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第1章 参戦編
第7話 幼馴染
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時は遡り、あるダンジョン深層にて。
――グオオオオォォォォ!!
「ったく、オレの弱さが嫌になるぜ! こんな時カケルがいてくれたらなあっ!」
パーティーの最前衛を張る盾役であり兄貴面の男が、魔物の攻撃を弾くと同時に自身の大きな盾で重い攻撃を入れる。ボス級魔物の巨大な熊はよろめく。
「その話はもうしないって言ったでしょ! もう行ってしまったものはしょうがないんだから!」
後衛で“回復役”としての役割を持つ女性は、パーティーが崩れないよう全体へ回復をかける。
「にしても、この程度のダンジョンの魔物がどうしてここまで強くなっている? 前までと同じなら俺一人でも攻略できたはずだが」
このパーティーの現火力役である細身の男が冷静に述べるも、ここに答えも知る者は誰もいない。
「知らねぇよ! 追放されたオレたちへのさらなる報いってか?」
「ほんとにね! カケルがいなくなった途端、ワタシたちに冤罪を押し付けて。何考えてるんだか! 信じる周りも周りだけど……ねッ!」
支援役兼中衛役である女の子が言葉の最後と共に放った蹴りによって、パーティーを阻んでいた巨大な熊は倒れる。
「ふう、こんな奴に手こずるとはな。オレたちも鈍ったか?」
「そんなことはないと思うけど……って、え、なにこれ」
「なになにー、どうしたのー。ん?」
「「<ステータス>?」」
彼らと彼らが“カケル”と呼ぶ人物が再び会うのは、まだまだ先のことである――。
★
「よし、今日も行くか」
学校が終わり、一早く下駄箱まで着いたおれの足は今日もダンジョンへと向かう。初めてダンジョンへ潜った日から、放課後はダンジョンに行くのが今の日課だ。
「おい、そんな嬉しそうな顔してどこ行くんだ?」
「ん?」
後方から声をかけてきたのは同級生たちだ。
「別に」
振り向くでもなく雑に返事をする。
こいつらに構ってる暇はない。さっさと行くだけ。だが、
「聞いたか、こいつ最近ダンジョン街にいたらしいぜ」
「まじかよ、この能無しが?」
「おい言ってやるなよ、こいつにもちゃんと“無職業”っていう立派な職業があるんだからよ」
「「「はははは!」」」
やっぱりか。朝からずっとこの話題だ。噂ってのはどこかしらから回ってくるのなのだろう。まあいい、もう行こう。
「ちょっと! またそうやってからかって!」
「んだよ、口出してくるんじゃねえよ、白けるなあ。ちっ、いこうぜ」
「ああ、つまんな」
同級生たちは声を上げられたことから、舌打ちをして離れていく。
おれをかばってくれたのは華歩だ。そんな彼女に背を向けながらおれは玄関を出る。
「ちょ、ちょっと! まってよ!」
「さっきの話、本当?」
「だ、ダンジョン街にいたって話?」
「そっ」
「……ほ、本当だけど」
「へえ、君がねー」
学校の玄関を出た先、華歩は小走りで追いついてきた。女子バスケット部を引退して首元まで伸びた、右のこめかみあたりが少し長めの綺麗な黒髪アシメショートカットをなびかせている。そんな髪を耳にかけながら彼女は話しかけてくる。
彼女は小日和 華歩。保育園、小学校、中学校とずっと同じで、家も近所のいわゆる幼馴染だ。
中学で一度もクラスが同じにならなかったこともあり、最近では疎遠気味になっていた。いや、素直に認めるなら、おれが自分に自信がなくて遠ざけていた存在だ。
なにせ、かつてはおれの初恋だった人だ。今のかっこ悪い自分を見せたくなかったというのはあるだろう。
「あいつらの事なんて気にしなくていいからね! またちゃんと言っておくわ! それと実はわたしもね……いや、やっぱりなんでもないや。じゃね」
舌をペロっと少し出してそう言い残した彼女は、そのまま走り去ってしまった。
かわいいな、ちくしょう。
――グオオオオォォォォ!!
「ったく、オレの弱さが嫌になるぜ! こんな時カケルがいてくれたらなあっ!」
パーティーの最前衛を張る盾役であり兄貴面の男が、魔物の攻撃を弾くと同時に自身の大きな盾で重い攻撃を入れる。ボス級魔物の巨大な熊はよろめく。
「その話はもうしないって言ったでしょ! もう行ってしまったものはしょうがないんだから!」
後衛で“回復役”としての役割を持つ女性は、パーティーが崩れないよう全体へ回復をかける。
「にしても、この程度のダンジョンの魔物がどうしてここまで強くなっている? 前までと同じなら俺一人でも攻略できたはずだが」
このパーティーの現火力役である細身の男が冷静に述べるも、ここに答えも知る者は誰もいない。
「知らねぇよ! 追放されたオレたちへのさらなる報いってか?」
「ほんとにね! カケルがいなくなった途端、ワタシたちに冤罪を押し付けて。何考えてるんだか! 信じる周りも周りだけど……ねッ!」
支援役兼中衛役である女の子が言葉の最後と共に放った蹴りによって、パーティーを阻んでいた巨大な熊は倒れる。
「ふう、こんな奴に手こずるとはな。オレたちも鈍ったか?」
「そんなことはないと思うけど……って、え、なにこれ」
「なになにー、どうしたのー。ん?」
「「<ステータス>?」」
彼らと彼らが“カケル”と呼ぶ人物が再び会うのは、まだまだ先のことである――。
★
「よし、今日も行くか」
学校が終わり、一早く下駄箱まで着いたおれの足は今日もダンジョンへと向かう。初めてダンジョンへ潜った日から、放課後はダンジョンに行くのが今の日課だ。
「おい、そんな嬉しそうな顔してどこ行くんだ?」
「ん?」
後方から声をかけてきたのは同級生たちだ。
「別に」
振り向くでもなく雑に返事をする。
こいつらに構ってる暇はない。さっさと行くだけ。だが、
「聞いたか、こいつ最近ダンジョン街にいたらしいぜ」
「まじかよ、この能無しが?」
「おい言ってやるなよ、こいつにもちゃんと“無職業”っていう立派な職業があるんだからよ」
「「「はははは!」」」
やっぱりか。朝からずっとこの話題だ。噂ってのはどこかしらから回ってくるのなのだろう。まあいい、もう行こう。
「ちょっと! またそうやってからかって!」
「んだよ、口出してくるんじゃねえよ、白けるなあ。ちっ、いこうぜ」
「ああ、つまんな」
同級生たちは声を上げられたことから、舌打ちをして離れていく。
おれをかばってくれたのは華歩だ。そんな彼女に背を向けながらおれは玄関を出る。
「ちょ、ちょっと! まってよ!」
「さっきの話、本当?」
「だ、ダンジョン街にいたって話?」
「そっ」
「……ほ、本当だけど」
「へえ、君がねー」
学校の玄関を出た先、華歩は小走りで追いついてきた。女子バスケット部を引退して首元まで伸びた、右のこめかみあたりが少し長めの綺麗な黒髪アシメショートカットをなびかせている。そんな髪を耳にかけながら彼女は話しかけてくる。
彼女は小日和 華歩。保育園、小学校、中学校とずっと同じで、家も近所のいわゆる幼馴染だ。
中学で一度もクラスが同じにならなかったこともあり、最近では疎遠気味になっていた。いや、素直に認めるなら、おれが自分に自信がなくて遠ざけていた存在だ。
なにせ、かつてはおれの初恋だった人だ。今のかっこ悪い自分を見せたくなかったというのはあるだろう。
「あいつらの事なんて気にしなくていいからね! またちゃんと言っておくわ! それと実はわたしもね……いや、やっぱりなんでもないや。じゃね」
舌をペロっと少し出してそう言い残した彼女は、そのまま走り去ってしまった。
かわいいな、ちくしょう。
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