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第1章 参戦編

第7話 幼馴染

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 時はさかのぼり、ダンジョン深層にて。

――グオオオオォォォォ!!

「ったく、オレの弱さが嫌になるぜ! こんな時カケルがいてくれたらなあっ!」

 パーティーの最前衛を張る盾役タンクであり兄貴面の男が、魔物の攻撃を弾くと同時に自身の大きな盾で重い攻撃を入れる。ボス級魔物の巨大な熊はよろめく。

「その話はもうしないって言ったでしょ! もう行ってしまったものはしょうがないんだから!」

 後衛で“回復役ヒーラー”としての役割を持つ女性は、パーティーが崩れないよう全体へ回復をかける。

「にしても、この程度のダンジョンの魔物がどうしてここまで強くなっている? 前までと同じなら俺一人でも攻略できたはずだが」

 このパーティーの現火力役アタッカーである細身の男が冷静に述べるも、ここに答えも知る者は誰もいない。

「知らねぇよ! 追放されたオレたちへのさらなる報いってか?」

「ほんとにね! カケルがいなくなった途端、ワタシたちに冤罪を押し付けて。何考えてるんだか! 信じる周りも周りだけど……ねッ!」

 支援役サポーター兼中衛役である女の子が言葉の最後と共に放った蹴りによって、パーティーを阻んでいた巨大な熊は倒れる。
 
「ふう、こんな奴に手こずるとはな。オレたちも鈍ったか?」

「そんなことはないと思うけど……って、え、なにこれ」

「なになにー、どうしたのー。ん?」

「「<ステータス>?」」

 彼らと彼らが“カケル”と呼ぶ人物が再び会うのは、まだまだ先のことである――。









「よし、今日も行くか」

 学校が終わり、一早く下駄箱まで着いたおれの足は今日もダンジョンへと向かう。初めてダンジョンへ潜った日から、放課後はダンジョンに行くのが今の日課だ。

「おい、そんな嬉しそうな顔してどこ行くんだ?」

「ん?」

 後方から声をかけてきたのは同級生たちだ。

「別に」

 振り向くでもなく雑に返事をする。
 こいつらに構ってる暇はない。さっさと行くだけ。だが、

「聞いたか、こいつ最近ダンジョン街にいたらしいぜ」
「まじかよ、この能無しが?」
「おい言ってやるなよ、こいつにもちゃんと“無職業ノージョブ”っていう立派な職業ジョブがあるんだからよ」
「「「はははは!」」」

 やっぱりか。朝からずっとこの話題だ。噂ってのはどこかしらから回ってくるのなのだろう。まあいい、もう行こう。

「ちょっと! またそうやってからかって!」

「んだよ、口出してくるんじゃねえよ、白けるなあ。ちっ、いこうぜ」
「ああ、つまんな」

 同級生たちは声を上げられたことから、舌打ちをして離れていく。
 おれをかばってくれたのは華歩かほだ。そんな彼女に背を向けながらおれは玄関を出る。

「ちょ、ちょっと! まってよ!」





「さっきの話、本当?」

「だ、ダンジョン街にいたって話?」

「そっ」

「……ほ、本当だけど」

「へえ、君がねー」

 学校の玄関を出た先、華歩は小走りで追いついてきた。女子バスケット部を引退して首元まで伸びた、右のこめかみあたりが少し長めの綺麗な黒髪アシメショートカットをなびかせている。そんな髪を耳にかけながら彼女は話しかけてくる。

 彼女は小日和こびより 華歩かほ。保育園、小学校、中学校とずっと同じで、家も近所のいわゆる幼馴染おさななじみだ。
 中学で一度もクラスが同じにならなかったこともあり、最近では疎遠気味になっていた。いや、素直に認めるなら、おれが自分に自信がなくて遠ざけていた存在だ。

 なにせ、かつてはおれの初恋だった人だ。今のかっこ悪い自分を見せたくなかったというのはあるだろう。

「あいつらの事なんて気にしなくていいからね! またちゃんと言っておくわ! それと実はわたしもね……いや、やっぱりなんでもないや。じゃね」

 舌をペロっと少し出してそう言い残した彼女は、そのまま走り去ってしまった。

 かわいいな、ちくしょう。
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