ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第46話 ガレアの真意

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 「どうして!」

 探索から帰ってきたエアル達は、街の入口の状況に声を上げる。
 そこにあったはずの、街を造るための物資がなくなっていたからだ。

 そんな中──

「……っ!」

 何かが頭をよぎったレリアは、一目散に駆け出した。

 だが、エアル達もすぐに彼女を追いかけることはできない。
 隣でガクっと膝を落としたガレアを、このまま放っておける理由がなかったからだ。

「ガレアさん……」
「……ははっ」

 しかし、そうなったのもつかの間、次の瞬間にガレアはすぐに立ち上がる。
 彼は両手を腰に当てたまま空を見上げた。

「あの物資も誰かの役に立ったのだな!」

 身長が高いガレアの表情をのぞくことはできない。
 それでも、少し無理をしているのは声色から理解できた。

「だが、悔しいなあ! 彼ら・・は信頼していたのだが!」
 
 ガレアは再び物資の場所へ目を向ける。
 
 ここにいたはずなのは、ガレアの仲間たち。
 それぞれ魔物を近づかせないための役、怪しい者から物資を守る役など。
 昨日までは共にやってきた仲間たちがいたはずなのだ。

 しかし、彼らの姿はどこにもない。
 ガレアはあえて口にしないが、これは彼らも手を組んで物資をっていったということなのだろう。

「わふぅ……」
「ぼぉ……」
「ガレアさん……」

 これにはペット達や、リザもかける言葉が見つからない。

 リザもようやくガレアを信頼してきたところなのだ。
 そんな時に起こってしまった事態。
 少し疑っていた気まずさも相まって、口を開くことができない。
 
 そんな中、エアルがガレアの肘に手をついた。

「一回、宿に来る?」
「……ああ、そうさせてもらっていいか」

 その返答は明らかに元気がなかった。




「ガレアさん、落ち着いた?」

 エアルは、コーヒーを口に運ぶガレアを覗き見る。
 対して、少し普段に戻ったような笑顔を浮かべてくれた。

「ああ、ありがとう。エアル君」

 しかし、場の空気は重いままだ。
 あんなことがあってすぐでは、話が弾むはずがもないだろう。
 そんな時だからこそ、エアルはふとガレアへたずねた。

「ガレアさんは、どうして探索者街を造ろうと思ったの?」
「……! そうだな……」

 そう聞かれて浮かばせたのは、どこか諦めたような、決意したような表情だ。

「これは彼らにも話したことがなかったが、君達には話してもいいかもしれないな」

 彼らとは、今しがた裏切られた者たちのことだろう。
 ガレアは懐かしむような目をしながら、過去のことを話し始める。

「俺が『クラウディアうんじょう』に来たのは、ちょうど一年ほど前だったか。その時、俺にはとある相棒がいたんだ」
「相棒……」
「同じ年ぐらいの女性でな。出会ったのはそれほど昔ではないが、探索を重ねる内に意気投合したんだ。俺は見ての通り体を張ることぐらいしかできないが、彼女は頭がキレたよ」

 話を聞いているだけでも分かった。
 肉体派と頭脳派、二人は相性抜群の良いコンビだったのだろう。
 まるで今のリザとエアルのように。

「だが彼女は一年前、この『クラウディア雲上』で突然姿を消してしまったんだ」
「……! どうして?」
「分からない。前日まで普通に探索をしていたんだが、当日の朝、彼女は消えていたよ」

 ガレアは、首を横に振りながら続ける。

「最初はどうしたら良いか分からなくて、ダンジョン中を探し回った。それこそ何日も、何週間も。だけど彼女はとうとう見つからなかった。その内、俺の分の補給も底をついてね」
「一度戻るのね」
「ああ、ここから二つ戻った場所に探索者街がある。でも、そんな暇すら惜しかった」

 ここまで話されれば理解できる。
 エアルは、彼の心情を代弁するように口にした。

「ガレアさんは、その人を待ち続けているんだね」
「そうだ。頭のない俺には、彼女が帰る場所を作ることと、探索拠点を設置する事しか思いつかなかった」
「ううん、立派だよ」

 エアルも心から言葉をかけるが、ガレアはまたも首を横に振る。
 いつもの自信にあふれた姿とは真逆だが、こちらが本来のガレアなのかもしれない。

「みんなそうやって慕ってくれたが、俺はそんな器じゃないんだ。ただ彼女のために街を造りたいだけ。本当は自己中心的なクソ野郎さ」
「そんなことはない。今も僕はお世話になってるよ」
「ははっ、ありがとう」

 優しいエアルに対してそう答えるが、やはり気持ちが入っていない乾いた笑いだった。
 ──だが、そこで扉がバンっと開く。

「まだ諦めるのは早いわ」

 現れたのは、どこかへ走っていったはずのレリアだった。
 彼女はガレアを真っ直ぐと見つめて問いかける。

「物資を盗った奴らの痕跡を見つけたわよ」
「……!」
「今ならまだ間に合う。どうする?」

 その問いに、ガレアは立ち上がる。
 やはり切り替えは早い。

「どうか俺を案内してくれるか!」
「もちろん」

 一行はすぐに宿を後にした。
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