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第3章 飛躍編

第87話 祝勝会と

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 「「「かんぱーい!!」」」

 一週間に渡って行われた上級生との対抗戦。
 おれたち一年AクラスAチームは、最終日にれいさん達のチームにまで勝利した。
 結果、名実共に前代未聞の一年生ともてはやされたわけだ。

 そして、調子に乗ったおれたちが来ているのは居酒屋……なわけはなく、高校生らしくやはりいつものカフェで乾杯。探索者御用達のカフェなので、防音対策もばっちりだ。
 だが問題はそうではなく……

「なんでいるんですか!?」

 おれはくるりと右隣のテーブル席を見る。

「ん? ダメか?」
「だって面白そうじゃーん」
つばさが行くって言ってたし……」

 麗さん達、三傑の三人だ。
 学校のトップが揃いも揃っておいでで。

「本当だよ、さっき戦ったばかりじゃないか。言ったは言ったけど、一応祝勝会なんだから、さん達がいるとよく分からないことになるよ」

 凪風なぎかぜ大空そらさんに突っかかる。

「まあまあ、そう言わずにさ。こっちも話があるんだから。それよりも翼……“姉さん”とは呼んでくれないの?」

「よ、呼ばないよ」

「照れちゃって」

「う、うるさいっ!」

 凪風は大空さんから目を逸らした。
 どうやら“姉さん”には勝てないらしい。
 この二人の関係も見ていて微笑ましいな。

「まあ、かける。話があるのは本当だ。お前たちは、今日で晴れて選抜メンバーの筆頭。先に東西対抗戦の事を話しておこうと思ってな」
 
「そういうこと! 楽しそうだったてのも嘘じゃないけどねー」

 妖花あやかさんだ。
 普段は結構軽い人なんだな。戦闘の時とは大違いだ。

「おれは別に良いのですが……」

 おれは一年生側をちらっと見た。

「良いんじゃないかな。人数多い方が楽しいよ」
「私も賛成!」

 華歩かほ夢里ゆりは大賛成のよう。

「オレも構わんぞ! 強い奴は好きだ!」
「ぼ、僕も別に……」

 謎の理由の豪月ごうつきと、顔を赤らめる凪風もとりあえず了承。
 そういうことなら。

「じゃあ、改めて」

 おれはオレンジジュースが入ったグラスを掲げた。

「「「かんぱーい!!」」」

 という感じでノリと勢いで祝勝会は始まった。



 さっきまでお互いに本気で戦っていた者同士でも、ここでは同じ志を持った仲間。

 華歩が積極的に妖花さんに話しかけたり、相変わらず夢里は麗さんのところのいったりと、交流がかなり深まったように思う。
 凪風と大空さんが話していたのも見逃していない。

 おれも三傑の方々には多く話しかけられた。【ミリアド】のことはもちろん、普通の世間話もだ。

 そうして、何故か最終的には腕相撲大会となり、決勝で麗さんと戦った豪月が優勝して雄叫びをあげていた。



 会は楽しい雰囲気のまま進み、やがて東西対抗戦についての話となる。麗さんが話があると言っていたには、これについてのようだ。

 東西対抗戦。
 東西交流会の一環であり、メインとなるイベントの事だ。
 国立探索者学校と関西探索者学校、それぞれ十名ずつメンバーが選出され、チーム戦・個人戦など、全五試合が行われる。

 ルールは、順番にダブルス(二対ニ)、チーム戦(三対三)が二試合、あとは一対一の副将戦、大将戦だ。

「選抜メンバー含め、誰がどの試合に出るかはこれから先生方や私たちの意見が反映されて決められる」

 麗さんが話を進める。

「だがまあ、はっきり言ってここにいる八人は選ばれるだろう。後は誰がどこに出るかだな」

 一通り話が終わり、こちらも概要を知る。
 そして何より、おれたちは聞きたいことがある。

 一年側の顔を覗けば、みんなが頷く。聞きたいことは同じということだろう。

「麗さん」

「どうした、翔」

「去年の大将戦、麗さんが負けたって本当ですか」

「!」

 麗さん、そして妖花さんと大空さんもその質問には顔をしかめた。

「本当だ」

 一つ息をついて、麗さんは続ける。

すめらぎ聖斗あきと。奴は強いというより、理不尽といった方が正しいかもしれんな」

「理不尽……」

 麗さんに続いて二人も口を開く。

「だねー。強いのは認めるけど好きにはならないよね」
「うん、妖花と同感」

 たしかにあいつの話し方、様相から良い印象は受けなかった。
 あれが戦闘中も続くとなると……なるほど。

「まあ、今はどうこう言っても何にもならん。今年は勝つ。そうだろ、翔?」

「はい! 絶対勝ちましょう!」

 八人の楽しい歓談に決意を交えて、祝勝会は幕を閉じた。




まつりさーん」

「あ、天野あまのさん!」

 祝勝会が終わり、みんなが帰った中でおれは祭さんのオーダーメイド店に寄っていた。

「今日すごかったですね! あれが【ミリアド】の次の段階ですか!? もう興奮して観客席で声を上げちゃいましたよ! それでそれで──」

「あ、あはは……」

 祭さんは武器のことになると止まらなくなるんだよな。

「やっぱりあの形態は意図していなかった?」

「はい、まさか『魔法』を飲み込んでそのまま宿るとは」

 そうだよな。事前に聞いた時は分からないって言っていたし。

「作っている段階で一度おじいちゃんに貸したタイミングがあったのですが、また何か知っていた上で教えなかったのかな……?」

「じいさんが」

 あの人本当に何者なんだろうか。
 ってそういえば、

「今日はじいさんは?」

「あ、仕事で大阪の方に行っているみたいで」

「大阪?」




 



「よお、じいさん。ついに完成したんだってな」

「そうじゃ。持ってきてもろうた素材と要望から作れる最高の武器じゃ。お前さんに扱えるかは分からんがの」

 祭の叔父、じいさんは武器を皇に差し出す。

「ったく何言ってんだじいさんよ。俺様に扱えないわけねーだろうが」

 皇はそれをぶんどるようにじいさんから強引に受け取った。

「……それはどうかの。少なくとも武器と向き合わんその態度では無理じゃ」

「はいはい、老いぼれのオカルト話はもういいですよ。これ、料金な。世話んなったわ」

 皇は80万DPを送信し、その場を去った。

「で、お主の方は何が狙いなんじゃ? あやつの後ろにくっついとる方」

「さあ、とりあえず今回の件は感謝しますよ」

「おい! 何やってんだ、いくぞ友人A」

 外から皇の呼ぶ声がする。

「では呼ばれておりますので」

「そうかい」

 友人Aと呼ばれる男も皇の後についてじいさんの元を去っていく。

「嫌な予感がするのお……」

 皇の新たなる武器、そして友人Aの思惑とは──。
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