LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる

meishino

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誰も止められない愛情狂編

218 バーガー屋さんのランチ

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 その後、個室内で「ご褒美です」と、謎のキスを受けた私は、その後調査部のオフィスに戻ると、やはりクラースさんとロケインに、今の現象の理由を聞かれたが、適当に「ジェーンが怖い映画を見た」とでも言っておいた。二人は納得していた。

 お昼になると、私はリンとクラースさんと三人で近くのファストフード店に行った。ランチのことをジェーンに話したら、彼は最初戸惑っていたが、ラブ博士が一緒に食べようと彼を誘ってくれたので、彼は落ち着いた。もう、一々大変である。

 そして二階の窓際の席を確保した我々は、カウンター席に、左からクラースさん、私、リンの順で座った。皆は一緒のビックバーガーセットだった。席に着くなり、二人は私の肩をベシベシと叩いて来た。帝国民がよくやる、相手を揶揄からかう儀式だ。

 なすがままに叩かれながら、私はバーガーをかじった。二人はまだ叩いていて、しかも笑ってる。もういいさ、確かに私がリンやクラースさんの立場だったら、同じことしてたからね!そして、クラースさんが私の肩を抱いて、ゆらゆら揺らしながら言った。

「お前やるじゃないか!何だ、今朝の情事は!見せつけてくれるじゃないか!もうリンには話したぞ。」

「そうそう!」リンがポテトを数本かじりながら言った。「リビングで互いをむさぼり合ってたらしいね!本当に!?」

「あ、ああ。貪り合ってた、と言うよりかは……ジェーンにやられてたんだよ。」

 クラースさんがニヤニヤしながらバーガーに噛み付いた。

「何だ?誘惑に負けないんじゃ無かったのか?キリーよ。」

「大変なんですよ……逮捕してくださいとか言って。」

「逮捕!あっはっは!」リンの笑い声が煩かった。「しかも昨日は回転寿司の後に遊園地も行ったんでしょ?あれっきり返事くれなかったよね!ラブ博士と待ってたのに!」

「大変なんですよ……部屋の隅々改装されて、ムーディな音楽だって流れて。」

 私はバーガーを一気に半分口に入れた。牛肉百パーセントか。いいなぁパティは、すぐに百パーセントになれて。ジェーンなんか、この世界に帰ってくるのは、ほんの一パーセントだってないのに。零点レイレイレイ……一パーセントぐらいでしょうね。いいなあパティは。

「キリー、」クラースさんが私に聞いた。「んで、お前達はずっと一緒にいるのか?そう決めたのか?これからどうするんだ?」

「うーん。」私の笑顔が消えた。それを見た二人は、やいやいしてた雰囲気を消して、静かにポテトを食べ始めた。「でもおかしいと言うか、よく分からないんだ。彼はさ、帰ったら数日で死ぬけど、帰りたい。しかも移動回数制限があって、安全に移動出来るのはあと一回。彼が帰るのを、応援するけどさ、そのあとは大丈夫なのかなとは、思う。」

「回数制限があるのか……。」

 クラースさんがはあ、とため息をついた。するとリンが、私のポテトを食べながら言った。

「だから、向こうでやることがあるから帰るけど、基本的にはキリーと居たいと考えているんでしょ?回数制限があるのは驚きだけど、じゃあ、キリーも過去にいけば?」

 そんな、何を……。私はリンが手に持っていた私のポテトを奪って、食べた。クラースさんが考えた仕草をしながら言った。

「俺の知ってる限りだと、歴史上には、キリーの名前は出てこない。だから、未来のお前はジェーンの時代には行っていない気がするんだが。」

「そうそう。」私は頷いた。「ジェーンの名前だって無い。あの時代のこと、ネットで調べたことある。私の名前どころか、ジェーンの名前だってないよ。と言うことは、彼が過去に帰って、揉み消したんじゃないかな。」

「それは思ってた、私も思ってた。」

 リンが、真剣な顔でそう言った。そして更にこう言った。

「じゃあクラースさんの言った通り、キリーは過去の世界に行ってないんだ。でもジェーンは帰ってる。だって、キリーの腕は、この時代の技術が詰まってる。過去の世界の人が見たらさ、びっくりして、記録でも何でもつけるはずだよ。と言うことは、その腕を捨ててジェーンと一緒に隠居してたのかも。」

「何だか、」私は頭を抱えた。「未来のことなのに、過去形で話して、変な感じがするよ。大体、私が一緒に付いて行ったら、パラドックスがどうとかでダメなんでしょ?未来の人が過去に行くのはいけないって、タージュ博士が言っていたよ。私の中には、切って切り離せない、この時代の技術がある。それはプレーンだよ!私の死後、プレーンがあの世界の人たちに見つかったら、歴史が狂っちゃう。」

「キリー、いつの間に頭良くなったの?すご。」

 リンに言われてしまった。確かにちょっと、頭良くなった気がする。彼のおかげだろうね。そして二人はうーん、と唸った。そうなのだ、私は過去の世界にはいけない。でもジェーンは帰らないといけない。理由は深くは知らないけど、大事な用件みたいだし……もう、こうするしかないのだ。

「二人ともありがとう。だから色々、彼とも、話し合ってるよ。永久の別れの時は近づいているけれど、でも、それまでは、彼と仲良くしたいからさ。」

「キリー……そっか、なら、私達だって、応援するよ。ジェーンだってさ、今思えば、最初から色んなことを知ってたんだから、ずっと辛かったんだと思うよ。」

「……。」

 確かに、そうだ。彼は最初から、移動回数制限だって、時代を細かく指定出来ないことだって、全てを知っていたのだから。

「ずっと辛かったんだよ。キリーと仲良くなるのもさ、どんどん好きになるのも。ずっと一人で、色んなこと抱えてた。だから……あんなに狂っちゃったに違いないね。クラースさんの愛情狂って言葉が本当にしっくりくるよ。」

「……。」

 確かにそうだ、あんな変貌を遂げたのは、一人で色々なことを抱えて、どう言うわけか私に懐いてしまったからなのだ。私のせいなのだ。彼を覚醒させたのは、私のせい……うえええん。

「まあ、キリーよ。」クラースさんがゴミを纏めながら言った。「期間限定でもいいから、正式に恋人になると宣言しなくったっていいから、今だけは、全力で愛してやったらどうだ。お互い好きなんだろう?」

「うん、そうだね。二人と話して、何だか色々と吹っ切れた気がするよ。ジェーンと仲良くする。」

「じゃあ、」リンがニヤニヤした顔になっている。「そう言うこともするの?昨日はしてないんでしょ?え?したの!?」

「しないし、昨日だってしてないよ!」リンの肩を叩いた。「大体何あのサイト!アブノーマル過ぎるでしょうが!あんなの参考にならないよ……と、言いたいところだけど、ジェーンが気に入っちゃった。」

 リンは腹を抱えて笑い、クラースさんはURLを教えろと言って来たので、それを教えると、閲覧した彼は絶句してしまった。ほら見てみなさいよ、やっぱり玄人向けじゃないか。クラースさんが戸惑いながら私に聞いた。

「ほ、本当にジェーンはこれを気に入ったのか?お前をこんな目に遭わせたいのか?」

 私は静かに答えた。

「クラースさんよく見て、こんな目に遭っているのは男性側だよ。彼は被害者になりたいの!この暴力事件のねっ!」

「あはははは!」あははじゃないよ、リン。「まあまあ、いいスパイスになったでしょ?色んな恋愛サイト見て来たけど、やっぱりさあ、インテリ系はこう言うアブノーマルにハマる傾向があるらしいよ。それを求めて浮気する人だっているんだから!」

「何その情報!」「ほ、本当か?」

 私とクラースさんが同時に答えた。何その不安げな顔、クラースさん。すると彼は、私にすがるような仕草で頼んできた。

「さっきのURL、俺に転送してくれ。俺も、頑張ってみる。」

「あ、ああ……。」

 ケイト先生ごめんね、クラースさんの様子がおかしくなり始めたら、それはきっとリンのせいです。私のせいじゃないからね。URL教えるけど、私のせいじゃないからね!

「でもさ、キリー。」

「ん?」

「どうしてジェーンに優しくするの?キリーは本当に優しいよね。彼はイケメンだけど、癖が強いし……どうしてかなって。」

 私は少し笑った。

「どうしてだろう、ジェーンが私に優しくしてくれるからだと思う。しつこく付き纏わられる時だってあるけど、嫌ではない。寧ろ、どうしてこんな私を選んで一緒にいるんだろうとは思ってた。お互い、今まで、根底の部分は孤独だった。色々なことに巻き込まれて、彼と協力していくうちにさ、彼の良さって言うか、強い部分も弱い部分も見えた。それは私にだってある、それを彼は知ってくれている。私は彼と、一緒に成長した気がする。だから、私が優しい訳ではないよ。」

 パチパチと二人が拍手をしてくれたので、私はどうもどうも、と右手を胸に当てて、騎士式のお辞儀をした。リンが微笑みながら言った。

「うん、そっか。何だか、素敵な二人だと思う!だから、二人はずっと、ずっと一緒だよ。」

「ありがとう、リン。」

 そして次にクラースさんが言ってくれた。

「ああ、俺も二人は相性がいいと思うぞ。だから、二人はずっと、ずっと一緒だよ。」

 最後の発言、まさかクラースさんがリンの真似をするとは思ってなかった!珍しい彼のジョークに、私とリンは爆笑してしまった。
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