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プロローグ 闇の復活

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「ついに、この日がやってきたわ……」

  闇の世界で一人の女性がつぶやいた。
  彼女の目の前には、魔法陣の描かれた大きな扉があった。
その魔法陣は古い神話の時代に神々がした封印である。だが、長い時を経てその封印の力は弱まっていた。

「あの忌々しい神たちに封印されたあの方を、ようやく解放することができる……」

  見るだけで忌々しい封印。これをついに破る日がきたのである。
彼女は闇の力を蓄えたオーブを取り出し、その力を解放する。
手に持ったオーブからは黒い泥があふれ出し、徐々に扉に近づき封印の魔法陣を黒く染め上げていく。

ピシッ

  魔法陣にヒビが入る。
  徐々にヒビは広がっていき、魔法陣を覆い尽くす。

「砕けなさい、神の造りし封印よ……」

  指をならすと、魔法陣は大きな音をたてガラスのように砕け落ちた。
大きな扉が重々しく開きはじめる。
僅かな隙間からでも感じられる強大な力に、彼女は喜びと少しの恐怖を感じながら身を震わせた。
ゆっくりと扉が開いていく。そして扉が開いたそこに、一人の男性がいた。

「ああ、おかえりなさいませ……、ハデス様……」

ハデスと呼ばれた、銀髪で大柄な男がそこにはいた。
そしてゆっくりと彼女に話しかけた。

「その声、ペルセポネか……」
「はい、ハデス様のペルセポネでございます。」

彼女はすぐに跪き答えた。久しぶりに聞く声に感動をするペルセポネ。

「クハハハッ、よくぞ復活させた!これで我を封印した神どもに復讐ができるというものよ!」

ハデスは高らかに笑いながら、これからの復讐を想像し興奮した。

「しかしながら、ハデス様の封印後に全ての使徒は敗れ、世界を攻めるには戦力が足りません……」

ペルセポネはハデスに、封印されていた間のことや闇の世界の現状を報告する。

「ふむ、そのようなこと、すぐにどうにかして見せるわ。」
「えっ……」

ハデスの目の前に巨大な魔法陣が展開された。
ペルセポネはこれが召喚の魔法陣であるとすぐにわかったが、これほどまでに大きいものは見たことがなく驚愕した。

『いでよ、我が使徒たちよ』

魔法陣が目がくらむほどに輝きを放つ。
そして大きな爆発音とともに、使徒の召喚が行われる。
巨大な魔法陣から現れたのは、強大な力を持った8人の使徒たち。
それは過去にハデスに付き従っていた、闇の世界の最強の使徒たちだった。

「まさか……、一度にこの8人の使徒を呼び出すだなんて……」

ボソリと言った言葉に返答がくる。

「まぁ、俺らの王様ならこれくらいやるだろ」

驚くペルセポネに答えたのは、ゴブリン部隊を操る【怒りの戦士】ネメシスだった。

「はっ!また暴れられるって聞いたらワクワクしてきたぜ!」
「はぁ……、そう言ってまたひとりで突っ込んで死ぬのはやめてくださいね……」

すでに闘いの準備できているネメシスに対して呆れたように話したのは、屍人部隊を操る【死の戦士】タナトス。

「チッ!今度は油断も手加減もしねーよ!」
「ぐふっ、ぐふふっ……!」

2人のやりとりを聞いて笑う、巨人族を操る【巨人の戦士】ギガース。

「ま、ネメシスならすぐに死んでも違和感ないけどね」

追い討ちをかける、鳥人族を操る【翼の戦士】ハルピュイア。

「またネメシスがいじめられてる」
「いじめられてる」

「「ねー」」

顔を見合わせてクスクス笑う小さい双子の女の子たち。
彼女たちは【空間の魔術師】エレボスとニュクス。

「………」

それを無言で見ているのは、魔人部隊を操る【闇の魔法使い】ヘカテー。
そして会話には興味を示さず自分の剣をチェックしはじめている、一騎当千の【戦闘狂の女戦士】エリス。
ハデスはひとりひとりの顔を見た後、使徒たちに声をかけた。

「よくぞ召喚に応じてくれた、我が使徒たちよ!」

使徒たちに緊張が走る。
そしてひと言だけ……

「さぁ、闘いのはじまりだ!」

そういうとハデスはニヤリと笑みを浮かべた。
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