炎上したので蛇人だらけの島に左遷されました

青野イワシ

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天笠との生活

絶頂と自作自演

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「貴方の負けです。あまり抵抗しないように」
「う……」
 噴き出た雄潮は畳に幾つかの染みを作った。
 恥ずかしい敗北の証だ。
 尚も硬度を保った二本の肉棒を扱き上げながら、天笠は自らの尾で拘束している健人の身体を引き寄せる。
「イきたいですか」
 勝負に勝ち、すっかり支配者然とした態度の天笠は、健人の耳元で囁き、許しを請うように仕向ける。
 ぐちゅぐちゅと音をさせながら淫汁まみれの肉棒を擦り続けると、天笠の目にはニンゲンのものが熱く硬く膨らんで暴発寸前のように映った。
 まだ反抗心があるらしく、顔を反らす健人に天笠は追撃を加える。
 空いた手で健人の乳首をつまみ、ぎゅっと伸ばすようにして引っ張った。
「んひぃ!?」
 突然の刺激に健人の身体が跳ねる。
 裏返った声は痛みではなく快楽を感じている証拠だった。
 ──思ったよりもマゾなのか、このヒトは。
 指の腹でくりくりと乳頭をこねくり回してやると、健人は眉を下げてもどかしそうにしている。
 「乳首も弱いんですね。ほら、イきたいならちゃんと言ってください、ニンゲン雑魚チンポイかせてくださいって」
「そんなっ……」
「もうやめましょうか? このまま帰りますか?」
 既に潮も吹き、股間の奥からぐんぐんと白い溶岩が上っていく感覚をひしひしと感じる健人は、ついに射精欲に抗えなくなった。
「いっ、イかせてください……」
「何を? この粗末なモノは何でしたっけ」
「人間のっ、雑魚チン、イかせてくださいっ……!」
 恥辱に火照った顔を歪め、健人は懇願する。
 すると、天笠はすいと蛇腹を引いて自らの肉棒を健人のモノから離した。
 そして、しっかりとぬらついた肉棒を片手で握る。すっかり二本の猛ったモノの熱が移った手の中は、淫汁のお陰で生温かい肉の筒となっている。
 そしてそり返るほど勃起した肉棒を、くちゅくちゅくちゅくちゅと淫猥な水音をさせ、激しく扱き上げた。
「イけ、負け犬」
 低く掠れた声が、嘲り混じりの命令を飛ばす。
「あぁイくっ、う゛ぅっ……!」
 健人は後ろ手に拘束されたまま腰をのけ反らせ、発射の恍惚感にぶるりと身体を震わせた。
 ぐんぐんと肉棒の内の管から上がってきた熱い精液が、ついに竿の先から放出される。
 びゅっ、と粘ついた粘液が天笠の蛇腹にかかり、どろりと溝の間に垂れ落ちた。

 射精の余韻と冷めていく熱に呆然としている健人の身体から、するすると蛇の胴体が退いていく。
 畳の上に膝をついた健人の頬に、ぐい、と熱く湿ったものが押し付けられた。
 それはまだ血管を浮き立たせた極太双亀頭蛇人肉棒だった。
 「要は硬さとモチ、でしたっけ?」
 べちべちと猛った肉棒が健人の頬を軽くはたく。
 片眉を上げて勝ち誇った顔の天笠は、雄の象徴を誇示するように健人の顔面にそれを押し付けた。
「ニンゲンにはどっちも無いみたいですね。それにさっきのアレ、本当にザーメンですか? しょうもないモノかけてくれたお礼です。本物の射精、見せてあげますね」
「な……」
「目、閉じておいた方が身のためですよ」
 まさか。
 健人は急いで目を閉じる。
 AVで何十何百と見たものだ。
 ぎゅっと硬く瞳を閉じると、次の瞬間、健人の顔面に勢いよく熱いものが降り注いだ。
 二つの頭から発射されたそれは、ホースで散水するかの如く、健人の顔中に白濁した粘液をぶちまける。
 発酵した烏賊のような饐えた匂いが、健人の鼻腔を覆う。
「うぅ……」
 ぼた、ぼた、と顎を伝って蛇人ザーメンがの畳の上へ丸い水たまりを作った。
 膝をついてへたり込み、顔をしかめて精液を拭うニンゲンの仕草は、まるで屈辱と嫌悪感で涙を拭っているようにも見える。
 その情けない姿に、ぞくぞくと天笠の背筋が歓喜に震えた。
 精液を拭うのに必死な健人には見えていなかったが、思わず鋭い牙が覗くほどいびつな笑みが浮かんでいた。
 ──もっとだ、もっと見たい。
 我を忘れ、さらにニンゲンを辱めたい欲望が膨らむ。だが、左腕に巻いた銀色の腕時計がそれを抑え込んだ。
 そろそろ巡回を終えた先輩が戻ってくる頃合いだ。
 恐らくこれを見られても咎められることはないはずだ。それどころか、俺にも遊ばせろと言ってくるだろう。
 ──それは嫌だな。
 自分が声をかけ、捕まえた稀少な獲物だ。
 おいそれとは渡せない。
 我慢強く、執念深く、嫉妬深い。
 他種族が想像する蛇人の気質は、それなりに当たっている。
 天笠は射精後特有の熱の引きそのままに、萎えた肉棒を蛇腹の中にしまった。
 もうお巡りさんに戻る時間だ。
 畳まれた布団の上には、枕カバー代わりのタオルがあった。
 自分が畳んだ通りの姿だ、まだ綺麗だろう。
 天笠はそれを取ると、健人の顔の上にかぶせてやった。
 突然の暗闇に暴れようとする健人に圧し掛かり、動きを封殺する。
 健人の身体は黄と黒の蛇体の下敷きだ。
「大丈夫、大丈夫ですから」
 雑に顔を拭いながら、天笠は覆いかぶさって健人の首筋に牙を立てる。
 初回より、少しだけ毒の注入量を増やす。
 しばらくすると蛇腹の下で手足をバタバタさせていたニンゲンが静かになった。
 タオルを退け、昏倒した人間が呼吸をしていることを確認すると、天笠は解毒薬のアンプルと注射器を取りに、一階へと降りて行った。

ʘ

「だから一人で出かけちゃ駄目だって、言ったじゃないか」
「ごめん……」
「たまたまパトロールしてた警官がいたから良かったけど、いや、それでも助けてもらえない時もあるし、とにかく絶対単独行動は禁止!」
「わ、わかったよ。迷惑かけないようにするから」
 憤慨する赤星の剣幕に押され、健人はすごすごと自室へと引っ込んだ。
 扉を閉め、噛み痕の残る左肩に手をやる。
 見ず知らずの蛇人に噛みつかれたなど、気色が悪いで済む話ではない。
 だが、蛇人である赤星の前でそれも言えない。
 まさか朝飯を買いに行くだけで、暴漢に襲われるとは──
 
『──か? 大丈夫ですか?』
 薄暗い路地で、誰かが健人の身を抱きかかえている。背中には、ひんやりとした鱗の感触。
 目を開けると、若い警官が健人へ必死に呼びかけていた。
 面長のすっきりとした顔には、気づかわしげな色が浮かんでいる。
 全身が痺れ、満足に口を開くことも出来ない。
 官帽の影が差す警官の顔を見返すのがやっとだ。
 ──おれはいったい、なにを……。
 少しだけ首が動かせるようになり、眼の端にちらつく何かを見る。
 ひび割れ、隙間から苔が生えたアスファルトの地面の上に、ポケットに入っていたはずのスマートフォンと財布が投げ出されている。
 酷い二日酔いになったかのようだ。
 ぐらぐらと視界が揺れ、いつの間にか増えている警官の声も右から左だ。
 無線機から出る声と肉声とが、聞き覚えの無い数字や略語を喋り、朝の雑居ビル裏に張り詰めた空気が流れる。
『同族?』
『赤クラです。遠縁といえば遠縁ですが』
『それニンゲンにも効くか?』
『恐らく。……ちょっと我慢してくださいね』
 若い警官がぐったりとした健人を後ろから抱え、とぐろを巻いた蛇の尾の上へ座らせる。
 ──この模様、どこかで見たような……。
 健人が自分の足元をぼんやりと見つめていると、首にちくりと鋭い痛みが走った。
 注射針のようなものが、ズキズキと痛む肩に差し込まれる。
 痛みは一瞬。それからは殆ど記憶が無い。
 
 気づけば病院の簡易ベッドの上で、既に警察によって解毒剤を打たれているので何もすることが無いと言われてしまった。
 健人が完全に意識を回復すると、ニンゲンは診た事がないんで、と冷たく言い放つ中年蛇人医師に追い立てられるようにして病院を出されたのだった。
 外ではパトカーと物凄い形相の赤星、そして見覚えのある黄と黒の尾の警官が健人を待ち構えていた。
 
 ──何も覚えていない。
 状況証拠的に、健人は路地裏に潜んでいた毒持ち蛇人に噛みつかれ、財布と携帯を奪われそうになった、らしい。
 それを早朝パトロールをしていたあの・・警官が偶然発見。犯人は健人と獲物を投げ捨て目下逃走中、らしい。
 実際に噛み痕はあるし、警官に助けられているし、毒が回って意識混濁していたようだし、何もおかしくはない。
 そう思うのに、健人は何故だか腑に落ちなかった。
 どうしてだか、自分を抱き起した警官の顔ばかりが脳裏にちらつく。
 初めて会った気がしない。
 ──もっと、何か話して、触れ合ってたような……。
 そう思うと、何故だか身体の奥が熱くなった。
「まだ毒でも残ってんのかな」
 健人はわざと口にすることで、熱の興りを押さえつけようとした。
 吊り橋理論。
 そんな単語が頭をよぎる。
 ──まさか、まさかな。
 同性異種族。今まで恋愛対象になるかどうかさえ、考えたことが無かった。
 ──ちょっと助けられたくらいで、チョロすぎだろ俺……。
 頭を抱えながらベッドに腰掛けると、ぐう、と盛大に腹の虫が鳴る。
 元々朝食を買いに出たことを思い出した健人は、のろのろと立ち上がり、赤星に冷蔵庫の中身を拝借していいか聞くことにした。
 今日はもう仕事にならない。食って寝ようと、健人は決意した。

 ʘ

 正式に有給を申し出た健人は、腹を満たした後は放心状態でベッドの上に横たわっていた。
 携帯で動画を視たり電子書籍を読もうとしても、一向に頭に入ってこない。
 かといって眠れるわけもなく、昼下がりに唯々展示されたミイラの如く、シーツの上に身体を預けてる。
『大丈夫、大丈夫ですから』
 男の声が脳内再生される。
 自分を助けてくれた時の、いや、どこか違う……。
 違和感の正体を探ろうと記憶をたどる健人だが、それはある音によって中断された。
 ピンポン、ピンポン、とインターフォンが鳴っている。
 「何だ?」
 まだ暮らして短いが、この五階もノタホヴ社の社屋として看板を出しており、数少ない仕事関連の訪問者は皆四階に行くのだ。
『警察です。地域の巡回連絡です、いらっしゃいますか』
 聞き覚えのある声が機械を通じ、ドアの外から聞こえてくる。
 健人は思わず跳ね起きた。

 つづく。
    
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