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52 犯ティー第四話
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今日は犯人はティーカップの中の第四話の放送日だ。私とレイヴとエミリはリビングに集合していて、みんなでL字型の白い革のソファに座って、モニターに映るCMを見つつ、他愛のない話をしている。
ここはセミダブルのベッドの寝室が二つ、リビングの両隣にあるという中々広い部屋だ。ホテルだから毎日清掃員さんが来て掃除してくれる。だから綺麗なままだ。
赤い壁紙の寝室はレイヴの部屋で、クリーム色の寝室はエミリの部屋になった。私は寝ないから、ずっとリビングにいる。
イオリと離れて寂しい気持ちもあったけど、レイヴがあまりにも忙しい為に忘れることができた。レイヴは仕事は何でも引き受けるので、逃走用の車を取ってきたり、怪しい取引をしたり、ある日はボードンの重役のプライベートを盗み撮りなんかした。
私はずっとレイヴを支えた。レイヴはとても感謝してくれた。何度かキスされそうになったけど、避けた。まだイオリが好きだった。レイヴは分かってくれて、頬にキスしてくれた。それなら嫌がられないと分かったのか、何度も頬にキスされた。
そんな日常が四日続いて、今に至る。この三人の生活は喧嘩もなくて穏やかに続いている。まあ、これもこれで楽しい。
茶色のサイドテーブルにはポップコーンの入ったボウルと、チーズスナックの乗った大皿と、オレンジジュースのボトル、それからレイヴ専用のホワイトリバーというお酒の小瓶がある。
三人ともホテル支給の白いパジャマ姿だ。エミリもこのドラマを毎週見ていたようで内容を知っていて、それをレイヴに教えている。私はノアフォンを操作して、遂にイオリにメッセージを送るか悩んでいた。
実は二日前にイオリからメッセージが届いていた。忙しくて返せなかったけど、電話は勿論なかったし、新しい部屋で二人が盛り上がってるんだろうなーまあいいやと思っていた。内容はこれだ。
__________________
何をしている?
伊織
__________________
気にかけてくれるのは嬉しいけど、なんて答えたらいいか分からない。しかもイオリって伊織って書くんだ。カンジね、たまにその字を名前にも使う人を見かける。
話題作りの為に、それを聞いてみる?いやそれは隣にいるレイヴやエミリに聞けばいいってことになるし、うーん。素直に何をしてるか答えればいいのかな?うーん!
私は首を傾げながら打った。
__________________
お疲れ様です。
今はね、
犯ティー見る!
楽しみだ!
Lia
__________________
うん、これでいいや。私は送信した。きっとイオリのことだから明後日ぐらいに返事が来るだろう。
「ねーリアちゃん、もっと俺の隣にくればいいじゃん!」
レイヴが腕を引っ張ってくる。それを見てエミリがあははと笑っている。あははじゃないよ。
「てかさー、俺今思ったんだけど、どうして兄貴が出世したの?強盗で活躍してたのって母ちゃんじゃん!」
そしたらエミリが答えた。
「私ね、イオリのことをよろしく頼むって、ずっとオリオンさんに言っていたの。私頑張るからって。だからオリオンさんは私の言葉を聞いてくれたのよ。」
「ええええええ!俺は!?」
「レイヴちゃんは失踪してたじゃない。お母さんに寂しい思いさせる人は知りません。」
「えー。」
そりゃそうだと笑っていると、口を尖らせて不満顔になっているレイヴと目が合った。その時にテーブルに置いてた私のノアフォンがブーと震えた。
え?もしかして、もう返事来たの?
「ねえ、」レイヴが私のノアフォンをチラッと見た。「誰とメッセージしてんのー?まさか兄貴じゃないよねー?」
「わかんない。送ったのはイオリだけど、今来たのはわかんない。」
「えー、イオリはほっとけよぅ。」
私はノアフォンを手に取って、メッセージを確認した。イオリからだった。おお……!意外と早く返してくれるんだなぁと思った。
__________________
返事が早いとは
虚言か?
まあいい。
俺もこれから
それを見る。
伊織
__________________
そっか。私はノアフォンを消して、テーブルに置いた。すると私の隣に座っているレイヴが、何故か戸惑った顔をしていた。
「ど、どうしたの?」
「んーまあいいんだけどさ、ちょっと今リアちゃんの画面を覗いちゃったんだけどさ、返事しないの?」
「え?だって、返事する要素ない。」
「……あ、そう。今何してるかぐらい、聞けばー?」
「そうかな?レイヴは優しいね。」
「ああまあね、勝者の余裕ってやつ。あっはっは!」
レイヴはぐびっと酒を飲んだ。そして私の肩に手を回してきた。それをそのままにして、私は再度ノアフォンを持って、返事をした。
__________________
イオリは
意外と早く
返事するね!
今何してる?
Lia
__________________
送った。すると、すぐに返事がきた。まじで、返事が遅いとはどういうことなの?ちょっと笑った。
__________________
そうか?はは
暇だから、
付き合ってやる。
今は、
一人で晩酌だ。
伊織
__________________
すぐに返事をした。
__________________
あれ?サラは?
Lia
__________________
__________________
今日はクラブに
行っている。
護衛はつけた。
伊織
__________________
そうなんだ。サラはクラブか……きっとイオリのお金で豪遊してるんだろうな。私は遠い目をした。
因みにもうドラマは始まっている。第三話で急激に増えた登場人物のざっとした紹介が始まっている。このドラマを、こうして部屋の中で、しかもテレビで見れる日が来るとは思っていなかった。私は夢中で画面を見つめた。
するとまたブーと震えた。また来たのかな?まあまだ人物紹介なので、それを確認した。
__________________
ペアアクセは
もう買ったか?
伊織
__________________
私は返した。
__________________
買ってない。
ずっと仕事で
忙しかったよー
イオリはサラに
色々買ってる?
Lia
__________________
__________________
ああ、まあな。
あそこまで
欲しいものが
ポンポン出るのは
ある意味才能だ。
でも俺は、
コンボの服のまま
伊織
__________________
そっか、イオリは意外と倹約的なところもあるんだと思った。サラと相変わらず仲が良さそうですね。私はノアフォンを置いた。
それからノアフォンが震えることはなかった。ドラマは前回出た登場人物全てが容疑者になって、中々複雑で熱い展開になっていった。
ドラマが終わると、隣のレイヴが私の肩を枕にして寝ているのに気がついた。エミリは微笑んでレイヴにタオルケットをかけたので、私はいやいやいやとレイヴを揺らして起こして、ふらふら眠そうな彼をベッドルームに連れて行ってあげた。
ここはセミダブルのベッドの寝室が二つ、リビングの両隣にあるという中々広い部屋だ。ホテルだから毎日清掃員さんが来て掃除してくれる。だから綺麗なままだ。
赤い壁紙の寝室はレイヴの部屋で、クリーム色の寝室はエミリの部屋になった。私は寝ないから、ずっとリビングにいる。
イオリと離れて寂しい気持ちもあったけど、レイヴがあまりにも忙しい為に忘れることができた。レイヴは仕事は何でも引き受けるので、逃走用の車を取ってきたり、怪しい取引をしたり、ある日はボードンの重役のプライベートを盗み撮りなんかした。
私はずっとレイヴを支えた。レイヴはとても感謝してくれた。何度かキスされそうになったけど、避けた。まだイオリが好きだった。レイヴは分かってくれて、頬にキスしてくれた。それなら嫌がられないと分かったのか、何度も頬にキスされた。
そんな日常が四日続いて、今に至る。この三人の生活は喧嘩もなくて穏やかに続いている。まあ、これもこれで楽しい。
茶色のサイドテーブルにはポップコーンの入ったボウルと、チーズスナックの乗った大皿と、オレンジジュースのボトル、それからレイヴ専用のホワイトリバーというお酒の小瓶がある。
三人ともホテル支給の白いパジャマ姿だ。エミリもこのドラマを毎週見ていたようで内容を知っていて、それをレイヴに教えている。私はノアフォンを操作して、遂にイオリにメッセージを送るか悩んでいた。
実は二日前にイオリからメッセージが届いていた。忙しくて返せなかったけど、電話は勿論なかったし、新しい部屋で二人が盛り上がってるんだろうなーまあいいやと思っていた。内容はこれだ。
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何をしている?
伊織
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気にかけてくれるのは嬉しいけど、なんて答えたらいいか分からない。しかもイオリって伊織って書くんだ。カンジね、たまにその字を名前にも使う人を見かける。
話題作りの為に、それを聞いてみる?いやそれは隣にいるレイヴやエミリに聞けばいいってことになるし、うーん。素直に何をしてるか答えればいいのかな?うーん!
私は首を傾げながら打った。
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お疲れ様です。
今はね、
犯ティー見る!
楽しみだ!
Lia
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うん、これでいいや。私は送信した。きっとイオリのことだから明後日ぐらいに返事が来るだろう。
「ねーリアちゃん、もっと俺の隣にくればいいじゃん!」
レイヴが腕を引っ張ってくる。それを見てエミリがあははと笑っている。あははじゃないよ。
「てかさー、俺今思ったんだけど、どうして兄貴が出世したの?強盗で活躍してたのって母ちゃんじゃん!」
そしたらエミリが答えた。
「私ね、イオリのことをよろしく頼むって、ずっとオリオンさんに言っていたの。私頑張るからって。だからオリオンさんは私の言葉を聞いてくれたのよ。」
「ええええええ!俺は!?」
「レイヴちゃんは失踪してたじゃない。お母さんに寂しい思いさせる人は知りません。」
「えー。」
そりゃそうだと笑っていると、口を尖らせて不満顔になっているレイヴと目が合った。その時にテーブルに置いてた私のノアフォンがブーと震えた。
え?もしかして、もう返事来たの?
「ねえ、」レイヴが私のノアフォンをチラッと見た。「誰とメッセージしてんのー?まさか兄貴じゃないよねー?」
「わかんない。送ったのはイオリだけど、今来たのはわかんない。」
「えー、イオリはほっとけよぅ。」
私はノアフォンを手に取って、メッセージを確認した。イオリからだった。おお……!意外と早く返してくれるんだなぁと思った。
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返事が早いとは
虚言か?
まあいい。
俺もこれから
それを見る。
伊織
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そっか。私はノアフォンを消して、テーブルに置いた。すると私の隣に座っているレイヴが、何故か戸惑った顔をしていた。
「ど、どうしたの?」
「んーまあいいんだけどさ、ちょっと今リアちゃんの画面を覗いちゃったんだけどさ、返事しないの?」
「え?だって、返事する要素ない。」
「……あ、そう。今何してるかぐらい、聞けばー?」
「そうかな?レイヴは優しいね。」
「ああまあね、勝者の余裕ってやつ。あっはっは!」
レイヴはぐびっと酒を飲んだ。そして私の肩に手を回してきた。それをそのままにして、私は再度ノアフォンを持って、返事をした。
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イオリは
意外と早く
返事するね!
今何してる?
Lia
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送った。すると、すぐに返事がきた。まじで、返事が遅いとはどういうことなの?ちょっと笑った。
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そうか?はは
暇だから、
付き合ってやる。
今は、
一人で晩酌だ。
伊織
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すぐに返事をした。
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あれ?サラは?
Lia
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今日はクラブに
行っている。
護衛はつけた。
伊織
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そうなんだ。サラはクラブか……きっとイオリのお金で豪遊してるんだろうな。私は遠い目をした。
因みにもうドラマは始まっている。第三話で急激に増えた登場人物のざっとした紹介が始まっている。このドラマを、こうして部屋の中で、しかもテレビで見れる日が来るとは思っていなかった。私は夢中で画面を見つめた。
するとまたブーと震えた。また来たのかな?まあまだ人物紹介なので、それを確認した。
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ペアアクセは
もう買ったか?
伊織
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私は返した。
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買ってない。
ずっと仕事で
忙しかったよー
イオリはサラに
色々買ってる?
Lia
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ああ、まあな。
あそこまで
欲しいものが
ポンポン出るのは
ある意味才能だ。
でも俺は、
コンボの服のまま
伊織
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そっか、イオリは意外と倹約的なところもあるんだと思った。サラと相変わらず仲が良さそうですね。私はノアフォンを置いた。
それからノアフォンが震えることはなかった。ドラマは前回出た登場人物全てが容疑者になって、中々複雑で熱い展開になっていった。
ドラマが終わると、隣のレイヴが私の肩を枕にして寝ているのに気がついた。エミリは微笑んでレイヴにタオルケットをかけたので、私はいやいやいやとレイヴを揺らして起こして、ふらふら眠そうな彼をベッドルームに連れて行ってあげた。
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