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本編
いじめ
しおりを挟む自分の家に戻るため電車に乗る。
蓮に合わせる顔がないな。蓮は付き合い始めたころから周囲に自分たちが付き合ってるという情報を広めようと言っていたな。だけど私が周囲からの視線と批評が恐くて関係を秘密にした。今回のことだって山下さんに私たちのことがバレたって蓮に相談すれば彼はうまく対処してくれただろうし周りにバレても蓮はむしろ喜々として広めただろう。
ただ私の気持ちが着いて行けないだけ。蓮の足手まといになるのはいつも私…
『次の駅はーーー。次の駅はーーー。』
「降りなきゃ。」
重たい足を叱咤し頑張って家に帰る。
久しぶりだな家に帰るのは。すっかり蓮の家に慣れてしっまた。彼の家は蓮の香りがしていつも蓮が私のことを優しく包んでくれて温かい。
思い出すと際限がなく心が蓮を求める恋しくてもどかしい。いや、一番もどかしいのは自分の弱さか。
家に帰るのは掃除の時だけ。前に来たのは二週間前だったかな一応郵便受けも確認しておくか。
私はそう決めて自分の部屋の番号の郵便受けを開く。
ガチャッ
バサバサッ
「…え?」
久しぶりに開いた郵便受けからは大量の写真が出てきた。
「な、なにこれ?」
ドサッ
持っていた荷物が手から滑り落ちていく。大量の写真には私が映っていた。一人のものもあれば恵美や雛友達といる写真、昨日山下さんから見せられたものとは違う蓮といる時の写真があった。
「…手紙?」
郵便受家の一番奥には手紙が入っていた。私は恐る恐るそれを手に取る。送り主の名は無く、宛先であろう私の名前だけがプリントされていた。
「ひゅっ」
呼吸が止まる。
後ろに振り向き周囲を確認する。誰もいない。
他に住人が居なかったので急いで散らばった写真と手紙、落としてしまった荷物を手に取り自分の家の鍵を開け中に入る。
靴を脱ぐ力も無く玄関にしゃがみ込む。荷物も手から離れて床に散らばる。
「はっはっ…うぅっ」
恐怖から涙が次々に零れてくる。怖い。
山下さんの所に写真が届いたっていうことは他の誰か、第三者が写真を撮っていたわけで…
中には大学の写真もあるっていうことは同じ大学の人?
いつもなら私が泣いていると蓮が助けて慰めてくれるけど今は一緒にいない。私から離れたのに会わす顔もない。
どうしよう…
一人が怖い。家族が苦手で一人でいる方が居心地が良かったのにいつの間にか蓮と一緒にいることが当たり前になっていた。
まだ、蓮には私がいなくなったことバレてないよね。今から蓮の家に戻るのは。それか、実家に帰るとか……
家族が苦手で一人暮しをしてる部屋に戻ったけど実家ならまだ、家族がいて一人ではないし、蓮も場所は知らないから見つかることはないだろうし。でも、ずっと大学に行かないと怒られちゃう。
そもそも、学部が同じだから蓮と顔を合わせないなんて不可能なんだよね。留年なんてしたら怒られるどころじゃない。
「……本当にどうしよう。警察に通報した方がいいのかな。でも、騒ぎにはしたくないし…。はぁ、蓮と付き合わなかったらこんなこと無かったんだろうな。」
私は立ち上がってベッドに向かう。
ぼふっ
「疲れちゃった。冷蔵庫からっぽだから何か買いに行こうかと思ってたけど怖くて外出歩く気にもなれないし。」
蓮と付き合わなかったらこんなこと起こらなかった……
付き合った当初からわかってた。蓮とは釣り合わないなんて。他大学の生徒でも知ってる有名人と平凡な私。釣り合わないなんて誰にだってわかる。
でも、蓮といる時間はまるで日向ぼっこをしているみたいに暖かくて居心地が良かった。私にはそこから離れることができなかった。周りにバラす勇気なんて持って無かったのに。私は甘えていたんだ蓮に。
そして、今回の件。最初から情報を流しておけば山下さんにファンクラブに教えるなんて脅されなかっただろし。蓮にも相談していたかもしれない。
「結局私が原因か。」
今日はもう寝よう。一人で寝るのなんて久しぶりだな。
いつも隣にある温もりがなくて寒い。一人ってこんなに寂しかったけかな……
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