ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第50話 魅力的すぎた話

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 「とある話を聞いて、目がくらんじまったんだ」

 ガレアを裏切った連中の一人が、その理由を自白し始める。
 この話は、ガレアの過去、そしてエアル達の目的とも関わってくるのだった。

「この『クラウディア雲上』の下《・》について」
「「「……!」」」

 エアル達は目を見開いた。
 それぞれ思ったことは違うかもしれないが、驚いたのは事実だ。
 それから一番にリザが反応した。

「待って! ここの雲は見た目からそう呼んでいるけど、下に何かあるのは聞いたことがないわ!」

 彼女の言う通り、『クラウディアうんじょう』の雲は便宜べんぎ上そう呼んでいるが、正確には違う。
 人や魔物が乗れるということ、跳ねたりする性質などからも、それは周知の事実だろう。

 では、雲の正体は何なのか。
 それは、まだ解明されていない・・・・・・・・・・

 雲っぽいが、雲ではない。
 だからこそ、ここを地面だと考えて、人々は奥地からつながる次のダンジョンを目指す。
 そうして、またラビリンス全体を蛇行だこうしながら下へと進んでいくのだ。

 その理解の上、男はリザに答えた。
 
「俺もそうだったよ。だが、本来は蛇行するように進むところを、下に突っ切れるとすれば?」
「……!」
「相当なショートカットになる。雲の下は無限じゃねえ。真っ直ぐ下へ進めば、どこか最下層近くのダンジョンにたどり着くんだとよ」
「「「……っ」」」

 男の話に、エアル達は互いにチラリと視線を合わせる。
 これが直近で・・・聞いた話と似ていたからだ。

(((“頂上の扉”……)))

 まさにフェニックスの里で開いた、“頂上の扉”と瓜二つの話だったのだ。
 “頂上の扉”があるかは不明だが、雲が似た役割を果たすなら魅力的な話だろう。
 魅力的すぎたからこそ、彼らは目がくらんでしまったのだ。

「でも、雲を突っ切るなんてどうやって……いや、そういえば!」

 そして同時に、リザはここに到着した時のことを思い出す。
 
 エアル達は、フェニックスの里から、落っこちるようにここへ着地した。
 その時、彼らは勢いのまま雲に突っ込んだのだ。
 感触が柔らかかったため怪我もなかったが、あの時大きく跳ねることはなかった。

 しかし、今日ガレアに教えてもらったのは、どれも跳ねる・・・方法。
 明らかに雲の反応が違ったのだ。

 沈む時と、跳ねる時、この二つの差は──

「衝撃の差……?」

 雲に突っ込む時の、衝撃の差。

 つまり、衝撃が一定以上であれば、雲はそれを吸収するように沈み込む。
 衝撃が一定未満であれば、ぼよんと跳ねる。
 これが『クラウディア雲上』の雲の性質というわけだ。

「じゃあ、下へ行くには……」
「そういうことだ」

 リザが移した視線に、男はうなずく。

「どれだけの衝撃が必要かは知らんが、理論上、雲はどこまでも下に進める。そうしていつか、かなり下のダンジョンに行き着くってわけだ」
「「「……!」」」

 これが、男達をガレアを仲間を裏切った理由だ。
 方法は分からないが、どこまで続くか分からない雲を突っ切るとなると、あらゆるものが必要となる。
 彼らもやはり一探索者として、最下層の魅力には叶わなかったようだ。

 だが、エアルはハッキリと口にした。

「それでも、ガレアさんを裏切ったのは許せない」

 対して、男達も理解しているような表情だ。

「……ハッ、だろうな。だからお前たちに託したんだよ」
「どういう意味?」
「せめてお前たちが見てきてくれ。そこに何があるか」
「……言われなくても」

 こうしてエアル達は、拘束した男達を閉じ込める。
 対処に関しては、後ほど考えることにした。



 
「本当にありがとう……!」

 街へと戻り始めるところで、ガレアがバッと頭を下げる。 

「物資を取り返せたのは、君たちのおかげだ。本当に感謝してもしきれない……!」
「あはは、大げさだよ。僕達もガレアさんにはお世話になってるから、おあいこだね」

 対して、エアルはふっとした笑みを浮かべる。
 表情から、リザやレリアも同じことを思っているみたいだ。

「でも、ガレアさん。行く・・んでしょ?」
「……! ああ」

 『野生の勘』と言うべきか、エアルはガレアの考えていることを見抜いていたようだ。

「もしかしたら、にいるのかもしれないからな」

 ガレアは、さっきの話を聞いて決意していた。

 一年中探し回っても、ガレアの相棒はついに見つからなかった。
 ならば、何らかの方法で下に落ちたのかもしれないと考えたのだ。

 対して、エアルはニッと笑顔を浮かべる。

「それなら僕たちも行くよ」
「なっ!?」
「そうでしょ、みんな」

 分かってはいながらも、エアルは仲間たちへ振り返る。
 それには「もちろん」といった表情で、リザ達もうなずく。
 彼らの目的もにあると確信したようだ。

「ああ、ではよろしく頼む!」
「こちらこそ!」

 エアル達が次に目指す場所は──『クラウディア雲上』のだ。







 その頃、とある場所にて。

「ガレア、私はここよ」

 一人の女性が祈るように手を合わせていた。
 また、彼女の近くには不思議な生物の姿も見える。
 
「クゥッ!」

 それはまるでクジラのような声を発していた──。
 
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