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20 トイレに行きたい
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肌寒くて、ふと、目が覚めた。寝ぼけながら上半身を起こすと、私は布団を蹴り飛ばしていたようだった。まだ夜中か……と、隣のジェーンを見ると、彼の姿が無かった。
「あら?」
小声で呟いた。ウォッフォンを見ると、午前一時だった。寝室のドアを見ると、隙間から明かりが漏れていた。
彼はまだリビングで作業をしているのか……チェイスとのプロジェクトに夢中なんだろうな、と私は体を起こしてベッドに座った。
トイレに行きたい。面倒くさいけど、行こう……。のそのそと動いて、寝室のドアをゆっくりと少し開けた。
ソファに座るジェーンは、よく見ると本を読んでいた。何だ、プログラムしてたんじゃ無いのか。私は声をかけようとしたが、言葉を飲み込んだ。
だって……読んでいたのは、地質学の本だった。ハッとした私は、足音を立てずに後ずさり、ドアの隙間を細めた。彼が地質学の本を読むときは、あの時だ。在庫処分の……わお。
どうしよう。でも、トイレに行きたい。でも……私は息を殺して、ドアの隙間を覗いた。ジェーンが片手で地質学の本を読んで、時々、顔を天に向けている。なんか、ちょっと彼の息が荒い気がする。彼の肩が小刻みに揺れている。
かなり、エロい状況だ。そうだよね、同じ屋根の下だもん、こういう状況だって、いつあってもおかしくなかった。そうか、きっと今までもこうして、深夜に行っていたんだ……。なるほど、なるほどぉぉ……。
変に私の体も熱くなってきた。いけないいけない、私はドアをそーっと閉じて、静かにベッドに座った。
見てしまった。多分見てはいけないものを見てしまった。この状況、どうするべきか。だってトイレに行きたい。
段々と、膀胱が圧迫されている。うーん!どうするキルディア、窓から飛び出して二階のお手洗いを借りるのはどうだろうか?
いやいやこんな夜更けにそれは悪い。ならば外で……するしかないか?外でするのは、別にギルド兵の時に何度も経験があるから、大丈夫だ。
致し方あるまい!私が窓のカーテンを掴んだ、その時だった。ウォッフォンが震えた。誰かからのメッセージだった。私はそれを開いた。
『あーもうだめだわ。今から帰るよー。もう体力なくなってきたのかな、眠いーん。……って、キリー起きて起きて!ウェイクアプ!あと十分ぐらいで着くから、ちょっとお話ししよ!Rin.L.L』
やばい!リンはオールをやめたのか!だがしかし、リビングではジェーンが地質学の本を読んでいる。
これはまずいことになってしまった!私はあわあわと、その場でぐるぐる回った。何か、何かしないといけない。そうだ、リンを阻止しよう!
『起きてるよ!でももう遅いし、お話はまた今度。ってか、今リビングでジェーンが、勉強して集中してるから、帰ってこない方がいいかも!だからホテルとか行って!Kildia.G.K』
『えええええ!?ジェーンが勉強!?彼が何を今更、勉強してるの?ああーなるほどね、わかった、二人はお楽しみ中なんだね!じゃあそっと入るから、今からしれっとジェーン連れて寝室にでも移動しといてよ!私だってレーガン様とラブラブしたいけどさー分かる分かるRin.L.L』
分かるじゃないよ。いやいや、だから帰ってくるなって言ってるのに!
私は頭を抱えた。尿意など、引っ込んでしまっている。この状況、どうにかしなければならない……!どうにかしないと、リンが彼のアレを視界に納めてしまうだろう。
どうしよう、どうしよう!そうだ、その前にジェーンが作業を終えてしまえばいいんだ!私は再びドアの隙間から彼の様子を覗いた。
すると、ショッキングな光景が広がっていた。彼は……地質学の本ではなく、ウォッフォンで動画を見て、作業をしていたのだ。
そのホログラム画面と彼の頭が重なっているが、画面の半分は、こちらからも見ることができた。
どういう訳か、女性が壁に張り付けられていて、その女性がムチで叩かれている動画だった。音量を絞っているのか、声はここまで聞こえないが、女性の顔からすると、彼女は喜んでいるっぽかった。
……今現在、私は結構、動揺している。他の女性を見ながら彼が行為をしているのも嫌だし、ジャンルがアブノーマルなのも……言葉が出ない。
私はジェーンが、リバとは言っても、M寄りなのかと思っていた。あの光景を見て興奮するってことは、本当はS寄りなのかな……。
しかも動画の場面が切り替えられて、今度はどういう訳か、女性が縛られたまま、男性の手責めを受けている。
彼女は叫びに近い嬌声をあげているようだ。そんな顔をしている。そしてその時に、ジェーンが「ふっ……!」と、大きく息を漏らした。
そして彼は、片手でソファを強く握って、苦しそうな吐息を漏らして、何度か大きく揺れた。
何だろう、私の中で変な怒りが発生している。彼がそういう動画を見るなんて聞いたこともなかったし、まああれはただのメディアではあるけれど、ちょっと浮気のようにも感じてしまった。
もうすぐリンは帰ってくる。彼に知らせないといけない。このまま不貞寝してしまいたい気もするが……、リンに彼の体が見られることは避けたい。結局私は、自分勝手なのだ。勝手に興奮して、勝手に落ち込んで。
なんて考えている場合ではない!そうだ!と思い、私は一度寝室のドアを静かに閉めてから、ベッドに座り、大袈裟に足で床を踏んで、足音を立てた。
あたかも今起きました感を出してみると、ドアの奥からスタタタっと急いだ足音が聞こえて、お風呂場の方に向かって行った。なるほど、最初からこうしていればよかったね……はは。私はその後、お手洗いに向かった。
用を済ませてお手洗いを出ると、お風呂場の方からシャワーの音がした。そしてガチャリと、玄関が開いた音がした。
すぐに厚化粧のリンがのそのそ入ってきて、ソファに座ったが、そのソファは今まで彼が……と思ってしまった。
「おかえり、リン。」
「ああ!」とリンが振り返った。笑顔だった。「え?ジェーンは?シャワー浴びてんの!?えええええー!ウケるんですけど、はぁー!」
「……別にそういうことしてないよ。言っとくけど。」
「え?そうなの?」リンが口を尖らせた。「そうなんだー。だって帰ってくるなって言ってたから。」
私は彼女にスタスタと近づいた。リンは目を見開いて、私を見ている。私は念を押すように彼女に言った。
「いい?さっきのメッセージのやりとり、絶対にジェーンには言わないこと、見せもしないこと!」
「え?何で何で?」
「いいから!いいね!わかった?」
「わ、わかったけどさ……まあ、寝たら忘れてると思うよー。私今、結構酔ってるもん。一人で帰ってこれたのが奇跡って感じだし。分かった、言わないよ、言わない。ね?じゃあジェーンが終わったらシャワー浴びるわ。それから寝る。それとも、今から話す?」
「おやすみ。」
「おやすみー。」
何このやりとりと、リンと少し笑ってから、私は寝室へ戻った。色々と守れたのはいいことだが、彼の知るべきではないことまで知ってしまった。
布団に潜って、電気を消した。あの卑猥な映像の女性、私とは違って、清楚な感じで、美人だった。
しかも胸が大きくて、腰はくびれていた。何よりも羨ましかったのは、傷一つついていない、綺麗な白い肌だ。
彼だって、きっとそういう女性の方が良かっただろう。私がいいって言ってくれてるけど、たまにはそういう綺麗な女性を抱きたいと思うのかな。
あぁ……何だかとてもモヤモヤする。
考えてもしょうがない。彼は男の人だから、そういうのだって必要なんだ。私は無理やり結論付けて、ギュッと目を閉じた。
「あら?」
小声で呟いた。ウォッフォンを見ると、午前一時だった。寝室のドアを見ると、隙間から明かりが漏れていた。
彼はまだリビングで作業をしているのか……チェイスとのプロジェクトに夢中なんだろうな、と私は体を起こしてベッドに座った。
トイレに行きたい。面倒くさいけど、行こう……。のそのそと動いて、寝室のドアをゆっくりと少し開けた。
ソファに座るジェーンは、よく見ると本を読んでいた。何だ、プログラムしてたんじゃ無いのか。私は声をかけようとしたが、言葉を飲み込んだ。
だって……読んでいたのは、地質学の本だった。ハッとした私は、足音を立てずに後ずさり、ドアの隙間を細めた。彼が地質学の本を読むときは、あの時だ。在庫処分の……わお。
どうしよう。でも、トイレに行きたい。でも……私は息を殺して、ドアの隙間を覗いた。ジェーンが片手で地質学の本を読んで、時々、顔を天に向けている。なんか、ちょっと彼の息が荒い気がする。彼の肩が小刻みに揺れている。
かなり、エロい状況だ。そうだよね、同じ屋根の下だもん、こういう状況だって、いつあってもおかしくなかった。そうか、きっと今までもこうして、深夜に行っていたんだ……。なるほど、なるほどぉぉ……。
変に私の体も熱くなってきた。いけないいけない、私はドアをそーっと閉じて、静かにベッドに座った。
見てしまった。多分見てはいけないものを見てしまった。この状況、どうするべきか。だってトイレに行きたい。
段々と、膀胱が圧迫されている。うーん!どうするキルディア、窓から飛び出して二階のお手洗いを借りるのはどうだろうか?
いやいやこんな夜更けにそれは悪い。ならば外で……するしかないか?外でするのは、別にギルド兵の時に何度も経験があるから、大丈夫だ。
致し方あるまい!私が窓のカーテンを掴んだ、その時だった。ウォッフォンが震えた。誰かからのメッセージだった。私はそれを開いた。
『あーもうだめだわ。今から帰るよー。もう体力なくなってきたのかな、眠いーん。……って、キリー起きて起きて!ウェイクアプ!あと十分ぐらいで着くから、ちょっとお話ししよ!Rin.L.L』
やばい!リンはオールをやめたのか!だがしかし、リビングではジェーンが地質学の本を読んでいる。
これはまずいことになってしまった!私はあわあわと、その場でぐるぐる回った。何か、何かしないといけない。そうだ、リンを阻止しよう!
『起きてるよ!でももう遅いし、お話はまた今度。ってか、今リビングでジェーンが、勉強して集中してるから、帰ってこない方がいいかも!だからホテルとか行って!Kildia.G.K』
『えええええ!?ジェーンが勉強!?彼が何を今更、勉強してるの?ああーなるほどね、わかった、二人はお楽しみ中なんだね!じゃあそっと入るから、今からしれっとジェーン連れて寝室にでも移動しといてよ!私だってレーガン様とラブラブしたいけどさー分かる分かるRin.L.L』
分かるじゃないよ。いやいや、だから帰ってくるなって言ってるのに!
私は頭を抱えた。尿意など、引っ込んでしまっている。この状況、どうにかしなければならない……!どうにかしないと、リンが彼のアレを視界に納めてしまうだろう。
どうしよう、どうしよう!そうだ、その前にジェーンが作業を終えてしまえばいいんだ!私は再びドアの隙間から彼の様子を覗いた。
すると、ショッキングな光景が広がっていた。彼は……地質学の本ではなく、ウォッフォンで動画を見て、作業をしていたのだ。
そのホログラム画面と彼の頭が重なっているが、画面の半分は、こちらからも見ることができた。
どういう訳か、女性が壁に張り付けられていて、その女性がムチで叩かれている動画だった。音量を絞っているのか、声はここまで聞こえないが、女性の顔からすると、彼女は喜んでいるっぽかった。
……今現在、私は結構、動揺している。他の女性を見ながら彼が行為をしているのも嫌だし、ジャンルがアブノーマルなのも……言葉が出ない。
私はジェーンが、リバとは言っても、M寄りなのかと思っていた。あの光景を見て興奮するってことは、本当はS寄りなのかな……。
しかも動画の場面が切り替えられて、今度はどういう訳か、女性が縛られたまま、男性の手責めを受けている。
彼女は叫びに近い嬌声をあげているようだ。そんな顔をしている。そしてその時に、ジェーンが「ふっ……!」と、大きく息を漏らした。
そして彼は、片手でソファを強く握って、苦しそうな吐息を漏らして、何度か大きく揺れた。
何だろう、私の中で変な怒りが発生している。彼がそういう動画を見るなんて聞いたこともなかったし、まああれはただのメディアではあるけれど、ちょっと浮気のようにも感じてしまった。
もうすぐリンは帰ってくる。彼に知らせないといけない。このまま不貞寝してしまいたい気もするが……、リンに彼の体が見られることは避けたい。結局私は、自分勝手なのだ。勝手に興奮して、勝手に落ち込んで。
なんて考えている場合ではない!そうだ!と思い、私は一度寝室のドアを静かに閉めてから、ベッドに座り、大袈裟に足で床を踏んで、足音を立てた。
あたかも今起きました感を出してみると、ドアの奥からスタタタっと急いだ足音が聞こえて、お風呂場の方に向かって行った。なるほど、最初からこうしていればよかったね……はは。私はその後、お手洗いに向かった。
用を済ませてお手洗いを出ると、お風呂場の方からシャワーの音がした。そしてガチャリと、玄関が開いた音がした。
すぐに厚化粧のリンがのそのそ入ってきて、ソファに座ったが、そのソファは今まで彼が……と思ってしまった。
「おかえり、リン。」
「ああ!」とリンが振り返った。笑顔だった。「え?ジェーンは?シャワー浴びてんの!?えええええー!ウケるんですけど、はぁー!」
「……別にそういうことしてないよ。言っとくけど。」
「え?そうなの?」リンが口を尖らせた。「そうなんだー。だって帰ってくるなって言ってたから。」
私は彼女にスタスタと近づいた。リンは目を見開いて、私を見ている。私は念を押すように彼女に言った。
「いい?さっきのメッセージのやりとり、絶対にジェーンには言わないこと、見せもしないこと!」
「え?何で何で?」
「いいから!いいね!わかった?」
「わ、わかったけどさ……まあ、寝たら忘れてると思うよー。私今、結構酔ってるもん。一人で帰ってこれたのが奇跡って感じだし。分かった、言わないよ、言わない。ね?じゃあジェーンが終わったらシャワー浴びるわ。それから寝る。それとも、今から話す?」
「おやすみ。」
「おやすみー。」
何このやりとりと、リンと少し笑ってから、私は寝室へ戻った。色々と守れたのはいいことだが、彼の知るべきではないことまで知ってしまった。
布団に潜って、電気を消した。あの卑猥な映像の女性、私とは違って、清楚な感じで、美人だった。
しかも胸が大きくて、腰はくびれていた。何よりも羨ましかったのは、傷一つついていない、綺麗な白い肌だ。
彼だって、きっとそういう女性の方が良かっただろう。私がいいって言ってくれてるけど、たまにはそういう綺麗な女性を抱きたいと思うのかな。
あぁ……何だかとてもモヤモヤする。
考えてもしょうがない。彼は男の人だから、そういうのだって必要なんだ。私は無理やり結論付けて、ギュッと目を閉じた。
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