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雲の上_2
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見張りはどうした。
ギガンが振り返ると、そこには黒地に赤のラインが入るフライトジャケットにジーンズ姿の若い男が立っていた。
明るい鳶色の髪に年代物のスニーカーを履いたラフな格好の男は、足音もさせずに暗い室内へと入ってくる。
目鼻立ちがくっきりとした男だが、どこかしら人間味に欠け、やや古臭いような風貌をしている。
もはや過去の記録媒体となったビデオテープに封じられた、ぼやけた風景から抜け出してきたかのようだ。
彼は、非番の日に基地に寄ってみたとでも言いたげな身軽さで数歩ギガンに近づく。
「ん? 攻撃しないのか。君みたいなのはすぐに叫んで武器を振り回すのが多かったけど、時代は変ったな」
ギガンが腰に吊っていたレーザーガンを指差し、男は感慨深そうに呟いた。
「それに、僕に会っても全く驚かないんだな、君は」
男の黒い虹彩から興味深そうな視線がギガンの顔に降り注がれる。
「どのみち出しゃばってくるだろうとは思ってた。まさかこんなイかれた部屋に住んでるとは思わなかったけどよ」
「何を言っているんだ。ここは職場だぞ。僕らの家じゃない」
男は苦笑しながら大げさに肩をすくめてみせる。
彼の動作はいちいち演技臭く、ギガンの眼にはこちらを挑発しているようにしか映らなかった。
「ならてめえらの家はどこだ。地球じゃねぇんだろ」
男は微笑したままの顔をフリーズさせる。
このような質問は長いこと受けていなかったせいか、最も適した表情を選択することに僅かな時間が要るようだった。
「──僕らは異なる次元からこの時空のニンゲンを救う使命を」
「はぐらかすな。お前らは何だ? 俺らの頭含めて、お前らは何が目的で活動してる」
ディメンション・パトロールとは一体何だ、と問われていたのなら、彼は「次元の壁を越えた悪の怪人と戦い、人類を守る者」という模範解答をしただろう。
だが、ギガンはこの地に降り立った第四超越・教団とディメンション・パトロールとを一緒くたにして質問をしている。
このような問いは男の長い長い生命活動の中でも初めてのことで、彼は身体の奥にある冷え切った核が僅かに熱を持つような感覚を覚えた。
「俺はお前らがニンゲンの守護者だなんてちっとも思っちゃいねえ。アレだろ、悪の帝王とグルになってニンゲンと怪人使って人形遊びしてるだけなんだろ? なあ」
ギガンの言葉に初代ヒーロー、ディメンション・パトロール・レッドはいかにも傷ついたという顔で首を振った。
「それは違う。君たちの創造主と僕らは繋がってなどいない。互いに同調するところはあるが、僕らは全力だ! そうでないと面白くない」
まるで八百長を疑われたスポーツマンのような言いぐさに、ギガンの眉間に皺が寄る。
「なら冥途の土産に教えてくれよ。どうせあいつの脳味噌に介入した記憶残したのもお前だろ」
暖馬をヒーロー隊員に起用し、失敗した男だ。
きっと同族以外が自分の功績を覚えていないまま逝くことに我慢がならないのだろう。
ギガンには理解が出来ないが、ヒトでもヒト以外でも、本当の自分を知っていて欲しいという欲が強い生物は一定数存在する。
こいつもそうに違いない。
自分の痕跡を散りばめて、自分には他の姿があるのだと、他の意思があるのだと、意味深に投げかけて他者から追われることを望んでいる。
目の前の男が見た目通りのニンゲンなら、ニンゲンの書いた自己啓発本の通販リンクでも送りつけていたかもしれない。
だが、厄介なことにこの生物は神にも等しい規格外の力を持っている。
相対して口を割らせない限り、今この地上で生まれた者たちはディメンション・パトロールについて何一つ分からないっま死んでゆくだろう。
正義の光の下、跡形もなく消されることを想定していたギガンは、曇りのない言葉でディメンション・パトロールへ疑問をぶつけた。
「多くの者が僕らの正体について知りたがった。だけど、ここまで僕らの組織を追い詰めた汎用型怪人は初めてだな。敬意を表して、僕らの歴史とこれからのことを教えてあげよう」
お前、ヒーローだったくせに悪の親玉みたなこと言ってんな。
そう言ってやりたかったギガンだったが、口を引き結んで辛抱強く男の二の句を待つ。
そしてギガンに向けて放たれた言葉は、予想だにしていないものだった。
「君は、生きていて楽しいか?」
「……は?」
🌌
少し長い話になるかもしれない。
椅子でも用意しようか。
いらない?
そうだな、君は数年立ち続けても壊れないくらい頑丈そうだ。
そんな顔するな。
このヒーローエンブレムに誓って、僕は真実を話すと約束するぞ!
えー、どこからにしようかな。
まあ、そもそもこの惑星に来ることになったのは、今の第四超越・教団が原因であることには間違いない。
そうでなくともいずれこの辺りには寄ったと思うが、もっと違う形でニンゲンと出会っていたと思うぞ。
それで、僕らが何なのかということだけど。
うーん……。
君の脳味噌で理解してもらえるとは思えないが、良い子の皆に向けて言うのであれば、僕らは星のエネルギーを宿した生命体だ。
怪人は口が悪いな。
よし、そうだな、ニンゲンが好きなアレでどうだ?
月とか、火星とか、天体がヒトの形を取ったと思ってくれて構わない。
うん?
よく無機物や動物をヒトの姿で描いてるじゃないか、ニンゲンは。知らない? そうか。
まあそういう感じだ。これ以上はいいだろう。
僕らは遠い遠い、広がり続ける宇宙の果てで生まれ、ニンゲンの何十億倍くらいの寿命と力があるんだ。
まだ生まれたての頃、三億年くらいは経済活動で他と競ってみたり、星そのものを開拓してみたり、色々やるんだけれど、やっぱり飽きてきてね。
自殺しようにも、生きたエネルギーが噴き出すから恐ろしい範囲を吹き飛ばしてしまうし、多分想像を絶するくらいに痛いだろうからやりたくない。
だから僕らの仲間の多くは、他の銀河系や多次元を旅して、知的生命体がいる星で生きる楽しみを見つけようとする。
神を名乗って崇められたり、怪物になって暴れたり。
楽しいぞ。
ほんのわずかな時間だけれど。
ちょうど僕らがちょっとやらかしてしまって、一つの星が駄目になって困ってたんだけど、そうしたら近くで退治されたがりが沢山の知的生命体が繁殖してる星を見つけたって噂になってね。
簡単に言うと、便乗したんだ。
罪滅ぼしというわけでは無いけど、ここでこの地に暮らすイキモノに協力してあげるのもいいかな、と思ってさ。
それにニンゲンも正義と悪が戦うのが好きみたいだからな。楽しかったんじゃないか。
最初はニンゲンを模写して、力を制限して帝王君の造った下等生物と戦うのはスリリングで良かった。
だけどやっぱり、自分達でやるより現地の生物が動いているのを見ているほうが楽しくてな。
死に物狂いで頑張るニンゲンと怪人を見ていると、こちらの核も温まるんだ。
……何でそんな顔するんだ?
瞬きするほど短い寿命を削って生きるニンゲンは、彗星よりも輝いている。
僕は好きだ。
帝王君も君たちのことを同じように思って使ってるんじゃないか。
その証拠に、君の身体をそんな風に修理したんだからね。
他に替えならいくらでもいるのに。
ああ、そうだよ。僕もそうしたかった。
鉛暖馬隊員は、絶対に正規隊へ入隊させるべきだったと、今でも思っている。
だけど、他の三人が反対して、残りの一人は興味がないと言った。
そう。
現地のルールに則って多数決だ。
つまらないな。
個性豊かな人員が反発しあう様が見てて楽しいのは数週間程度だろう?
だから調整役のいぶし銀ってやつを入れたかった。
だが僕の願いは叶わなかった。
暖馬隊員もがっかりしていたよ。
暖馬隊員の入隊まで無かったことにされては困るから、外部の誰かが観測してくれればと思って、あんな真似をしたんだ。
基地の警備を手薄にしたり、色々指示を飛ばしたけれど、うまい具合に帝王君が察知してくれたね。
ああ、勘違いするな。
悪の組織と僕らが繋がるはずがない!
僕らはニンゲンの味方だ。
……この国的に言えば、空気を読んでくれたってところかな。
帝王君だって変化は欲しいだろうさ。
いや、本当によかった。
僕のヒーローが消滅せずに済んで。
ありがとう、怪人君。
🌌
長講を終えた地球外生命体は、胸のつかえがとれたと言わんばかりに自分の手で鳩尾の辺りを撫で回した。
「ヒーロー図鑑にも書かれていない、ディメンション・パトロールのひみつを知った感想は?」
わずかな相槌しか言葉を発さなかったギガンへ、星の男が目を輝かせて尋ねる。
ギガンの顔は苦み走っていたが、男に問われた時には嘲りを含んだ笑みが口の端に浮いていた。
「壮大な話ご苦労さん。随分低俗で安心した」
その言葉に男の顔が僅かに曇る。
「酷い言い草だな。誰も知らない秘密を教えてやったのに」
「俺が最初に言った人形遊びと何が違う。甲虫捕まえて相撲やらせてるニンゲンのガキと一緒じゃねえか。それで? 俺等潰した後に、また新しい奴らをぶつけて遊ぶのか?」
「君は何もわかっていない。僕らは高みの見物を決め込んでいるわけではない。生の鼓動が欲しいんだ。僕らは不老不死ではない。生きている間に血潮を滾らせたい」
真剣な目つきで胸の前に握りこぶしを作る男の姿は、ギガンでさえ不気味に思った。
あまりに利己的で一途な思いに、ギガンは吐き気を覚え始める。
「きっとニンゲンも、君たちも、互いに争うことに飽きと疲弊を感じているだろう。僕らもだ。だから、ニンゲンと怪人が手を取り合って戦えるよう、次のステージを用意した」
「はあ?」
「この星全てを呑み込むくらいの大凶星、恐怖の大王を降らせよう! みんなで一緒に戦うんだ!」
男が叫ぶ。
その声に反応するように、耳をつんざくほどの雷鳴が鳴り響いた。
つづく
ギガンが振り返ると、そこには黒地に赤のラインが入るフライトジャケットにジーンズ姿の若い男が立っていた。
明るい鳶色の髪に年代物のスニーカーを履いたラフな格好の男は、足音もさせずに暗い室内へと入ってくる。
目鼻立ちがくっきりとした男だが、どこかしら人間味に欠け、やや古臭いような風貌をしている。
もはや過去の記録媒体となったビデオテープに封じられた、ぼやけた風景から抜け出してきたかのようだ。
彼は、非番の日に基地に寄ってみたとでも言いたげな身軽さで数歩ギガンに近づく。
「ん? 攻撃しないのか。君みたいなのはすぐに叫んで武器を振り回すのが多かったけど、時代は変ったな」
ギガンが腰に吊っていたレーザーガンを指差し、男は感慨深そうに呟いた。
「それに、僕に会っても全く驚かないんだな、君は」
男の黒い虹彩から興味深そうな視線がギガンの顔に降り注がれる。
「どのみち出しゃばってくるだろうとは思ってた。まさかこんなイかれた部屋に住んでるとは思わなかったけどよ」
「何を言っているんだ。ここは職場だぞ。僕らの家じゃない」
男は苦笑しながら大げさに肩をすくめてみせる。
彼の動作はいちいち演技臭く、ギガンの眼にはこちらを挑発しているようにしか映らなかった。
「ならてめえらの家はどこだ。地球じゃねぇんだろ」
男は微笑したままの顔をフリーズさせる。
このような質問は長いこと受けていなかったせいか、最も適した表情を選択することに僅かな時間が要るようだった。
「──僕らは異なる次元からこの時空のニンゲンを救う使命を」
「はぐらかすな。お前らは何だ? 俺らの頭含めて、お前らは何が目的で活動してる」
ディメンション・パトロールとは一体何だ、と問われていたのなら、彼は「次元の壁を越えた悪の怪人と戦い、人類を守る者」という模範解答をしただろう。
だが、ギガンはこの地に降り立った第四超越・教団とディメンション・パトロールとを一緒くたにして質問をしている。
このような問いは男の長い長い生命活動の中でも初めてのことで、彼は身体の奥にある冷え切った核が僅かに熱を持つような感覚を覚えた。
「俺はお前らがニンゲンの守護者だなんてちっとも思っちゃいねえ。アレだろ、悪の帝王とグルになってニンゲンと怪人使って人形遊びしてるだけなんだろ? なあ」
ギガンの言葉に初代ヒーロー、ディメンション・パトロール・レッドはいかにも傷ついたという顔で首を振った。
「それは違う。君たちの創造主と僕らは繋がってなどいない。互いに同調するところはあるが、僕らは全力だ! そうでないと面白くない」
まるで八百長を疑われたスポーツマンのような言いぐさに、ギガンの眉間に皺が寄る。
「なら冥途の土産に教えてくれよ。どうせあいつの脳味噌に介入した記憶残したのもお前だろ」
暖馬をヒーロー隊員に起用し、失敗した男だ。
きっと同族以外が自分の功績を覚えていないまま逝くことに我慢がならないのだろう。
ギガンには理解が出来ないが、ヒトでもヒト以外でも、本当の自分を知っていて欲しいという欲が強い生物は一定数存在する。
こいつもそうに違いない。
自分の痕跡を散りばめて、自分には他の姿があるのだと、他の意思があるのだと、意味深に投げかけて他者から追われることを望んでいる。
目の前の男が見た目通りのニンゲンなら、ニンゲンの書いた自己啓発本の通販リンクでも送りつけていたかもしれない。
だが、厄介なことにこの生物は神にも等しい規格外の力を持っている。
相対して口を割らせない限り、今この地上で生まれた者たちはディメンション・パトロールについて何一つ分からないっま死んでゆくだろう。
正義の光の下、跡形もなく消されることを想定していたギガンは、曇りのない言葉でディメンション・パトロールへ疑問をぶつけた。
「多くの者が僕らの正体について知りたがった。だけど、ここまで僕らの組織を追い詰めた汎用型怪人は初めてだな。敬意を表して、僕らの歴史とこれからのことを教えてあげよう」
お前、ヒーローだったくせに悪の親玉みたなこと言ってんな。
そう言ってやりたかったギガンだったが、口を引き結んで辛抱強く男の二の句を待つ。
そしてギガンに向けて放たれた言葉は、予想だにしていないものだった。
「君は、生きていて楽しいか?」
「……は?」
🌌
少し長い話になるかもしれない。
椅子でも用意しようか。
いらない?
そうだな、君は数年立ち続けても壊れないくらい頑丈そうだ。
そんな顔するな。
このヒーローエンブレムに誓って、僕は真実を話すと約束するぞ!
えー、どこからにしようかな。
まあ、そもそもこの惑星に来ることになったのは、今の第四超越・教団が原因であることには間違いない。
そうでなくともいずれこの辺りには寄ったと思うが、もっと違う形でニンゲンと出会っていたと思うぞ。
それで、僕らが何なのかということだけど。
うーん……。
君の脳味噌で理解してもらえるとは思えないが、良い子の皆に向けて言うのであれば、僕らは星のエネルギーを宿した生命体だ。
怪人は口が悪いな。
よし、そうだな、ニンゲンが好きなアレでどうだ?
月とか、火星とか、天体がヒトの形を取ったと思ってくれて構わない。
うん?
よく無機物や動物をヒトの姿で描いてるじゃないか、ニンゲンは。知らない? そうか。
まあそういう感じだ。これ以上はいいだろう。
僕らは遠い遠い、広がり続ける宇宙の果てで生まれ、ニンゲンの何十億倍くらいの寿命と力があるんだ。
まだ生まれたての頃、三億年くらいは経済活動で他と競ってみたり、星そのものを開拓してみたり、色々やるんだけれど、やっぱり飽きてきてね。
自殺しようにも、生きたエネルギーが噴き出すから恐ろしい範囲を吹き飛ばしてしまうし、多分想像を絶するくらいに痛いだろうからやりたくない。
だから僕らの仲間の多くは、他の銀河系や多次元を旅して、知的生命体がいる星で生きる楽しみを見つけようとする。
神を名乗って崇められたり、怪物になって暴れたり。
楽しいぞ。
ほんのわずかな時間だけれど。
ちょうど僕らがちょっとやらかしてしまって、一つの星が駄目になって困ってたんだけど、そうしたら近くで退治されたがりが沢山の知的生命体が繁殖してる星を見つけたって噂になってね。
簡単に言うと、便乗したんだ。
罪滅ぼしというわけでは無いけど、ここでこの地に暮らすイキモノに協力してあげるのもいいかな、と思ってさ。
それにニンゲンも正義と悪が戦うのが好きみたいだからな。楽しかったんじゃないか。
最初はニンゲンを模写して、力を制限して帝王君の造った下等生物と戦うのはスリリングで良かった。
だけどやっぱり、自分達でやるより現地の生物が動いているのを見ているほうが楽しくてな。
死に物狂いで頑張るニンゲンと怪人を見ていると、こちらの核も温まるんだ。
……何でそんな顔するんだ?
瞬きするほど短い寿命を削って生きるニンゲンは、彗星よりも輝いている。
僕は好きだ。
帝王君も君たちのことを同じように思って使ってるんじゃないか。
その証拠に、君の身体をそんな風に修理したんだからね。
他に替えならいくらでもいるのに。
ああ、そうだよ。僕もそうしたかった。
鉛暖馬隊員は、絶対に正規隊へ入隊させるべきだったと、今でも思っている。
だけど、他の三人が反対して、残りの一人は興味がないと言った。
そう。
現地のルールに則って多数決だ。
つまらないな。
個性豊かな人員が反発しあう様が見てて楽しいのは数週間程度だろう?
だから調整役のいぶし銀ってやつを入れたかった。
だが僕の願いは叶わなかった。
暖馬隊員もがっかりしていたよ。
暖馬隊員の入隊まで無かったことにされては困るから、外部の誰かが観測してくれればと思って、あんな真似をしたんだ。
基地の警備を手薄にしたり、色々指示を飛ばしたけれど、うまい具合に帝王君が察知してくれたね。
ああ、勘違いするな。
悪の組織と僕らが繋がるはずがない!
僕らはニンゲンの味方だ。
……この国的に言えば、空気を読んでくれたってところかな。
帝王君だって変化は欲しいだろうさ。
いや、本当によかった。
僕のヒーローが消滅せずに済んで。
ありがとう、怪人君。
🌌
長講を終えた地球外生命体は、胸のつかえがとれたと言わんばかりに自分の手で鳩尾の辺りを撫で回した。
「ヒーロー図鑑にも書かれていない、ディメンション・パトロールのひみつを知った感想は?」
わずかな相槌しか言葉を発さなかったギガンへ、星の男が目を輝かせて尋ねる。
ギガンの顔は苦み走っていたが、男に問われた時には嘲りを含んだ笑みが口の端に浮いていた。
「壮大な話ご苦労さん。随分低俗で安心した」
その言葉に男の顔が僅かに曇る。
「酷い言い草だな。誰も知らない秘密を教えてやったのに」
「俺が最初に言った人形遊びと何が違う。甲虫捕まえて相撲やらせてるニンゲンのガキと一緒じゃねえか。それで? 俺等潰した後に、また新しい奴らをぶつけて遊ぶのか?」
「君は何もわかっていない。僕らは高みの見物を決め込んでいるわけではない。生の鼓動が欲しいんだ。僕らは不老不死ではない。生きている間に血潮を滾らせたい」
真剣な目つきで胸の前に握りこぶしを作る男の姿は、ギガンでさえ不気味に思った。
あまりに利己的で一途な思いに、ギガンは吐き気を覚え始める。
「きっとニンゲンも、君たちも、互いに争うことに飽きと疲弊を感じているだろう。僕らもだ。だから、ニンゲンと怪人が手を取り合って戦えるよう、次のステージを用意した」
「はあ?」
「この星全てを呑み込むくらいの大凶星、恐怖の大王を降らせよう! みんなで一緒に戦うんだ!」
男が叫ぶ。
その声に反応するように、耳をつんざくほどの雷鳴が鳴り響いた。
つづく
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