日ほど海の上で過ごし、船旅を楽しんだ。船員達と仲良くなった。
彼らはこれからマグロを釣りに半年の航海に出るのだ。
(羨ましいー。マグロ食べたいな)
と、船員達に妙に熱い握手をかわされ、ルベリーは船長達を見送った。
今度こそ安住の地にしたい、とルベリーはがんばった。船長の妻、レジュからは気に入られ、朝早く起きて牡蠣の作業場に行く。
ゆっくりでいいので牡蠣の身を傷つけないように剥いてね、というレジュの教えを守り、水を弾くエプロンを来て、早朝から昼まで牡蠣の殻を剥く。
牡蠣向きナイフを使って、殻を開け、牡蠣がくっついているほうの殻を持ち、優しく貝柱を切って身を落とす。
隣のレジュの神業には到底及ばないが、丁寧な仕事だ、と誉められている。
昼になると、牡蠣の浜焼き目当てのお客が来るので、その接客に追われる。
「ルベリー!三番に牡蠣二十個!」
「はい!ありがとーございまっす!」
注文が入ると必ず、ありがとうございます、を言うシステムである。
焼きすぎたものや、残したものをいただきながら、ルベリーの目には涙が浮かぶ。
「美味しい!まるで天国!」
と、いう食べてる彼女を見たくて、来店するお客も出てきた。
「ルベリーちゃん、ここに座ってよ」
接客中のルベリーに、青年達が話しかけた。見るからにチャラい男達である。
「どうかしましたか?」
ルベリーが尋ねると、男達はにやにやしながらルベリーの手首を掴んだ。
しかし、ルベリーは掴まれた方の手を開き、前に身体を踏み出し、肘を高くあげた。
簡単に解かれ、男達は顔を見合わせた。
「ルベリーちゃん、格闘技でも、してるの?」
首を傾げてルベリーは答える。
「格闘技なんて、まさかー」
手をふる。
「そうだよねー」
「簡単な暗殺術ぐらいですよ」
男達は二度と店に来なかったらしい。
牡蠣小屋の可愛すぎる店員の噂を聞いて、いろんな身分のものが顔を出すようになった。
ルベリーは身分が高そうな者にも、見るからにみすぼらしい服を着ている者にも、同等に応じるため、評判が良かった。
(王様やお父様の威圧感に比べたらねー)
赤ちゃんみたいなものだ。
暇なときは海で貝を採ったり釣りをしたり、ルベリーは生活に満足していた。
が、
「えっ?結婚ですか?」
突然、順風満帆ライフが終わりを告げた。
マグロ漁船から帰ってきた船長に、断れなかったと縁談話を持ちかけられた。
「まだ、わたし十六なんですがー」
(誕生日聞くの忘れてたから、実際はわからないけどー)
「ちょっと、断れないんだー、頼むよ」
「わかりました」
ルベリーは言った。
「よかった~。じゃあ、返事をしてくるな」
「今日でやめさせていただきます!」
ルベリーははっきりと言い切った。船長が慌てる。
「頼むよ!断ればうちが潰れてしまうんだ」
「これだけ流行ってるのに?」
しかも、船長は漁業組合のトップだ。その人が潰されるなんてー。
「すごいぞ!なんと王太子様の近衛兵なんだ!」
ルベリーは引きつった。
これは逃げるしかない。
ルベリーは夜中にこっそりと起き上がり、レジュが寝ているのを確かめてから荷物を担いで外に出た。
「お世話になりました」
ルベリーは頭を下げた。
「どういたしまして」
びっくりして顔をあげると、レジュがいた。
「あー、あのー」
「わかってる。旦那が悪いんだから気にしないで。ここから南へ行けば、ヤイル修道院がある。そこならどんな子でも保護してくれるよ」
恩知らずなルベリーに、レジュは笑顔を見せてくれた。
「わかりました!本当にありがとうございました!」
「またおいで」
ルベリーは頭を何度も下げた。
さて、どうしてこうもうまくいかないのか。ルベリーは眉をへの字にした。
だが、原因はわかっている。
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