47 / 52
第47話 知りたい気持ち
しおりを挟む
「やってやったぜ!」
筋肉質の男が声を上げる。
男の周りには、同じくガハハと笑っている者たちがいた。
「こりゃ相当な物資だな!」
「売れる物もけっこうあるぜ?」
「ああ、長らく待った機会があったなあ!」
彼らは、ガレアの元仲間たち。
これから共に街を造っていくはずだった者たちだ。
「にしても、ガレアもバカだよなあ」
「ほんと、ほんと」
「探索者なんか人を騙してなんぼよ」
しかし、この様子からも分かる通り、彼らはガレアを裏切った。
というより、最初から裏切るつもりだったようにも感じられる。
そして──
「……っ」
そんな男達を、物陰からのぞいている少女がいた。
コートで身を隠してはいるが、チラリと見える中の格好は派手そうだ。
レリアの旧友、チェリーである。
どうやら彼女と男達は仲間ではないらしい。
「……ふぅぅ」
チェリーは静かに、だが頻繫に呼吸を整えている。
慣れない追跡に緊張しているようだ。
(こんなの私の領分じゃないのよ……!)
隠密に関して、チェリーは素人同然だ。
ここまでやり過ごせているのは、共に何度か探索をしていた者を見ていたからだ。
(こんな感じだったわよね、レリア……)
レリアは、チェリーにとっても唯一の存在だった。
その理由は──彼女の生きる術にある。
チェリーには心から信頼できる仲間がいない。
その容姿を以て男を誘い、囲われ、貢がれたところで逃げる。
これが彼女のやり方だ。
そんなチェリーが、唯一本心を打ち明けたことあるのがレリアだ。
チェリーは目的のため、なんとしても最下層に行かなければならない。
彼女は、目的のためならば手段を選ばないレリアに、どこか親近感を抱いていたのだ。
(あなたは、変わってしまったみたいだけどね)
だが、昨日の路地裏でことを思い出し、チェリーはぐっと拳を握る。
まさか断られるとは思っていなかった。
その上、レリアに“真の仲間”と呼べる者ができていたなんて信じられなかったのだ。
しかし、レリアは表情は間違いなく本心だった。
自分にすら浮かべることのなかったその顔を見て、チェリーは多少なりともショックを受けていた。
(あなたの誰も信用していないところに憧れていたのに……)
だからこそ、チェリーは盗みを働かなかった。
レリアは何を思って、どうやって信頼できる仲間を得たのか。
それをどうしても知りたくなったのだ。
そうして計画を止め、ダンジョンに戻る選択を取ろうとしていた。
そこで見てしまったのが、男達の犯行というわけだ。
(レリアは私がやったと思ってるのかな。思ってるよね)
最後に言葉を交わした時、レリアは自分のことを見ていなかった。
愛想をつかれて別れたと、チェリーは思っていたのだ。
それでも、一応痕跡を残しておいた。
かつて二人で作った“SOS”の印を。
(気づいてくれたら嬉しいな)
──しかし、チェリーは考え事をしすぎた。
「おい」
「……ッ!」
後ろから近づいてくる男に気づかなかったのだ。
体格の差もあり、そのまま男にひょいっと持ち上げられてしまう。
「ちょっ! 放してよ!」
「見られたからにはタダじゃ済ませられねえなあ」
逃げることに関しては長けているチェリーだが、戦闘面では攻略組に遠く及ばない。
必死に抵抗するチェリーだが、やはり敵うはずもなく。
「おい、なんか顔が良い女に覗かれてたぜ」
「まじかよ、そりゃ口止めしないとな」
「ついでにやっちまうか」
犯行をはたらいたばかりの男達は、完全にハイになってしまっている。
その下種な顔は、何を考えているか容易に想像がついた。
「ふざけんな! このっ!」
「おー、非力だね。嬢ちゃん」
「くっ……!」
ただでさえ敵わない上、相手は大男が複数人。
チェリーは歯を食いしばりながらも、後悔の念を抱いていた。
(これが今までの罰だっていうのね……)
一番最初に人を騙したのはいつだったか。
それすら思い出せないほど、チェリーはこのスタイルで生きてきた。
ならばもう諦めるしかないか──と考えた時。
「やっぱ、アンタじゃなかったか」
「……!」
後方から聞き馴染みのある声が聞こえる。
「ほんと、ケンカは弱いわよね」
「レリア……!?」
そこには、愛想をつかれたと思っていたレリアがいた。
チェリーが残した痕跡はしっかりと伝わっていたのだ。
レリアがいるということは、他にも人がいる。
「こいつらね」
「見つけたよ」
「わふぅ」
「ぼぉ」
リザ、エアル、ラフィ、フレイ、そして──
「返してもらうぞ、お前達」
「「「「……!」」」
静かに怒ったガレアだ。
筋肉質の男が声を上げる。
男の周りには、同じくガハハと笑っている者たちがいた。
「こりゃ相当な物資だな!」
「売れる物もけっこうあるぜ?」
「ああ、長らく待った機会があったなあ!」
彼らは、ガレアの元仲間たち。
これから共に街を造っていくはずだった者たちだ。
「にしても、ガレアもバカだよなあ」
「ほんと、ほんと」
「探索者なんか人を騙してなんぼよ」
しかし、この様子からも分かる通り、彼らはガレアを裏切った。
というより、最初から裏切るつもりだったようにも感じられる。
そして──
「……っ」
そんな男達を、物陰からのぞいている少女がいた。
コートで身を隠してはいるが、チラリと見える中の格好は派手そうだ。
レリアの旧友、チェリーである。
どうやら彼女と男達は仲間ではないらしい。
「……ふぅぅ」
チェリーは静かに、だが頻繫に呼吸を整えている。
慣れない追跡に緊張しているようだ。
(こんなの私の領分じゃないのよ……!)
隠密に関して、チェリーは素人同然だ。
ここまでやり過ごせているのは、共に何度か探索をしていた者を見ていたからだ。
(こんな感じだったわよね、レリア……)
レリアは、チェリーにとっても唯一の存在だった。
その理由は──彼女の生きる術にある。
チェリーには心から信頼できる仲間がいない。
その容姿を以て男を誘い、囲われ、貢がれたところで逃げる。
これが彼女のやり方だ。
そんなチェリーが、唯一本心を打ち明けたことあるのがレリアだ。
チェリーは目的のため、なんとしても最下層に行かなければならない。
彼女は、目的のためならば手段を選ばないレリアに、どこか親近感を抱いていたのだ。
(あなたは、変わってしまったみたいだけどね)
だが、昨日の路地裏でことを思い出し、チェリーはぐっと拳を握る。
まさか断られるとは思っていなかった。
その上、レリアに“真の仲間”と呼べる者ができていたなんて信じられなかったのだ。
しかし、レリアは表情は間違いなく本心だった。
自分にすら浮かべることのなかったその顔を見て、チェリーは多少なりともショックを受けていた。
(あなたの誰も信用していないところに憧れていたのに……)
だからこそ、チェリーは盗みを働かなかった。
レリアは何を思って、どうやって信頼できる仲間を得たのか。
それをどうしても知りたくなったのだ。
そうして計画を止め、ダンジョンに戻る選択を取ろうとしていた。
そこで見てしまったのが、男達の犯行というわけだ。
(レリアは私がやったと思ってるのかな。思ってるよね)
最後に言葉を交わした時、レリアは自分のことを見ていなかった。
愛想をつかれて別れたと、チェリーは思っていたのだ。
それでも、一応痕跡を残しておいた。
かつて二人で作った“SOS”の印を。
(気づいてくれたら嬉しいな)
──しかし、チェリーは考え事をしすぎた。
「おい」
「……ッ!」
後ろから近づいてくる男に気づかなかったのだ。
体格の差もあり、そのまま男にひょいっと持ち上げられてしまう。
「ちょっ! 放してよ!」
「見られたからにはタダじゃ済ませられねえなあ」
逃げることに関しては長けているチェリーだが、戦闘面では攻略組に遠く及ばない。
必死に抵抗するチェリーだが、やはり敵うはずもなく。
「おい、なんか顔が良い女に覗かれてたぜ」
「まじかよ、そりゃ口止めしないとな」
「ついでにやっちまうか」
犯行をはたらいたばかりの男達は、完全にハイになってしまっている。
その下種な顔は、何を考えているか容易に想像がついた。
「ふざけんな! このっ!」
「おー、非力だね。嬢ちゃん」
「くっ……!」
ただでさえ敵わない上、相手は大男が複数人。
チェリーは歯を食いしばりながらも、後悔の念を抱いていた。
(これが今までの罰だっていうのね……)
一番最初に人を騙したのはいつだったか。
それすら思い出せないほど、チェリーはこのスタイルで生きてきた。
ならばもう諦めるしかないか──と考えた時。
「やっぱ、アンタじゃなかったか」
「……!」
後方から聞き馴染みのある声が聞こえる。
「ほんと、ケンカは弱いわよね」
「レリア……!?」
そこには、愛想をつかれたと思っていたレリアがいた。
チェリーが残した痕跡はしっかりと伝わっていたのだ。
レリアがいるということは、他にも人がいる。
「こいつらね」
「見つけたよ」
「わふぅ」
「ぼぉ」
リザ、エアル、ラフィ、フレイ、そして──
「返してもらうぞ、お前達」
「「「「……!」」」
静かに怒ったガレアだ。
274
お気に入りに追加
1,544
あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

田舎暮らしの魔草薬師
鈴木竜一
ファンタジー
治癒魔法使いたちが集まり、怪我や病に苦しむ人たちを助けるために創設されたレイナード聖院で働くハリスは拝金主義を掲げる新院長の方針に逆らってクビを宣告される。
しかし、パワハラにうんざりしていたハリスは落ち込むことなく、これをいいきっかけと考えて治癒魔法と魔草薬を広めるべく独立して診療所を開業。
一方、ハリスを信頼する各分野の超一流たちはその理不尽さとあからさまな金儲け運用に激怒し、独立したハリスをサポートすべく、彼が移り住んだ辺境領地へと集結するのだった。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる