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初めましてシードロヴァ博士編
16 これが私です
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これはいけない。このままでは、キルディアが帝都に連行されてしまう。それは避けなければならない。考えるんだ、考えろ。冷静を装いつつ視線を動かすと、道路に、黄色いスポーツカーが停車しているのが見えた。これはいい、利用させて頂こうか。私はキルディアの様子をちらりちらりと確かめつつ、それとなく、その車に近づいた。次に振り向いた時に、キルディアは歯を食いしばって、プロボクサーの様な表情、それに拳の構えで、兵士が近付くのを待っていた。
これはまずい。躊躇してはいられない、ここで私が一肌脱がなくては、私が彼女の……親友であるとは言えないだろう。
「舐めた真似をしてくれるな、女。」
騎士二人は顔を合わせ、キルディアを専用のウォッフォンでスキャンした。顔認証か。それで人物の経歴を確認することが出来る。兵士がキルディアに集中している間に、解放されたマイロと言う名の男の子と、その母親が抱きしめ合った。私は誰も観ていないことを確認して、ベストのポケットから取り出した、小さなプレゼントを黄色い車の下に置き、革靴の汚れを拭いたフリでもしてから、キルディアの元へと戻った。
「ああ、顔認証が出来たぞ。この女、ギルドではゴールドランクを持っていたらしい。今は……まあいい、向こうに連れて行きさえすれば、済むことだ。おい、お前拘束しろ。でも気をつけろよ。」
「はっ」
「お兄さん一人で掛かってきても、多分、無理だと思いますよ。」
「姉ちゃん、挑発的なこと言ってくれたな、おい意地でも連れてくぞ。」
騎士二人がキルディアに近づいて行く。私は咄嗟に、彼女の後ろに回り込んで、声を発した。
「あ、よく分かりませんが、私も同意見です。ネビリスは皇帝に相応しくないかと。」
拳を構えるキルディアが、非常に顔を引きつらせて私を凝視している。更に、激昂した騎士を余所に、彼女は私に小声で話しかけてきた。
「何言ってんの!捕まりたいの?」
「あなたに付き合いました。親友なので。」
「何言ってんの!私だけだったら、戦うフリして逃げ切れるかなって思ってたのに!」
「逃げるんですか?戦わないのでしょうか?」
「何言ってんの!騎士と戦ったら罪が増えるでしょうが!」
「逃げても増えますよ。」
「何言ってんの!……確かに。」
「お前ら、皇帝侮辱の現行犯で、逮捕する。」
いつの間にか兵士達は、すぐそばまで来ていた。そのうちの一人が、キルディアに手を伸ばしたので、私が庇おうとしたが、それよりも早く、彼女の腕が動いて、兵士が伸ばしてきた手を素早く、腕を振り上げる動作で跳ね除けた。
「貴様……やはり抵抗するか!」
「ああ、来い!」
グッと急に腕を握られ、気がつけば、私の片手首に手錠が嵌められていた。
「ああ、キルディア!掛けられました!」
「ジェーン!?……私の連れに手を出すな!」
叫ぶキルディアが、私と手錠をかけた兵士の間に素早く蹴りを繰り出して、手錠の鎖を破壊した。その見事な蹴りを見て、兵士達が「ひっ」と、声を漏らした。
そろそろ時間だ。私は手首に鉄製の重い枷をつけたまま、キルディアの背後へと隠れた。その時だった。耳を劈くような、けたたましい爆発音と、凄まじい爆風が、あの黄色い車から発生した。
騎士達は、我々が逃げないように何度も我々に視線を向けて見張りながら、周囲の人間に聞いた。
「何事だ!?どうして爆発した?」
「そこに泊まってたスポーツカーが爆発して……幸い、巻き込まれた人は、いなかったみたいですけど。」
「全く、どいつもこいつも……これでは人手が足りんな!」
騎士達は顔を合わせると頷いて、我々から視線を放し、近くに立っていた親子に近づいて、子どもの手錠を取った。ああ、うまくいったようだ。
「今度から、発言には気をつけろよ。」
騎士は、黒煙を吹き上げて、パチパチと燃える車体に向かって行った。そこの親子は抱き合って泣き始めたが、すぐに唖然とするキルディアの方へと近付いて来て、母親がキルディアに頭を下げると、子どもの方も真似をして頭を下げた。
「お姉さん、ありがとうございます。息子を庇ってくれたんですよね。」
それを聞いたキルディアが、頬を少し赤く染めて、顔を親子からプイと背けた。彼女はそのような照れの仕草もするのか、新しい彼女の一面を見ることが出来た私は少しおかしくなり、口角を上げて、彼女の背中をポンと叩き、彼女の耳に口を近づけた。
「キルディア、何か返事をしてあげては如何ですか?お母様にも、お子様にも。」
「あ、ああ……別に、そうだな。これからは、お互い気をつけなくてはいけないようですね。兎に角、無事ならよかったです。」
母親の方が、笑顔になってキルディアに言った。
「ええ!あなたが助けてくれたからですよ。ありがとうございます、正義感の強いお姉さん。じゃあマイロ、行こうか。」
キルディアが戸惑いながら微笑んだ。親子がもう一度礼をして、タワーの裏の方へと歩いて行った。キルディアは私の肩をポンと叩いた。彼女と目が合ったので、私は微笑んだ。
「意外でした。あなたは随分と正義感が、お強いですね。」
「そっちこそ、やたら親友思いだね。まさかジェーンが便乗してくるとは思わなかったよ。ふふ、でもありがと。」
急に私から顔を逸らした彼女が、研究所の方へと向かって歩き始めたので、私も彼女の隣へ、小走りで移動し始めた。彼女の隣で背後の道路の方を、ちらと見ていると、燃えているスポーツカーを、先程の兵士達が困った様子で、消火活動を行なっていた。
私はそれだけ確認すると、彼女の横顔をちらりと見た。深みのあるダークブラウンの瞳や髪、ツンと小さく尖った鼻、水色のタンクトップから惜しげも無く曝け出されるエスニックな小麦色の肌が、常夏の太陽の光を反射している。彼女の輝く肌は、不思議と見飽きないものだった。
それに、今ここにいる彼女は、私がギルドで見つけた彼女と同一人物なのだと再確認出来た。ギルドのロビーで初めて見たあの時に感じた勇ましさが、先程、目の前で見ることが出来た、彼女の勇ましい雰囲気と同一だった。
彼女は普段は優しい雰囲気で、戦う時だけ人が変わるのだろう。となると調査部の人間は、彼女が鍛錬をするのを手伝って来たはず、きっと彼女の稀な勇ましい姿を、水でも飲むかの如く、さも当たり前に見て来たに違いない。調査部か、今は出張が続いているようで、まだその誰ともあった事はないが、私よりも魅力的な人物がいるだろうか。もしその人物が、私の知らない彼女を存分に知り尽くしていた時に、私は今まで通り、彼らに対して冷静に振る舞えるだろうか。
「しかし何だったんだろう。」
「え、え?何がです?」
「ふふ、ジェーン考え事?珍しい。いや、さっきの爆発だよ。怖いよね、あの高そうなスポーツカーだって、ただ停めてあっただけなのに爆発なんかして。車両不備でもあったのかな。」
「ああ、あれですか。私が爆弾を仕掛けました。」
「はっ!え!?何で!!何してんの!」
「しーっ」
キルディアが慌てて、両手で口を覆った。辺りを確認したが、幸い、今の会話は誰にも聞こえていなかったようだ。先程の騎士にも。
「何で!いつそんな事したの!」
「落ち着いてください。周囲の目や騎士団の兵士達の注意が、あの親子やキルディアに向いている時に、私はあの黄色いスポーツカーへとそれとなく近づき、仕掛けました。あなたの形相が、おっかなくなってきましたから、何かあった時の対策を取らなければならないと考えたのです。時限式の爆弾でしたが、場合によっては、ウォッフォンから遠隔でキャンセルも出来ました。ですから心配は無用です。」
「ちょっと待ってよ、どこが心配無用なの!それにどうして対策に爆発なの?ちょっと何言ってんの?」
キルディアが私の腕をブンブンと振りながら小声で怒鳴っている。なるほど、女性とは思えないほどに力が強い。
「でも効果的だったでしょう?仕掛けた車は高級車でしたから、保険がおりますよ。金持ちは損しません。それに兵士としても、侮辱の現行犯よりも、消火活動や爆弾魔探しの方がポイント高いでしょうから、そちらに専念するでしょうし。」
「ああそう、それらを起こしたのが同一犯だと分かったら、きっと彼ら驚き過ぎて腰抜かすだろうね……分かったからジェーン、もうやらないでね。」
また歩みを開始した彼女に、私もまた付いていく。すぐに、何かを思い出したのか、キルディアが私の方を振り向き、人差し指を立てて話し始めた。まだ彼女は頭の中が混乱しているようで、目があちこちを向いている。
「てかさ、爆発が起きる前に、私の後ろに隠れたよね?それもそうだし、何で爆弾持ってたの?違う違う、何で犯罪ばかり起こすの?」
「一度に色々な質問をしないで下さい。一、あなたの後ろに居れば、安全だと判断しました。二、魔法が使用出来るとはいえ、私の戦闘能力は皆無に等しい。私が頼れるのは自分の科学的スキルのみで、更にこの世界は、私の世界よりも治安が悪い。爆弾を所持することが、私の自己防衛手段なのです。それに在庫は、もうありませんのでご安心を。三、起こしたくて起こしている訳ではないことを理解頂けると助かります。結果として、あなたもそれで救われたでしょう?今回の場合、戦わずして勝つとは、こういうことです。」
「何その、箇条書きみたいな答え方……もういいや、ジェーンは私と違って、軍師タイプなんだね。」
呆れたような視線を私に一度ぶつけてから、彼女がまた歩き始めた時に、私の手首が少し傷んだ。見れば、まだ嵌められている枷の部分が擦れていて、手首に血がにじんでいた。これはいけない、私は彼女の隣に急いで移動して、彼女に手首を見せた。
「あと……あなたが手錠の鎖を蹴って破壊した際の反動で、手首が擦れて傷が出来てしまいました。とても痛いです。後ほど、手当てをお願い致します。」
「ああん!もう!ケイト先生のところに行こうね!」
私の腕を掴んでキルディアが小走りになった。その軽いジョギング状態のまま職場に向かおうと言うのか。私にはそんな体力は無いとは言えず、必死になって彼女について行った。
これはまずい。躊躇してはいられない、ここで私が一肌脱がなくては、私が彼女の……親友であるとは言えないだろう。
「舐めた真似をしてくれるな、女。」
騎士二人は顔を合わせ、キルディアを専用のウォッフォンでスキャンした。顔認証か。それで人物の経歴を確認することが出来る。兵士がキルディアに集中している間に、解放されたマイロと言う名の男の子と、その母親が抱きしめ合った。私は誰も観ていないことを確認して、ベストのポケットから取り出した、小さなプレゼントを黄色い車の下に置き、革靴の汚れを拭いたフリでもしてから、キルディアの元へと戻った。
「ああ、顔認証が出来たぞ。この女、ギルドではゴールドランクを持っていたらしい。今は……まあいい、向こうに連れて行きさえすれば、済むことだ。おい、お前拘束しろ。でも気をつけろよ。」
「はっ」
「お兄さん一人で掛かってきても、多分、無理だと思いますよ。」
「姉ちゃん、挑発的なこと言ってくれたな、おい意地でも連れてくぞ。」
騎士二人がキルディアに近づいて行く。私は咄嗟に、彼女の後ろに回り込んで、声を発した。
「あ、よく分かりませんが、私も同意見です。ネビリスは皇帝に相応しくないかと。」
拳を構えるキルディアが、非常に顔を引きつらせて私を凝視している。更に、激昂した騎士を余所に、彼女は私に小声で話しかけてきた。
「何言ってんの!捕まりたいの?」
「あなたに付き合いました。親友なので。」
「何言ってんの!私だけだったら、戦うフリして逃げ切れるかなって思ってたのに!」
「逃げるんですか?戦わないのでしょうか?」
「何言ってんの!騎士と戦ったら罪が増えるでしょうが!」
「逃げても増えますよ。」
「何言ってんの!……確かに。」
「お前ら、皇帝侮辱の現行犯で、逮捕する。」
いつの間にか兵士達は、すぐそばまで来ていた。そのうちの一人が、キルディアに手を伸ばしたので、私が庇おうとしたが、それよりも早く、彼女の腕が動いて、兵士が伸ばしてきた手を素早く、腕を振り上げる動作で跳ね除けた。
「貴様……やはり抵抗するか!」
「ああ、来い!」
グッと急に腕を握られ、気がつけば、私の片手首に手錠が嵌められていた。
「ああ、キルディア!掛けられました!」
「ジェーン!?……私の連れに手を出すな!」
叫ぶキルディアが、私と手錠をかけた兵士の間に素早く蹴りを繰り出して、手錠の鎖を破壊した。その見事な蹴りを見て、兵士達が「ひっ」と、声を漏らした。
そろそろ時間だ。私は手首に鉄製の重い枷をつけたまま、キルディアの背後へと隠れた。その時だった。耳を劈くような、けたたましい爆発音と、凄まじい爆風が、あの黄色い車から発生した。
騎士達は、我々が逃げないように何度も我々に視線を向けて見張りながら、周囲の人間に聞いた。
「何事だ!?どうして爆発した?」
「そこに泊まってたスポーツカーが爆発して……幸い、巻き込まれた人は、いなかったみたいですけど。」
「全く、どいつもこいつも……これでは人手が足りんな!」
騎士達は顔を合わせると頷いて、我々から視線を放し、近くに立っていた親子に近づいて、子どもの手錠を取った。ああ、うまくいったようだ。
「今度から、発言には気をつけろよ。」
騎士は、黒煙を吹き上げて、パチパチと燃える車体に向かって行った。そこの親子は抱き合って泣き始めたが、すぐに唖然とするキルディアの方へと近付いて来て、母親がキルディアに頭を下げると、子どもの方も真似をして頭を下げた。
「お姉さん、ありがとうございます。息子を庇ってくれたんですよね。」
それを聞いたキルディアが、頬を少し赤く染めて、顔を親子からプイと背けた。彼女はそのような照れの仕草もするのか、新しい彼女の一面を見ることが出来た私は少しおかしくなり、口角を上げて、彼女の背中をポンと叩き、彼女の耳に口を近づけた。
「キルディア、何か返事をしてあげては如何ですか?お母様にも、お子様にも。」
「あ、ああ……別に、そうだな。これからは、お互い気をつけなくてはいけないようですね。兎に角、無事ならよかったです。」
母親の方が、笑顔になってキルディアに言った。
「ええ!あなたが助けてくれたからですよ。ありがとうございます、正義感の強いお姉さん。じゃあマイロ、行こうか。」
キルディアが戸惑いながら微笑んだ。親子がもう一度礼をして、タワーの裏の方へと歩いて行った。キルディアは私の肩をポンと叩いた。彼女と目が合ったので、私は微笑んだ。
「意外でした。あなたは随分と正義感が、お強いですね。」
「そっちこそ、やたら親友思いだね。まさかジェーンが便乗してくるとは思わなかったよ。ふふ、でもありがと。」
急に私から顔を逸らした彼女が、研究所の方へと向かって歩き始めたので、私も彼女の隣へ、小走りで移動し始めた。彼女の隣で背後の道路の方を、ちらと見ていると、燃えているスポーツカーを、先程の兵士達が困った様子で、消火活動を行なっていた。
私はそれだけ確認すると、彼女の横顔をちらりと見た。深みのあるダークブラウンの瞳や髪、ツンと小さく尖った鼻、水色のタンクトップから惜しげも無く曝け出されるエスニックな小麦色の肌が、常夏の太陽の光を反射している。彼女の輝く肌は、不思議と見飽きないものだった。
それに、今ここにいる彼女は、私がギルドで見つけた彼女と同一人物なのだと再確認出来た。ギルドのロビーで初めて見たあの時に感じた勇ましさが、先程、目の前で見ることが出来た、彼女の勇ましい雰囲気と同一だった。
彼女は普段は優しい雰囲気で、戦う時だけ人が変わるのだろう。となると調査部の人間は、彼女が鍛錬をするのを手伝って来たはず、きっと彼女の稀な勇ましい姿を、水でも飲むかの如く、さも当たり前に見て来たに違いない。調査部か、今は出張が続いているようで、まだその誰ともあった事はないが、私よりも魅力的な人物がいるだろうか。もしその人物が、私の知らない彼女を存分に知り尽くしていた時に、私は今まで通り、彼らに対して冷静に振る舞えるだろうか。
「しかし何だったんだろう。」
「え、え?何がです?」
「ふふ、ジェーン考え事?珍しい。いや、さっきの爆発だよ。怖いよね、あの高そうなスポーツカーだって、ただ停めてあっただけなのに爆発なんかして。車両不備でもあったのかな。」
「ああ、あれですか。私が爆弾を仕掛けました。」
「はっ!え!?何で!!何してんの!」
「しーっ」
キルディアが慌てて、両手で口を覆った。辺りを確認したが、幸い、今の会話は誰にも聞こえていなかったようだ。先程の騎士にも。
「何で!いつそんな事したの!」
「落ち着いてください。周囲の目や騎士団の兵士達の注意が、あの親子やキルディアに向いている時に、私はあの黄色いスポーツカーへとそれとなく近づき、仕掛けました。あなたの形相が、おっかなくなってきましたから、何かあった時の対策を取らなければならないと考えたのです。時限式の爆弾でしたが、場合によっては、ウォッフォンから遠隔でキャンセルも出来ました。ですから心配は無用です。」
「ちょっと待ってよ、どこが心配無用なの!それにどうして対策に爆発なの?ちょっと何言ってんの?」
キルディアが私の腕をブンブンと振りながら小声で怒鳴っている。なるほど、女性とは思えないほどに力が強い。
「でも効果的だったでしょう?仕掛けた車は高級車でしたから、保険がおりますよ。金持ちは損しません。それに兵士としても、侮辱の現行犯よりも、消火活動や爆弾魔探しの方がポイント高いでしょうから、そちらに専念するでしょうし。」
「ああそう、それらを起こしたのが同一犯だと分かったら、きっと彼ら驚き過ぎて腰抜かすだろうね……分かったからジェーン、もうやらないでね。」
また歩みを開始した彼女に、私もまた付いていく。すぐに、何かを思い出したのか、キルディアが私の方を振り向き、人差し指を立てて話し始めた。まだ彼女は頭の中が混乱しているようで、目があちこちを向いている。
「てかさ、爆発が起きる前に、私の後ろに隠れたよね?それもそうだし、何で爆弾持ってたの?違う違う、何で犯罪ばかり起こすの?」
「一度に色々な質問をしないで下さい。一、あなたの後ろに居れば、安全だと判断しました。二、魔法が使用出来るとはいえ、私の戦闘能力は皆無に等しい。私が頼れるのは自分の科学的スキルのみで、更にこの世界は、私の世界よりも治安が悪い。爆弾を所持することが、私の自己防衛手段なのです。それに在庫は、もうありませんのでご安心を。三、起こしたくて起こしている訳ではないことを理解頂けると助かります。結果として、あなたもそれで救われたでしょう?今回の場合、戦わずして勝つとは、こういうことです。」
「何その、箇条書きみたいな答え方……もういいや、ジェーンは私と違って、軍師タイプなんだね。」
呆れたような視線を私に一度ぶつけてから、彼女がまた歩き始めた時に、私の手首が少し傷んだ。見れば、まだ嵌められている枷の部分が擦れていて、手首に血がにじんでいた。これはいけない、私は彼女の隣に急いで移動して、彼女に手首を見せた。
「あと……あなたが手錠の鎖を蹴って破壊した際の反動で、手首が擦れて傷が出来てしまいました。とても痛いです。後ほど、手当てをお願い致します。」
「ああん!もう!ケイト先生のところに行こうね!」
私の腕を掴んでキルディアが小走りになった。その軽いジョギング状態のまま職場に向かおうと言うのか。私にはそんな体力は無いとは言えず、必死になって彼女について行った。
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