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第2章 躍進編
第54話 感知した気配
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フィの声が、すでにトリガーを発動させた翔と凪風の耳に届く。
((倒しちゃダメ!?))
引いてしまったトリガーの中で、刹那的に翔と凪風は視線を交わす。互いに意図を汲み取った二人は、ほんのわずかに動ける中で攻撃の対象を変える。
<三剣刃>
<風三剣刃>
翔の剣と凪風の二本の小刀が交わり、高い金属感のある斬撃音が鳴り響く。一撃が重い翔の三連撃に対し、威力は低いながらも手数の多い凪風の斬撃。
二人は交差し、倒れてくる【アースガルド】に巻き込まれないよう、その勢いのままに距離を取っていく。
「ほっ」
フィが一息つく中で、他の三人は目の前の事に目を見開き驚いている。
その中でも豪月は――。
どしーん、と大きな音と地響きを鳴らして【アースガルド】が前方に倒れた。しかし、ここで油断してはいけない、と五人は各々その場で構えを解くことなく、様子見をする。
「……スリープ?」
まだ核を破壊していない事は分かっていながら、しばらく様子を見ても動く気配の無い【アースガルド】に対して、ようやく凪風が口を開く。
「かもしれないな」
豪月も完全に警戒を解いたわけではないものの、いつもの仁王立ちの姿勢になる。
「それなら今の内に作戦を立てる! フィ、どうして倒しちゃいけなかったんだ?」
翔の言葉に他の四人もはっとしたような表情を見せ、フィの方を向く。
「ごめん、うまくは言えないんだけど……」
「間違ってでもなんでもいい。教えてくれ」
【アースガルド】に警戒をしつつ、自然とフィの元へ足が向き近付いていく五人。
「一瞬だけ感じたのよ。あたしたちの本当の目的【水精霊王・ウンディーネ】の気配を!」
小さな両手を胸の前でグーにして、翔の方を真っ直ぐに見つめてフィが伝える。
「一瞬だけ? どのタイミングだ?」
「うーんと、わかんないけど多分華歩の『魔法』が当たった時よ!」
「わたしの?」
華歩は首を傾げる中、翔とフィはある答えに辿り着く。
「! まさか“魔法洗練種”……か?」
「そうよ、どうして気が付かなかったのよ! あたしのバカ!」
「どうゆうこと? 私達にも教えて!」
翔とフィが納得する中で夢里が割って入ってくる。時間が無いので当然だ。
「ああ、つまり――」
――グオオオオォォォ!!
「なっ!」
「このタイミングでかよ!」
地面に伏したままうめき声を上げる【アースガルド】。右膝は壊れている様だが、槍を立てて上半身から徐々に立ち上がっていく。右足は寝かせたまま、左膝を立ち膝のようにして、ついに体を起こす。
「大丈夫だよ、右膝が復活したわけじゃない。あの場所からそこまで動くことは出来ないはずだよ!」
凪風が冷静に分析をする。
「天野、おれたちはどうすればいい!」
あそこから動けないとは言っても、このまま会議を続けるわけにもいかない。その長い槍を振り回せば、大量の岩の破片がいくらでもこちらに飛んでくる。
「フィ、指示を頼めるか?」
「! わかったわ。けど、華歩の『魔法』だけじゃ無理よ?」
フィを含めた五人が翔の方を見る。
「大丈夫だ。おれのがある」
翔ははっきりと答えた。
驚きと困惑を表情を隠せない五人だが、すぐに聞き返すことなく【アースガルド】に体を向き直す。ここで細かく聞くことがないのは翔への信頼からだ。
「行くぞ!」
基本は先程までと同じ戦略。次に狙うのは立たせている左膝だ。
「うわっと!」
凪風にも余裕が見え始める。全く気を緩めず、油断もしていない中で余裕が見えるのは戦いを楽しんでいる証拠だ。翔たちがよく見てきた凪風である。
――グ、ウオオオォォ!
左膝の装甲にも傷がつき、さらに段々と傷口が開き始める。
「カケル!」
フィの掛け声に翔はアイコンタクトで返事をし、前線を退く。
「凪風、豪月! 攻撃はいい! 後は無理せずに牽制だけしてくれ!」
「了解!」
「ああ!」
続いて翔が指示を出し、後方に跳びながら華歩の隣まで下がる。
「やるぞ、華歩」
翔は華歩に対し頷くと、ストレージから出したボトルを飲み、構えを取った。
((倒しちゃダメ!?))
引いてしまったトリガーの中で、刹那的に翔と凪風は視線を交わす。互いに意図を汲み取った二人は、ほんのわずかに動ける中で攻撃の対象を変える。
<三剣刃>
<風三剣刃>
翔の剣と凪風の二本の小刀が交わり、高い金属感のある斬撃音が鳴り響く。一撃が重い翔の三連撃に対し、威力は低いながらも手数の多い凪風の斬撃。
二人は交差し、倒れてくる【アースガルド】に巻き込まれないよう、その勢いのままに距離を取っていく。
「ほっ」
フィが一息つく中で、他の三人は目の前の事に目を見開き驚いている。
その中でも豪月は――。
どしーん、と大きな音と地響きを鳴らして【アースガルド】が前方に倒れた。しかし、ここで油断してはいけない、と五人は各々その場で構えを解くことなく、様子見をする。
「……スリープ?」
まだ核を破壊していない事は分かっていながら、しばらく様子を見ても動く気配の無い【アースガルド】に対して、ようやく凪風が口を開く。
「かもしれないな」
豪月も完全に警戒を解いたわけではないものの、いつもの仁王立ちの姿勢になる。
「それなら今の内に作戦を立てる! フィ、どうして倒しちゃいけなかったんだ?」
翔の言葉に他の四人もはっとしたような表情を見せ、フィの方を向く。
「ごめん、うまくは言えないんだけど……」
「間違ってでもなんでもいい。教えてくれ」
【アースガルド】に警戒をしつつ、自然とフィの元へ足が向き近付いていく五人。
「一瞬だけ感じたのよ。あたしたちの本当の目的【水精霊王・ウンディーネ】の気配を!」
小さな両手を胸の前でグーにして、翔の方を真っ直ぐに見つめてフィが伝える。
「一瞬だけ? どのタイミングだ?」
「うーんと、わかんないけど多分華歩の『魔法』が当たった時よ!」
「わたしの?」
華歩は首を傾げる中、翔とフィはある答えに辿り着く。
「! まさか“魔法洗練種”……か?」
「そうよ、どうして気が付かなかったのよ! あたしのバカ!」
「どうゆうこと? 私達にも教えて!」
翔とフィが納得する中で夢里が割って入ってくる。時間が無いので当然だ。
「ああ、つまり――」
――グオオオオォォォ!!
「なっ!」
「このタイミングでかよ!」
地面に伏したままうめき声を上げる【アースガルド】。右膝は壊れている様だが、槍を立てて上半身から徐々に立ち上がっていく。右足は寝かせたまま、左膝を立ち膝のようにして、ついに体を起こす。
「大丈夫だよ、右膝が復活したわけじゃない。あの場所からそこまで動くことは出来ないはずだよ!」
凪風が冷静に分析をする。
「天野、おれたちはどうすればいい!」
あそこから動けないとは言っても、このまま会議を続けるわけにもいかない。その長い槍を振り回せば、大量の岩の破片がいくらでもこちらに飛んでくる。
「フィ、指示を頼めるか?」
「! わかったわ。けど、華歩の『魔法』だけじゃ無理よ?」
フィを含めた五人が翔の方を見る。
「大丈夫だ。おれのがある」
翔ははっきりと答えた。
驚きと困惑を表情を隠せない五人だが、すぐに聞き返すことなく【アースガルド】に体を向き直す。ここで細かく聞くことがないのは翔への信頼からだ。
「行くぞ!」
基本は先程までと同じ戦略。次に狙うのは立たせている左膝だ。
「うわっと!」
凪風にも余裕が見え始める。全く気を緩めず、油断もしていない中で余裕が見えるのは戦いを楽しんでいる証拠だ。翔たちがよく見てきた凪風である。
――グ、ウオオオォォ!
左膝の装甲にも傷がつき、さらに段々と傷口が開き始める。
「カケル!」
フィの掛け声に翔はアイコンタクトで返事をし、前線を退く。
「凪風、豪月! 攻撃はいい! 後は無理せずに牽制だけしてくれ!」
「了解!」
「ああ!」
続いて翔が指示を出し、後方に跳びながら華歩の隣まで下がる。
「やるぞ、華歩」
翔は華歩に対し頷くと、ストレージから出したボトルを飲み、構えを取った。
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