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交差する、最後の戦い編
240 その理由
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火傷した肌が、あまりにも痛くて、私は目を覚ました。ぼんやりする視界のまま、頑張って身体を起こした。どうやら私は、移動している輸送車の後部座席で、横になっていたらしい。
後ろには他に、誰も居ない。防具はドロドロに溶けていて、制服は焦げていたり、血で黒くなっていた。ナイトアームはもうビリビリしておらず、ラインを通る彼の光が、いつもよりも無造作なタイミングになっている。壊れているようだ。
今はどうなっている?確か、ネビリスは、倒せたはず。私は車内を移動して、運転席を覗いてみた。ゲイルが運転していた。
「ねえ」
「わああああ!」
驚いたゲイルがハンドルを滑らせてしまい、車内は大きく揺れた。悪いことをした。
「ご、ごめん。」
「いえ、起きたのか……はあ、良かった。意識不明の重体で、一応近くの衛生兵に応急処置をしてもらって、今、帝都中央病院に向かっています。そこには多くの、LOZや新光騎士団の兵士が手当てを受けている。チェイス元帥も手術をしているって。」
「そ、そうか……彼は大丈夫かな。」
「麻酔で寝るまで意識はあったので、大丈夫かと。」
「そっか。チェイスもクラースさんも、皆も無事で良かった。」
私は自分が寝ていた座席に座ると、ほっと一息付いた。これで本当に全てが終わったのかな。何だかまだ、実感が湧かないけど。その席に座ったまま、私はゲイルに質問をした。
「ネビリスは、どうなった?」
「……もう見るも無残な状態ですよ。キルディアさんとネビリスが落ちて来た時、丁度あの銅像の前に、スコピオ博士がいたんですが、彼はショックで倒れました。まあ、あの過激な最期を目の前で見ちゃったんだから、かなり衝撃的だったんだろうけど。他の皆は、死んだネビリスを見て、喜んでいましたよ。何だか、人ってたまに怖い。」
「確かに、はは……。」
そうか、私はネビリスをやってしまった。怒りに任せて、行動してしまった。仕方ないことかもしれないけど、当分の間は、剣を握る事は出来ないだろう。
それから暫く考え事をして呆けていると、病院の前で車が止まった。ゲイルが運転席から降りたと同時に、ガラッと後部座席のドアが外側から開けられた。そこに居たのは、ジェーンだった。
「あ、ジェーン。」
「キルディア!」
ジェーンは乗り込んでくると、すかさず私のことを抱きしめた。車の外側を周り、後部座席のドアまで来てくれたゲイルが、私とジェーンに気付いて、目を逸らした。
「ちょっと、ジェーン……まだほら、皆がいるし。」
「あなたが心配かけるからいけないのです!何を考えていますか!ネビリスと屋根から落ちるなんて!こんなに怪我をして、私が何度も何度も下がれと訴えても聞かなくて!私がどれほど心配したか、私がどれほど……!」
ジェーンの肩が小刻みに震えている。彼の背中を優しく撫でながら、私は答えた。
「そ、それは、だって、もう覚悟を決めないと、勝てないと思った。それに引くことが出来なかった。それほど私は怒っていたから……結果的に、相殺するしかなかった。」
ジェーンが少し離れて、私の血濡れの顔を、彼のハンカチで拭きながら、私に聞いた。
「……ネビリスが、ルミネラ皇帝を殺した犯人だったからですか?」
「……彼をやってしまった理由としては、それもある。でも、彼がジェーンを侮辱したことが、一番許せなかった。それに、私が落下して、諦めかけた時、ジェーンが私を生かした。詳細は、ちょっと言えない。」
「私のことが、それほど大事だったとは、ああ、胸が苦しいです。キルディア、私がどのようにして、あなたを生かしたのでしょうか?……何でも話すと、約束したではありませんか。私の何が、あなたに活力を与えたのです?」
言わないとダメなのかな。でもジェーンは極めて真剣な瞳で、私を見つめている。まあいいか、言ってしまおう。
「い、いや、だから……生きたいと思えたのは、ジェーンのシースルーを見たかったから。はは。」
ジェーンが、ぽかんとした表情をした後に、また血塗れの私を優しく抱きしめた。
「もういいよ、折角の服が、汚れてしまうよ、ジェーン。」
「服など、構いません……キルディア。私は今、ある決断を致しました。後で詳細をお話しします。今は、この身体を、治療することに専念しましょう。」
「うん……。」
ある決断とは、一体何なんだろうか。それを今すぐに言わないのは何故なのか?少しモヤモヤしたまま、私はジェーンの手を借りて、輸送車を降りた。
後ろには他に、誰も居ない。防具はドロドロに溶けていて、制服は焦げていたり、血で黒くなっていた。ナイトアームはもうビリビリしておらず、ラインを通る彼の光が、いつもよりも無造作なタイミングになっている。壊れているようだ。
今はどうなっている?確か、ネビリスは、倒せたはず。私は車内を移動して、運転席を覗いてみた。ゲイルが運転していた。
「ねえ」
「わああああ!」
驚いたゲイルがハンドルを滑らせてしまい、車内は大きく揺れた。悪いことをした。
「ご、ごめん。」
「いえ、起きたのか……はあ、良かった。意識不明の重体で、一応近くの衛生兵に応急処置をしてもらって、今、帝都中央病院に向かっています。そこには多くの、LOZや新光騎士団の兵士が手当てを受けている。チェイス元帥も手術をしているって。」
「そ、そうか……彼は大丈夫かな。」
「麻酔で寝るまで意識はあったので、大丈夫かと。」
「そっか。チェイスもクラースさんも、皆も無事で良かった。」
私は自分が寝ていた座席に座ると、ほっと一息付いた。これで本当に全てが終わったのかな。何だかまだ、実感が湧かないけど。その席に座ったまま、私はゲイルに質問をした。
「ネビリスは、どうなった?」
「……もう見るも無残な状態ですよ。キルディアさんとネビリスが落ちて来た時、丁度あの銅像の前に、スコピオ博士がいたんですが、彼はショックで倒れました。まあ、あの過激な最期を目の前で見ちゃったんだから、かなり衝撃的だったんだろうけど。他の皆は、死んだネビリスを見て、喜んでいましたよ。何だか、人ってたまに怖い。」
「確かに、はは……。」
そうか、私はネビリスをやってしまった。怒りに任せて、行動してしまった。仕方ないことかもしれないけど、当分の間は、剣を握る事は出来ないだろう。
それから暫く考え事をして呆けていると、病院の前で車が止まった。ゲイルが運転席から降りたと同時に、ガラッと後部座席のドアが外側から開けられた。そこに居たのは、ジェーンだった。
「あ、ジェーン。」
「キルディア!」
ジェーンは乗り込んでくると、すかさず私のことを抱きしめた。車の外側を周り、後部座席のドアまで来てくれたゲイルが、私とジェーンに気付いて、目を逸らした。
「ちょっと、ジェーン……まだほら、皆がいるし。」
「あなたが心配かけるからいけないのです!何を考えていますか!ネビリスと屋根から落ちるなんて!こんなに怪我をして、私が何度も何度も下がれと訴えても聞かなくて!私がどれほど心配したか、私がどれほど……!」
ジェーンの肩が小刻みに震えている。彼の背中を優しく撫でながら、私は答えた。
「そ、それは、だって、もう覚悟を決めないと、勝てないと思った。それに引くことが出来なかった。それほど私は怒っていたから……結果的に、相殺するしかなかった。」
ジェーンが少し離れて、私の血濡れの顔を、彼のハンカチで拭きながら、私に聞いた。
「……ネビリスが、ルミネラ皇帝を殺した犯人だったからですか?」
「……彼をやってしまった理由としては、それもある。でも、彼がジェーンを侮辱したことが、一番許せなかった。それに、私が落下して、諦めかけた時、ジェーンが私を生かした。詳細は、ちょっと言えない。」
「私のことが、それほど大事だったとは、ああ、胸が苦しいです。キルディア、私がどのようにして、あなたを生かしたのでしょうか?……何でも話すと、約束したではありませんか。私の何が、あなたに活力を与えたのです?」
言わないとダメなのかな。でもジェーンは極めて真剣な瞳で、私を見つめている。まあいいか、言ってしまおう。
「い、いや、だから……生きたいと思えたのは、ジェーンのシースルーを見たかったから。はは。」
ジェーンが、ぽかんとした表情をした後に、また血塗れの私を優しく抱きしめた。
「もういいよ、折角の服が、汚れてしまうよ、ジェーン。」
「服など、構いません……キルディア。私は今、ある決断を致しました。後で詳細をお話しします。今は、この身体を、治療することに専念しましょう。」
「うん……。」
ある決断とは、一体何なんだろうか。それを今すぐに言わないのは何故なのか?少しモヤモヤしたまま、私はジェーンの手を借りて、輸送車を降りた。
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