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心にこびりついている何か
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『美優、美優。』
聞き慣れた声が聞こえる。
美優って誰。聞いたことある名前。
『お前はもういらない。』
「…っ!?」
飛び起きたと同時に点滴の針が腕から取れ血が滲んでいた。
目がうまく開けることができず、頬に濡れた感触があった。
「どうして泣いてるの。」
ポツリと一人でつぶやいた。
なんの夢を見ていたのかすらわからない。
ただぽっかりと穴が空いた気分だった。
私に親はいない。
ずっと一人で生きてきたはず。たぶん。
この病棟に来てから記憶が薄れている。
私は今何歳なのかさえわかっていない。
私はたぶん十代で時間が止まっている。
これが病気のせいなのか、それともその時代に私に何かあったのか今はもう知る由も無い。
きっと、それを解読しなきゃ治らない病気だと思う。
しかし、それを解読する勇気がなく、延命治療を希望したくなるのが本心だ。
だが、延命治療を希望した殆どは早くに発熱で亡くなっている。
延命治療なんて嘘である。
この間の012も延命治療を受け亡くなった。
私はどっちを希望してるか?
そんなの決まっている。延命治療だ。
苦しんで長く生きるか、楽に早く死ぬなら、楽な死に方がいい。
早くここから、この牢獄のような部屋から抜け出せるのなら死んでも構わない。
だからこその延命治療だ。
そんなことを考えるこの時間すらも重く、辛く、邪魔なのである。
だから、心底思う。
「センセーこないかな。」
あの女は私の中で嫌いな人間に属する。
だか、そばにいてほしい。生きてる感覚をくれるのがあの女なのだ。
「失礼します。」
「また来たの。」
「それが仕事なので。」
あー、縋ってしまう。拠り所にしてしまう。支えにしてしまう。
「いいえ、私では代わりになりませんよ。」
え。
「あなたの心の穴は私では埋まりません。」
戸惑っていることを悟られないように平常心を装って言った。
「なんのこと?」
「私はあなたに生きてほしい。だから…。こうするしかないのです。」
男の人がきた。そして私の腕を引っ張っていく。
この女、私の質問に答える気など無いようだ。
私は抵抗する気力が無く、連行されるしかなかった。
そしてある部屋に監禁された。
聞き慣れた声が聞こえる。
美優って誰。聞いたことある名前。
『お前はもういらない。』
「…っ!?」
飛び起きたと同時に点滴の針が腕から取れ血が滲んでいた。
目がうまく開けることができず、頬に濡れた感触があった。
「どうして泣いてるの。」
ポツリと一人でつぶやいた。
なんの夢を見ていたのかすらわからない。
ただぽっかりと穴が空いた気分だった。
私に親はいない。
ずっと一人で生きてきたはず。たぶん。
この病棟に来てから記憶が薄れている。
私は今何歳なのかさえわかっていない。
私はたぶん十代で時間が止まっている。
これが病気のせいなのか、それともその時代に私に何かあったのか今はもう知る由も無い。
きっと、それを解読しなきゃ治らない病気だと思う。
しかし、それを解読する勇気がなく、延命治療を希望したくなるのが本心だ。
だが、延命治療を希望した殆どは早くに発熱で亡くなっている。
延命治療なんて嘘である。
この間の012も延命治療を受け亡くなった。
私はどっちを希望してるか?
そんなの決まっている。延命治療だ。
苦しんで長く生きるか、楽に早く死ぬなら、楽な死に方がいい。
早くここから、この牢獄のような部屋から抜け出せるのなら死んでも構わない。
だからこその延命治療だ。
そんなことを考えるこの時間すらも重く、辛く、邪魔なのである。
だから、心底思う。
「センセーこないかな。」
あの女は私の中で嫌いな人間に属する。
だか、そばにいてほしい。生きてる感覚をくれるのがあの女なのだ。
「失礼します。」
「また来たの。」
「それが仕事なので。」
あー、縋ってしまう。拠り所にしてしまう。支えにしてしまう。
「いいえ、私では代わりになりませんよ。」
え。
「あなたの心の穴は私では埋まりません。」
戸惑っていることを悟られないように平常心を装って言った。
「なんのこと?」
「私はあなたに生きてほしい。だから…。こうするしかないのです。」
男の人がきた。そして私の腕を引っ張っていく。
この女、私の質問に答える気など無いようだ。
私は抵抗する気力が無く、連行されるしかなかった。
そしてある部屋に監禁された。
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