Loading”OperateZeal"2

meishino

文字の大きさ
上 下
20 / 83

19 キルディアのおねだり

しおりを挟む
 その後、ビデオ通話でチェイス皇帝とヴァルガ騎士団長の二人に事の経緯を話した。二人は驚いた顔を暫く続けていたが、全てを話し終えると協力してくれると言ってくれた。


 セレスティウムのレシピがあれば、あとはケイト先生やタージュ博士が成分の解析をしてくれる。そしてそれを量産させる権利を帝国研究所とソーライ研究所が取得する。


 帝国研究所は結構漁夫の利だけど、ジェーンやチェイスの予想だと、このソーライ研究所の設備だけでは生産が難しいかもしれないらしい。


 更に、セクターは言ってしまえば帝国研究所にある。だから帝国研究所にも権利を与えるべきだということになった。しかしこれらはすべてヴァレンタイン教官が本当に私に特許を譲ってくれた場合だ。


 もし特許も譲ってくれなくて、レシピも秘密で、セレスティウムもくれなかったら……私はナイトアームを復活させないといけないかもしれない。出来れば彼女とは戦いたくはないけど。


 私は、ソファでウォッフォンのホログラムのキーボードを使いピッピと打ち込んでいるジェーンを見た。


 リンはというと、今日は大学の同期の飲み会がクラブであるらしく、それに参加している。明日も仕事なのに、オール明けでそのまま職場に行くらしい……とても元気な人だ。


 因みに今夜のジェーンは水色のパジャマ姿だった。私もソファの上に体育座りをしていて、身体ごと彼の方を向くと、足の先で、ジェーンの腕をツンツンと突いた。


「何でしょう?」


 機嫌悪っ……。そうなのだ、彼は帰ってから、ちっとも笑ってくれない。しかし頼むしかない。私はわざと彼にぴったりくっついて座り直して、彼の肩にもたれかかった。


「ねえジェーン、お願いが「ああ成程、却下します。」


 そんなに食い気味に言わなくてもいいのに。食い気味すぎて、ひとかけらも伝えられなかった……。ならばと、私は彼の肩にちゅっとキスをした。彼がちょっとビクッと動いた。


「お願いジェーン。光の大剣を復活させて?」


「……大馬鹿者。どう考えても、許可出来ません。帝都の病院で、あなたはもう二度と戦えないと言われたのを忘れましたか?私はチェイスとの合同プロジェクトの設計をしなければなりませんから、あなたは先に寝ていてください。」


「でも……」


 私はジェーンに抱きついて、首にキスをした。彼はまたビクッとした。こうなりゃ彼を誘惑しまくってやる。まるで娼婦のように、私はおねだり声を出した。


「光の大剣が欲しいの……お願い、ナイトアームのパス解除して?」


「キルディア、」


「ん?」


 彼が何だか、頬を赤くしている。しかもホログラムを見つめたまま。


「……そんなに欲しいのなら、別のを差し上げましょうか?とても熱くて、太いものです。」


「大馬鹿者。もういいよ。」


 ふーん、じゃあいいよ。しかも別のって、どういうすり替えだよ……とつい彼のアレを脳内に思い描いてしまった。いやいやいや、何を考えてるんだ。私は邪念を振り払うようにソファから降りて寝室へと向かった。


 ドアを閉めて、ベッドに飛び込むように転がった。まあジェーンの気持ちも分かる。もうこの体では二度と戦えない、彼は心配しているのだ。


 だからきっとセレスティウムを取りに行くことに反対していたんだ。行くとなれば、私がセクターに乗り込むことを彼は知っていたから。


 教官か、本当は生きていたんだ。どうしてセクターから出られないんだろう。謎だけど、行けば全て分かるか。


 今回の調査は、私とクラースさん、それからルーと、ヴァルガで行く予定だ。本当は三人で行く予定だったけど、何故かジェーンが、ヴァルガも参加するように促したのだ。


 ヴァルガは「まあ、帝国民の為だ、俺も人肌脱ぎたい」と、快く参加表明をしてくれた。まだ行く日は決まっていないが、近々その日は来るだろう。


 出来ればそれまでに光の大剣を取り戻したい。でもそれを復活させるにはジェーンのパスワードが必要だ。


 やっぱり、もっと可愛くおねだりしたら聞くかな。でもさっきの様子だと効いてなさそうだったなぁ……。


 一番まずいシチュエーションは光の大剣無しでヴァレンタイン教官と戦うことになる場合だ。そんなことになったら、私は多分すぐ死ぬだろうね、はは。


 チェイスとヴァルガが我々がセクターに行くまでは内密にしてくれているから外部にはまだ漏れていないけど、皆でセクターに行ったら教官は怒るかな?


 でもメールで詳細を伝えないで、ミステリアスな感じにしている彼女にだって、罪はあるのだ。


 そう思うことにして、私は電気を消した。布団に潜って、髪ゴムを外した。彼の枕が隣にある。


 ちょっと匂いを嗅いだ。いい匂いがして、くらっとした。もうだめだ、寝よう。もうこれ以上変態になりたく無い。私は目を閉じた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。 隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。 そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。 ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

俺の婚約者は侯爵令嬢であって悪役令嬢じゃない!~お前等いい加減にしろよ!

ユウ
恋愛
伯爵家の長男エリオルは幼い頃から不遇な扱いを受けて来た。 政略結婚で結ばれた両親の間に愛はなく、愛人が正妻の扱いを受け歯がゆい思いをしながらも母の為に耐え忍んでいた。 卒業したら伯爵家を出て母と二人きりで生きて行こうと思っていたのだが… 「君を我が侯爵家の養子に迎えたい」 ある日突然、侯爵家に婿養子として入って欲しいと言われるのだった。

王子の妻になれましたので

杉本凪咲
恋愛
そこに行ってはいけなかった。 自分が悲しむと分かっているのに。 私は部屋を飛び出して、夫の不倫現場へと向かう。

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!

林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。  マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。  そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。  そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。  どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。 2022.6.22 第一章完結しました。 2022.7.5 第二章完結しました。 第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。 第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。 第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。

陰陽道物語 ~忍び寄る暗翳~ 第二巻

海空 蒼
ファンタジー
沙希は刹那との抗争から助けられた同じ境遇にいる南雲祐介と真神(マガミ)の陽向と知り合う。 まだ陰陽師になって日が浅い沙希は、祐介から神器の使い方を学ぶがどうもうまくいかない。 そんな中、妖怪が棲む異界では、妖怪が失踪する事件が多発していた。 知らせを受けた沙希、風夜、祐介、陽向の四人は事件解決のために、調査に取り掛かることになった。 糸を手繰るように調査を進めていると、その先には思いもよらぬ脅威が待ち受けていて……。 ★こちらは「陰陽道物語 ~羽ばたく蝶の行先~ 第一巻」の続編になります!  ご覧になっていない方はそちらを読んでいただくことを推奨します。 ※表紙のイラストは、にじジャーニーで生成し、ロゴは自分で作成して付け足しました。

婚約破棄だと言われたので、王太子の浮気を暴露したいと思います

リオール
恋愛
「ミシェラ、きみとの婚約は破棄する!俺は真実の愛を見つけたのだ!!」 「それ何個目の愛ですか?」 「え、何個目?な、なんのことだ?」 私は知ってるんですよ、王太子。 貴方がいかに下衆であるかを。 ※四話完結 短いです 勢い小説

【完結】断罪を終えた令嬢は、まだ恋を知らない。〜年下騎士から好意を向けられている?対処の仕方がわかりません⋯⋯。

福田 杜季
恋愛
母親の離縁により、プライセル公爵家の跡取り娘となったセシリアには、新しい婚約者候補が現れた。 彼の名は、エリアーシュ・ラザル。 セシリアよりも2つ年下の騎士の青年だった。 実の弟ともまともに会話をしてこなかったセシリアには、年下の彼との接し方が分からない。 それどころか彼の顔をまともに直視することすらできなくなってしまったセシリアに、エリアーシュは「まずはお互いのことをよく知ろう」と週に一度会うことを提案する。 だが、週に一度の逢瀬を重ねる度に、セシリアの症状は悪化していって⋯⋯。 断罪を終えた令嬢は、今度こそ幸せになれるのか? ※拙著『義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜』の続編ですが、前作を読んでいなくても楽しめるようにします。 ※例によってふんわり設定です。なるべく毎日更新できるよう頑張ります。 ※執筆時間確保とネタバレ&矛盾防止のため、ご感想への返信は簡単めになります⋯。ご容赦ください。

処理中です...