ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第48話 手を出してはいけない存在

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 「返してもらうぞ、お前達」

 元仲間たちの前に現れたガレアが、そう告げる。
 声色や雰囲気から、静かに怒っているのが感じられた。
 対して、顔をひきつらせた男達は一斉に声を上げる。

「なんでここが!?」
「おいバカ!」
「いや、ガレアさん違うんです! これは!」

 今さらあわてふためいても、もう遅い。
 ここには証人がいる。

「注意力は散漫さんまんね」
「女、てめえいつの間に!」

 男達を物陰からずっと見ていたチェリーだ。
 どうやらガレア達が駆けつけてできた隙に、するりと逃れていたらしい。
 今までのすべというべきか、逃げるタイミングに関する感性は優れている。

 そんなチェリーに、レリアは確認を取る。

「“追って来い”、ということで良かったのよね」
「レリア……! うん!」

 チェリーは、昨日レリアと会った場所に×印を残していた。
 これは二人の間では、SOSの合図となっている。
 その合図とガレアの一件を考えれば、自ずと状況は見えてくるというわけだ。
 
 それでも、チェリーは気まずそうに返した。

「やったのが私だって、疑わなかったんだ」
「フフフッ。あなたなら跡を残さないでしょ」
「……! ふっ、それもそうね」

 若干嫌味混じりの言葉だが、チェリーの口角は上がって見える。
 そうして、二人は再び前へ向き直る。

「じゃあ、ガレアさんの物資を盗んだのは」
「こいつらよ」

 ここまで言われれば、もう誤魔化ごまかしようがない。
 ならばと、男達は後方へと声をかけた。

「おい、出番だぞ」

 その声に応えるよう、奥からはぞろぞろと人が現れ始める。
 どれも屈強な肉体を持った者たちだ。
 どうやらガレアの元仲間たちは、他にも人を呼んでいたというわけだ。

 それにはガレアも苦い顔を浮かべる。

「やはり最初から計画していたんだな」
「はっ、そうだよ。間抜けなガレアさんよお」
「……」

 元仲間たちはすでに割り切り、ガレアをあおる。
 対して、何を思ったかガレアは言い返さなかった。

「お前達はここで口止めだ」
「「「……っ!」」」

 だが、今はこの事態をなんとかしなければならない。
 そうして、エアルがすっと前へ出る。

「ガレアさん」
「……ああ」

 エアルのアイコンタクトに、ガレアはうなずいた。
 浮かべたのは覚悟を決めた表情だ。
 
「ガレアさんを傷つけた人は、許さない!」

 宣言したエアルが一気に飛び出す。

 それと共に、男達も構えを取る。
 ──が、目に追える速さではない。

「ぐおあっ!」
「「「……!?」」」

 姿が消えたかと思えば、次の瞬間には男が何人かふっとばされていた。

 彼らも攻略組、もしくはそれに近い実力を持つ者達。
 そのはずが、エアルにはまるで対応できない。

「容赦は無しだよ」
「「「……っ!」」」

 怒ったエアルは、それほど止められない。

 さらに──

「フフフッ」
「「「ぐあああああっ!」」」

 レリアも長刀『桜吹雪』を片手に、男達を一掃する。

「あいつ、“不敵のレリア”か!」
「チッ! 厄介な奴が紛れてやがる!」

 攻略組の中でも、レリアは上の方に位置する。
 こんな者たち相手には引けを取らない。

 そうして、エアル・レリアを前にした男達はギリっと歯を食いしばる。

「くそ、こいつら!」
「つええぞ!」

 最悪、ガレアだけならなんとかなると思っていたのだろう。
 しかし予想外の乱入により、計画が崩れたのだ。

 ならばと、男達は強硬手段に出る。

「てめえら動くんじゃねえ!」
「「「……!」」」

 ふいに、後方から声が響く。

 男が捕まえたのは、二匹。
 見張り役をしていた、ラフィとフレイだ。

「この弱そうな奴ら、どうなってもいいのか?」
「エアル君、ペット達が……!」

 その状況に、ガレアはまずいと声を上げる。
 だが、エアル達はまるで真逆・・の反応をしていた。

「あの、やめておいた方がいいよ?」
「あぁ? 負け惜しみすんじゃねえ!」

 それでも、男は優位に立っていると思っている。
 ラフィとフレイを離すはずもない。

 そして、

「わふぅぅぅ……」
「ぼぉぉぉぉ……」

 手を出してはいけない存在──“頂上種”の二匹がうめき声を上げた。
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