ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第51話 これまでとこれからと

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 「どこかなあ」

 『クラウディアうんじょう』を散歩しながら、エアルがつぶやいた。
 後ろには仲間達の姿も見える。

「下に続きそうな場所は」

 彼らは、とある場所スポットを探しているようだ。

 ガレアの一件で情報を手にし、エアル達は『クラウディア雲上』のを目指すことにした。
 だが一概いちがいに下とは言っても、闇雲に進むのは良くない。
 ならばまずは、“堀り進めるべき場所”を探すことから始めたのだ。

 そんな中で、ふとエアルが口にした。

「そういえば、魔物はどこから来るのかな」
「「「……」」」

 ただなんとなく発しただけだが、誰からの回答もない。
 リザ達も改めて考えてみると「たしかに」と疑問に感じたようだ。
 それから、共に考察を進める。

「少なくとも、雲から生まれてくるわけではないものね」
「だよね」

 うーんと頭を悩ませた結果、リザがまさかと思ったことを話した。

「下から上がってきてる……?」
「「「……!」」」

 その答えに、一行も納得の顔を浮かばせた。
 “『クラウディア雲上』に下があるかもしれない”、と知ったからこその思い付きである。

「じゃあ、魔物がたくさんいる場所に行ってみる?」
「それがいいわね」

 魔物はとある場所から上がってくる。
 そう考えれば、自然とその辺りの魔物の数は多くなるだろう。
 
「そんな場所ある? ガレアさん」
「……うむ、たしかにあるな」

 対して、ガレアもそういえばと思い出すように答えた。
 ここまで話せば、もう答えは出たも同じ。

 だが──

「そこはかなり危険だぞ」
「「「……!」」」

 ガレアはそう忠告する。
 それでも、エアル達がNOと言うはずもなかった。

「大丈夫だよ! 僕はそこに行きたい」
「フッ、さすがだな」

 そうして目標を定めたエアル達は、一度引き返すことにする。
 あと一人、仲間を待つために。

「レリアにも伝えなきゃね」
 







 一方その頃、『クラウディア雲上』の入口付近。

「この辺でいいよ」

 そう口にしたチェリーが足を止めた。
 彼女が振り返った先にいるのは──レリア。
 レリアはチェリーの安全を考え、護衛兼見送り役として付き添っていたようだ。

「あら、探索者街はダンジョンはもう一つ越えた先でしょう」
「うん。でも、ここからは抜け道を知ってるから。そうでもしないと、私なんかが一人でこんな場所来れないでしょ」
「それもそうね」
「それに……」

(これ以上レリアといると、邪魔をしてしまう)

 そう言いかけるも、とっさに口から出ていくのを抑えた。

「それに、なにかしら」
「ううん。やっぱなんでもない!」

 手を左右に振り、チェリーは心の中にしまうのだった。
 これ以上、レリアに迷惑をかけたくないと思っているのかもしれない。
 すると、ふぅと一息ついたレリアがたずねる。

「で、あなたはこれからどうするつもりなの?」
「私は……少し考えてみる」

 空を見上げたチェリーは、次にチラリとレリアに視線を向けた。

「レリアみたいに必死になっていたら、私にも仲間できるかな」
「……さあね。あなた性格悪いから」
「レリアには言われたくないしー!」
「フフフッ」

 そんな軽いやり取りを終え、チェリーはレリアに背を向けた。
 いつまでも彼女の時間を奪いたくないのだろう。

「じゃあねレリア。もう会わないかもしれないけど」
「そうかしら。あなた、しぶとそうだから」
「だといいね。じゃ」
「ええ」

 そうして、二人は真反対に歩き出す。
 だが、チェリーは名残惜しそうに後ろを振り返った。

「……」

 チェリーはレリアにあこがれていた。
 自分以外のことは一切考えない、そんな姿の彼女に。

(でも、違ったみたい)

 “不敵のレリア”と呼ばれる彼女だが、他者には迷惑をかけたことはない。
 だからこそ探索も基本単独ソロで行い、“カモ”とは言いながらも危害を加えることは特に無かった。

(私はレリアの真っ直ぐさに憧れてたみたい)

 本当に目的しか見えていない。
 そんな“真っ直ぐさ”にかれていたのだと、チェリーは気づいた。

 そんなレリアは今、心から信頼できる仲間を見つけた。
 共に歩む者ができただけで、昔から変わっていない。

 対して、チェリーは真っ直ぐではなかった。
 時には人を邪魔して、道を逸らし続けていた。

 真っ直ぐ突き進み続けたレリア、道を逸らし続けたチェリー。
 似た者同士にも見えた両者の差は、“仲間”という点で現れてしまった。

 だからこそ、チェリーは今度こそ真っ直ぐ生きてみようとちかう。

「私も仲間見つかるかな」

 そう言うと、チェリーはふっと姿を消した。
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