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36 深夜の会話
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駐車場でハリネズミヘアの運転手役と別れて、私とイオリはエレベーターで三階に上がった。移動している間、ずっと無言だった。
ちょっとサラのことを言おうか迷った。やっぱり愛してるんだねとか、仲良しだねとか、頭では思いつくけど、それに対してそうだと言われるのが怖かった。
三階についてエレベーターを降りると、スタスタとイオリが部屋に向かって行った。私は後を歩きつつ、貰ったばかりの手のひらサイズのノアフォンを見た。
連絡帳にはイオリとサラと、オリオン様、それからさっき教えてもらったレイヴとハリネズミヘアをした運転手のダニーの名前とアイコンが表示されている。彼はダニーという名前なんだ。
それぞれアイコンは、レイヴはどこかのクラブでレーザーを浴びながら自撮りをしたもので、ダニーは本当に車が好きなのか、車のボンネットに彼が座っている写真だった。
オリオン様のはオリオン座の画像で、イオリと私のはまだ設定していない。サラは我々が出かけている間にいじっていたのか、檻と一部とペディキュアのついた彼女の足の写真だった。
どんな自撮りにしよう。出来れば海をバックにしたい。海は偉大だ。どんな私でも魅力的に仕上げてくれる。海が無いなら鏡越しだ。加工アプリが簡単に入手できない今、救いはそれしかない。
「リア、聞きたい。」
「うーん。」私はカメラアプリの機能を見ながら声を出した。
「リア、部屋に戻る前に聞きたい。貴様、自分が死んでいることを理解しているのか?」
よし決めた。私は顔をあげて、ドアの前で突っ立って私を仁王立ちで睨んでいるイオリに言った。
「やっぱり海だな、今度海に行こうよイオリ。手配度もすっかり無くなったしさ。」
「……何故、海に行く?」
「海をバックにして私を撮って欲しい。連絡帳のアイコンに設定するから。」
イオリは鼻でため息をついた。仕方あるまい、私はさっきの質問に答えた。
「死んでる自覚ならしてるよ。いくらでもしてる。だって、死んでるもん。イオリから離れられないもん。今のこの状況、あの屋敷にずっといるよりかはいいよ?でもちょっと辛い。」
「……サラがいるからか?」
「よく分かったね。そうそう。さあ帰ろうよ。もう夜中の二時だから寝ないと……イオリはね。サラ様のそばで寝てあげてください。彼女を安心させるんでしょ?」
「それはそうだが、文脈から推測するとつまりリアは、俺のこと「文脈とかもういいからうるさい。」
私はぐいぐいイオリを押して、ドアの中に彼をぶち込んだ。そして自分も入って、ロックをかけた。サラは檻のすぐそばで床で寝ている。毛布があったようで、それを使っていた。
彼の方を見ると、イオリがじっと私を見つめながら固まって立っていた。何この空気。
……そうだ、取り敢えず彼の仕事モードを解除してあげようと思い、彼のベルトを外して、マグナムを取ろうとした。
ベルトのバックルを掴んで、金具を取ろうとしたら、両手首をガシッと掴まれた。顔を上げると、イオリが目を丸くしていた。しかも気のせいか、彼の頬は赤かった。
「り、リア……!急に何を……!?」
私は一瞬で目を座らせた。
「イオリばかじゃないの?違うよ。マグナムをベルトごと取ってあげようと思ったの。ほら。」
「あ、ああ、そうか……。」
自由になった両手で、引き続きベルトを外しながらイオリに言った。
「変な反応しないで。サラのこと好きなんじゃないの?そういう反応は、サラに見せてあげたらいいのに。顔赤いよ。」
「赤くないはずだ……。」
一度彼の方を見ると、彼は手で口を覆っていて、やはり顔が赤かった。私はベルトに視線を落とした。
「それに俺は、常に余裕のある男だ。サラの前でも、誰の前でも。」
「そうですか、はいはい。」
私はベルトをシャッと取って、それをソファのところに置いた。あるわけないよなと思いつつ冷蔵庫を開けたけど、やっぱりチョコも炭酸水も無かった。
そっと冷蔵庫のドアを閉めると、ソファに座るイオリが私に言った。
「お前はもう死んでいる。」
「……どっかで聞いたようなセリフだね、はは。それは知ってるって、さっきも話したよ。」
イオリの背中を見た。ちょっと丸まって、疲れているようだった。
「生きていたら良かったな。生きていたら、色々と良かった。」
「でも生きていたら私はきっとイオリに一生会わなかった。会ったとしても敵対したままだった。何かがそこから生まれたとしても、それはきっと悲劇にしかならない。」
「今も十分、悲劇だとは思わないか?」
「今はちょっとだけ喜劇。あはは。」
「ははっ、そうだな……。」
イオリがソファにスッと倒れた。一瞬心配したけど、彼の伸びた足や腕で、そこで寝ようとしているのが分かって、私は彼の方へ向かっていた自分の方向転換をして、キッチンのキャビネットを背にして床に座った。
「おやすみ」
どうせ聞こえないと思いながら、小声で彼にそう言った。
でも彼は、どうしても優しい人だった。
「おやすみ」
ソファから聞こえた声に、私は少しだけ泣きそうになった。おやすみ如きに泣くなんてどういうことなんだと訳が分からないまま、私はノアフォンで制限付きだけどネットサーフィンを始めた。
気が付くと、私はメンズブランドのベルトやスーツばかり検索していた。どれくらい報酬が貰えるのか分からないけど、私はもうこれ以上何かが欲しいわけでもないし、イオリに買ってあげようと思った。友情のプレゼントだ。
時刻は午前三時だった。サラのちょっとしたいびきが聞こえている。あんなに細くて、頭が小さくて、よく見てみたらなんか可愛く思えてきた。イオリは趣味がいい。
「おい」
「おおおぉぉ……!?」
「静かにしろ。」
急にソファから低い男性の声が聞こえたので、ちょっとビックリした。私は小声でイオリに聞いた。
「ね、眠れないの?」
「……まあな。先程からぼんやりと起きていた。一つ聞きたい。」
「何?」
「何故、バリーに仕返しをしようと思わない?」
心なしか、彼の声がちょっと不機嫌だ。まあそれもそうか半分眠いんだろうし。私は答えた。
「だからさっき言ったでしょ。」
「は?」
「バリーが私を殺したから、私はイオリに会えた。それもこうして、友好的な関係を築けている。そりゃ、ちょっとは、なんで?って思うこともある。」
「何故、お前を撃ったのか、それは分かるのか?」
「なんか私が知ってはいけないことを知ったらしい。でも思い当たることはない……うーん。彼とは仕事の時とか、彼が夜寂しい時しか会わなかった。別に重要な情報なんて心当たりないのに。」
「夜寂しい時ねぇ……。」
「だってそれは夫婦だよ。うーん、でも一体、何が重要だったんだろう。」
「アリシアに心当たりがないということは組織の危ない情報ではない。そしてアリシアが気にしていないということは、彼にとっては気になることだったということだ。つまり、異常な彼自身の癖をお前が見た可能性が高い。常軌を逸した食嗜好、性癖、あるいは女装など。」
「なるほど、イオリの意見はとても当たっていると思う。でも、うーん、別に異常な癖はなかったけどなぁ。あーでも思い出した。一度、彼がシャワーを浴びているときに彼の姿を見ちゃった。それで彼がめちゃくちゃ驚いて、慌ててドアを閉めた。でも彼の裸なんて何回も見たから、別に……。」
「そういう反応は初めてだったのか?」
「うん。あんなに驚いたのは初めて見た。そう言えばその時に、彼の肩に……ふふっ、ああ、あれが、そうか。」
「なんだ?」
「彼の肩にクマちゃんのタトゥーがあった。あんなところにあったっけって思ったのを思い出した。」
「成程……はぁぁ。きっと奴はお前に会う時はスキンテープでそのタトゥーを隠していたのだろう。今のスキンテープは殆ど肌に近いからな。彼は見られたくないものを見られた。他人からして些細なことでも、本人からしたら絶対知られたくないものはある。しかしそれが原因で……はぁぁ。」
「今度、彼に会ったら、そうだったのか聞いてみるよ。」
「いや、会わせない。」
私は首を傾げた。
「え?なんで?だって同じ組織にいる。」
「今は同じ組織だ。でも会ったら、俺が地獄を味わせてやる。彼を縛り、メンタルを破壊する。」
「い、イオリ、大丈夫?」
「催眠をかけてやる。クマのタトゥーがそのうち体を移動して脳味噌まで到達して、目に映る全てのものにクマのタトゥーがあるかのような錯覚を覚えさせる。ははっ、きっと狂い始めた世界に嫌気がさして、そのうち自分で生きることを諦めるだろうな。」
私はささっと床をハイハイで移動して、ソファで横になっている彼の肩を掴んだ。するとすぐに私の手が彼に掴まれた。
「イオリ、もう寝たほうがいい。怒ってくれたのはありがたいけど、なんか怖いよ。」
「大丈夫だ、アリシアに怖い思いはさせないよ……」彼の声がトロンととろけてきた。「俺はただ、怒りを覚えている。バリーを許すことは金輪際有り得ない。」
「分かった。分かったから、寝て。」
「……暫くそばにいてくれ。」
コクリと頷いた。静かになった部屋に、イオリの深い寝息が響き始めた。彼は優しい。でも怒ると怖い。ちょっとクスッと笑って、ソファの背もたれに顎を乗せて、それから結構の間、イオリの手を握ってあげた。
ちょっとサラのことを言おうか迷った。やっぱり愛してるんだねとか、仲良しだねとか、頭では思いつくけど、それに対してそうだと言われるのが怖かった。
三階についてエレベーターを降りると、スタスタとイオリが部屋に向かって行った。私は後を歩きつつ、貰ったばかりの手のひらサイズのノアフォンを見た。
連絡帳にはイオリとサラと、オリオン様、それからさっき教えてもらったレイヴとハリネズミヘアをした運転手のダニーの名前とアイコンが表示されている。彼はダニーという名前なんだ。
それぞれアイコンは、レイヴはどこかのクラブでレーザーを浴びながら自撮りをしたもので、ダニーは本当に車が好きなのか、車のボンネットに彼が座っている写真だった。
オリオン様のはオリオン座の画像で、イオリと私のはまだ設定していない。サラは我々が出かけている間にいじっていたのか、檻と一部とペディキュアのついた彼女の足の写真だった。
どんな自撮りにしよう。出来れば海をバックにしたい。海は偉大だ。どんな私でも魅力的に仕上げてくれる。海が無いなら鏡越しだ。加工アプリが簡単に入手できない今、救いはそれしかない。
「リア、聞きたい。」
「うーん。」私はカメラアプリの機能を見ながら声を出した。
「リア、部屋に戻る前に聞きたい。貴様、自分が死んでいることを理解しているのか?」
よし決めた。私は顔をあげて、ドアの前で突っ立って私を仁王立ちで睨んでいるイオリに言った。
「やっぱり海だな、今度海に行こうよイオリ。手配度もすっかり無くなったしさ。」
「……何故、海に行く?」
「海をバックにして私を撮って欲しい。連絡帳のアイコンに設定するから。」
イオリは鼻でため息をついた。仕方あるまい、私はさっきの質問に答えた。
「死んでる自覚ならしてるよ。いくらでもしてる。だって、死んでるもん。イオリから離れられないもん。今のこの状況、あの屋敷にずっといるよりかはいいよ?でもちょっと辛い。」
「……サラがいるからか?」
「よく分かったね。そうそう。さあ帰ろうよ。もう夜中の二時だから寝ないと……イオリはね。サラ様のそばで寝てあげてください。彼女を安心させるんでしょ?」
「それはそうだが、文脈から推測するとつまりリアは、俺のこと「文脈とかもういいからうるさい。」
私はぐいぐいイオリを押して、ドアの中に彼をぶち込んだ。そして自分も入って、ロックをかけた。サラは檻のすぐそばで床で寝ている。毛布があったようで、それを使っていた。
彼の方を見ると、イオリがじっと私を見つめながら固まって立っていた。何この空気。
……そうだ、取り敢えず彼の仕事モードを解除してあげようと思い、彼のベルトを外して、マグナムを取ろうとした。
ベルトのバックルを掴んで、金具を取ろうとしたら、両手首をガシッと掴まれた。顔を上げると、イオリが目を丸くしていた。しかも気のせいか、彼の頬は赤かった。
「り、リア……!急に何を……!?」
私は一瞬で目を座らせた。
「イオリばかじゃないの?違うよ。マグナムをベルトごと取ってあげようと思ったの。ほら。」
「あ、ああ、そうか……。」
自由になった両手で、引き続きベルトを外しながらイオリに言った。
「変な反応しないで。サラのこと好きなんじゃないの?そういう反応は、サラに見せてあげたらいいのに。顔赤いよ。」
「赤くないはずだ……。」
一度彼の方を見ると、彼は手で口を覆っていて、やはり顔が赤かった。私はベルトに視線を落とした。
「それに俺は、常に余裕のある男だ。サラの前でも、誰の前でも。」
「そうですか、はいはい。」
私はベルトをシャッと取って、それをソファのところに置いた。あるわけないよなと思いつつ冷蔵庫を開けたけど、やっぱりチョコも炭酸水も無かった。
そっと冷蔵庫のドアを閉めると、ソファに座るイオリが私に言った。
「お前はもう死んでいる。」
「……どっかで聞いたようなセリフだね、はは。それは知ってるって、さっきも話したよ。」
イオリの背中を見た。ちょっと丸まって、疲れているようだった。
「生きていたら良かったな。生きていたら、色々と良かった。」
「でも生きていたら私はきっとイオリに一生会わなかった。会ったとしても敵対したままだった。何かがそこから生まれたとしても、それはきっと悲劇にしかならない。」
「今も十分、悲劇だとは思わないか?」
「今はちょっとだけ喜劇。あはは。」
「ははっ、そうだな……。」
イオリがソファにスッと倒れた。一瞬心配したけど、彼の伸びた足や腕で、そこで寝ようとしているのが分かって、私は彼の方へ向かっていた自分の方向転換をして、キッチンのキャビネットを背にして床に座った。
「おやすみ」
どうせ聞こえないと思いながら、小声で彼にそう言った。
でも彼は、どうしても優しい人だった。
「おやすみ」
ソファから聞こえた声に、私は少しだけ泣きそうになった。おやすみ如きに泣くなんてどういうことなんだと訳が分からないまま、私はノアフォンで制限付きだけどネットサーフィンを始めた。
気が付くと、私はメンズブランドのベルトやスーツばかり検索していた。どれくらい報酬が貰えるのか分からないけど、私はもうこれ以上何かが欲しいわけでもないし、イオリに買ってあげようと思った。友情のプレゼントだ。
時刻は午前三時だった。サラのちょっとしたいびきが聞こえている。あんなに細くて、頭が小さくて、よく見てみたらなんか可愛く思えてきた。イオリは趣味がいい。
「おい」
「おおおぉぉ……!?」
「静かにしろ。」
急にソファから低い男性の声が聞こえたので、ちょっとビックリした。私は小声でイオリに聞いた。
「ね、眠れないの?」
「……まあな。先程からぼんやりと起きていた。一つ聞きたい。」
「何?」
「何故、バリーに仕返しをしようと思わない?」
心なしか、彼の声がちょっと不機嫌だ。まあそれもそうか半分眠いんだろうし。私は答えた。
「だからさっき言ったでしょ。」
「は?」
「バリーが私を殺したから、私はイオリに会えた。それもこうして、友好的な関係を築けている。そりゃ、ちょっとは、なんで?って思うこともある。」
「何故、お前を撃ったのか、それは分かるのか?」
「なんか私が知ってはいけないことを知ったらしい。でも思い当たることはない……うーん。彼とは仕事の時とか、彼が夜寂しい時しか会わなかった。別に重要な情報なんて心当たりないのに。」
「夜寂しい時ねぇ……。」
「だってそれは夫婦だよ。うーん、でも一体、何が重要だったんだろう。」
「アリシアに心当たりがないということは組織の危ない情報ではない。そしてアリシアが気にしていないということは、彼にとっては気になることだったということだ。つまり、異常な彼自身の癖をお前が見た可能性が高い。常軌を逸した食嗜好、性癖、あるいは女装など。」
「なるほど、イオリの意見はとても当たっていると思う。でも、うーん、別に異常な癖はなかったけどなぁ。あーでも思い出した。一度、彼がシャワーを浴びているときに彼の姿を見ちゃった。それで彼がめちゃくちゃ驚いて、慌ててドアを閉めた。でも彼の裸なんて何回も見たから、別に……。」
「そういう反応は初めてだったのか?」
「うん。あんなに驚いたのは初めて見た。そう言えばその時に、彼の肩に……ふふっ、ああ、あれが、そうか。」
「なんだ?」
「彼の肩にクマちゃんのタトゥーがあった。あんなところにあったっけって思ったのを思い出した。」
「成程……はぁぁ。きっと奴はお前に会う時はスキンテープでそのタトゥーを隠していたのだろう。今のスキンテープは殆ど肌に近いからな。彼は見られたくないものを見られた。他人からして些細なことでも、本人からしたら絶対知られたくないものはある。しかしそれが原因で……はぁぁ。」
「今度、彼に会ったら、そうだったのか聞いてみるよ。」
「いや、会わせない。」
私は首を傾げた。
「え?なんで?だって同じ組織にいる。」
「今は同じ組織だ。でも会ったら、俺が地獄を味わせてやる。彼を縛り、メンタルを破壊する。」
「い、イオリ、大丈夫?」
「催眠をかけてやる。クマのタトゥーがそのうち体を移動して脳味噌まで到達して、目に映る全てのものにクマのタトゥーがあるかのような錯覚を覚えさせる。ははっ、きっと狂い始めた世界に嫌気がさして、そのうち自分で生きることを諦めるだろうな。」
私はささっと床をハイハイで移動して、ソファで横になっている彼の肩を掴んだ。するとすぐに私の手が彼に掴まれた。
「イオリ、もう寝たほうがいい。怒ってくれたのはありがたいけど、なんか怖いよ。」
「大丈夫だ、アリシアに怖い思いはさせないよ……」彼の声がトロンととろけてきた。「俺はただ、怒りを覚えている。バリーを許すことは金輪際有り得ない。」
「分かった。分かったから、寝て。」
「……暫くそばにいてくれ。」
コクリと頷いた。静かになった部屋に、イオリの深い寝息が響き始めた。彼は優しい。でも怒ると怖い。ちょっとクスッと笑って、ソファの背もたれに顎を乗せて、それから結構の間、イオリの手を握ってあげた。
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