上 下
11 / 253
初めましてシードロヴァ博士編

11 詰まるこんにゃく

しおりを挟む
「確かに、色々とお互いのことを話しておいた方が、もっと仲良くなれるかもね。」

「そうです。親友ですから。」

 彼が親友と言われるたびに、「うっ」と胸を射られたような心地がしてしまう。それ程に照れてしまうので、隠すために顔を逸らした。これで隠せているかは不明だけど。落ち着いた頃に、また彼の方へと視線を戻すと、彼はお茶を飲んだ後に、フォークを一旦お皿に置いて、私に質問してきた。

「確か、ソーライ研究所に来て、二年でしたね?」

「そうですね。調査部から所長になった。前の所長は優秀だったけど、とんでもなく人情に欠けていた。皆から嫌われてしまってね、研究開発部の罠にハマって、あの研究所を去って行ったよ。」

「ふふ、タージュ博士はともかく、アリスやラブ博士なら、やりかねませんか。彼らは私の予想以上に優秀です。違います、そうではない、あなたの話です。なぜギルドを?士官学校卒業した者は、大体が騎士団へと就くそうですが。」

「うん、大体の人は騎士団へと進むけど、ギルドに行く人だって居る。現に私も……なんていうか人と戦うよりも、もっとこう、モンスターを相手に戦いたかった。その方が力を発揮できる気がした。人が相手だとどうしても、これは教官にも言われたことだけど、私は優しいから手を抜くところがあると。だから凶暴なモンスター相手だと、いいかなって。それでギルドに。」

 ギルドは対モンスターを専門とした駆除機関だ。この世界には人口自然のバグで発生したモンスターがポツポツと存在しているが、ギルドのおかげで今は割と平和だ。

「なるほど、確かにあなたは優しいですからね。それで士官学校へはどうして?」

「父の遺言です。母は私が生まれてすぐに亡くなり、父も私が小学院の頃に亡くなった。彼が亡くなる前に、後の貯金は全て、剣術道場や士官学校へ行くために使って欲しいと言い残した。だからそれを順守したまでです。」

「そうでしたか……お辛い過去です。」

「いいえ。じゃあ私からも質問していい?ちょっと気になってたんだけど、日払いの仕事って何してたの?土木?」

「ギルドです。」

「は!え?うっ!」

 煮物のこんにゃくを丸ごと飲み込んでしまった私は、立ち上がって苦しんだ。するとジェーンが急いで立ち上がって、ハイムリック的な感じで、私の背中をベシベシと叩いてくれた。おかげでこんにゃくが喉から取れて、折角なので私はそれをまた咀嚼そしゃくした。だって、驚きだ。彼は私と同じ、あのギルドにいて日雇いをしていたの言うのだから。この世界に、ギルドは帝都のあそこしかない。

「すみません、驚かせるつもりはありませんでした。私は魔法がほんの少しですが使用出来ますから、この世界について間もない頃、私はあなたと同じギルドで働きながら大学院に通いました。」

「だ、大丈夫だけど……同じギルドで?そうだったんだ、見かけなったけどなあ、どこかにいたんだろうね。すれ違いもしなかったけど。」

 席に座ってティッシュで口を拭いた。彼も席に座り、またフォークを持って食事を再開した。里芋を口に入れた後に、私に言った。

「実はその時から、あなたを知っていました。」

「え?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...