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作戦が大事!アクロスブルー編
163 藍渡掣肘戦
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それから約二十分後、我々はとうとうAエリアに到着し、前方にチェイスの部隊と思われる団体がいるのを目視した。リンも気付き、前方を指差しながら叫んだ。
「あ!いたいた!ほら、チェイスさんの新光騎士団の皆さんがいる!あの方々、全て我々に加勢してくれるんだよね?」
と、リンは興奮しすぎたのか、私の足を踏んだまま身振り手振りで話し続けたので、私は彼女の足を踏み返した。
「そうですね、しかし走行中の車内で、あまり身を乗り出しては危険です。」
「痛い!何で踏むのジェーン!いやいや、立つでしょ!こんな、ほらほらチェイスさんが手を振っているよ!ほら!」
我々の輸送車はBエリアの中腹あたりで停車した。Aエリアにはチェイス率いる新光騎士団のスナイパーが我々に向かって銃を構えていた。やれやれ、と私は輸送車のスピーカーをオンにして、彼らにマイクで話し掛けた。
『それでは、我々が降車出来ません。あなた方に敵意はありませんから、この状況をどうにかしてください。』
私の声を聞いたチェイスらしき人影は、一度我々に向かって手を振り、それから新光騎士団の輸送車に乗り込んだ。直ぐにその車から彼の、男性にしては高い、独特の声が聞こえた。
『ごめ~ん、そうだよね、皆の者、彼らに銃を向けないでください。例の作戦を実行します。』
敵方の射撃兵達は、一斉に銃を地面に向けた。どうやら、事は順調に進んでいるようだ。私はウォッフォンで皆に命令した。
「彼らは理解してくれたようです。さあ、車を降り、チェイスを迎えに行きましょう。」
LOZの兵達が輸送車から降り、私もリンに続いて降車した。トンネル内は、これがこの世界の秋の風なのか、Aエリアの後方から草の匂いの混じった、涼しい風が我々の方に吹いていた。風で後ろの髪が肩に引っかかっていたので、軽く後ろに流した。新しいLOZの制服は、古の貴族のようなデザインで、私のコートも風で靡いた。
私はチェイスの元へ、一人で歩き始めた。騎士姿のチェイスもまた、私に向かって単独で歩いている。何も緊張することなどない、計画通りの行動だ。我々は、直接声が届くまで近付くと、立ち止まった。私は、真剣な眼差しのチェイスに声を掛けた。
「……お久しぶりです。」
「うん、久しぶり。変わらない様子で、ちょっと安心したよ。」
「あなたは少し痩せましたね。」
「そ、そうかな」と、チェイスは少し笑った。「確かに、ここ最近は気苦労が耐えなくてね、食欲も無くなっていたかも知れない。でもいいんだ、今日こうして、僕は君と話せている。」
「そうですね」私は顎を触った。貴様の方からこちらに来たいと申し出てくれればいいのだが、ここは私が誘いをかけてあげるべきか?子どものような意地を張っていても仕方あるまいと、私は覚悟を決めた。「こちらに来ますか?」
チェイスはこくっと軽く頷いた。私は我が部隊の方へ、手を広げて彼を案内しようとしたが、チェイスはその次の瞬間に、彼のウォッフォンにこう叫んだ。
「ヴァルガ隊、LOZ先鋒隊に向かい、奇襲を開始してください。作戦は成功です。これよりジェーン率いる先鋒隊の殲滅を開始します。ごめんね、ジェーン。」
チェイスがふわっと笑った。これ程までに、気味の悪い笑顔は初めて見た。私は急いで後ずさり、ウォッフォンに叫んだ。
「チェイスの罠でした!オーウェン、リン!私の援護をお願いします!」
私は後方のオーウェン達が待機している方を目掛けて、めい一杯四肢を動かした。直ぐに近くの地面に魔弾の当たる音が響き、アスファルトが剥がれて、舞った。
リンはオロオロとした様子だが、オーウェンはすぐに輸送車に乗り込んだ。彼は実戦経験がある、頼もしいと少しばかり余裕が出たので、後ろを振り返ると、チェイスは防弾シールドを持った兵に匿われていた。
オーウェンは輸送車を運転し、私とすれ違うとアクセル全開のまま、チェイスの方へ向かって行った。それはやり過ぎではないか?私は動揺してまた振り向いた時に、オーウェンが暴走する輸送車から飛び降りた。
そのおかげでチェイス隊の射撃兵が混乱し、防弾シールドのチェイス達も急いで脇に逃げて、その車はチェイス後方に待機している部隊に突撃して、停車している敵の輸送車にぶつかり大破した。
自分を狙う者が居なくなった隙に、私は皆と合流を果たした。オーウェンもライフルを撃ちながら、後ずさり、我々の部隊に加わり、汗を撒き散らしながら叫んだ。
「何としてもジェーン様を守れ!射撃兵はチェイスを重点的に攻撃しろ!その他の者は、私の近くで固まれ!」
彼の指示通りに兵は直ぐに動いた。私も彼の背後に隠れながら、取り出した銃剣で応戦を開始した。クラースとの日頃の鍛錬で、私の銃撃は我々に襲いかかろうとする敵の槍兵に命中した。こんな事態になったのは、私のせいだ。私が、チェイスを信じてしまっていた。
「オーウェン様、ジェーン様!」一人の兵士が、私達の元へ急いでやってきた。「背後からヴァルガ隊が接近中!我々の部隊は交戦を開始しました!」
私の喉がゴクリとなった。この一本道で、私達は見事に逃げ場を失ってしまった。打開策を考えるが、すぐには思い付かない。キルディア達は先ほどの私の通信で、我々の事態を把握しているが……彼女達が居るのは、ユークに近いエリアであり、ここに着くまでには、私達は力無く地面に転がっているだろう。
「思ったよりもヴァルガ隊が早いな……」オーウェンが呟き、そして叫んだ。「守りの陣だ!皆、守りの陣を作れ!車も使え!固まって応戦する!」
「はっ!」
彼の号令に、我々の部隊は固まって陣を作り始めた。その間も交戦は続くが、オーウェンが銃や魔術を使いながら、時間を稼いでくれている。護送車を周りに壁のように配置し、私はその車内に入って、窓から銃撃を行う。生きて帰ることが出来ないのなら、時間稼ぎぐらい、してやりたい。最期まで、キルディアの力になりたい。
だが、私の隣でしゃがみ、飛んでくる銃弾から身を守っている彼女には少々荷が重すぎる状況の様で、彼女は今、震えて泣いている。私は彼女の肩を抱いた。
「……大丈夫です、これで、時間を稼げます。」
「で、でも、でも、ヴァルガ隊も来てる。私達、ここで終わりなんだ。チェイスは、裏切る奴なんだ。きっと私の両親は絶対に今の元帥を、そして皇帝をも恨むだろうね。私はここで、このトンネルの中で、死ぬのだから!うおおおお、うおおおおおお!」
驚いた。泣いていたと思われる彼女が突然立ち上がり、折角存在している窓の防弾ガラスを吹き飛ばす破竹の勢いで、桃色の銃を爆射し始めた。
「らあああっしゃああああああ!オラァァ!そっちがそのつもりなら、こっちだって容赦しないんじゃあああ!私はラブ博士にキスをするんじゃああああ!」
私は戦況を把握する為に、窓の隙間から銃剣のスコープで外の様子を伺った。適当に乱射していると思われた彼女の銃撃は、意外にも的確に命中し、敵の隊列を乱している。チェイスはというと、防弾シールドを所持している数名を前線派遣したまま、相手輸送車の隙間でなんと、この状況でチョコを食べていた……私はそれを射撃しようとしたが、気付かれた敵兵にシールドで防がれてしまった。
リンのことを数名が狙っていた。リンもそれに応戦するが、数が多い。私はその援護をした。「やるじゃんジェーン」とお褒めの言葉を頂いた。
だが、待機していたチェイス隊の他の槍兵が、我々に向かって突撃を開始した。数で押す作戦に出たらしい。おかげで、撃っても撃っても敵が群がる状況になってしまった。あっという間に前線を押され、私は策もどうにもならない状況に、諦めを感じてしまった。
「やばい、やばい、ジェーン、終わりかもしれない。今までありがとう。」
「こちらこそありがとうございました。中々、あなたも愉快でしたよ。」
そうは言いつつも、私は引き続きリンを狙う射撃兵を重点的に狙撃した。私だって、私だって、もう一度キルディアに口付けをしたい。時に人は、くだらない理由で生きたくなるものだ。
他の兵達も、この車の中で応戦をしているが、遂に手が届くまでに敵が近づいてしまった。割れた窓の隙間から入ってきた手は、リンの腕を掴み、彼女は動揺して叫んだ。私はそれを銃剣の先で斬りつけて撃退したが、次の瞬間、リンの顔に赤いレーザーの点が泳いでいた。
「リン!しゃがみなさい!」
「え?」
ぴゅんと、氷の銃弾がリンに迫るのを瞬間的に見た。だがその時、彼女の銃から素早く飛び出したパーツが、その銃弾を撃って相殺したのだ。
そしてその三機の自動援護システムは窓の外を飛び始め、外に迫っている兵隊を大量に撃ち始めた。スローヴェン、流石なり!士気の高まった私は、ウォッフォンに叫んだ。
「ヴァルガ隊が既にここまで辿り着いている以上、キルディア達本隊がここに到着するまで、耐え忍ぶしか方法はありません!リンの自動援護システムを利用します!私達の車の周りに集合してください!」
他の護送車で応戦していた兵達も次々に集合した。窓の外を見れば、面白い程に新光騎士団の槍兵が撃たれて倒れていく。私はつい笑ってしまった。だが、振り返ってみるとリンは憔悴しきった様子で、必死に立っていた。
「も、もう疲れてきた……魔力が滝のように流れていくよ……。」
「何を言いますか!もう少し、もう少しで構いません、頑張ってください!」
キルディア!
私は見たくなかったが、キルディア達の現在地を確認する為に、ウォッフォンのLOZポータルを開いた。すぐに私は息を飲んだ。
今……彼女達は何故か、既にEエリアに辿り着いて居た。其処はヴァルガ達が元々潜伏していたエリアだった。Jエリアで待機していたはずの彼女達からして、どんなに急いでも、もっと遠くのHエリアに居ると私は予測していた。額の汗を制服の袖で拭い、私は微笑んだ。
「……成る程、頼りになります。」
「あ!いたいた!ほら、チェイスさんの新光騎士団の皆さんがいる!あの方々、全て我々に加勢してくれるんだよね?」
と、リンは興奮しすぎたのか、私の足を踏んだまま身振り手振りで話し続けたので、私は彼女の足を踏み返した。
「そうですね、しかし走行中の車内で、あまり身を乗り出しては危険です。」
「痛い!何で踏むのジェーン!いやいや、立つでしょ!こんな、ほらほらチェイスさんが手を振っているよ!ほら!」
我々の輸送車はBエリアの中腹あたりで停車した。Aエリアにはチェイス率いる新光騎士団のスナイパーが我々に向かって銃を構えていた。やれやれ、と私は輸送車のスピーカーをオンにして、彼らにマイクで話し掛けた。
『それでは、我々が降車出来ません。あなた方に敵意はありませんから、この状況をどうにかしてください。』
私の声を聞いたチェイスらしき人影は、一度我々に向かって手を振り、それから新光騎士団の輸送車に乗り込んだ。直ぐにその車から彼の、男性にしては高い、独特の声が聞こえた。
『ごめ~ん、そうだよね、皆の者、彼らに銃を向けないでください。例の作戦を実行します。』
敵方の射撃兵達は、一斉に銃を地面に向けた。どうやら、事は順調に進んでいるようだ。私はウォッフォンで皆に命令した。
「彼らは理解してくれたようです。さあ、車を降り、チェイスを迎えに行きましょう。」
LOZの兵達が輸送車から降り、私もリンに続いて降車した。トンネル内は、これがこの世界の秋の風なのか、Aエリアの後方から草の匂いの混じった、涼しい風が我々の方に吹いていた。風で後ろの髪が肩に引っかかっていたので、軽く後ろに流した。新しいLOZの制服は、古の貴族のようなデザインで、私のコートも風で靡いた。
私はチェイスの元へ、一人で歩き始めた。騎士姿のチェイスもまた、私に向かって単独で歩いている。何も緊張することなどない、計画通りの行動だ。我々は、直接声が届くまで近付くと、立ち止まった。私は、真剣な眼差しのチェイスに声を掛けた。
「……お久しぶりです。」
「うん、久しぶり。変わらない様子で、ちょっと安心したよ。」
「あなたは少し痩せましたね。」
「そ、そうかな」と、チェイスは少し笑った。「確かに、ここ最近は気苦労が耐えなくてね、食欲も無くなっていたかも知れない。でもいいんだ、今日こうして、僕は君と話せている。」
「そうですね」私は顎を触った。貴様の方からこちらに来たいと申し出てくれればいいのだが、ここは私が誘いをかけてあげるべきか?子どものような意地を張っていても仕方あるまいと、私は覚悟を決めた。「こちらに来ますか?」
チェイスはこくっと軽く頷いた。私は我が部隊の方へ、手を広げて彼を案内しようとしたが、チェイスはその次の瞬間に、彼のウォッフォンにこう叫んだ。
「ヴァルガ隊、LOZ先鋒隊に向かい、奇襲を開始してください。作戦は成功です。これよりジェーン率いる先鋒隊の殲滅を開始します。ごめんね、ジェーン。」
チェイスがふわっと笑った。これ程までに、気味の悪い笑顔は初めて見た。私は急いで後ずさり、ウォッフォンに叫んだ。
「チェイスの罠でした!オーウェン、リン!私の援護をお願いします!」
私は後方のオーウェン達が待機している方を目掛けて、めい一杯四肢を動かした。直ぐに近くの地面に魔弾の当たる音が響き、アスファルトが剥がれて、舞った。
リンはオロオロとした様子だが、オーウェンはすぐに輸送車に乗り込んだ。彼は実戦経験がある、頼もしいと少しばかり余裕が出たので、後ろを振り返ると、チェイスは防弾シールドを持った兵に匿われていた。
オーウェンは輸送車を運転し、私とすれ違うとアクセル全開のまま、チェイスの方へ向かって行った。それはやり過ぎではないか?私は動揺してまた振り向いた時に、オーウェンが暴走する輸送車から飛び降りた。
そのおかげでチェイス隊の射撃兵が混乱し、防弾シールドのチェイス達も急いで脇に逃げて、その車はチェイス後方に待機している部隊に突撃して、停車している敵の輸送車にぶつかり大破した。
自分を狙う者が居なくなった隙に、私は皆と合流を果たした。オーウェンもライフルを撃ちながら、後ずさり、我々の部隊に加わり、汗を撒き散らしながら叫んだ。
「何としてもジェーン様を守れ!射撃兵はチェイスを重点的に攻撃しろ!その他の者は、私の近くで固まれ!」
彼の指示通りに兵は直ぐに動いた。私も彼の背後に隠れながら、取り出した銃剣で応戦を開始した。クラースとの日頃の鍛錬で、私の銃撃は我々に襲いかかろうとする敵の槍兵に命中した。こんな事態になったのは、私のせいだ。私が、チェイスを信じてしまっていた。
「オーウェン様、ジェーン様!」一人の兵士が、私達の元へ急いでやってきた。「背後からヴァルガ隊が接近中!我々の部隊は交戦を開始しました!」
私の喉がゴクリとなった。この一本道で、私達は見事に逃げ場を失ってしまった。打開策を考えるが、すぐには思い付かない。キルディア達は先ほどの私の通信で、我々の事態を把握しているが……彼女達が居るのは、ユークに近いエリアであり、ここに着くまでには、私達は力無く地面に転がっているだろう。
「思ったよりもヴァルガ隊が早いな……」オーウェンが呟き、そして叫んだ。「守りの陣だ!皆、守りの陣を作れ!車も使え!固まって応戦する!」
「はっ!」
彼の号令に、我々の部隊は固まって陣を作り始めた。その間も交戦は続くが、オーウェンが銃や魔術を使いながら、時間を稼いでくれている。護送車を周りに壁のように配置し、私はその車内に入って、窓から銃撃を行う。生きて帰ることが出来ないのなら、時間稼ぎぐらい、してやりたい。最期まで、キルディアの力になりたい。
だが、私の隣でしゃがみ、飛んでくる銃弾から身を守っている彼女には少々荷が重すぎる状況の様で、彼女は今、震えて泣いている。私は彼女の肩を抱いた。
「……大丈夫です、これで、時間を稼げます。」
「で、でも、でも、ヴァルガ隊も来てる。私達、ここで終わりなんだ。チェイスは、裏切る奴なんだ。きっと私の両親は絶対に今の元帥を、そして皇帝をも恨むだろうね。私はここで、このトンネルの中で、死ぬのだから!うおおおお、うおおおおおお!」
驚いた。泣いていたと思われる彼女が突然立ち上がり、折角存在している窓の防弾ガラスを吹き飛ばす破竹の勢いで、桃色の銃を爆射し始めた。
「らあああっしゃああああああ!オラァァ!そっちがそのつもりなら、こっちだって容赦しないんじゃあああ!私はラブ博士にキスをするんじゃああああ!」
私は戦況を把握する為に、窓の隙間から銃剣のスコープで外の様子を伺った。適当に乱射していると思われた彼女の銃撃は、意外にも的確に命中し、敵の隊列を乱している。チェイスはというと、防弾シールドを所持している数名を前線派遣したまま、相手輸送車の隙間でなんと、この状況でチョコを食べていた……私はそれを射撃しようとしたが、気付かれた敵兵にシールドで防がれてしまった。
リンのことを数名が狙っていた。リンもそれに応戦するが、数が多い。私はその援護をした。「やるじゃんジェーン」とお褒めの言葉を頂いた。
だが、待機していたチェイス隊の他の槍兵が、我々に向かって突撃を開始した。数で押す作戦に出たらしい。おかげで、撃っても撃っても敵が群がる状況になってしまった。あっという間に前線を押され、私は策もどうにもならない状況に、諦めを感じてしまった。
「やばい、やばい、ジェーン、終わりかもしれない。今までありがとう。」
「こちらこそありがとうございました。中々、あなたも愉快でしたよ。」
そうは言いつつも、私は引き続きリンを狙う射撃兵を重点的に狙撃した。私だって、私だって、もう一度キルディアに口付けをしたい。時に人は、くだらない理由で生きたくなるものだ。
他の兵達も、この車の中で応戦をしているが、遂に手が届くまでに敵が近づいてしまった。割れた窓の隙間から入ってきた手は、リンの腕を掴み、彼女は動揺して叫んだ。私はそれを銃剣の先で斬りつけて撃退したが、次の瞬間、リンの顔に赤いレーザーの点が泳いでいた。
「リン!しゃがみなさい!」
「え?」
ぴゅんと、氷の銃弾がリンに迫るのを瞬間的に見た。だがその時、彼女の銃から素早く飛び出したパーツが、その銃弾を撃って相殺したのだ。
そしてその三機の自動援護システムは窓の外を飛び始め、外に迫っている兵隊を大量に撃ち始めた。スローヴェン、流石なり!士気の高まった私は、ウォッフォンに叫んだ。
「ヴァルガ隊が既にここまで辿り着いている以上、キルディア達本隊がここに到着するまで、耐え忍ぶしか方法はありません!リンの自動援護システムを利用します!私達の車の周りに集合してください!」
他の護送車で応戦していた兵達も次々に集合した。窓の外を見れば、面白い程に新光騎士団の槍兵が撃たれて倒れていく。私はつい笑ってしまった。だが、振り返ってみるとリンは憔悴しきった様子で、必死に立っていた。
「も、もう疲れてきた……魔力が滝のように流れていくよ……。」
「何を言いますか!もう少し、もう少しで構いません、頑張ってください!」
キルディア!
私は見たくなかったが、キルディア達の現在地を確認する為に、ウォッフォンのLOZポータルを開いた。すぐに私は息を飲んだ。
今……彼女達は何故か、既にEエリアに辿り着いて居た。其処はヴァルガ達が元々潜伏していたエリアだった。Jエリアで待機していたはずの彼女達からして、どんなに急いでも、もっと遠くのHエリアに居ると私は予測していた。額の汗を制服の袖で拭い、私は微笑んだ。
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