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89 ゆっくり過ごせる
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レイヴがトレーラーに来ると、イオリとレイヴが目を合わせて、ふへへ、ふへへ、と苦笑いし合っていた。
私はソファから降りてレイヴに譲ろうとした。でもレイヴは「兄ちゃんの隣は恥ずかしすぎる」と言って、テーブルの近くの床に座った。
じゃあと私はイオリの隣に座って、それからは三人で気を取り直して食事を取ることにした。
レイヴはどれも美味しいと喜んでいて、それを見てイオリも微笑んでいた。それを見て、私も嬉しくなって微笑んだ。
レイヴはご馳走を頬張りながら最近のFOC事情、特に我々のことを教えてくれた。なんでもイオリがサイクロマンサーと呼ばれてるらしくて、それを聞いた時は笑った。
サイキックネクロマンサーなんだろうけど、確かにその通りだったからだ。イオリは他に無いのか……と呟いたが、レイヴは無いねと即答した。
食事が終わると、イオリが片付けをしてくれた。その間にレイヴはソファにゴロンと横になって、私はソファに寄りかかりながら座った。
仲間とこんな、団欒を過ごせてることが、とても幸せだった。ソファには大切な友達がいて、目の前でイオリが背を向けてミニキッチンで作業をしてる。
彼のお尻に目がいった。小さくて締まったお尻だ。綺麗だなと思って、つい見つめてしまった。するとイオリが突然聞いた。
「何を見ている?」
「え!?」私は手に持っていたノアフォンに視線を落とした。「ノアフォン見てる。」
「……そうか。」
よし、バレなかった。時々イオリは鋭く突っ込んでくるから油断出来ない。
最近、彼は毎日私を求める様になった。仕事の時間が減ったと言うのもあるけど、それよりかは、彼が不安だから私を求めているのでは?と思ってしまう。
抱きしめ合いながらキスをする。彼の頬は赤くて、瞳は潤んでいて、でも以前なら真っ直ぐに私を見つめていたのに、最近はちらりと一瞬だけ、別の方を見る。
それが気になっている。彼は私を好きだと言ってくれる。でも愛してるでは無い。サラには簡単に言っていたのに。
私はもう一度イオリを見た。腕まくりをして、コンロや鍋を洗っている。昨日、彼に少しだけ聞いてみた。私のこと、どう思ってる?って。
とても大好きだよ、と優しく言われた。ストロークをくれながら。嬉しいけど、嬉しくなかった。
本当はサラのこと、本当はずっと愛してたんじゃ無いの?あの時はサラに対して怒ってたけど、今はもうその怒りが消えたんじゃないの?
新しい環境で一人で不安だったから、そばにいた私を好きだと思い込んでるんじゃないの?
私を見ながら、いつも心の奥底で、別の誰かを想ってるんじゃないの?サラがいつか言っていた様に、同じことが私の身にも降りかかってるのではと、最近は思ってしまう。
イオリは優しい。頭の回転がすごく速くて、相手の気持ちをしっかりと考えられる人だ。でも、彼自身の気持ちを自覚するのが疎かになる時がある。
流す時がある。感情を否定する時がある。そんなの、誰だってそうかもしれないけど、それに愛が絡んでるなら、私は、とても苦しい。
それが本音だった。それを言える事は出来なくて、今だってチラチラ彼の背中を見ては、不安を覚えてる。でも私はゴーストだから、どうせ消えるから、そう思う事で、口角を上げることが出来た。
「ねー、」レイヴが眠そうな声を出した。「今日ここに泊まっていいよねー?今から帰るとか面倒くさい。この辺物騒だしさ。」
「ふふ、我々が物騒にしてるのに。レイヴのお泊まり、私はいいよ。イオリは?」
洗い終わったイオリが、タオルで手を拭きながら、こちらを振り向いた。咄嗟に視線を逸らしちゃった。
「俺も…………別に構わない。ソファで寝ろ。」
「やったねー!お兄ちゃん最高「それやめろ」なんだー元からノアズじゃなくてFOCに来てたなら、もっと早く仲良く出来たのになー、アッハッハ!」
後ろを見ると、レイヴと目が合った。その瞬間に彼は私にウィンクをした。何それと笑った。
ニヤッと笑ったレイヴが近くのキャビネットの上にある赤いラジオの電源をつけた。するとラップの音楽が流れた。
「俺いつもこの番組聴いてるんだよね。『速報です。』
「……。」
なんかニュース速報に邪魔されちゃった。少し笑った。ラジオは音楽が止まって、ニュースの始まる時の音楽が流れてから、女性のアナウンスが聞こえた。
『ノアズは先日のトロピカルバイス商店エリアの路地で殺害されたボードン幹部の容疑で、リア・ブックハートの指名手配することを決定しました。彼女は巷でゴーストだという噂が流れていますが、ノアズはイリュージョニストのトリックだと見解を示しております。』
「イリュージョニストだって!まじか!」
私はレイヴの脇腹を軽く殴った。レイヴは「ごめんごめん」と笑いながら謝った。いいけど。
『彼女の指名手配もあり、ノアズ戦闘員には念のために純銀の弾丸が配られました。ここで様々な現象に詳しい専門家の話を』
ブチっと、イオリがラジオを叩いて消してしまった。いいところだったのに。というか、銀の弾丸配られたんだ……それに当たったら一発で私は消える。あまり無茶出来なくなってきたなと思った。
「もう一時か。」イオリがきらりと輝く高級腕時計を見た。「そろそろ俺はシャワーを浴びて寝ようとするか、レイヴお前は?」
「俺はまだ起きてるかもー、リアちゃんと。」
「そうか……ん?」彼がベストのポケットからノアフォンを取り出した。画面を見て、すぐに通話に出た。「なんだ?ああ?……ああ、ん?……あーいや、」
イオリがふと、こちらを見た。目が合ったと思ったらすぐに逸らされた。
「少し待て、表に出る。」
彼は通話をしたままドアから外に出てしまった。なんか、多分だけど、
「サラじゃねえの?」
「えっ」私は振り返った。お腹の上で両手を軽く組んで、寝そべってるレイヴと目が合った。
「リアちゃんもそう思ってた?俺はサラだと思うよ。」
「……私もそう思ってた。」
「嫌なら嫌って言えばいいけど。だって元カノといつまでもやりとりしてんなよって思うだろ。奴ら友達に戻ったの?」
「それは知らない。サラと連絡は取らないって言う割には取ってるし、いいよ、別に、私はもうすぐ消える。」
「だからさーそんなこと言うなよ。俺、毎日ヤギに頼んでるんだからね?銀の弾丸から俺が守ってあげる!……でもさ、ちょっと兄ちゃんいない間に言いたいんだけど。」
「何?」
レイヴは体を起こして、私の耳に小声で話し始めた。
「あのさ、今度ちょっと付き合ってほしいんだけど、俺の方に来てくれない?」
「えー……いいけど、何するの?」
「ちょっと会いに行きたい人がいるだけ。そりゃリアちゃんも好きだけど、俺、その人と最近やりとりしててさ……一人じゃちょっと恥ずかしいから、一緒に来てくれない?」
「私が一緒に居てもいいの?まあ、姿を消すことも出来るけどさ。」
「その時その時で消えてもらったりするかも。ねーいい?」
「いいよ。」
「やった!」と、レイヴが私の頬にちゅっとキスをした。
私は驚いてレイヴを軽くソファに突き飛ばした。彼は「ごめんごめん」とまた笑いながら謝った。
彼はノアフォンを操作し始めたので、私はドアの方を見た。トレーラーの小さめのドアの向こうからイオリの低い声がぼんやりと聞こえる。
もう十分ぐらい話してる。話の内容が気になってきた時に、ドアが開いて、彼が戻ってきた。
「サラ?」
レイヴが間髪入れずに聞くと、彼は頷いた。
「ああ。……何だか憔悴し切った様子で、俺は殆ど彼女の話を聞いていた。何だか彼女、バリーとの結婚を考えているらしい。その前に一度、会って俺と話がしたいらしいから、明後日アジトで会うことになった。内密にしてくれ。バリーは知らない。」
「内密にするけど……」レイヴが言った。「大丈夫それ。バリーの罠なんじゃないの?」
「いや」イオリは眠そうに目を擦った。「それも疑ったが、彼女は嘘をついていなかった。今なら彼女が嘘をついてるかどうかなんて容易く分かる。アリシア、いいか?」
「いいよ。」
私はすぐに答えた。イオリは「そうか、」と言ってからベッドに向かった。レイヴが慌ててイオリに話しかけた。
「ねーじゃあ明日からちょっとリアちゃん借りていいー?」
ベッドルームからイオリの声が聞こえた。
「何故だ?」
「気になる子がいてさ、その子に会いに行くから、リアちゃんと一緒に行きたい!リアちゃんもいいって言ってる!」
「……俺は構わないが、銀の銃弾の情報が出回っている。危険だから、アリシアは姿を消したまま行動してくれ。」
「分かった。」
私が答えると、会話は終了した。するとレイヴがソファの部屋の電気を消した。あれ?彼も寝るの?と思っていると、レイヴが私の脇腹を指で軽く突いてから「おやすみー」と私に言った。
そしたら自分に言われたのだと勘違いしたイオリが「おやすみ」と言った。レイヴが「お前じゃねーし」と言うと、ベッドルームから「殺すぞ」と聞こえた。
ちょっと微笑ましかった。私は二人の就眠の邪魔をしてはいけないと思い、ノアフォンを持って天井へと浮かんで飛んで行った。
私はソファから降りてレイヴに譲ろうとした。でもレイヴは「兄ちゃんの隣は恥ずかしすぎる」と言って、テーブルの近くの床に座った。
じゃあと私はイオリの隣に座って、それからは三人で気を取り直して食事を取ることにした。
レイヴはどれも美味しいと喜んでいて、それを見てイオリも微笑んでいた。それを見て、私も嬉しくなって微笑んだ。
レイヴはご馳走を頬張りながら最近のFOC事情、特に我々のことを教えてくれた。なんでもイオリがサイクロマンサーと呼ばれてるらしくて、それを聞いた時は笑った。
サイキックネクロマンサーなんだろうけど、確かにその通りだったからだ。イオリは他に無いのか……と呟いたが、レイヴは無いねと即答した。
食事が終わると、イオリが片付けをしてくれた。その間にレイヴはソファにゴロンと横になって、私はソファに寄りかかりながら座った。
仲間とこんな、団欒を過ごせてることが、とても幸せだった。ソファには大切な友達がいて、目の前でイオリが背を向けてミニキッチンで作業をしてる。
彼のお尻に目がいった。小さくて締まったお尻だ。綺麗だなと思って、つい見つめてしまった。するとイオリが突然聞いた。
「何を見ている?」
「え!?」私は手に持っていたノアフォンに視線を落とした。「ノアフォン見てる。」
「……そうか。」
よし、バレなかった。時々イオリは鋭く突っ込んでくるから油断出来ない。
最近、彼は毎日私を求める様になった。仕事の時間が減ったと言うのもあるけど、それよりかは、彼が不安だから私を求めているのでは?と思ってしまう。
抱きしめ合いながらキスをする。彼の頬は赤くて、瞳は潤んでいて、でも以前なら真っ直ぐに私を見つめていたのに、最近はちらりと一瞬だけ、別の方を見る。
それが気になっている。彼は私を好きだと言ってくれる。でも愛してるでは無い。サラには簡単に言っていたのに。
私はもう一度イオリを見た。腕まくりをして、コンロや鍋を洗っている。昨日、彼に少しだけ聞いてみた。私のこと、どう思ってる?って。
とても大好きだよ、と優しく言われた。ストロークをくれながら。嬉しいけど、嬉しくなかった。
本当はサラのこと、本当はずっと愛してたんじゃ無いの?あの時はサラに対して怒ってたけど、今はもうその怒りが消えたんじゃないの?
新しい環境で一人で不安だったから、そばにいた私を好きだと思い込んでるんじゃないの?
私を見ながら、いつも心の奥底で、別の誰かを想ってるんじゃないの?サラがいつか言っていた様に、同じことが私の身にも降りかかってるのではと、最近は思ってしまう。
イオリは優しい。頭の回転がすごく速くて、相手の気持ちをしっかりと考えられる人だ。でも、彼自身の気持ちを自覚するのが疎かになる時がある。
流す時がある。感情を否定する時がある。そんなの、誰だってそうかもしれないけど、それに愛が絡んでるなら、私は、とても苦しい。
それが本音だった。それを言える事は出来なくて、今だってチラチラ彼の背中を見ては、不安を覚えてる。でも私はゴーストだから、どうせ消えるから、そう思う事で、口角を上げることが出来た。
「ねー、」レイヴが眠そうな声を出した。「今日ここに泊まっていいよねー?今から帰るとか面倒くさい。この辺物騒だしさ。」
「ふふ、我々が物騒にしてるのに。レイヴのお泊まり、私はいいよ。イオリは?」
洗い終わったイオリが、タオルで手を拭きながら、こちらを振り向いた。咄嗟に視線を逸らしちゃった。
「俺も…………別に構わない。ソファで寝ろ。」
「やったねー!お兄ちゃん最高「それやめろ」なんだー元からノアズじゃなくてFOCに来てたなら、もっと早く仲良く出来たのになー、アッハッハ!」
後ろを見ると、レイヴと目が合った。その瞬間に彼は私にウィンクをした。何それと笑った。
ニヤッと笑ったレイヴが近くのキャビネットの上にある赤いラジオの電源をつけた。するとラップの音楽が流れた。
「俺いつもこの番組聴いてるんだよね。『速報です。』
「……。」
なんかニュース速報に邪魔されちゃった。少し笑った。ラジオは音楽が止まって、ニュースの始まる時の音楽が流れてから、女性のアナウンスが聞こえた。
『ノアズは先日のトロピカルバイス商店エリアの路地で殺害されたボードン幹部の容疑で、リア・ブックハートの指名手配することを決定しました。彼女は巷でゴーストだという噂が流れていますが、ノアズはイリュージョニストのトリックだと見解を示しております。』
「イリュージョニストだって!まじか!」
私はレイヴの脇腹を軽く殴った。レイヴは「ごめんごめん」と笑いながら謝った。いいけど。
『彼女の指名手配もあり、ノアズ戦闘員には念のために純銀の弾丸が配られました。ここで様々な現象に詳しい専門家の話を』
ブチっと、イオリがラジオを叩いて消してしまった。いいところだったのに。というか、銀の弾丸配られたんだ……それに当たったら一発で私は消える。あまり無茶出来なくなってきたなと思った。
「もう一時か。」イオリがきらりと輝く高級腕時計を見た。「そろそろ俺はシャワーを浴びて寝ようとするか、レイヴお前は?」
「俺はまだ起きてるかもー、リアちゃんと。」
「そうか……ん?」彼がベストのポケットからノアフォンを取り出した。画面を見て、すぐに通話に出た。「なんだ?ああ?……ああ、ん?……あーいや、」
イオリがふと、こちらを見た。目が合ったと思ったらすぐに逸らされた。
「少し待て、表に出る。」
彼は通話をしたままドアから外に出てしまった。なんか、多分だけど、
「サラじゃねえの?」
「えっ」私は振り返った。お腹の上で両手を軽く組んで、寝そべってるレイヴと目が合った。
「リアちゃんもそう思ってた?俺はサラだと思うよ。」
「……私もそう思ってた。」
「嫌なら嫌って言えばいいけど。だって元カノといつまでもやりとりしてんなよって思うだろ。奴ら友達に戻ったの?」
「それは知らない。サラと連絡は取らないって言う割には取ってるし、いいよ、別に、私はもうすぐ消える。」
「だからさーそんなこと言うなよ。俺、毎日ヤギに頼んでるんだからね?銀の弾丸から俺が守ってあげる!……でもさ、ちょっと兄ちゃんいない間に言いたいんだけど。」
「何?」
レイヴは体を起こして、私の耳に小声で話し始めた。
「あのさ、今度ちょっと付き合ってほしいんだけど、俺の方に来てくれない?」
「えー……いいけど、何するの?」
「ちょっと会いに行きたい人がいるだけ。そりゃリアちゃんも好きだけど、俺、その人と最近やりとりしててさ……一人じゃちょっと恥ずかしいから、一緒に来てくれない?」
「私が一緒に居てもいいの?まあ、姿を消すことも出来るけどさ。」
「その時その時で消えてもらったりするかも。ねーいい?」
「いいよ。」
「やった!」と、レイヴが私の頬にちゅっとキスをした。
私は驚いてレイヴを軽くソファに突き飛ばした。彼は「ごめんごめん」とまた笑いながら謝った。
彼はノアフォンを操作し始めたので、私はドアの方を見た。トレーラーの小さめのドアの向こうからイオリの低い声がぼんやりと聞こえる。
もう十分ぐらい話してる。話の内容が気になってきた時に、ドアが開いて、彼が戻ってきた。
「サラ?」
レイヴが間髪入れずに聞くと、彼は頷いた。
「ああ。……何だか憔悴し切った様子で、俺は殆ど彼女の話を聞いていた。何だか彼女、バリーとの結婚を考えているらしい。その前に一度、会って俺と話がしたいらしいから、明後日アジトで会うことになった。内密にしてくれ。バリーは知らない。」
「内密にするけど……」レイヴが言った。「大丈夫それ。バリーの罠なんじゃないの?」
「いや」イオリは眠そうに目を擦った。「それも疑ったが、彼女は嘘をついていなかった。今なら彼女が嘘をついてるかどうかなんて容易く分かる。アリシア、いいか?」
「いいよ。」
私はすぐに答えた。イオリは「そうか、」と言ってからベッドに向かった。レイヴが慌ててイオリに話しかけた。
「ねーじゃあ明日からちょっとリアちゃん借りていいー?」
ベッドルームからイオリの声が聞こえた。
「何故だ?」
「気になる子がいてさ、その子に会いに行くから、リアちゃんと一緒に行きたい!リアちゃんもいいって言ってる!」
「……俺は構わないが、銀の銃弾の情報が出回っている。危険だから、アリシアは姿を消したまま行動してくれ。」
「分かった。」
私が答えると、会話は終了した。するとレイヴがソファの部屋の電気を消した。あれ?彼も寝るの?と思っていると、レイヴが私の脇腹を指で軽く突いてから「おやすみー」と私に言った。
そしたら自分に言われたのだと勘違いしたイオリが「おやすみ」と言った。レイヴが「お前じゃねーし」と言うと、ベッドルームから「殺すぞ」と聞こえた。
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