145 / 253
試行錯誤するA君編
145 我々の組織名
しおりを挟む
私はこの高所で、人生を終えるのかと覚悟をしてしまった。多目的お手洗いで、あまりの腹の痛さに項垂れて脱力している時に、キルディアが新たな薬を持って来てくれた。今朝飲んだものとの組み合わせで副作用が生じる恐れが一瞬、頭を過ぎったが、すぐに私はそれを飲みこんでしまった。それほどに、辛いものだった。
近くで待機をするように伝えたこともあり、キルディアは私の生還を多目的お手洗いの前で、待っていてくれた。もうすっかり腹の具合を持ち直した私は、彼女の前で乱れた髪を手で整えた。
するとキルディアが、「ずれているから」と、私のネクタイを正してくれた。彼女にしてもらうこれを、とても気に入った私は、明日以降もその行為をするように仕向けることにした。これからはネクタイを毎日着用する。
そして私は彼女と共に、会議室へ入った。初めて見る顔の人物も居たが、彼はホームセンターの社長だった。彼とは握手をして挨拶をした。それから私は自分の席に着席すると、市長が互いに自己紹介をしようと提案した。私は同意した。
「それでは私からいくわね、私はユークアイランドの市長である、ミラー夫人です。」
自称する際に、「夫人」を付ける人物を私は初めて見た。皆が拍手をしたので、私も拍手をした。夫人が着席すると、次は隣のカーネルが立ち上がり、彼女の後に続いた。笑顔がわざとらしい、商人によく見る人相の持ち主だ。
「わしはカーネルだ。ホームセンタービャッコの社長ね~。」
拍手が響く中、隣で座っているキルディアが、私の耳元で小声で言った。
「彼は癒し系だよね。」
私も小声で返答した。
「そうですか?笑顔がわざとらしい。」
「もううるさい。ジェーンは本当に、癒しのいの字も無いよね。全く、カタリーナさんが不憫だよ。」
「ふふっ……」
キルディアがカタリーナを気遣う発言をすると、どういう訳か面白くて笑ってしまう。ああ、愉快だ。愉快だが、これは永遠ではない。キルディアは最低でも一日に一回は私を笑わせてくれる。私をここまで笑わせる人間は他に居ない。ああ、これが永遠であれば、どんなに良かったことか。
「僕はジェームスです。スコピオの兄であり、ヴィノクールの市長です。よろしくお願いします。」
皆が拍手をしたので、私も拍手をした。ヴィノクールか、私もそこの生まれであれば話は早かったのに、何が灯の雪原だ。私はつい、こんなことを聞いても仕方ないが、キルディアに小声で聞いた。
「ねえ、キルディア。」
「え?何……急に。」
「雪を見たいとは思いませんか?生の雪です。冷たくて、綺麗ですよ。」
キルディアの目が座っている。そして彼女は答えた。
「……あのね、そっちの世界には行けないの分かってるでしょ?雪は見たいよ。もうこの世界では、どこに言っても見られないし、教科書の写真とか、昔の映像でしか見たことが無いからね。でも、仕方ないよ。この世の全てが、仕方ない。」
「なあ、」割り込んできたのは、キルディアの隣に座るスコピオだった。彼もまた小声で言った。「なんの話をしてるんだ?俺にも教えてくれよ。」
「スコピオ、大事な会議中です。お黙りなさい。」
私の言葉に、スコピオもキルディアも黙った。果たして彼女の言う通りに、この世の全ては仕方ないのだろうか。答えが出ないまま、自己紹介が進んでいく。
「俺はゲイルだ、今はエストリーの隊長です。」
「私はアーネルです、サウザンドリーフの村長の代理です。」
「私はレジスタンスの代表で、オーウェンです。」
「俺は、最近シロープ島の漁業組合長になった、マクレガーです。」
「あっ」と、キルディアが声を漏らした。彼女を見ると、訳を話してくれた。
「彼はヴィノクールの戦闘の時に、顔を見たことがあったから、つい。そうか、シロープの方だったんだ。よろしくお願いします。」
彼女が頭を下げると、マクレガーという褐色の男も、ニコッと笑ってから頭を下げた。何処と無く彼の野生的な雰囲気が、クラースに似ている。そして隣の編み込みヘアの男が、立ち上がって大声で言った。
「よっしゃ!俺はタールだ!隣に座るスコピオのダチでもあり、タマラ採掘隊のリーダーでもあり、最近はタマラの義民兵の代表でもある!すごいだろ!よろしく!はい、どうぞスコピオの番だ。」
「はいはい。タールの友達で、ジェームスの弟のスコピオです……。」
と、何故か彼は肩を落として、元気がない様子だ。「一応、グレン研究所の所長です。どうも。はい次どうぞ。」
スコピオは座った。次はキルディアの番だ。彼女は立ち上がり、照れているのか、少し頬を押さえながら話し始めた。
「えっと、ソーライ研究所の所長のキルディアです。」
「それから~?」
と、にやついているのは、ユークの市長だった。キルディアは戸惑いながらも続きを話した。
「ま、前はギルバート騎士団長をしていました。宜しく……。」
拍手が響く中、次は私の番なので、素早く起立し、自己紹介をした。
「ソーライ研究所の所長秘書を務めております。それから研究開発部の部長でもあります。ジェーン・シードロヴァです。宜しくお願い申し上げます。」
私は着席した。テーブルの向かいに座っているのはライネット博士だ。どうも今日の博士はモジモジと落ち着かない様子だ。次は彼の番だが、一向動こうとしない。
もしや彼もまた腹が痛いのか?ならばと、私がジャケットのポケットから先程の薬を取り出そうとしたその時に、博士の隣に座っているユーク市長が彼に話し掛けた。
「ほらほら、言わないと伝わりませんよ。」
「う、うむ。そうだな。」博士はちらっと皆を見た。「わしはライネット。天文台の所長です。宜しく。」
明らかに私の知っている彼ではないが、腹痛ではないように思われ、そして誰も彼の様子を追求しようとはしないので、私も流すことにした。拍手をしたところで、ユーク市長が立ち上がった。
「じゃあこうして連合レジスタンスの代表が皆集まった訳だけれども。そこで、まず一つ目の議題なんだけど、この組織をなんていう名前にしようかしら?」
「はいはい!」と威勢のいい挙手をしたのはタールだ。「やっぱりこう、かっこいいのがいいよな!暁の草原みたいな!」
一瞬、会議室が静まり返った。私自身、センスのかけらもない人間だと自負しているが、流石に今のは有り得ないものだと判断した。するとスコピオが頭を抱えながらも、発言した。
「それのどこがかっこいいんだよ、おっさんライダーのサークル名みたいじゃないか。なんかもっとこう、分かりやすいのがいいんじゃないか?呼びやすくてさ、意味も伝わりやすいやつ。それぞれの頭文字を取るとかさ!」
アーネルが背後にあるホワイトボードにそれぞれの地名をアルファベットで書き始めた。SEAROPE、VINOCOOL、SORAI、STLY、TAMARA、GUREN……そしてアーネルが手を止めた。
「ちょっと、Sが多いし、母音が無いから、厳しいかもしれません。」
するとジェームスが挙手をした。
「あの、この連合のリーダーは実質キルディアさんとジェーンさんですから、何か二人の間で意見があれば、僕らヴィノクールとしてはそれに賛成致しますよ。」
「そうね!」ユーク市長が我々を見つめた。「何かキリちゃん達はこう、格言みたいなものとかあるの?作戦名とか、何か。」
私は彼女を見た。あることがあるが、あれはどうなのか。するとキルディアも私を見た。彼女は目を泳がせながら、答えた。
「ま、まあ一応二人の間で約束、と言いますか……作戦名のようなものはあります。ね、ジェーン。」
「ええ、」と、私は席を立った。説明するだけなら別に何も難しいことではない。私はそう考え、ホワイトボードまで向かい、ペンで「LOADING ”OPERATE ZEAL”」という文字を記入した。そしてそれを指差しながら振り返り、説明をした。
「これです。意味は率直に言えば、突っ走る彼女を私が策で支えるということです。これは別に「それでいいじゃないか!」
タールが笑顔で、私の背後の文字を指差しながら言った。すると皆もまた、それでいいと納得し始めたのだ。私とキルディアは戸惑い、彼女は皆に言った。
「でも、これは私たち二人の、なんて言うか約束みたいなものですし、それに巻き込むのもなんだか……。」
それに答えたのはカーネルだった。
「しかし、お二人が決めたものを私らだって大事にしたい。この言葉は素敵だ。二人のやり方を、うまく表しているではないか。だが、ちょっと長いな。」
長いか、確かにそうだ。ならばと、私はホワイトボードの文字を消した。頭文字の「L O Z」だけが残った。これなら読める。
「これでいいのでは?簡素化しました。」
「ああ!」叫んだのはタールだ。耳が痛い。「それがいいじゃねえか!ローズと読めるしな!なんかフローラルでかっこいい、俺は気に入ったぞ!どうなんだミラーの奥さんよぉ!」
彼女も笑顔で手を叩きながら答えた。
「私もこれでいいと思うわ!これにしましょうね!じゃあ次は各地の駐在兵について……このまま話し合いましょう。ジェーンちゃん、そのまま書記お願いね。」
「かしこまりました。」
「ああ~ん」と、ユーク市長が、何故か恍惚にだらけた顔をしながら、椅子ごと私の方へ振り返った。不気味なことに、胸に手を当てて私を見つめている。「執事のように、そうやっていつもキリちゃんの言うこと聞いてるのね~!ねえ今の仕事やめて、私の秘書になってくれないかしらぁ……?」
「結構です、私はもう既に、彼女の秘書ですから。」
残念がるユーク市長を見て、皆が笑っている。すると席を立ったキルディアが、こちらに向かってきて、私に小声で話しかけた。
「ねえ、本当に組織名、アレでいいのかな。私ちょっと不安だよ。」
キルディアの言いたいことも理解出来るが、私は別に気にしていない。
「皆はあれでいいと仰いますし、私もそうですね……あれが目に入るような環境でしたら、よりやる気が出るかもしれません。あなたは不安ですか?」
「ええっ、まあ、ジェーンが良いって言うなら良いけれど……私もあの言葉は好きだから。」
「それは良かった。」
正式に、我々レジスタンス連合の組織名は、LOZになった。いとも簡単に決まってしまったが、このテンポのいい会議を、私は好きになりかけている。まだまだ考えるべきことはたくさんある。我々はこの機会に、次々と溜まった問題を話し合った。
近くで待機をするように伝えたこともあり、キルディアは私の生還を多目的お手洗いの前で、待っていてくれた。もうすっかり腹の具合を持ち直した私は、彼女の前で乱れた髪を手で整えた。
するとキルディアが、「ずれているから」と、私のネクタイを正してくれた。彼女にしてもらうこれを、とても気に入った私は、明日以降もその行為をするように仕向けることにした。これからはネクタイを毎日着用する。
そして私は彼女と共に、会議室へ入った。初めて見る顔の人物も居たが、彼はホームセンターの社長だった。彼とは握手をして挨拶をした。それから私は自分の席に着席すると、市長が互いに自己紹介をしようと提案した。私は同意した。
「それでは私からいくわね、私はユークアイランドの市長である、ミラー夫人です。」
自称する際に、「夫人」を付ける人物を私は初めて見た。皆が拍手をしたので、私も拍手をした。夫人が着席すると、次は隣のカーネルが立ち上がり、彼女の後に続いた。笑顔がわざとらしい、商人によく見る人相の持ち主だ。
「わしはカーネルだ。ホームセンタービャッコの社長ね~。」
拍手が響く中、隣で座っているキルディアが、私の耳元で小声で言った。
「彼は癒し系だよね。」
私も小声で返答した。
「そうですか?笑顔がわざとらしい。」
「もううるさい。ジェーンは本当に、癒しのいの字も無いよね。全く、カタリーナさんが不憫だよ。」
「ふふっ……」
キルディアがカタリーナを気遣う発言をすると、どういう訳か面白くて笑ってしまう。ああ、愉快だ。愉快だが、これは永遠ではない。キルディアは最低でも一日に一回は私を笑わせてくれる。私をここまで笑わせる人間は他に居ない。ああ、これが永遠であれば、どんなに良かったことか。
「僕はジェームスです。スコピオの兄であり、ヴィノクールの市長です。よろしくお願いします。」
皆が拍手をしたので、私も拍手をした。ヴィノクールか、私もそこの生まれであれば話は早かったのに、何が灯の雪原だ。私はつい、こんなことを聞いても仕方ないが、キルディアに小声で聞いた。
「ねえ、キルディア。」
「え?何……急に。」
「雪を見たいとは思いませんか?生の雪です。冷たくて、綺麗ですよ。」
キルディアの目が座っている。そして彼女は答えた。
「……あのね、そっちの世界には行けないの分かってるでしょ?雪は見たいよ。もうこの世界では、どこに言っても見られないし、教科書の写真とか、昔の映像でしか見たことが無いからね。でも、仕方ないよ。この世の全てが、仕方ない。」
「なあ、」割り込んできたのは、キルディアの隣に座るスコピオだった。彼もまた小声で言った。「なんの話をしてるんだ?俺にも教えてくれよ。」
「スコピオ、大事な会議中です。お黙りなさい。」
私の言葉に、スコピオもキルディアも黙った。果たして彼女の言う通りに、この世の全ては仕方ないのだろうか。答えが出ないまま、自己紹介が進んでいく。
「俺はゲイルだ、今はエストリーの隊長です。」
「私はアーネルです、サウザンドリーフの村長の代理です。」
「私はレジスタンスの代表で、オーウェンです。」
「俺は、最近シロープ島の漁業組合長になった、マクレガーです。」
「あっ」と、キルディアが声を漏らした。彼女を見ると、訳を話してくれた。
「彼はヴィノクールの戦闘の時に、顔を見たことがあったから、つい。そうか、シロープの方だったんだ。よろしくお願いします。」
彼女が頭を下げると、マクレガーという褐色の男も、ニコッと笑ってから頭を下げた。何処と無く彼の野生的な雰囲気が、クラースに似ている。そして隣の編み込みヘアの男が、立ち上がって大声で言った。
「よっしゃ!俺はタールだ!隣に座るスコピオのダチでもあり、タマラ採掘隊のリーダーでもあり、最近はタマラの義民兵の代表でもある!すごいだろ!よろしく!はい、どうぞスコピオの番だ。」
「はいはい。タールの友達で、ジェームスの弟のスコピオです……。」
と、何故か彼は肩を落として、元気がない様子だ。「一応、グレン研究所の所長です。どうも。はい次どうぞ。」
スコピオは座った。次はキルディアの番だ。彼女は立ち上がり、照れているのか、少し頬を押さえながら話し始めた。
「えっと、ソーライ研究所の所長のキルディアです。」
「それから~?」
と、にやついているのは、ユークの市長だった。キルディアは戸惑いながらも続きを話した。
「ま、前はギルバート騎士団長をしていました。宜しく……。」
拍手が響く中、次は私の番なので、素早く起立し、自己紹介をした。
「ソーライ研究所の所長秘書を務めております。それから研究開発部の部長でもあります。ジェーン・シードロヴァです。宜しくお願い申し上げます。」
私は着席した。テーブルの向かいに座っているのはライネット博士だ。どうも今日の博士はモジモジと落ち着かない様子だ。次は彼の番だが、一向動こうとしない。
もしや彼もまた腹が痛いのか?ならばと、私がジャケットのポケットから先程の薬を取り出そうとしたその時に、博士の隣に座っているユーク市長が彼に話し掛けた。
「ほらほら、言わないと伝わりませんよ。」
「う、うむ。そうだな。」博士はちらっと皆を見た。「わしはライネット。天文台の所長です。宜しく。」
明らかに私の知っている彼ではないが、腹痛ではないように思われ、そして誰も彼の様子を追求しようとはしないので、私も流すことにした。拍手をしたところで、ユーク市長が立ち上がった。
「じゃあこうして連合レジスタンスの代表が皆集まった訳だけれども。そこで、まず一つ目の議題なんだけど、この組織をなんていう名前にしようかしら?」
「はいはい!」と威勢のいい挙手をしたのはタールだ。「やっぱりこう、かっこいいのがいいよな!暁の草原みたいな!」
一瞬、会議室が静まり返った。私自身、センスのかけらもない人間だと自負しているが、流石に今のは有り得ないものだと判断した。するとスコピオが頭を抱えながらも、発言した。
「それのどこがかっこいいんだよ、おっさんライダーのサークル名みたいじゃないか。なんかもっとこう、分かりやすいのがいいんじゃないか?呼びやすくてさ、意味も伝わりやすいやつ。それぞれの頭文字を取るとかさ!」
アーネルが背後にあるホワイトボードにそれぞれの地名をアルファベットで書き始めた。SEAROPE、VINOCOOL、SORAI、STLY、TAMARA、GUREN……そしてアーネルが手を止めた。
「ちょっと、Sが多いし、母音が無いから、厳しいかもしれません。」
するとジェームスが挙手をした。
「あの、この連合のリーダーは実質キルディアさんとジェーンさんですから、何か二人の間で意見があれば、僕らヴィノクールとしてはそれに賛成致しますよ。」
「そうね!」ユーク市長が我々を見つめた。「何かキリちゃん達はこう、格言みたいなものとかあるの?作戦名とか、何か。」
私は彼女を見た。あることがあるが、あれはどうなのか。するとキルディアも私を見た。彼女は目を泳がせながら、答えた。
「ま、まあ一応二人の間で約束、と言いますか……作戦名のようなものはあります。ね、ジェーン。」
「ええ、」と、私は席を立った。説明するだけなら別に何も難しいことではない。私はそう考え、ホワイトボードまで向かい、ペンで「LOADING ”OPERATE ZEAL”」という文字を記入した。そしてそれを指差しながら振り返り、説明をした。
「これです。意味は率直に言えば、突っ走る彼女を私が策で支えるということです。これは別に「それでいいじゃないか!」
タールが笑顔で、私の背後の文字を指差しながら言った。すると皆もまた、それでいいと納得し始めたのだ。私とキルディアは戸惑い、彼女は皆に言った。
「でも、これは私たち二人の、なんて言うか約束みたいなものですし、それに巻き込むのもなんだか……。」
それに答えたのはカーネルだった。
「しかし、お二人が決めたものを私らだって大事にしたい。この言葉は素敵だ。二人のやり方を、うまく表しているではないか。だが、ちょっと長いな。」
長いか、確かにそうだ。ならばと、私はホワイトボードの文字を消した。頭文字の「L O Z」だけが残った。これなら読める。
「これでいいのでは?簡素化しました。」
「ああ!」叫んだのはタールだ。耳が痛い。「それがいいじゃねえか!ローズと読めるしな!なんかフローラルでかっこいい、俺は気に入ったぞ!どうなんだミラーの奥さんよぉ!」
彼女も笑顔で手を叩きながら答えた。
「私もこれでいいと思うわ!これにしましょうね!じゃあ次は各地の駐在兵について……このまま話し合いましょう。ジェーンちゃん、そのまま書記お願いね。」
「かしこまりました。」
「ああ~ん」と、ユーク市長が、何故か恍惚にだらけた顔をしながら、椅子ごと私の方へ振り返った。不気味なことに、胸に手を当てて私を見つめている。「執事のように、そうやっていつもキリちゃんの言うこと聞いてるのね~!ねえ今の仕事やめて、私の秘書になってくれないかしらぁ……?」
「結構です、私はもう既に、彼女の秘書ですから。」
残念がるユーク市長を見て、皆が笑っている。すると席を立ったキルディアが、こちらに向かってきて、私に小声で話しかけた。
「ねえ、本当に組織名、アレでいいのかな。私ちょっと不安だよ。」
キルディアの言いたいことも理解出来るが、私は別に気にしていない。
「皆はあれでいいと仰いますし、私もそうですね……あれが目に入るような環境でしたら、よりやる気が出るかもしれません。あなたは不安ですか?」
「ええっ、まあ、ジェーンが良いって言うなら良いけれど……私もあの言葉は好きだから。」
「それは良かった。」
正式に、我々レジスタンス連合の組織名は、LOZになった。いとも簡単に決まってしまったが、このテンポのいい会議を、私は好きになりかけている。まだまだ考えるべきことはたくさんある。我々はこの機会に、次々と溜まった問題を話し合った。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
来世にご期待下さい!〜前世の許嫁が今世ではエリート社長になっていて私に対して冷たい……と思っていたのに、実は溺愛されていました!?〜
百崎千鶴
恋愛
「結婚してください……」
「……はい?」
「……あっ!?」
主人公の小日向恋幸(こひなたこゆき)は、23歳でプロデビューを果たした恋愛小説家である。
そんな彼女はある日、行きつけの喫茶店で偶然出会った32歳の男性・裕一郎(ゆういちろう)を一眼見た瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
――……その裕一郎こそが、前世で結婚を誓った許嫁の生まれ変わりだったのだ。
初対面逆プロポーズから始まる2人の関係。
前世の記憶を持つ恋幸とは対照的に、裕一郎は前世について何も覚えておらず更には彼女に塩対応で、熱い想いは恋幸の一方通行……かと思いきや。
なんと裕一郎は、冷たい態度とは裏腹に恋幸を溺愛していた。その理由は、
「……貴女に夢の中で出会って、一目惚れしました。と、言ったら……気持ち悪いと、思いますか?」
そして、裕一郎がなかなか恋幸に手を出そうとしなかった驚きの『とある要因』とは――……?
これは、ハイスペックなスパダリの裕一郎と共に、少しずれた思考の恋幸が前世の『願望』を叶えるため奮闘するお話である。
(🌸だいたい1〜3日おきに1話更新中です)
(🌸『※』マーク=年齢制限表現があります)
※2人の関係性・信頼の深め方重視のため、R-15〜18表現が入るまで話数と時間がかかります。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる