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80 BOMB
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爆音が轟いて、白い世界に入った。
ジェーン、ダメだったか。でも助けようとしてくれてありがとう。遠くの空から見守ってる。
『ああ、キルディア、迎えに行きます。』
私は目を開けた。城の執務室にまだいた。こんなリアルなあの世があるのだろうか?違う、ここは確かに城だ。じゃあ爆発は?
小さなホログラムの画面には『ボン!』という文字が表示されていた。背景は白くて、それがピカピカ点滅していた。
それからジェーンが文字を打っていた画面の最後には赤く『complete』という文字が出現していて、彼が暗号の打ち込みに成功していたことを表していた。赤いゴマはもう光っておらず、黒いゴマになっていた。
じゃあ成功したのか。私は口を大きく開けて、何があったのか整理した。
爆音は、この趣味の悪い爆弾を解除成功した時の効果音か。確かに趣味の悪い爆弾には、そういうギミックがある事がある。そして白く発光したのもギミックだろう。ああ、じゃあ生きてる。私生きてる。
「私生きてる……。」
私のウォッフォンの画面はもう通話終了していた。ジェーンが迎えにいくと言っていたのは、あの世に自分もすぐに行くとかっていう意味じゃなかったのね。じゃあ助かったんだ……。
胸をそっと撫で下ろした。ひたいから変な汗が流れた。試しに光のダガーで手錠の鎖を切ってみた。鎖の内部がビリビリと言っただけで、無事に切り離す事ができた。
……派遣になったらジェーンを連れて行こう。心からそう思った。そして彼が生まれた事に感謝し始めた私は、騎士のポーズで天に顔をあげた。
見てみればオーウェンはまだ寝てる。寝てるというか、眠らせているというか。彼をどうしようか。まあそれは陛下に任せるとしよう。彼ならきっといい決断を与えてくれるだろう。
そのあとはずっとソファに脱力してしまった。暫くすると城の警備兵と一緒にジェーンがこの執務室に来てくれて、走ってきたのか頬を赤く染めたまま、両手を広げて私に突撃してきたので、私は彼を受け止めた。
「キルディア!」
「ジェーン、本当にありがとう。やっぱりすごいね。」
嬉しくて彼の頭を撫でながら微笑んでいると、一緒に来た騎士に顔を見られて、ギョッとされた。私は一瞬で微笑みを消した。そうよね、城にいる間はそんなに微笑むことはあまりないもんね……はは。
ぎゅうぎゅうとジェーンが抱きしめてきても、私は必死に微笑みを消していた。オーウェンのことを話すと、どんどんと騎士が集まってきて、テープも貼られて、事故現場のようになっていった。
陛下に報告すると、指令でオーウェンは士官学校内にある収容所に行くことになった。オーウェンに関する色んなことを他の騎士と話し合っている時も、ジェーンは私から離れようとしなかった。
帰りのブレイブホースで二人乗りしている時も、ジェーンはギュッと私を抱きしめていた。市民のひやかす視線がちょっと恥ずかしかったけど、それよりも生還できた事の方が嬉しかったから、その姿勢のまま帰った。
玄関を開けると、何も知らないリンとメリンダが我々にクラッカーをパンパン放ってきた。ゾーイに「もう婚約してますよね?」と聞かれて、私がジェーンを見ると、彼はコクリと頷いた。
するとゾーイが「ほら!やっぱりうまくいった!」と叫び、リンとラブ博士はそのことをゾーイから聞いていたのか、我々に拍手をくれた。リビングに移動しながらリンが私に言った。
「あんた婚約したんならもっと早く言いなさいよ!忙しい忙しいって、ルミネラ帝国民は大事な時は休むものでしょ!?」
「でもね、休めないんだよ。私が休んだら今結構大変なの。落ち着いたら長期休暇取るつもりだよ。」
「えー!そうなの!?でもまあそうだよね、分かる。うちだって確かに今ジェーンにガッツリ休まれたら困る。だってうちの大黒柱だからね!この研究室が軌道に乗るまでは、我々ものんびりしてられないかぁー……じゃあやるしかないね!」
私の腕を抱いているジェーンが静かな声で言った。
「……私はまだあなたを雇うとは宣言していませんが。」
「えっ!?」
耳元でうるさい声出されたので、私は怯んでしまった。驚いた顔をしたリンだったけど、すぐに笑顔でこう言った。
「大丈夫大丈夫!ジェーンの気持ち分かるから!私は仲良い友達だから雇うって言うと偉そうな態度だなって嫌われちゃうかもって遠慮してるんだよね?大丈夫、ビジネスとフレンド分けて考えられるから私!いつでも準備万端ですよ!」
ジェーンは無言でバーカウンターの方へと行ってしまった。私は防具を取ってメリンダに渡しながらじっと彼の後ろ姿を見ていると、彼はスッと手を伸ばしてカウンターの酒瓶を手にして、近くにあったグラスに注いで飲み始めた。
「ねえ、どしたんだろ?ジェーン。」
「さ、さあ……雇うって決めたんじゃない?」
「あ!そうなの!?じゃあ良かった!ねえねえ色んな味のアイス作ったんだよ?見て!」
私はリンに手を引かれてテーブルへと向かった。アイスポッドという出来立てのアイスを入れておく大きめの瓶がいくつかあり、ピスタチオ、レモンシャーベット、ストロベリーチーズ味など数種類のアイスがあって、トッピングも用意されていた。
他にもオードブルの料理やサラダ、それからドリンクも揃っていた。これはもうはしゃぐしかない。私服姿のメリンダ達も全員合流しているので、我々はパーティを開始した。
ワイングラスを皆で掲げて、いつも通りにリンが乾杯の挨拶をすることになった。
「さてさて、今宵はとても美しい邸宅に我々が集っております!新しい仲間、それから新しい職場の誕生、更にはキリーとジェーンの婚約というプッ……!」
何故吹く?私はヨダレをハンカチで拭いているリンの肩を軽くペシンと叩いた。皆から笑いが溢れて、リンは訳を説明した。
「だ、だって……キリーとジェーンとても仲良しだから、やっぱ結婚するんだって思ってさ、いやいやごめん、違う!これはめでたいのであります!」
急に叫び始めた。私は取り敢えずまたワイングラスを掲げた。
「今宵、ここにはルミネラ帝国にとって重要な面々が集まっております!」
でた。
「LOZで暗躍したマッドサイエンティストジェーン、それからアクロスブルーの自警システムを作り上げたドクタースローヴェン、更には三人の孫を持つメリンダに、学生時代にジャズサークルで三回ライブをしたゾーイ、剣術五段のロバート!そして……「えっ!?剣術五段なの!?ロバート!」
私の驚きの言葉に、ロバートは照れながら頷いた。これは今度お手合わせを願うしかないと思っていると、不貞腐れた顔のリンと目が合った。
「ご、ごめん。」
「うん、今すっごくいいところだったのにね。まあいいや!そしてそして、このキルディアギルバートカガリ!今となっては騎士団長という、非の打ちどころのない権力を手にしておられるという、この帝国にとっての重要な面々、今日集まりました!その中でですね、この私が、こんななんの取り柄もない私が、この重要な乾杯の音頭をとらせて頂くなんて…………当然のことでございます!乾杯!」
「かんぱーい」
うん、予想通りのオチだった。一番最初に隣にいたジェーンとグラスをチーンとすると、微笑む彼と目が合った。それから他の皆ともグラスを合わせて乾杯した。
オードブル、と普通の人はそこをいくだろうけど、今夜の我々は違った。やはりアイスだ。こんな熱い夜に、こんなに手作りのアイスが揃っているなんてこと、選択する余地もない。
皆でアイスをコーンやカップに装って食べ始めた。緑色のアイスはピスタチオ味で、チョコスプレーというカラフルなチョコのトッピングを乗せて食べたら陽気な気分になった。
ジェーンはストロベリーチーズにナッツを乗せていて、私にスプーンで一口食べさせてくれた。
リンとラブ博士も食べさせ合っていて、何故かメリンダとロバートも食べさせ合っていたので、皆で笑ってしまった。それからオードブルの唐揚げや、オムレツ、シュリンプフライに、パインソテーもお皿に装った。
ジェーン、ダメだったか。でも助けようとしてくれてありがとう。遠くの空から見守ってる。
『ああ、キルディア、迎えに行きます。』
私は目を開けた。城の執務室にまだいた。こんなリアルなあの世があるのだろうか?違う、ここは確かに城だ。じゃあ爆発は?
小さなホログラムの画面には『ボン!』という文字が表示されていた。背景は白くて、それがピカピカ点滅していた。
それからジェーンが文字を打っていた画面の最後には赤く『complete』という文字が出現していて、彼が暗号の打ち込みに成功していたことを表していた。赤いゴマはもう光っておらず、黒いゴマになっていた。
じゃあ成功したのか。私は口を大きく開けて、何があったのか整理した。
爆音は、この趣味の悪い爆弾を解除成功した時の効果音か。確かに趣味の悪い爆弾には、そういうギミックがある事がある。そして白く発光したのもギミックだろう。ああ、じゃあ生きてる。私生きてる。
「私生きてる……。」
私のウォッフォンの画面はもう通話終了していた。ジェーンが迎えにいくと言っていたのは、あの世に自分もすぐに行くとかっていう意味じゃなかったのね。じゃあ助かったんだ……。
胸をそっと撫で下ろした。ひたいから変な汗が流れた。試しに光のダガーで手錠の鎖を切ってみた。鎖の内部がビリビリと言っただけで、無事に切り離す事ができた。
……派遣になったらジェーンを連れて行こう。心からそう思った。そして彼が生まれた事に感謝し始めた私は、騎士のポーズで天に顔をあげた。
見てみればオーウェンはまだ寝てる。寝てるというか、眠らせているというか。彼をどうしようか。まあそれは陛下に任せるとしよう。彼ならきっといい決断を与えてくれるだろう。
そのあとはずっとソファに脱力してしまった。暫くすると城の警備兵と一緒にジェーンがこの執務室に来てくれて、走ってきたのか頬を赤く染めたまま、両手を広げて私に突撃してきたので、私は彼を受け止めた。
「キルディア!」
「ジェーン、本当にありがとう。やっぱりすごいね。」
嬉しくて彼の頭を撫でながら微笑んでいると、一緒に来た騎士に顔を見られて、ギョッとされた。私は一瞬で微笑みを消した。そうよね、城にいる間はそんなに微笑むことはあまりないもんね……はは。
ぎゅうぎゅうとジェーンが抱きしめてきても、私は必死に微笑みを消していた。オーウェンのことを話すと、どんどんと騎士が集まってきて、テープも貼られて、事故現場のようになっていった。
陛下に報告すると、指令でオーウェンは士官学校内にある収容所に行くことになった。オーウェンに関する色んなことを他の騎士と話し合っている時も、ジェーンは私から離れようとしなかった。
帰りのブレイブホースで二人乗りしている時も、ジェーンはギュッと私を抱きしめていた。市民のひやかす視線がちょっと恥ずかしかったけど、それよりも生還できた事の方が嬉しかったから、その姿勢のまま帰った。
玄関を開けると、何も知らないリンとメリンダが我々にクラッカーをパンパン放ってきた。ゾーイに「もう婚約してますよね?」と聞かれて、私がジェーンを見ると、彼はコクリと頷いた。
するとゾーイが「ほら!やっぱりうまくいった!」と叫び、リンとラブ博士はそのことをゾーイから聞いていたのか、我々に拍手をくれた。リビングに移動しながらリンが私に言った。
「あんた婚約したんならもっと早く言いなさいよ!忙しい忙しいって、ルミネラ帝国民は大事な時は休むものでしょ!?」
「でもね、休めないんだよ。私が休んだら今結構大変なの。落ち着いたら長期休暇取るつもりだよ。」
「えー!そうなの!?でもまあそうだよね、分かる。うちだって確かに今ジェーンにガッツリ休まれたら困る。だってうちの大黒柱だからね!この研究室が軌道に乗るまでは、我々ものんびりしてられないかぁー……じゃあやるしかないね!」
私の腕を抱いているジェーンが静かな声で言った。
「……私はまだあなたを雇うとは宣言していませんが。」
「えっ!?」
耳元でうるさい声出されたので、私は怯んでしまった。驚いた顔をしたリンだったけど、すぐに笑顔でこう言った。
「大丈夫大丈夫!ジェーンの気持ち分かるから!私は仲良い友達だから雇うって言うと偉そうな態度だなって嫌われちゃうかもって遠慮してるんだよね?大丈夫、ビジネスとフレンド分けて考えられるから私!いつでも準備万端ですよ!」
ジェーンは無言でバーカウンターの方へと行ってしまった。私は防具を取ってメリンダに渡しながらじっと彼の後ろ姿を見ていると、彼はスッと手を伸ばしてカウンターの酒瓶を手にして、近くにあったグラスに注いで飲み始めた。
「ねえ、どしたんだろ?ジェーン。」
「さ、さあ……雇うって決めたんじゃない?」
「あ!そうなの!?じゃあ良かった!ねえねえ色んな味のアイス作ったんだよ?見て!」
私はリンに手を引かれてテーブルへと向かった。アイスポッドという出来立てのアイスを入れておく大きめの瓶がいくつかあり、ピスタチオ、レモンシャーベット、ストロベリーチーズ味など数種類のアイスがあって、トッピングも用意されていた。
他にもオードブルの料理やサラダ、それからドリンクも揃っていた。これはもうはしゃぐしかない。私服姿のメリンダ達も全員合流しているので、我々はパーティを開始した。
ワイングラスを皆で掲げて、いつも通りにリンが乾杯の挨拶をすることになった。
「さてさて、今宵はとても美しい邸宅に我々が集っております!新しい仲間、それから新しい職場の誕生、更にはキリーとジェーンの婚約というプッ……!」
何故吹く?私はヨダレをハンカチで拭いているリンの肩を軽くペシンと叩いた。皆から笑いが溢れて、リンは訳を説明した。
「だ、だって……キリーとジェーンとても仲良しだから、やっぱ結婚するんだって思ってさ、いやいやごめん、違う!これはめでたいのであります!」
急に叫び始めた。私は取り敢えずまたワイングラスを掲げた。
「今宵、ここにはルミネラ帝国にとって重要な面々が集まっております!」
でた。
「LOZで暗躍したマッドサイエンティストジェーン、それからアクロスブルーの自警システムを作り上げたドクタースローヴェン、更には三人の孫を持つメリンダに、学生時代にジャズサークルで三回ライブをしたゾーイ、剣術五段のロバート!そして……「えっ!?剣術五段なの!?ロバート!」
私の驚きの言葉に、ロバートは照れながら頷いた。これは今度お手合わせを願うしかないと思っていると、不貞腐れた顔のリンと目が合った。
「ご、ごめん。」
「うん、今すっごくいいところだったのにね。まあいいや!そしてそして、このキルディアギルバートカガリ!今となっては騎士団長という、非の打ちどころのない権力を手にしておられるという、この帝国にとっての重要な面々、今日集まりました!その中でですね、この私が、こんななんの取り柄もない私が、この重要な乾杯の音頭をとらせて頂くなんて…………当然のことでございます!乾杯!」
「かんぱーい」
うん、予想通りのオチだった。一番最初に隣にいたジェーンとグラスをチーンとすると、微笑む彼と目が合った。それから他の皆ともグラスを合わせて乾杯した。
オードブル、と普通の人はそこをいくだろうけど、今夜の我々は違った。やはりアイスだ。こんな熱い夜に、こんなに手作りのアイスが揃っているなんてこと、選択する余地もない。
皆でアイスをコーンやカップに装って食べ始めた。緑色のアイスはピスタチオ味で、チョコスプレーというカラフルなチョコのトッピングを乗せて食べたら陽気な気分になった。
ジェーンはストロベリーチーズにナッツを乗せていて、私にスプーンで一口食べさせてくれた。
リンとラブ博士も食べさせ合っていて、何故かメリンダとロバートも食べさせ合っていたので、皆で笑ってしまった。それからオードブルの唐揚げや、オムレツ、シュリンプフライに、パインソテーもお皿に装った。
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