本田家の日常

雪桃

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仲良し三兄妹

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 拓ちゃんは奏がお説教するって言って連れて行ってしまったから私は渡り廊下で一人になってしまった。

 そりゃあ二人がかりでお説教しても意味無いけどお姉ちゃんを置いてかないでよ奏。

「そろそろ小学校も終わったかな」

 中学高校は隣同士だけど小学校はここから少し離れていて幼稚園と大学と隣接している。二股に道が別れてるから制服を着ているか着ていないかで行く方向が違うんだよね。

「可愛いおチビちゃん達のお迎えに行こうかな~?」

 私は一度校舎を出て反対側に歩いていった。
 ああそうそう。こんなに無闇に校舎を行き来していいのかって言う人がいるだろうけどうちは――くどいようだけど――本当にエスカレーターで上がってくる人が大半だから幼稚園児と大学生が友達だっていうことも無くはない。

 だからあまりにも粗相したり――幼稚園児にスプラッタ見せたり? ――しなければ基本自由。

 小学校は終わったみたいだね。ランドセル姿で向かう人に「さようなら」と元気よくご挨拶してる。

「あれくらい元気だと可愛いんだけどな」

 うちには小五と小二の弟がいる。どちらも両親と兄妹の愛情をもらっていて純粋に成長してくれているんです。純粋すぎるくらいに。

「れーい」
「……優姉」

 ランドセルに筆箱やらノートやらを入れた四男、れいがこちらを見た。お母さん譲りの垂れ目がまた可愛い。

「なんで来たの?」
「そりゃあ可愛い弟達に挨拶をと」
「そう思うんだったら早く起きなよ」

 ここね。正論なんだけど純粋すぎて隠すことが出来ない正直者の弟なんだよね。正直は良いんだけど。

「そろそろ門が開くでしょ? 迎えに来たの」
「寝坊した人がお迎えに来るの?」
「う、うん」

 怜くん。ちょっと遠慮ってものを学ぼうか。

「怜。剛と結も呼ぶからランドセル持ってきて」
「うん」

 シンプルな黒色のランドセルを背負しょって怜は私の後を付いてきた。

「そういえば優姉も奏姉も能力使ってたでしょ」
「うん。今日も垂れ流してたの魔力?」
「無意識に流れる」

 怜の魔法は暴走する魔力を押しとどめて正常に戻す役割を果たす『平衡勢力へいこうせいりょく』。

 滅多に暴走なんてしないだろうと思われるだろうけどそれがそうでもない。

 無意識に、感情が昂る時、更にはただ呆けている時も強目に魔力を垂れ流してしまうと魔法が発動してしまう。

 そんな時に怜はわざと魔力を垂れ流しているので相殺されて暴走せずに済むという訳です。因みに魔力に触れてるから誰がどの魔法を使ったか分かるらしい。

「剛いないね」
「うん。教室はここであってるはずだよ」

 小二のクラスに行っても五男、こうはいなかった。

「結のところに遊びに行ったんじゃない?」
「かもね」

 第二の可能性がある場所まで足を運んでみる。そしたらいたんだな。正義感の強い弟と大人な妹が。

「じゃあくなるきょうぼうな犬め! ぼくがたいじしてやる!」

 大人が言ったら確実に変人扱いされる言葉を発したのは弟である剛。その後ろで隠れているのがまだ保育園児のゆい。二人の目の前には保育園と小学校が飼っている人懐こい子犬。

「だいじょうぶだぞ結。お兄ちゃんが守ってやるからな!」
「…………」

 結が困り眉で剛の方を見ている。それは犬を怖がっているのでも兄を心配しているのでも無くて

物体ぶったいかい

 結が魔法を唱える。興奮している剛の耳には聞こえていないみたいけど。

 剛が一人で子犬と睨み合っている間に結が背中から顔を覗かせて子犬をじっと見つめる。その直後、子犬は吠えることもなく小屋へ戻っていった。

「どうだ結! お兄ちゃんがやっつけてやったぞ!」
「……うん。すごいね剛おにいちゃん」

 結が諦め半分で剛を褒めている。今子犬が帰ったのは剛にビビった訳ではなく、結が子犬と会話・・したから。

「剛、結」
「あ! 優姉に怜兄。今日も僕は結を守りました」
「結が説得しただけ……」
「怜! そうだったんだ。剛偉いね」

 剛の頭を撫でて褒めてやる。結が説得したのは間違いじゃないんだけど。

 結の魔法は『物体会話』。動物や無機物――机に椅子etc.――と会話が出来る。今の子犬とも多分

「こいぬさん。いまはあそべないの。ごめんね」

 的なことを言ったんじゃないかな。結は九兄弟の中で二番目に大人な子だから。恐ろしい子。

「もうすぐ門が開くから先に校門に行ってよ」
「うん」

 その後、お説教をした奏と受けた拓ちゃんとも合流して一緒に家へ帰っていった。

 他の兄二人は大学生なので帰りは遅いのです。
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