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79 あなたと共に
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『……訳は後で聞きましょうか。泣き崩れた彼の姿から、ある程度の展開は予想出来ますが。さて、時間がありませんね。解体します。』
「お願いします。」
「無理に決まっています。この爆弾はまだ解除方法がないんです。最後の起爆システムの砦になるのは、私のウォッフォンに仕組まれたランダムの暗号。それを入力しないといけないが、それはトータルで千桁もある。全ての人間が、この時間ではそれを暗記することも、入力することも出来ない。だから絶対に無理なのです。」
「そうなの?」
オーウェンがコクリと頷いた。まじで私と共に散るつもりだったのねこの人。なんか思ったよりも絶望してきた。ジェーン大丈夫かな。いや、別にダメだったとしても、彼が私を助けようとしてくれた事が嬉しい。
『あれ?ジェーン何してんの、ほらパーティの準備しなきゃ!』
急にリンの声が聞こえた。しかしジェーンが叫んだ。
『邪魔をするな!少し、時間をください!……後で行きます。』
『はいはい。今いいところなのね分かりましたよ。じゃあゾーイと一緒にアイスクリーム作って遊んでよっと!ジェーンは作らないの?チョコミントとピスタチオ、ストロベリーチーズ味も作れるんだって!作らないの?』
『殺されたいですか?』
『殺されたくはないです!じゃあいいよ、ジェーンの分も適当に作る。トッピング選びは?それはするよね!』
『もう一度言いますが『分かったってば!あんた人生損してる!またね!』
トッピング選びしないだけで人生損することになるのね……私は苦笑いをした。でもなんかリンにも会いたくなった。オーウェンの言った事が正しいとすると、最後の砦というのが難関だ。いくらジェーンでも無理だろう。
『キルディア、ウォッフォンをどこか、机に固定してください。』
「分かった。」
少し移動して、オーウェンの手首をコーヒーテーブルの上に置いた。それを手錠の嵌められた手で固定した。オーウェンはシクシク泣いているが、彼が動かないでくれることを願う。動かせない事が、私のミッションだ。
ならばと私は腰にかけていたハンドガンタイプの魔銃を使って、その麻酔弾を彼に撃った。油断していた彼は首にそれを喰らって、ぐったりと倒れた。これなら安心だろう。
『流石ですキルディア。始めます。』
私のアームが勝手に動き始めて、優しくオーウェンのウォッフォンに触れた。時間はあと九分。アームの指先のカバーが取れて、小さいツールが出てくると、カチャカチャとパーツを取って、あっという間にウォッフォンのカバーが取れた。
内部ってこうなっているんだ。見たこともない細かい部品が美しく街を作っていた。指先から何本も出ているツールが、自動でパーツを外していくのを私は食い入るように見つめてしまった。
機械のオペみたい。それを遠くからジェーンが行ってる。なんてセクシーなんだろう。
待て待て、その邪念はどうにかならないのだろうか。もう無理だ。そう思っている間にも、どんどんとパーツが外されていき、最奥部とも思える基板へ到達した。
すると基盤の中央に赤く点滅しているちっちゃいゴマみたいなものがあった。
『これです。この小さいものが、爆弾です。』
「え?これが?この……赤いゴマみたいなやつ?こんなに小さいんだ。」
『はい。それをそのまま外すと起爆しますから、周りから責めます。あと何分ですか?』
「あと五分。」
『……休む暇もありませんね。仕方ない。やります。』
ところで、だいぶ時間が迫っているが、暗号の解読はどうするんだろうか。多分間に合わないよね、ジェーンは必死に力の限りやってくれているけど、私は間に合わないと思う。
「ねえジェーン、話しかけて欲しくはないだろうけど、話しかけていい?」
『少しなら、どうぞ。』
「愛してる、とっても。」
『……手元が狂うので、おやめください。』
「はは、ごめんなさい。でも言いたかった。」
『私も愛しております。ところで、うむ、基板ごと外す手も考えましたが、いけませんね、しっかりと何処もかしこも起爆装置まみれだ。これは正攻法でいくしかない。少しずつ切断をしますから、絶対に動かないこと。それと私に愛の言葉を放たないこと。いいですね?』
「ふふ、分かった、ごめんってば。」
黙ることにした。ジェーンが集中してツールを動かして、基盤を解体している。本当に小さいパーツばかりで、私の息で簡単に飛びそうなほど軽そうなので、私はなるべく息がかからないように顔を遠ざけてじっと見つめていた。
とうとう赤いゴマ周辺の基盤が外れたところで、指先ツールの動きが止まった。
『キルディア、あと何分ですか?』
「あと、二分。」
『……時間がない。なるほど、時間がない故に、解除方法がない。こういうことですね。これからウォッフォン内部のホログラムを表示させます。暗号解読しなければ、赤いゴマを摘出出来ません。』
「う、うん。」
これはもう望みが薄いと思った。でも信じるしかない。ジェーンは細い針のようなツールで赤いゴマのすぐ横辺りにある小さなボタンを押した。すると基盤の上に、ホログラムの小さな画面が出現した。
「これ、こんな小さなホログラム出せるんだ。」
『はい。これは暗号用のものですが……なるほど。』
その画面は三つに分かれていて、左半分は数字や文字の羅列、そして右半分は真っ白だった。そして下部には打ち込む用のキーボードがあった。
どうするんだろうと思っていると、いきなり右半分の数字と文字の画面が高速スクロールされ始めた。これを全て覚えるの?この速さで文字を読んで暗記しろというのかと、そのドSっぷりに私は言葉を失った。
スクロールは一分ほどで終了して、そのあとその画面はプッと消えてしまった。時計を見るとあと五十八秒だった。文字は確かに千桁はあったように思える。もう無理だ。このゴマが爆発するのを待つだけか。
しかし諦めないつもりか、私の指先の細いツールがキーボードを素早くカタカタと打ち始めた。すると右半分の空白の画面に数字と文字が物凄い勢いで示された。ジェーンがタイピングしているんだろうけど……仰天するほど速い。
すごいって話しかけそうになったけどやめた。彼はきっと今、ノーミスで高速タイピングをしなければならないという荒技をしてる最中だ。ってか、全部覚えられたのだろうか?そんなこときっと彼であっても無理だ。
『キルディア』
「何?」
『残り十秒から、カウントをお願いします。』
「うん。」
彼が打っている文字は全て正しいのだろうか。それとも何か別のコードを入れて阻止しようとしているのか、不明だ。でも文面は先程のスクロールの文にそっくりだから、きっと暗記して打ってるんだろうけど……すごい。
彼の頭はどうなってる?その辺のPCより優れてるんじゃないの?こんな人生の瀬戸際だけど、改めてその凄さを知った気がした。よく私ジェーンに将棋で勝てたなぁ、奴、もしや手抜きしてたのかな?って、違う!やばい!
「あ!ごめん!七、六、五、四……!」
『キルディア!?何を呆けて、あなたは!くっ……!』
ジェーンが『ぬああああ』と叫びながら文字を打っている。私は目を細めて、オーウェンのウォッフォンのカウントダウンを続けた。これで死んだら、あの世でオーウェンを殺してやる。婚約プリプリな私を死なせたのだからね!
でも全然打ち終わらない。ジェーンはPCがバグった時の画面のような速さで文字を打ち込んでいるけど、全然終わりそうにない。もしかしてこれってドッキリなのかな?そうじゃなかったら私はもうあと三秒で死ぬ!
「三、二……ごめん愛してる!」
『っ……!』
私はギュッと目を閉じて、身体を硬らせた。
「お願いします。」
「無理に決まっています。この爆弾はまだ解除方法がないんです。最後の起爆システムの砦になるのは、私のウォッフォンに仕組まれたランダムの暗号。それを入力しないといけないが、それはトータルで千桁もある。全ての人間が、この時間ではそれを暗記することも、入力することも出来ない。だから絶対に無理なのです。」
「そうなの?」
オーウェンがコクリと頷いた。まじで私と共に散るつもりだったのねこの人。なんか思ったよりも絶望してきた。ジェーン大丈夫かな。いや、別にダメだったとしても、彼が私を助けようとしてくれた事が嬉しい。
『あれ?ジェーン何してんの、ほらパーティの準備しなきゃ!』
急にリンの声が聞こえた。しかしジェーンが叫んだ。
『邪魔をするな!少し、時間をください!……後で行きます。』
『はいはい。今いいところなのね分かりましたよ。じゃあゾーイと一緒にアイスクリーム作って遊んでよっと!ジェーンは作らないの?チョコミントとピスタチオ、ストロベリーチーズ味も作れるんだって!作らないの?』
『殺されたいですか?』
『殺されたくはないです!じゃあいいよ、ジェーンの分も適当に作る。トッピング選びは?それはするよね!』
『もう一度言いますが『分かったってば!あんた人生損してる!またね!』
トッピング選びしないだけで人生損することになるのね……私は苦笑いをした。でもなんかリンにも会いたくなった。オーウェンの言った事が正しいとすると、最後の砦というのが難関だ。いくらジェーンでも無理だろう。
『キルディア、ウォッフォンをどこか、机に固定してください。』
「分かった。」
少し移動して、オーウェンの手首をコーヒーテーブルの上に置いた。それを手錠の嵌められた手で固定した。オーウェンはシクシク泣いているが、彼が動かないでくれることを願う。動かせない事が、私のミッションだ。
ならばと私は腰にかけていたハンドガンタイプの魔銃を使って、その麻酔弾を彼に撃った。油断していた彼は首にそれを喰らって、ぐったりと倒れた。これなら安心だろう。
『流石ですキルディア。始めます。』
私のアームが勝手に動き始めて、優しくオーウェンのウォッフォンに触れた。時間はあと九分。アームの指先のカバーが取れて、小さいツールが出てくると、カチャカチャとパーツを取って、あっという間にウォッフォンのカバーが取れた。
内部ってこうなっているんだ。見たこともない細かい部品が美しく街を作っていた。指先から何本も出ているツールが、自動でパーツを外していくのを私は食い入るように見つめてしまった。
機械のオペみたい。それを遠くからジェーンが行ってる。なんてセクシーなんだろう。
待て待て、その邪念はどうにかならないのだろうか。もう無理だ。そう思っている間にも、どんどんとパーツが外されていき、最奥部とも思える基板へ到達した。
すると基盤の中央に赤く点滅しているちっちゃいゴマみたいなものがあった。
『これです。この小さいものが、爆弾です。』
「え?これが?この……赤いゴマみたいなやつ?こんなに小さいんだ。」
『はい。それをそのまま外すと起爆しますから、周りから責めます。あと何分ですか?』
「あと五分。」
『……休む暇もありませんね。仕方ない。やります。』
ところで、だいぶ時間が迫っているが、暗号の解読はどうするんだろうか。多分間に合わないよね、ジェーンは必死に力の限りやってくれているけど、私は間に合わないと思う。
「ねえジェーン、話しかけて欲しくはないだろうけど、話しかけていい?」
『少しなら、どうぞ。』
「愛してる、とっても。」
『……手元が狂うので、おやめください。』
「はは、ごめんなさい。でも言いたかった。」
『私も愛しております。ところで、うむ、基板ごと外す手も考えましたが、いけませんね、しっかりと何処もかしこも起爆装置まみれだ。これは正攻法でいくしかない。少しずつ切断をしますから、絶対に動かないこと。それと私に愛の言葉を放たないこと。いいですね?』
「ふふ、分かった、ごめんってば。」
黙ることにした。ジェーンが集中してツールを動かして、基盤を解体している。本当に小さいパーツばかりで、私の息で簡単に飛びそうなほど軽そうなので、私はなるべく息がかからないように顔を遠ざけてじっと見つめていた。
とうとう赤いゴマ周辺の基盤が外れたところで、指先ツールの動きが止まった。
『キルディア、あと何分ですか?』
「あと、二分。」
『……時間がない。なるほど、時間がない故に、解除方法がない。こういうことですね。これからウォッフォン内部のホログラムを表示させます。暗号解読しなければ、赤いゴマを摘出出来ません。』
「う、うん。」
これはもう望みが薄いと思った。でも信じるしかない。ジェーンは細い針のようなツールで赤いゴマのすぐ横辺りにある小さなボタンを押した。すると基盤の上に、ホログラムの小さな画面が出現した。
「これ、こんな小さなホログラム出せるんだ。」
『はい。これは暗号用のものですが……なるほど。』
その画面は三つに分かれていて、左半分は数字や文字の羅列、そして右半分は真っ白だった。そして下部には打ち込む用のキーボードがあった。
どうするんだろうと思っていると、いきなり右半分の数字と文字の画面が高速スクロールされ始めた。これを全て覚えるの?この速さで文字を読んで暗記しろというのかと、そのドSっぷりに私は言葉を失った。
スクロールは一分ほどで終了して、そのあとその画面はプッと消えてしまった。時計を見るとあと五十八秒だった。文字は確かに千桁はあったように思える。もう無理だ。このゴマが爆発するのを待つだけか。
しかし諦めないつもりか、私の指先の細いツールがキーボードを素早くカタカタと打ち始めた。すると右半分の空白の画面に数字と文字が物凄い勢いで示された。ジェーンがタイピングしているんだろうけど……仰天するほど速い。
すごいって話しかけそうになったけどやめた。彼はきっと今、ノーミスで高速タイピングをしなければならないという荒技をしてる最中だ。ってか、全部覚えられたのだろうか?そんなこときっと彼であっても無理だ。
『キルディア』
「何?」
『残り十秒から、カウントをお願いします。』
「うん。」
彼が打っている文字は全て正しいのだろうか。それとも何か別のコードを入れて阻止しようとしているのか、不明だ。でも文面は先程のスクロールの文にそっくりだから、きっと暗記して打ってるんだろうけど……すごい。
彼の頭はどうなってる?その辺のPCより優れてるんじゃないの?こんな人生の瀬戸際だけど、改めてその凄さを知った気がした。よく私ジェーンに将棋で勝てたなぁ、奴、もしや手抜きしてたのかな?って、違う!やばい!
「あ!ごめん!七、六、五、四……!」
『キルディア!?何を呆けて、あなたは!くっ……!』
ジェーンが『ぬああああ』と叫びながら文字を打っている。私は目を細めて、オーウェンのウォッフォンのカウントダウンを続けた。これで死んだら、あの世でオーウェンを殺してやる。婚約プリプリな私を死なせたのだからね!
でも全然打ち終わらない。ジェーンはPCがバグった時の画面のような速さで文字を打ち込んでいるけど、全然終わりそうにない。もしかしてこれってドッキリなのかな?そうじゃなかったら私はもうあと三秒で死ぬ!
「三、二……ごめん愛してる!」
『っ……!』
私はギュッと目を閉じて、身体を硬らせた。
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