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15 衝撃の締め

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「次のページを見ます、よろしいですか?」


 私は頷いた。ジェーンはクリックをした。すると???カテゴリの最後のページが表示された。


『馬鹿野郎が!なんてことをしてくれたんだ!あの見取り図は嘘だって、Vめ、俺がシンフォニウムを狙っているのを知っていやがったんだ!見取り図が指し示していたのは帝国研究所の研究開発部の魔力放出区域、そのエリアにある建物の角っこだった!

 俺が騎士の権限で研究開発部に行くと、ミハイルがニタニタした顔で待っていやがった!なんでここに用がある?って、もしやここに通路があるのか!?って、察知したあいつは俺を突き飛ばしてまで、慌てて探し始めた!でもどこにもありゃしねえじゃねえか!

 俺は赤っ恥をかいた上に、魔力放出区域の濃厚な魔力に接触して、一時間のうちに何度も、目が霞むようになった!ミハイルめ、ワザと区域の魔力を完全に消していなかったんだ!

 そのくせ自分はゴーグルを付けていやがったからな!あの趣味の悪いガリ勉みたいなゴーグルは目を守るためだったんだ!あいつの私服がダサいからその延長線だと思ったのに!

 くそ!くそ!職員のせいにしてヘラヘラと謝っていたが、本当は故意に、俺の目を潰したに違いねえ!このままじゃ、騎士団長を降りなきゃならないくらいだ!だからって一度手に入れた権力を手放すわけにはいかない!

 もう少しでセレスティウムは俺のものになるんだ!ミハイル……絶対に、許す訳にはいかない!ブブブ、お前もだ!本当のセクターはどこにある?

 くそっ!頭に来た俺はデータカードを粉々に潰して、ワインに溶かして飲んでやった!明日のトイレが楽しみだ!』


「振り出しに戻りました、キルディア。やはりそれはフェイクのデータカードだったのです。ヴァレンタインはマテオが彼女の研究に対して、欲を出しているのを、ご存知だったようですね。」


「それもそうだけど、データカードを潰してワインで飲むくだりが一番衝撃だったよ私は……。締めの言葉が、明日のトイレが楽しみだ!ってこんなに激しい日誌、見たことないよ。すごいなマテオ団長……エクスクラメーションマークも多いし。」


「それほどに、憤懣ふんまんやるかたない心持ちだったのでしょうね。私にはさっぱり彼の行動は理解出来ませんが……。そして文章を見る限り、マテオもミハイルも、帝国研究所のどこにセクターへの通路があるのかは理解していなかったようです。あなたはマテオ団長の時に、帝国研究所の捜査許可願いを届け出たはずですが。確かマテオには、そのエリアは現在自分の管轄内だと却下されたと?」


「あ、ああ。そう言われたから、団長は入り口はどこにあるのか知っているんだと思ってたけどね。セクターがあるかもしれないって、ミハイルさんには話したよ。そしたら、彼にも却下された。」


「なるほど」と、ジェーンが眼鏡をとって、ハンカチでレンズを拭き始めた。「あなたの発言で、ミハイルは帝国研究所のどこかに通路があると、改めて知った。だからあなたを拒絶して、自力で探したのでしょうが、やはりどこにも無かった。マテオのかすみ目の件ですが、魔力放出区域の管理を誤るなんてこと、その場に所長が居たのでしたら、有り得ません。故意でしょうね。マテオとミハイルは、宝の山を探して、互いを潰そうと目論んでいた。それは事実でしょう。マテオの事故は、目の霞みによる事故である可能性が高い。彼は目の状態を理由に、騎士団長の座を下されるのを懸念しておりましたから、騎士団には健康状態について、嘘をついていたのでしょう。魔力が原因でかすみ目になると、本人の自己申告が無い限りは判別が難しい。勿論、ミハイルは余計な罪を着せられない為に、マテオの健康状態を隠します。ですから、騎士の捜査結果では、単なる事故となってしまった。私の推理ですが。」


「……えええええ。えええぇぇぇ。」


 何これ。なんでこんなことになったんだ。何このサスペンスは。ねえ私とジェーンは昨日から恋人ライフを開始した、プリプリの初々しいカップルなんだよ。


 それをこの世は理解しているのか、ねえ、理解しているんですかね……!しかもジェーンの推理は普通に合ってるっぽい。


「じゃあさ」私は目頭を押さえながら聞いた。「生きているヴァレンタイン教官が、二人をどうにかしたってわけじゃなさそうだね。」


「……分かりません。マテオは間接的にミハイルが原因でしょうが、ミハイルの方は、ヴァレンタインかもしれませんし。兎に角、現状を整理しましょう。ヴァレンタインが監禁されているという線はありますが、彼女はマテオに偽のデータカードを渡しています。彼女はセレスティウムに対して、警戒心を持っている。となるとセレスティウムの存在を知っている他の人物が、これ以外にいるとは考えられません。この件以外で、セクターに監禁される可能性はありませんから、この線は消えました。次に、第三者がヴァレンタインを装っている可能性。今現在、セレスティウムを知っているのは、あなたとヴァレンタイン……私は除外してください、兎に角、この二名のみであり、マテオ、ミハイル、ルミネラ皇帝はもう存在していない。この三人以外に、あなたに対してヴァレンタインを装ってまで、セクターに誘い出すことは、有り得ないでしょう。この線も消えました。となると、この件に関して、あなたがヴァレンタインに直接狙われている可能性がとても高くなりました。もうずっと、私から離れないこと、いいですね?」


「だってさ、今日もずっと、トイレも一緒なんだもん、きついよ。」


「何を言いますか!」と、急に叫ぶからビビった。「一瞬でも離れ離れになってはいけません!あなたは私の彼女です。彼女が狙われているならば、彼氏としては……その……と、兎に角、単独行動を許すべきではありません!」


 なんか、言っている途中からジェーンが照れ始めた。私は微笑んでソファに向かい、会社用のPCをシャットダウンしてから、赤いショルダーバッグを背負った。


 振り返ると、ジェーンもPCのシャットダウンをし終わったところで、彼はいつも手ぶらなので、そのまま私に近付いた。


「分かったよジェーン、一人で行動しないようにする。一緒に帰ろう。一緒に風呂に入って、一緒に……やっぱりトイレもするの?」


「ええ、相手は手練れです。生命たるもの、排泄中に隙が生じることは百も承知でしょう。」


 排泄中ってすごいな……。私は苦笑いしつつジェーンと研究室を出た。するとロビーは最低限の明かりだけになっていた。


 もうこの研究所には我々しか残っていなかったようだ。ジェーンが研究室のドアをロックして、手を繋いで一緒に歩き始めた。そして彼に聞いた。


「あ!でもさ、教官はセクターから出られないと言っていたよ?じゃあ別に普段通りに過ごして平気なんじゃないの?」


「あなたは本当に騎士だったのでしょうか?相手を油断させるためのトリックに決まっております。一緒にトイレしますよ。」


「はい、すいませんでした……。」


 なんか結構言ってきた……。しかもトイレは一緒にするらしい。


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