15 / 34
第一章 胎動編
伍ノ詩 ~凄絶~
しおりを挟む
ズンッという衝撃で天知は飛び起きる。
「天知気がついたか。」
「隊長何があったの?」
秦宮が天知の問に答えるのが早いか再び上からの衝撃が空気を揺らし、パラパラと砂が舞い落ちる。
「上で何が起こってるか皆目見当もつかないが……二つの巨大な霊力がぶつかり合ってる。ここに居たら生き埋めになるかもね……」
秦宮は夏野里を背負い、天知に指示する。
「天知、貴方はその子を背負ってここから移動するよ。」
「はい!」
天知はスースーと寝息をたてる明美を背負い秦宮の後に続く。
夏野里は秦宮の背中で何度も申し訳ないと呟き、それを秦宮が慰めながら歩く。程なくして広間は突き当たり、コンクリートだろうか、ひんやりと冷たい材質で出来た狭い廊下がさらに奥へと続いている。恐らく数多の別々の空間が雑に繋ぎ合わされているのだろう。今まで通ってきた道に統一感はない。
「夏野里、厄災の中心はこの先ですか?」
「あぁ……この先が厄災を形成する上での要……霊地脈の歪み……その中心だ……」
大禍津姫に貫かれた傷が痛むのだろう。夏野里は歯を食いしばりながら秦宮の問に答える。
ふと目の前に鉄製の引き戸が見える。秦宮は引手に手をかけ音を立てないように少し開き、隙間から中の様子を伺う。
扉の向こう側は今まで通ってきた内装と違い、綺麗に並んだ数多の火が灯った蝋燭、そして部屋の中心に小さな社と赤黒い何かが置かれている和風作りの空間であった。扉の向こうからは水の流れる音もする。
「敵影、気配共になし……突入。」
和風作りの空間はお香の匂いが立ち込め、黒い何かのある場所を囲むように回廊になっている。下を覗き込むと底の見えない闇が拡がっている。秦宮は少し考えた後
「おそらくあの黒い何かがある社へ渡る橋があるはず……天知は左回り、私は右回りで探しますよ」
「了解」
この回廊は鶯ばりなのだろう。一歩一歩踏み出す事にギィギィと音がした。
「…………」
明美は瞼を少し開くと、ぼんやりと赤や橙の光が飛び込んでくる。ギィギィという音と共に身体と視界が少し上下する。おそらく誰かに背負われているのだろう。ほのかに洗髪剤のいい匂いもする。
「もう少し眠ろうかな……」
明美は再び瞼を閉じる。
秦宮達が入ってきた入口のとは反対側に橋があった。道中特に何もなく秦宮と天知は合流する。
「天知あれを見て……」
秦宮が指差す方……高さ五メートル程の鳥居……貫と柱の交わる場所に二体の死体が太い釘で打ち付けられている。
両目は抉られ、顔の皮を剥がされ、腹を裂かれ内臓が垂れ下がり、手足は皮一枚で繋がっている。髪の長さや着ている衣類で男女だとわかるほど凄絶な殺され方。
「うっ……」
喉の奥から酸っぱい物が上がってくる。
天知は明美をその場に下ろし、口を押えながら駆け出す。そして……欄干から下へ盛大に嘔吐する。
それを横目に秦宮は黒い何かに近づく。見た所黒い布のようだ。秦宮は黒い布を掴み意を決して剥ぐ。
布の下に居たのは星村紗季だった。いや星村紗季だったものと言うべきか……紗季の首は落とされ、抉り出された眼球、切り落とされた舌と共に三方に乗せられ小さな社に神饌の如く捧げられている。
その顔は苦痛に歪み、抉られ空洞となった眼窩からは絶えず涙を流すかの如く溢れる黒い液体……力なく開かれた口には吸い込まれそうな闇……その全てがここでの苦痛を物語っている気がする。
よくよく見ると紗季の腹部は裂け内臓がこぼれており、手に固く握られた小太刀から察するに切腹したのだろう。肉体と魂、二度の死の果てに何を感じたのか……その場に居る者達には到底理解できなかった。
「夏野里、この霊遺体がこの厄災の中心ですか?」
「あぁ、間違いない。コイツが厄災の核だな……だが妙だ。」
夏野里がフラフラと秦宮の横まで歩いてくる。そして紗季の頭に手を置き目を瞑る。程なくして紗季の頭から手を離した夏野里は秦宮の顔を見て呟く。
「やっぱり……今コイツは術式を発動していないただの霊遺体だ……だがコイツの残穢を見る限り厄災そのものはコイツの陣地だな……」
「という事は……」
「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!」
不意に背後からの叫び声に驚き秦宮と夏野里は背後を振り返る。そこにはどうすればいいか分からずオドオドしている天知と頭を抱え泣き崩れる明美がいた。
「お゛父さ゛ん゛!お゛母さ゛ん゛!あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!」
鳥居に吊り下げられた男女の亡骸……それは明美の両親だった。空間に響き渡る明美の悲鳴。その悲鳴に呼応するかのように明美の周りから黒い蛇のようなものが天井へ伸びる。顔を上げ二人を見た明美の目からは黒い液体流れ出している。それを見た二人は瞬時に目の前の現象を察し、天知に叫ぶ。
「天知!今すぐその子を気絶させて!」
天知は少し躊躇うも右手で手刀を作りごめんなさいと内心で何度も何度も謝罪しながら明美の首を叩く。
「あっ」
明美は力なくパタリと倒れる。すると今の現象がまるで嘘だったかのように天井へ伸びていた黒い何かは消え、二人は胸を撫で下ろすが、すぐさま夏野里は叫ぶ。
「天知!上から凄まじい霊力を纏った何かが急接近してくる逃げろ!」
夏野里が叫びより微かに遅れて天知の真上にヒビが入ると同時に橋全体を包む程の巨大な陣が幾重にも重なり赤紫の光を発する。
天知は何かを悟ったのか明美の胸倉を掴むと思いっきり二人の方に放り投げる。そして天知自身も二人の方に走り出す。秦宮は明美を受け止め、右手を天知に向かって突き出し、天知は秦宮の右手に捕まろうと手を伸ばす。
もう少しで橋を渡りきれる……もう少しで天知が秦宮の手を掴める……しかしそれは叶わなかった。天井の崩落と共に天知の背後五メートルに落ちてきた何かは橋に激突、崩壊させ、足場を失った天知はそれに巻き込まれる形で橋の残骸と共に下に落ちる。秦宮は明美を少し乱雑に地面に置き尚も天知に手を伸ばす。秦宮と天知、双方必死に伸ばした手は中指の先端が少し触れただけで繋がれることはなく天知の身体は橋の瓦礫と共に下に広がる闇に消える。
「天知!!」
二人の叫びに返事は返ってこない。
「クソッ!!」
秦宮は地面を殴る。
「クソックソッ」
涙を流しながら何度も何度も、手から血が流れる程何度も地面を殴る。
ふと下から声がするその声は天知のものだった。
「隊長……お願い引き上げて……早く……」
二人は急いで手すりから身を乗り出して闇を覗き込むと、そこには小刀を壁に突き刺しぶら下がる天知がいた。小刀を刺した壁は今にも崩れそうだ。
秦宮はロープを取り出すと天知に向けて垂らす。程なくして天知はロープを掴み壁から小刀を抜き腰に収め登り始める。次の瞬間その場に居た明美を除く三人に猛烈な悪寒が襲う。
━━何か得体の知れない存在に見られている━━
秦宮の身体が本能的に硬直する。
「秦宮!天知を早く引き上げろ!」
夏野里の叫びが秦宮の硬直を解くのとほぼ同時に上の穴から、これまでとは一線を画す禍々しい霊力が空間に流れ込んでくる。
秦宮は一刻も早く天知を引き上げようとロープを引く。天知の装備も相まって凄く重いが徐々に天知は登ってくる。そして天知は低い柵に手をかける。
「死ぬかと思……」
天知は右を見て硬直する。それにつられ秦宮は不意に左を見る。そこには白髪の少女が頭を下にして落下している状態で居た。先程激戦の末に撃退した大禍津姫とよく似た服装をした少女。しかし決定的に違うものが四つあった。
一つ、大禍津姫は黒い整った狐面をしていたがこの少女は右のこめかみに木の皮をくり抜いた様な不格好な手作りの狐面をつけている。
二つ、この少女は顔布をつけており、顔布には「禍津」と書かれている。
三つ、この少女に対して警戒できない。いや警戒を遥かに通り越して本能も理性もその少女に屈服した。すなわち臨戦態勢に入れないことを意味する。
四つ、少女の目は波紋のような形をしている。他の大禍津姫とは明らかに違う目。
少女は固まる三人から視線を進行方向に戻し、闇の中へと落ちてゆく。
暫くの静寂が当たりを包む。静寂を打ち破ったのは夏野里だった。
「下から来るぞ!全員何かに捕まれ!」
秦宮は明美を小脇に抱え足場の中心にある社に走り、社の柱に掴まる。程なくして下から暗い紫色をした霊力の柱が立ち上り、足場を端からゴリゴリと削り、巻き上げてゆく。
そして30秒ほど遅れ、ドゴンッと突き上げるような衝撃と音が三人を襲う。
「あぁあああぁああ!!」
「耐えろ!天知ィ!」
三人は必死に衝撃に耐える。ふと秦宮が声を上げる。
「あれを見よ!」
二人が秦宮の目線の先を見ると霊力の柱の中に黒い影がある。その影は程なくして秦宮達のいる足場にドサリッと落ち、少し転がる。それは人の形をしていた。全身は黒焦げで所々から白煙を上げている。
「化け物が……」
黒焦げの存在は口を微かに動かし悔いてから、ゆっくり身体を起こし立ち上がる。そしてビキビキと黒焦げの身体の至る所が割れ、痛みに耐えるように声を漏らしながらその割れ目に手を入れベリベリと音を立てながら次々に皮を剥ぐ。
暫くして黒焦げの皮の下から現れたのは、薄い白装束を身にまとい、髪の先端が黄緑がかった白髪をなびかせた少女。
そう華寅だ。
華虎の服装が瞬時に白装束から黒い軍服に変わり、首には御札が貼られた注連縄が現れる。
「華寅様!?」
秦宮が驚きのあまり声を漏らす。
「ん?……え、篠原!?」
「篠……原……?」
秦宮の困惑顔をみて華寅は瞬時に失言を察し訂正する。
「……いやまだ秦宮だったか。夏野里も天知もいるじゃないか。天知は相変わらず可愛いな」
華寅は天知の頭を撫でる。
「おやめください華寅様。私はもう幼子ではありません!」
天知は頬っぺを赤らめながら少し怒っている。華寅は天知を撫でながら考えていた。
「あの子達が昔の姿だという事はあの時の厄災と時間が繋がってるわけか……」
華寅は秦宮達に背中を向けて刀を抜く。
「出会いの喜びあいはここまでにしよう。来るぞ!!」
下から先程感じた禍々しい霊力が尋常じゃない速度で近づいてくるのを感じる。
ピシッ……と微かな音が聞こえ華寅は足元を見ると地面にひび割れが生じておりヒビが広がってゆく。
「真下か!!」
華寅が叫ぶと同時にひび割れた地面が砕け、先程秦宮達の前を通過した少女がその中から現れる。
少女は華寅の首を掴もうと右腕を伸ばす。その手には紫色の濃いオーラを纏っている。
「冥炎」
華寅は少女の右腕を肘から切り落とし、尚も紫色のオーラを纏い向かってくる右腕を左手での掌底で叩き落とす。そして掌底の勢いそのまま回し蹴りを少女の頬に当てる。しかし少女はビクともしない。
いや違う……いつの間にか華寅の脚が脚の付け根から切り落とされ威力を殺されたのだ。華寅は少女から距離を取り思う。
「チッ……化け物め……」
切り落とされた断面から数多の植物の芽が伸び、それぞれが絡み合い脚の形を形成し完全に再生する。
「華寅……今の再生で何回目ですか?」
息すら切らさず少女は冷たい声色で華寅に問う。しかし華寅は肉体の再生直後、しかも短期間に二度も再生し疲弊、答えられずにいた。
「あぁあああぁああ!!」
華寅は一呼吸置いた後、拳を握り少女の顔を殴ろうと拳を突き出す。
「やれやれ……」
少女は呆れた様子で華寅に背中を向ける。
バシャ……
華寅の四肢が赤い霧を漂わせ霧散するもその勢いのまま少女の首に噛み付く。
「諦めが悪いね華寅……」
少女は華寅の下顎を掴みバキャと握り砕き、そのまま地面に叩きつける。
「ケハッ……」
華寅の口から鮮血が舞う。 それを見た秦宮は無意識にケラウノスの投げていた。
少女は華寅を離すと飛んできたケラウノスを一瞥し、少し目を見開くが左手をケラウノスに向けて何かを唱える。
「削れ……「天ノ井戸」」
少女の掌から黒い球がポンっと出現し、少女はそれを人差し指と中指に挟み込んでケラウノスに向かって飛ばす。
黒い球とケラウノスの距離はどんどん近づいてゆく。しかしぶつかる寸前でケラウノスはふっと消え、尚も黒い球はこちらに向かってくる。心なしか黒い球が大きくなってる気もする……いや明らかに巨大化している。
ふと秦宮の目に理解し難い光景が見える。黒い球の周り、空間がねじ曲がってるのか景色が湾曲している。
「まさか!!」
秦宮は天知と夏野里を球の進行方向と垂直に突き飛ばし、明美を抱いて二人の元へ走り、黒い球をギリギリで回避する。黒い球は少しずつ巨大化し触れるもの全てを綺麗に抉りながら尚も進み、壁に丸い大きな穴を開け、そこから冷たい風が吹き込んでくる。
「何あれ……」
「おそらく消滅の術式もしくは掌サイズまで圧縮した擬似ブラックホールでしょうね……まぁ黒い球の周りの景色が歪んでいた以上擬似ブラックホールの可能性が高いと思います……」
秦宮の考察を聞いた天知と夏野里は言葉を失う。
少女は秦宮達から視線を戻し星村 紗季の遺体のある社に向けて歩き始める。
「待゛で……梔子姉!!」
少女は振り返り華寅を一瞥すると人差し指を立てる。すると華寅の真上に黒い霧が集まり数多の巨大な針を形成する。
「もう少し寝てな華寅……」
少女がスっと人差し指を下ろすと数多の針が華寅目掛けて落下し華寅の身体を貫いてゆく。
少女は紗季の方を向き直り、秦宮達には目もくれずにその前を横切り、紗季の霊遺体の前で立ち止まる。
「星村 紗季……陣地返してもらうよ……」
少女は紗季の頭に手を置く。
不味い……秦宮の本能が叫び無意識に再び身体を動かしていた。
「ハアアァァ!」
秦宮は雄叫びをあげ、居合の構えをとり、跳躍、一気に少女との距離をつめ抜き放つ。
「兇禍神地!斬殺呪相!」
「……ねぇ……」
秦宮の耳は少女の声とは別の異質な音を捉えた。
ヒュンッ……
次の瞬間秦宮の刀がサラサラと崩れる。
「刀を折られたり、朽ちたりするのならまだ分かる。それが砂が崩れるように破壊された?ならこの少女は何かを使ってあの一瞬で私の刀の刀身を数千回切り刻んだ事になる……」
それは少女が圧倒的に格上であることを示していた。
少女は振り返らずに少し横に寄り、通過する秦宮の額を掴み、合気の要領で床に叩き付ける。ビシビシと床にヒビが入る。
「暗部のお姉さん……奇襲の時に声を上げたり、霊力を荒らげたりしてはいけないと学ばなかったのかい?」
「あ……が……」
秦宮は辛うじて気絶を防いだようで少女を見つめている。
「あら……この程度で戦闘不能ですか……」
少女は秦宮を見下ろし、程なくして立ち上がり、星村紗季の霊遺体の頭に再び手を置く。
「解陣」
紗季の霊遺体が砂山が風に当てられ崩れるようにサラサラと崩れていく。
少女は暫く紗季の霊遺体が隠世に散っていくのを無言で眺め、最後に残った形らしいものを拾い上げるが、それすらも少女の掌の上でほろりと崩れ、消える。
「神々の犬共……」
少女は振り返る。
「え!?」
思わず声を漏らしたのは天知だった。
少女の左小脇には明美が抱かれている。秦宮は自分の隣に横たわっていたはずの明美を見る。そこには明美は居た。が、明美の身体の下から黒い液体が広がり明美はその中に沈んでゆく。
「あ!」
秦宮は明美を掴もうと手を伸ばすも沈む速度の方が速く掴めなかった。
「さて神々の忠犬共……この子達を助けたいなら隠世のもっと深淵にいらっしゃい。まあ……私を倒さないと隠世からも出れませんが……」
少女の右上にいつの間にか黒い水が浮いており、ザバンッと音を立てて明美がそこから落下、それを少女は軽々と片手で受け止め右小脇に抱える。
「さて儀式の準備は整った……」
少女はボソッと呟くと神山姉妹を両小脇に抱えたまま闇の中へ飛び降りる。意識を取り戻し、その光景を見た華寅は叫ぶ。
「梔子ィィィ!!」
その声は秦宮達が耳を塞いでも聴覚が破壊されるほど大きく、空間を揺らした。
[2008年 厄災近辺]
「ケラウノスの光から動きがないですね……サジさん」
ジェミナイがスコープで厄災の結界周辺を見ているサジタリアスに話しかける。
「確かに……ん?ヴェルゴ!?」
「え!?」
ジェミナイは驚き、サジタリアスのライフルを奪ってスコープを覗き込む
「それにヴェルゴに背負われてるのって……エアリーズとトーラスだよ!」
「本当!?」
二人は駆け出し、けものみちを下り10分程走り、駆けつける。二人がその場に辿り着いた頃には他の特務隊のメンバーは全員集合していた。ヴェルゴはサジタリアスを見つけるとヨロヨロとふらつきながら向かってくる。
「そのキズでこれ以上動いたら死ぬぞ!!」
赤みがかった茶髪に白衣を着た若い女性、コードネーム[リブラ]がヴェルゴに喝を入れる。ヴェルゴはリブラを横目に尚もサジタリアスに向かって歩く。そしてサジタリアスの目の前まで来るとサジタリアスの手を開きその上に何かを置き握らせる。
「この中にいたヤバい奴の髪の毛だ……大事に使えよ……」
そして力なく倒れる。
「もう馬鹿!!」
リブラがヴェルゴに駆け寄る。
サジタリアスは手を開くと綺麗な白髪があった。
「天知気がついたか。」
「隊長何があったの?」
秦宮が天知の問に答えるのが早いか再び上からの衝撃が空気を揺らし、パラパラと砂が舞い落ちる。
「上で何が起こってるか皆目見当もつかないが……二つの巨大な霊力がぶつかり合ってる。ここに居たら生き埋めになるかもね……」
秦宮は夏野里を背負い、天知に指示する。
「天知、貴方はその子を背負ってここから移動するよ。」
「はい!」
天知はスースーと寝息をたてる明美を背負い秦宮の後に続く。
夏野里は秦宮の背中で何度も申し訳ないと呟き、それを秦宮が慰めながら歩く。程なくして広間は突き当たり、コンクリートだろうか、ひんやりと冷たい材質で出来た狭い廊下がさらに奥へと続いている。恐らく数多の別々の空間が雑に繋ぎ合わされているのだろう。今まで通ってきた道に統一感はない。
「夏野里、厄災の中心はこの先ですか?」
「あぁ……この先が厄災を形成する上での要……霊地脈の歪み……その中心だ……」
大禍津姫に貫かれた傷が痛むのだろう。夏野里は歯を食いしばりながら秦宮の問に答える。
ふと目の前に鉄製の引き戸が見える。秦宮は引手に手をかけ音を立てないように少し開き、隙間から中の様子を伺う。
扉の向こう側は今まで通ってきた内装と違い、綺麗に並んだ数多の火が灯った蝋燭、そして部屋の中心に小さな社と赤黒い何かが置かれている和風作りの空間であった。扉の向こうからは水の流れる音もする。
「敵影、気配共になし……突入。」
和風作りの空間はお香の匂いが立ち込め、黒い何かのある場所を囲むように回廊になっている。下を覗き込むと底の見えない闇が拡がっている。秦宮は少し考えた後
「おそらくあの黒い何かがある社へ渡る橋があるはず……天知は左回り、私は右回りで探しますよ」
「了解」
この回廊は鶯ばりなのだろう。一歩一歩踏み出す事にギィギィと音がした。
「…………」
明美は瞼を少し開くと、ぼんやりと赤や橙の光が飛び込んでくる。ギィギィという音と共に身体と視界が少し上下する。おそらく誰かに背負われているのだろう。ほのかに洗髪剤のいい匂いもする。
「もう少し眠ろうかな……」
明美は再び瞼を閉じる。
秦宮達が入ってきた入口のとは反対側に橋があった。道中特に何もなく秦宮と天知は合流する。
「天知あれを見て……」
秦宮が指差す方……高さ五メートル程の鳥居……貫と柱の交わる場所に二体の死体が太い釘で打ち付けられている。
両目は抉られ、顔の皮を剥がされ、腹を裂かれ内臓が垂れ下がり、手足は皮一枚で繋がっている。髪の長さや着ている衣類で男女だとわかるほど凄絶な殺され方。
「うっ……」
喉の奥から酸っぱい物が上がってくる。
天知は明美をその場に下ろし、口を押えながら駆け出す。そして……欄干から下へ盛大に嘔吐する。
それを横目に秦宮は黒い何かに近づく。見た所黒い布のようだ。秦宮は黒い布を掴み意を決して剥ぐ。
布の下に居たのは星村紗季だった。いや星村紗季だったものと言うべきか……紗季の首は落とされ、抉り出された眼球、切り落とされた舌と共に三方に乗せられ小さな社に神饌の如く捧げられている。
その顔は苦痛に歪み、抉られ空洞となった眼窩からは絶えず涙を流すかの如く溢れる黒い液体……力なく開かれた口には吸い込まれそうな闇……その全てがここでの苦痛を物語っている気がする。
よくよく見ると紗季の腹部は裂け内臓がこぼれており、手に固く握られた小太刀から察するに切腹したのだろう。肉体と魂、二度の死の果てに何を感じたのか……その場に居る者達には到底理解できなかった。
「夏野里、この霊遺体がこの厄災の中心ですか?」
「あぁ、間違いない。コイツが厄災の核だな……だが妙だ。」
夏野里がフラフラと秦宮の横まで歩いてくる。そして紗季の頭に手を置き目を瞑る。程なくして紗季の頭から手を離した夏野里は秦宮の顔を見て呟く。
「やっぱり……今コイツは術式を発動していないただの霊遺体だ……だがコイツの残穢を見る限り厄災そのものはコイツの陣地だな……」
「という事は……」
「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!」
不意に背後からの叫び声に驚き秦宮と夏野里は背後を振り返る。そこにはどうすればいいか分からずオドオドしている天知と頭を抱え泣き崩れる明美がいた。
「お゛父さ゛ん゛!お゛母さ゛ん゛!あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!」
鳥居に吊り下げられた男女の亡骸……それは明美の両親だった。空間に響き渡る明美の悲鳴。その悲鳴に呼応するかのように明美の周りから黒い蛇のようなものが天井へ伸びる。顔を上げ二人を見た明美の目からは黒い液体流れ出している。それを見た二人は瞬時に目の前の現象を察し、天知に叫ぶ。
「天知!今すぐその子を気絶させて!」
天知は少し躊躇うも右手で手刀を作りごめんなさいと内心で何度も何度も謝罪しながら明美の首を叩く。
「あっ」
明美は力なくパタリと倒れる。すると今の現象がまるで嘘だったかのように天井へ伸びていた黒い何かは消え、二人は胸を撫で下ろすが、すぐさま夏野里は叫ぶ。
「天知!上から凄まじい霊力を纏った何かが急接近してくる逃げろ!」
夏野里が叫びより微かに遅れて天知の真上にヒビが入ると同時に橋全体を包む程の巨大な陣が幾重にも重なり赤紫の光を発する。
天知は何かを悟ったのか明美の胸倉を掴むと思いっきり二人の方に放り投げる。そして天知自身も二人の方に走り出す。秦宮は明美を受け止め、右手を天知に向かって突き出し、天知は秦宮の右手に捕まろうと手を伸ばす。
もう少しで橋を渡りきれる……もう少しで天知が秦宮の手を掴める……しかしそれは叶わなかった。天井の崩落と共に天知の背後五メートルに落ちてきた何かは橋に激突、崩壊させ、足場を失った天知はそれに巻き込まれる形で橋の残骸と共に下に落ちる。秦宮は明美を少し乱雑に地面に置き尚も天知に手を伸ばす。秦宮と天知、双方必死に伸ばした手は中指の先端が少し触れただけで繋がれることはなく天知の身体は橋の瓦礫と共に下に広がる闇に消える。
「天知!!」
二人の叫びに返事は返ってこない。
「クソッ!!」
秦宮は地面を殴る。
「クソックソッ」
涙を流しながら何度も何度も、手から血が流れる程何度も地面を殴る。
ふと下から声がするその声は天知のものだった。
「隊長……お願い引き上げて……早く……」
二人は急いで手すりから身を乗り出して闇を覗き込むと、そこには小刀を壁に突き刺しぶら下がる天知がいた。小刀を刺した壁は今にも崩れそうだ。
秦宮はロープを取り出すと天知に向けて垂らす。程なくして天知はロープを掴み壁から小刀を抜き腰に収め登り始める。次の瞬間その場に居た明美を除く三人に猛烈な悪寒が襲う。
━━何か得体の知れない存在に見られている━━
秦宮の身体が本能的に硬直する。
「秦宮!天知を早く引き上げろ!」
夏野里の叫びが秦宮の硬直を解くのとほぼ同時に上の穴から、これまでとは一線を画す禍々しい霊力が空間に流れ込んでくる。
秦宮は一刻も早く天知を引き上げようとロープを引く。天知の装備も相まって凄く重いが徐々に天知は登ってくる。そして天知は低い柵に手をかける。
「死ぬかと思……」
天知は右を見て硬直する。それにつられ秦宮は不意に左を見る。そこには白髪の少女が頭を下にして落下している状態で居た。先程激戦の末に撃退した大禍津姫とよく似た服装をした少女。しかし決定的に違うものが四つあった。
一つ、大禍津姫は黒い整った狐面をしていたがこの少女は右のこめかみに木の皮をくり抜いた様な不格好な手作りの狐面をつけている。
二つ、この少女は顔布をつけており、顔布には「禍津」と書かれている。
三つ、この少女に対して警戒できない。いや警戒を遥かに通り越して本能も理性もその少女に屈服した。すなわち臨戦態勢に入れないことを意味する。
四つ、少女の目は波紋のような形をしている。他の大禍津姫とは明らかに違う目。
少女は固まる三人から視線を進行方向に戻し、闇の中へと落ちてゆく。
暫くの静寂が当たりを包む。静寂を打ち破ったのは夏野里だった。
「下から来るぞ!全員何かに捕まれ!」
秦宮は明美を小脇に抱え足場の中心にある社に走り、社の柱に掴まる。程なくして下から暗い紫色をした霊力の柱が立ち上り、足場を端からゴリゴリと削り、巻き上げてゆく。
そして30秒ほど遅れ、ドゴンッと突き上げるような衝撃と音が三人を襲う。
「あぁあああぁああ!!」
「耐えろ!天知ィ!」
三人は必死に衝撃に耐える。ふと秦宮が声を上げる。
「あれを見よ!」
二人が秦宮の目線の先を見ると霊力の柱の中に黒い影がある。その影は程なくして秦宮達のいる足場にドサリッと落ち、少し転がる。それは人の形をしていた。全身は黒焦げで所々から白煙を上げている。
「化け物が……」
黒焦げの存在は口を微かに動かし悔いてから、ゆっくり身体を起こし立ち上がる。そしてビキビキと黒焦げの身体の至る所が割れ、痛みに耐えるように声を漏らしながらその割れ目に手を入れベリベリと音を立てながら次々に皮を剥ぐ。
暫くして黒焦げの皮の下から現れたのは、薄い白装束を身にまとい、髪の先端が黄緑がかった白髪をなびかせた少女。
そう華寅だ。
華虎の服装が瞬時に白装束から黒い軍服に変わり、首には御札が貼られた注連縄が現れる。
「華寅様!?」
秦宮が驚きのあまり声を漏らす。
「ん?……え、篠原!?」
「篠……原……?」
秦宮の困惑顔をみて華寅は瞬時に失言を察し訂正する。
「……いやまだ秦宮だったか。夏野里も天知もいるじゃないか。天知は相変わらず可愛いな」
華寅は天知の頭を撫でる。
「おやめください華寅様。私はもう幼子ではありません!」
天知は頬っぺを赤らめながら少し怒っている。華寅は天知を撫でながら考えていた。
「あの子達が昔の姿だという事はあの時の厄災と時間が繋がってるわけか……」
華寅は秦宮達に背中を向けて刀を抜く。
「出会いの喜びあいはここまでにしよう。来るぞ!!」
下から先程感じた禍々しい霊力が尋常じゃない速度で近づいてくるのを感じる。
ピシッ……と微かな音が聞こえ華寅は足元を見ると地面にひび割れが生じておりヒビが広がってゆく。
「真下か!!」
華寅が叫ぶと同時にひび割れた地面が砕け、先程秦宮達の前を通過した少女がその中から現れる。
少女は華寅の首を掴もうと右腕を伸ばす。その手には紫色の濃いオーラを纏っている。
「冥炎」
華寅は少女の右腕を肘から切り落とし、尚も紫色のオーラを纏い向かってくる右腕を左手での掌底で叩き落とす。そして掌底の勢いそのまま回し蹴りを少女の頬に当てる。しかし少女はビクともしない。
いや違う……いつの間にか華寅の脚が脚の付け根から切り落とされ威力を殺されたのだ。華寅は少女から距離を取り思う。
「チッ……化け物め……」
切り落とされた断面から数多の植物の芽が伸び、それぞれが絡み合い脚の形を形成し完全に再生する。
「華寅……今の再生で何回目ですか?」
息すら切らさず少女は冷たい声色で華寅に問う。しかし華寅は肉体の再生直後、しかも短期間に二度も再生し疲弊、答えられずにいた。
「あぁあああぁああ!!」
華寅は一呼吸置いた後、拳を握り少女の顔を殴ろうと拳を突き出す。
「やれやれ……」
少女は呆れた様子で華寅に背中を向ける。
バシャ……
華寅の四肢が赤い霧を漂わせ霧散するもその勢いのまま少女の首に噛み付く。
「諦めが悪いね華寅……」
少女は華寅の下顎を掴みバキャと握り砕き、そのまま地面に叩きつける。
「ケハッ……」
華寅の口から鮮血が舞う。 それを見た秦宮は無意識にケラウノスの投げていた。
少女は華寅を離すと飛んできたケラウノスを一瞥し、少し目を見開くが左手をケラウノスに向けて何かを唱える。
「削れ……「天ノ井戸」」
少女の掌から黒い球がポンっと出現し、少女はそれを人差し指と中指に挟み込んでケラウノスに向かって飛ばす。
黒い球とケラウノスの距離はどんどん近づいてゆく。しかしぶつかる寸前でケラウノスはふっと消え、尚も黒い球はこちらに向かってくる。心なしか黒い球が大きくなってる気もする……いや明らかに巨大化している。
ふと秦宮の目に理解し難い光景が見える。黒い球の周り、空間がねじ曲がってるのか景色が湾曲している。
「まさか!!」
秦宮は天知と夏野里を球の進行方向と垂直に突き飛ばし、明美を抱いて二人の元へ走り、黒い球をギリギリで回避する。黒い球は少しずつ巨大化し触れるもの全てを綺麗に抉りながら尚も進み、壁に丸い大きな穴を開け、そこから冷たい風が吹き込んでくる。
「何あれ……」
「おそらく消滅の術式もしくは掌サイズまで圧縮した擬似ブラックホールでしょうね……まぁ黒い球の周りの景色が歪んでいた以上擬似ブラックホールの可能性が高いと思います……」
秦宮の考察を聞いた天知と夏野里は言葉を失う。
少女は秦宮達から視線を戻し星村 紗季の遺体のある社に向けて歩き始める。
「待゛で……梔子姉!!」
少女は振り返り華寅を一瞥すると人差し指を立てる。すると華寅の真上に黒い霧が集まり数多の巨大な針を形成する。
「もう少し寝てな華寅……」
少女がスっと人差し指を下ろすと数多の針が華寅目掛けて落下し華寅の身体を貫いてゆく。
少女は紗季の方を向き直り、秦宮達には目もくれずにその前を横切り、紗季の霊遺体の前で立ち止まる。
「星村 紗季……陣地返してもらうよ……」
少女は紗季の頭に手を置く。
不味い……秦宮の本能が叫び無意識に再び身体を動かしていた。
「ハアアァァ!」
秦宮は雄叫びをあげ、居合の構えをとり、跳躍、一気に少女との距離をつめ抜き放つ。
「兇禍神地!斬殺呪相!」
「……ねぇ……」
秦宮の耳は少女の声とは別の異質な音を捉えた。
ヒュンッ……
次の瞬間秦宮の刀がサラサラと崩れる。
「刀を折られたり、朽ちたりするのならまだ分かる。それが砂が崩れるように破壊された?ならこの少女は何かを使ってあの一瞬で私の刀の刀身を数千回切り刻んだ事になる……」
それは少女が圧倒的に格上であることを示していた。
少女は振り返らずに少し横に寄り、通過する秦宮の額を掴み、合気の要領で床に叩き付ける。ビシビシと床にヒビが入る。
「暗部のお姉さん……奇襲の時に声を上げたり、霊力を荒らげたりしてはいけないと学ばなかったのかい?」
「あ……が……」
秦宮は辛うじて気絶を防いだようで少女を見つめている。
「あら……この程度で戦闘不能ですか……」
少女は秦宮を見下ろし、程なくして立ち上がり、星村紗季の霊遺体の頭に再び手を置く。
「解陣」
紗季の霊遺体が砂山が風に当てられ崩れるようにサラサラと崩れていく。
少女は暫く紗季の霊遺体が隠世に散っていくのを無言で眺め、最後に残った形らしいものを拾い上げるが、それすらも少女の掌の上でほろりと崩れ、消える。
「神々の犬共……」
少女は振り返る。
「え!?」
思わず声を漏らしたのは天知だった。
少女の左小脇には明美が抱かれている。秦宮は自分の隣に横たわっていたはずの明美を見る。そこには明美は居た。が、明美の身体の下から黒い液体が広がり明美はその中に沈んでゆく。
「あ!」
秦宮は明美を掴もうと手を伸ばすも沈む速度の方が速く掴めなかった。
「さて神々の忠犬共……この子達を助けたいなら隠世のもっと深淵にいらっしゃい。まあ……私を倒さないと隠世からも出れませんが……」
少女の右上にいつの間にか黒い水が浮いており、ザバンッと音を立てて明美がそこから落下、それを少女は軽々と片手で受け止め右小脇に抱える。
「さて儀式の準備は整った……」
少女はボソッと呟くと神山姉妹を両小脇に抱えたまま闇の中へ飛び降りる。意識を取り戻し、その光景を見た華寅は叫ぶ。
「梔子ィィィ!!」
その声は秦宮達が耳を塞いでも聴覚が破壊されるほど大きく、空間を揺らした。
[2008年 厄災近辺]
「ケラウノスの光から動きがないですね……サジさん」
ジェミナイがスコープで厄災の結界周辺を見ているサジタリアスに話しかける。
「確かに……ん?ヴェルゴ!?」
「え!?」
ジェミナイは驚き、サジタリアスのライフルを奪ってスコープを覗き込む
「それにヴェルゴに背負われてるのって……エアリーズとトーラスだよ!」
「本当!?」
二人は駆け出し、けものみちを下り10分程走り、駆けつける。二人がその場に辿り着いた頃には他の特務隊のメンバーは全員集合していた。ヴェルゴはサジタリアスを見つけるとヨロヨロとふらつきながら向かってくる。
「そのキズでこれ以上動いたら死ぬぞ!!」
赤みがかった茶髪に白衣を着た若い女性、コードネーム[リブラ]がヴェルゴに喝を入れる。ヴェルゴはリブラを横目に尚もサジタリアスに向かって歩く。そしてサジタリアスの目の前まで来るとサジタリアスの手を開きその上に何かを置き握らせる。
「この中にいたヤバい奴の髪の毛だ……大事に使えよ……」
そして力なく倒れる。
「もう馬鹿!!」
リブラがヴェルゴに駆け寄る。
サジタリアスは手を開くと綺麗な白髪があった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる