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交差する、最後の戦い編
239 生きたいと思う力
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「ああ、その程度か、飛んだ拍子抜けだ。もう飽きた、お前は弱い。それは分かったから、今すぐに殺してやろう。」
ネビリスは一気に間合いを詰めて、しゃがみ込んで激しく呼吸をしている私の頭を、両手の拳で打ち付けた。
「ぐああ……っ!」
あまりの衝撃に、頭をかち割られるかと思った。ギリギリ、意識は保っているが、一気に視界が歪んだ。それからも何度も、彼の拳を体に喰らうが、意識が朦朧としていて、視界がゆらゆら揺れて、殴られても衝撃だけ、鈍く感じ取った。
ドクンドクンと、頭の中で心臓の音が響いている。飛ばされては立ち上がり、また殴られては立ち上がり、ここが屋根の上なのか、空の中なのか、揺らぎ続けている視界に、とうとう血が入り込んで、一気に真っ赤に染まった。
目を袖で拭うと、袖に付いていたチェイスの古い血の上に、私の鮮血が乗っかった。そしてまた殴られ、飛ばされ、倒れたが、私はまた立ち上がった。
ウォッフォンから何か、ジェーンの声が聞こえる。朦朧とする中、光の大剣をどうにか構えた。
「終わりだ、ギルバート。」
こちらに炎の弾が飛んできた。まだだ! ぐわりと意識が覚醒し、私はそれを光の大剣で弾き飛ばした。その炎の弾は、ネビリスの肩に着弾した。防具の無いネビリスは、焼け焦げた肩を押さえながら、痛みに呻いた。
「ぐっ……まだ、やるつもりか?しぶとい奴め。」
まだだ、まだやれる!私は光の大剣を構えながら、答えた。
「絶対に、帰ると……約束したのだ。私はまだ……ぐっ……やり、残したことがある。人は、時に……くだらん理由で、生きたくなるものだ……もう一度、ジェーンと、口づけを……交わしたい。」
ネビリスが、鼻で笑った。
「ふん、本当に下らない理由だ。しかしまあいい、いいことを聞いたし、いいことを思い付いた。お前を殺した後に、その軍師を俺が殺してやる。それとも、お前が口づけをする前に、お前の目の前で、その軍師を食ってやろうか!ファッファッ!俺のせいで、快楽に歪む顔を、お前に見せつけてやるよ、ギルバート!その後でジェーンを殺してやる!ファッファッ!」
もう私は、痛みなど感じなくなった。もう死を恐れることはなかった。それほどまでに、私の中を怒りが支配している。ネビリスに対して、明瞭な殺意しか、この胸には無い!その為なら何でもする。私は、罪を犯せる!
光の大剣を静かに構えて、ネビリスに標準を合わせた。
「そのおもちゃの剣如きでは、俺は倒せない。お前は馬鹿か?」
私の顔は今、人間離れしているだろう。怒りで血管が浮き上がり、口から、頭から、目から、血を流しながら、歯を食いしばっている。彼に一太刀浴びせたい。私は一気にネビリスに突っ込んだ。
「うおおおお!」
ネビリスは横に軽く飛んで、私の攻撃を避けた。それを呼んでいた私は、素早く大剣を消して、彼の心臓を目掛けて、ナイトアームの拳を思いっきり撃ち込んだ。
「があああっ!」
ネビリスが吹き飛ばされて、屋根の先端の方で倒れた。胸を抑えて震えながら立ち上がった彼は、屋根の下に向かって、血を一吐きしてから、私を睨んだ。
「心臓が止まると思ったが、力が足りなかったようだな……ギルバート。」
「私の、大切な物を、何度も何度も、奪えると思うなよ。」
ネビリスが、頭上に巨大な炎の弾を作り上げた。まるで、太陽のようだった。幸いにも、ネビリスは今、屋根の先端にいる。ここで、決めるしかない。ここで決めなければ……!
『何をしているキルディア!下がりなさい!私の言葉を聞いて!』
その声は、私のものだ!それは、ネビリスに聞かせるものでは無い!私だけのものだ!
「うあああああああっ!」
飛んでくる、巨大な炎に向かって突撃した。光の大剣を何度も斬り付けて、なぎ払おうとしたが、力が足りず、私は炎に包まれた。それでも光の大剣を盾にして、私は炎の中を突撃して行く。明らかに、自分の体が燃えている。それでも足を止めなかった。
「おおおっ!奮い立てえええええ!」
「な、何!?」
炎の中から抜けると、ネビリスの豆鉄砲喰らった顔と出会した。ナイトアームが灼熱にやられ、ビリビリと電流を発しているが、私はそのままネビリスの首を掴んだ。
焼けた肌の痛みが、尋常じゃ無いほどに脈打つ身体が、私の命の終わりが近いことを、意味している。ゾンビのようにガーガーと呼吸をする私は、ネビリスと激しく揉み合った。
「くそ、クソクソクソ!死ねええ!」
「……ぐぅっ!」
ネビリスは私の胸に、ゼロ距離で炎の魔弾を撃ち込んで、私を屋根から放り投げた。もう、この距離だと、屋根の上に戻れないだろうが、それでいい。
自分の体が落下している感覚で全身がゾワりとした。すると、私の体に付着していたくっつく君が、ワイヤー先のネビリスの背中を引っ張り始めた。もみ合いは、この為だった。
「な、何だ!?くそ!」
気付いたネビリスは屋根の端で踏ん張り、私は宙ぶらりんになった。ここで、その踏ん張り力を見せるとは、意外だった。ネビリスは炎の両手で、そのワイヤーをブチ切ると、ニヤリと笑った。
「結構楽しめたよ、ギルバート、哀れな死際だな。」
だが、その時間で私は準備することができた。ネビリスはワイヤーを手放して私を落としたが、その瞬間、私はベルトに挟んでいた、あるものを手に取って、ネビリスに向けて、ボタンを押した。するとその先端からシュルっと素早く鞭が伸びて、ネビリスの体を拘束した。
それはいつしか、ジェーンが開発したキルディア捕獲機だった。これは昨日の夜、彼が眠った後に、寝室で拝借したものだった。研究所の前で、これを私に使ったジェーンのように、私もネビリスに言った。
「もうこれで、あなたは私から逃げられない。」
「な、何!?くそおおおお!」
ネビリスは両腕ごと身体を拘束されていて、芋虫のようにクネクネしながら屋根から落ちた。一応、捕獲機をグイッと引っ張ると、私はネビリスと同じ高さまで上がることが出来た。しかし屋根までは、程遠かった。
私はこのまま、中庭に落下して、死ぬだろう。これしかなかった。弱い私は、ネビリスと相殺するしかなかった。
過去のことが、走馬灯のように過ぎる。父と過ごした時のことが、目に浮かんだ。幼き頃、剣術学校で挫けそうになった時、私の頭を撫でて、励ましてくれた。
『キルディア、お前は強い。お前に守られる者は、幸せだろう。人々を幸せにするまで、努力することを、おしまいにしてはいけないよ。』
父よ、今すぐそちらに参ります。私は、人生を全うしました。私の働きはいかがだったでしょうか?あなたの誇りになれるなら、幸いです。
それから、騎士団長の日々、ギルドの日々、ソーライ研究所の日々……ジェーンとの日々。
まるでロボットのような彼が、火山測定装置が使われていて喜んだ表情は、とても可愛かった。レジスタンスのテントで、初めて抱き合った、あの時の安心感と高揚感は味わったことがないものだった。オフホワイトで面倒臭くなって、デートだってして、機械的な部分も、打算的な部分も、顔を赤く染めた、あの表情も、全てが愛おしかった。
ありがとうジェーン。私は大変幸せでした。この想いは、ここで絶えようとも、あなたと共に歩めたこと、素晴らしい瞬間の重ね重ねが、今の私を充足させています。
ここで死ぬ運命だったか。この後のことをずっと考えていたのは、杞憂だったね。でももうこれで、あなたは過去に、何にも縛られずに帰れるだろう。
私と居てくれてありがとう。涙が、止まりません。さようならなど、言いたくありません。強いて言うなら、申し訳ない。帰ることが出来ずに、約束を果たせずに、ごめんね、ジェーン。
何度も、何度も救われたのは私だった。今も、ジェーンの笑顔が見えるから、死ぬのが怖くないよ。私がこの人を倒せたのは、ここまで来れたのは、あなたのおかげです。
愛している、アレクセイ。聞こえたかな?風の音で、かき消されたかな。あと、そんなに叫ばないでくれ。あなたの悲痛の叫び、それだって全て、私が優しく包んでやりたい。大丈夫だよ、何も怖くない。
昨日のお風呂、楽しかったね……本当は、もし、あなたが独身だったら……恋人のようなことだって、楽しみたかった……あなたの、色っぽいパジャマ姿が、目に焼き付いていて……あなたの……Tバック……。
Tバック……?
私はまだ……ジェーンの、シースルーのTバックを見ていない……。
彼の、裸だって、見ていない……。
シースルー……シースルーをスルーした時、何がある……?
時に人間は、くだらない理由で、生きたくなるものだった。
「う、うおおおおおお!……まだだっ!奮い立てえええええ!」
私は捕獲機をグイッと自分に引き寄せて、ネビリスの肩を掴んだ。彼も抵抗をして、私の服を掴んできて、殆ど揉み合いのような形になってしまった。
そうこうしているうちに、中庭の英雄像が近づいて来た。今、ネビリスは抵抗しながらも、私の下にいる。私の代わりに、彼に一矢報いるのは、過去の英雄だ。
今だ!と、私はネビリスの頬を一発殴り、彼の手を振り払って、捕獲機を手放して、彼を足場に真上に飛んだ。
「うああああああっ!」
「くそおおおおおギルばああああと!……グフアッ!」
英雄の像の掲げる剣が、ネビリスの心臓を貫いた。しかし、私もその剣先に向かって、落ちていっている。私は光の大剣を真下に向けて、出現させた。
光の大剣が英雄像の剣にぶつかると、その衝撃で英雄の剣が折れて、飛んで行った。
そのまま光の大剣は、仰向けで真っ赤に染まるネビリスの身体に刺さり、私は瞬時に手首をひっくり返して、大剣の柄を握り直してから、ナイトアームを最大出力にして、刺さったままの大剣を柱に、着地を試みた。大剣は、私が折れた英雄の剣に刺さることと、着地することを助けてくれた。
光の大剣を消すと、大歓声の中、私は英雄像から地面に向かって転がり落ちた。わあわあと、兵達が喜んでいる。近くのLOZの兵が私に、駆け寄って来た。しかしすぐに私は、意識を失った。暗い、何もない世界に、来た。
ネビリスは一気に間合いを詰めて、しゃがみ込んで激しく呼吸をしている私の頭を、両手の拳で打ち付けた。
「ぐああ……っ!」
あまりの衝撃に、頭をかち割られるかと思った。ギリギリ、意識は保っているが、一気に視界が歪んだ。それからも何度も、彼の拳を体に喰らうが、意識が朦朧としていて、視界がゆらゆら揺れて、殴られても衝撃だけ、鈍く感じ取った。
ドクンドクンと、頭の中で心臓の音が響いている。飛ばされては立ち上がり、また殴られては立ち上がり、ここが屋根の上なのか、空の中なのか、揺らぎ続けている視界に、とうとう血が入り込んで、一気に真っ赤に染まった。
目を袖で拭うと、袖に付いていたチェイスの古い血の上に、私の鮮血が乗っかった。そしてまた殴られ、飛ばされ、倒れたが、私はまた立ち上がった。
ウォッフォンから何か、ジェーンの声が聞こえる。朦朧とする中、光の大剣をどうにか構えた。
「終わりだ、ギルバート。」
こちらに炎の弾が飛んできた。まだだ! ぐわりと意識が覚醒し、私はそれを光の大剣で弾き飛ばした。その炎の弾は、ネビリスの肩に着弾した。防具の無いネビリスは、焼け焦げた肩を押さえながら、痛みに呻いた。
「ぐっ……まだ、やるつもりか?しぶとい奴め。」
まだだ、まだやれる!私は光の大剣を構えながら、答えた。
「絶対に、帰ると……約束したのだ。私はまだ……ぐっ……やり、残したことがある。人は、時に……くだらん理由で、生きたくなるものだ……もう一度、ジェーンと、口づけを……交わしたい。」
ネビリスが、鼻で笑った。
「ふん、本当に下らない理由だ。しかしまあいい、いいことを聞いたし、いいことを思い付いた。お前を殺した後に、その軍師を俺が殺してやる。それとも、お前が口づけをする前に、お前の目の前で、その軍師を食ってやろうか!ファッファッ!俺のせいで、快楽に歪む顔を、お前に見せつけてやるよ、ギルバート!その後でジェーンを殺してやる!ファッファッ!」
もう私は、痛みなど感じなくなった。もう死を恐れることはなかった。それほどまでに、私の中を怒りが支配している。ネビリスに対して、明瞭な殺意しか、この胸には無い!その為なら何でもする。私は、罪を犯せる!
光の大剣を静かに構えて、ネビリスに標準を合わせた。
「そのおもちゃの剣如きでは、俺は倒せない。お前は馬鹿か?」
私の顔は今、人間離れしているだろう。怒りで血管が浮き上がり、口から、頭から、目から、血を流しながら、歯を食いしばっている。彼に一太刀浴びせたい。私は一気にネビリスに突っ込んだ。
「うおおおお!」
ネビリスは横に軽く飛んで、私の攻撃を避けた。それを呼んでいた私は、素早く大剣を消して、彼の心臓を目掛けて、ナイトアームの拳を思いっきり撃ち込んだ。
「があああっ!」
ネビリスが吹き飛ばされて、屋根の先端の方で倒れた。胸を抑えて震えながら立ち上がった彼は、屋根の下に向かって、血を一吐きしてから、私を睨んだ。
「心臓が止まると思ったが、力が足りなかったようだな……ギルバート。」
「私の、大切な物を、何度も何度も、奪えると思うなよ。」
ネビリスが、頭上に巨大な炎の弾を作り上げた。まるで、太陽のようだった。幸いにも、ネビリスは今、屋根の先端にいる。ここで、決めるしかない。ここで決めなければ……!
『何をしているキルディア!下がりなさい!私の言葉を聞いて!』
その声は、私のものだ!それは、ネビリスに聞かせるものでは無い!私だけのものだ!
「うあああああああっ!」
飛んでくる、巨大な炎に向かって突撃した。光の大剣を何度も斬り付けて、なぎ払おうとしたが、力が足りず、私は炎に包まれた。それでも光の大剣を盾にして、私は炎の中を突撃して行く。明らかに、自分の体が燃えている。それでも足を止めなかった。
「おおおっ!奮い立てえええええ!」
「な、何!?」
炎の中から抜けると、ネビリスの豆鉄砲喰らった顔と出会した。ナイトアームが灼熱にやられ、ビリビリと電流を発しているが、私はそのままネビリスの首を掴んだ。
焼けた肌の痛みが、尋常じゃ無いほどに脈打つ身体が、私の命の終わりが近いことを、意味している。ゾンビのようにガーガーと呼吸をする私は、ネビリスと激しく揉み合った。
「くそ、クソクソクソ!死ねええ!」
「……ぐぅっ!」
ネビリスは私の胸に、ゼロ距離で炎の魔弾を撃ち込んで、私を屋根から放り投げた。もう、この距離だと、屋根の上に戻れないだろうが、それでいい。
自分の体が落下している感覚で全身がゾワりとした。すると、私の体に付着していたくっつく君が、ワイヤー先のネビリスの背中を引っ張り始めた。もみ合いは、この為だった。
「な、何だ!?くそ!」
気付いたネビリスは屋根の端で踏ん張り、私は宙ぶらりんになった。ここで、その踏ん張り力を見せるとは、意外だった。ネビリスは炎の両手で、そのワイヤーをブチ切ると、ニヤリと笑った。
「結構楽しめたよ、ギルバート、哀れな死際だな。」
だが、その時間で私は準備することができた。ネビリスはワイヤーを手放して私を落としたが、その瞬間、私はベルトに挟んでいた、あるものを手に取って、ネビリスに向けて、ボタンを押した。するとその先端からシュルっと素早く鞭が伸びて、ネビリスの体を拘束した。
それはいつしか、ジェーンが開発したキルディア捕獲機だった。これは昨日の夜、彼が眠った後に、寝室で拝借したものだった。研究所の前で、これを私に使ったジェーンのように、私もネビリスに言った。
「もうこれで、あなたは私から逃げられない。」
「な、何!?くそおおおお!」
ネビリスは両腕ごと身体を拘束されていて、芋虫のようにクネクネしながら屋根から落ちた。一応、捕獲機をグイッと引っ張ると、私はネビリスと同じ高さまで上がることが出来た。しかし屋根までは、程遠かった。
私はこのまま、中庭に落下して、死ぬだろう。これしかなかった。弱い私は、ネビリスと相殺するしかなかった。
過去のことが、走馬灯のように過ぎる。父と過ごした時のことが、目に浮かんだ。幼き頃、剣術学校で挫けそうになった時、私の頭を撫でて、励ましてくれた。
『キルディア、お前は強い。お前に守られる者は、幸せだろう。人々を幸せにするまで、努力することを、おしまいにしてはいけないよ。』
父よ、今すぐそちらに参ります。私は、人生を全うしました。私の働きはいかがだったでしょうか?あなたの誇りになれるなら、幸いです。
それから、騎士団長の日々、ギルドの日々、ソーライ研究所の日々……ジェーンとの日々。
まるでロボットのような彼が、火山測定装置が使われていて喜んだ表情は、とても可愛かった。レジスタンスのテントで、初めて抱き合った、あの時の安心感と高揚感は味わったことがないものだった。オフホワイトで面倒臭くなって、デートだってして、機械的な部分も、打算的な部分も、顔を赤く染めた、あの表情も、全てが愛おしかった。
ありがとうジェーン。私は大変幸せでした。この想いは、ここで絶えようとも、あなたと共に歩めたこと、素晴らしい瞬間の重ね重ねが、今の私を充足させています。
ここで死ぬ運命だったか。この後のことをずっと考えていたのは、杞憂だったね。でももうこれで、あなたは過去に、何にも縛られずに帰れるだろう。
私と居てくれてありがとう。涙が、止まりません。さようならなど、言いたくありません。強いて言うなら、申し訳ない。帰ることが出来ずに、約束を果たせずに、ごめんね、ジェーン。
何度も、何度も救われたのは私だった。今も、ジェーンの笑顔が見えるから、死ぬのが怖くないよ。私がこの人を倒せたのは、ここまで来れたのは、あなたのおかげです。
愛している、アレクセイ。聞こえたかな?風の音で、かき消されたかな。あと、そんなに叫ばないでくれ。あなたの悲痛の叫び、それだって全て、私が優しく包んでやりたい。大丈夫だよ、何も怖くない。
昨日のお風呂、楽しかったね……本当は、もし、あなたが独身だったら……恋人のようなことだって、楽しみたかった……あなたの、色っぽいパジャマ姿が、目に焼き付いていて……あなたの……Tバック……。
Tバック……?
私はまだ……ジェーンの、シースルーのTバックを見ていない……。
彼の、裸だって、見ていない……。
シースルー……シースルーをスルーした時、何がある……?
時に人間は、くだらない理由で、生きたくなるものだった。
「う、うおおおおおお!……まだだっ!奮い立てえええええ!」
私は捕獲機をグイッと自分に引き寄せて、ネビリスの肩を掴んだ。彼も抵抗をして、私の服を掴んできて、殆ど揉み合いのような形になってしまった。
そうこうしているうちに、中庭の英雄像が近づいて来た。今、ネビリスは抵抗しながらも、私の下にいる。私の代わりに、彼に一矢報いるのは、過去の英雄だ。
今だ!と、私はネビリスの頬を一発殴り、彼の手を振り払って、捕獲機を手放して、彼を足場に真上に飛んだ。
「うああああああっ!」
「くそおおおおおギルばああああと!……グフアッ!」
英雄の像の掲げる剣が、ネビリスの心臓を貫いた。しかし、私もその剣先に向かって、落ちていっている。私は光の大剣を真下に向けて、出現させた。
光の大剣が英雄像の剣にぶつかると、その衝撃で英雄の剣が折れて、飛んで行った。
そのまま光の大剣は、仰向けで真っ赤に染まるネビリスの身体に刺さり、私は瞬時に手首をひっくり返して、大剣の柄を握り直してから、ナイトアームを最大出力にして、刺さったままの大剣を柱に、着地を試みた。大剣は、私が折れた英雄の剣に刺さることと、着地することを助けてくれた。
光の大剣を消すと、大歓声の中、私は英雄像から地面に向かって転がり落ちた。わあわあと、兵達が喜んでいる。近くのLOZの兵が私に、駆け寄って来た。しかしすぐに私は、意識を失った。暗い、何もない世界に、来た。
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