ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第41話 クラウディア雲上

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 「次のダンジョンってどんなところなの?」

 ふいにエアルが、隣のリザへたずねる。
 だが、返答はこない・・・

 それもそのはず、彼らは今──空を飛んでいる。

「いま答えられるかー!!」
「えー」

 飛んでいるというよりは、落ちているといった方が正しい。
 
 エアル達は、フェニックスの里にあった“頂上の扉”を開いた。
 大幅なショートカットとなると聞き、意気いき揚々ようようで飛び出した一行だったが、その先は空。
 地面がなく真っ逆さまだったのだ。

「フ、フレイちゃん!」
「ぼぉっ!」
 
 鳥のようにもがくリザが助けを求める。
 それにはフレイが応え、広げた炎の翼になんとか掴まることができた。
 
「いやっほーい!」
「わふー!」
「フフフッ、気持ち良いわね!」

 対して、エアル・ラフィ・レリアは全く焦る様子はない。
 むしろこの状況を楽しんですら見える。

「人外どもめ! って、あれは!」

 そうして見えてくるのは、一面にずっと広がる“雲”。
 半透明ではなく、しっかりとした白色を持っている様に見える。

「本当に大丈夫かしら……!」

 それでも、リザは焦りの表情を浮かばせる。

 普通のイメージからすれば、雲に乗るなどまず不可能。
 誰もが、そのまま突き抜けてしまうと考えるだろう。

 だが、次のダンジョンは『クラウディアうんじょう』。
 その名の通り、雲の上を進んで行かなければならないのだ。

 不安そうなリザには、エアルが声を上げる。

「大丈夫っぽい」
「本当でしょうね!?」
「“多分”!」
「……!」

 その言葉に、リザも覚悟を決めた。

「ったく、信じたわよ!」
「うん!」

 キッと前方へ目をらし、掴まっているフレイと共に態勢を整える。
 周りのエアル達もすでに着地態勢だ。

「いっけえーーー!」
「わふぅーーー!」

 そしてそのまま、彼らはぽふんっと雲の上に着地した。




「う~んっと!」

 太陽が照りつける空の下、エアルは背伸びをした。
 今立っているのは──雲の上だ。

「気持ち良い!」

 ──『クラウディア雲上』。
 ラビリンスの中でも、かなり下層と言われている最上級ダンジョンだ。
 “雲の上”という他にはない地形を持っており、最難関の一つとも呼ばれる。
 ここまで来れる探索者はわずかしかおらず、出現する魔物はほとんどがAランクだという。

「ちゃ、ちゃんと歩けるわね……」
「ぼぉ」

 そんなダンジョンで、リザはフレイと手をつなぎながら歩く。
 だが、まだ腰が引けており、少し不安が残っているみたいだ。

「情報屋さんがそんなんじゃ、この先心配になるわね」
「な、なにおう!?」

 そんなリザへ、小言をこぼすレリア。
 思わず反発されるが、彼女の思惑通りだった。

「ほら、もう大丈夫じゃない」
「あ」

 言い返した時に、自然と腰が浮いたのだ。
 一度慣れてしまえば、もう怖くはない。

「……あ、ありがと」
「お互い様よ。だからガイドは任せたわ」
「ええ!」

 レリアもすっかり助け合う仲間である。
 そんな彼女らの横で、エアルとラフィはぴょんぴょんしていた。

「おっほー!」
「わっふー!」

 雲でできた地面は、トランポリンのように跳ねるようだ。
 だが、先ほど彼らが空から突っ込んだ時は、ダメージもなく包み込むような感触だった。

「不思議だね!」
「……そうなのよね」

 その不思議さにうなずきながら、リザが応えた。

「ほら、あれを見て」
「!」

 リザが指差した遠い先には、魔物がエアルと同じような動きをしている。
 しかし、その姿には明らかに違和感がある。

「え、サメ!?」
「そう。他にもたくさん水の生物がいるわ」

 なんと雲の上で跳ねていたのは、サメやイルカなど、本来は水中にいるはずの種類だ。
 その不思議な光景に、リザが言葉を付け加える。

「クラウディア雲上は、数あるダンジョンでも最も謎が多いの」
「……!」
「ここで私たちが探すのは──」

 リザは真っ直ぐとした目で前を見つめた。

「“頂上種”の一角、白クジラよ」
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