41 / 52
第41話 クラウディア雲上
しおりを挟む
「次のダンジョンってどんなところなの?」
ふいにエアルが、隣のリザへたずねる。
だが、返答はこない。
それもそのはず、彼らは今──空を飛んでいる。
「いま答えられるかー!!」
「えー」
飛んでいるというよりは、落ちているといった方が正しい。
エアル達は、フェニックスの里にあった“頂上の扉”を開いた。
大幅なショートカットとなると聞き、意気揚々で飛び出した一行だったが、その先は空。
地面がなく真っ逆さまだったのだ。
「フ、フレイちゃん!」
「ぼぉっ!」
鳥のようにもがくリザが助けを求める。
それにはフレイが応え、広げた炎の翼になんとか掴まることができた。
「いやっほーい!」
「わふー!」
「フフフッ、気持ち良いわね!」
対して、エアル・ラフィ・レリアは全く焦る様子はない。
むしろこの状況を楽しんですら見える。
「人外どもめ! って、あれは!」
そうして見えてくるのは、一面にずっと広がる“雲”。
半透明ではなく、しっかりとした白色を持っている様に見える。
「本当に大丈夫かしら……!」
それでも、リザは焦りの表情を浮かばせる。
普通のイメージからすれば、雲に乗るなどまず不可能。
誰もが、そのまま突き抜けてしまうと考えるだろう。
だが、次のダンジョンは『クラウディア雲上』。
その名の通り、雲の上を進んで行かなければならないのだ。
不安そうなリザには、エアルが声を上げる。
「大丈夫っぽい」
「本当でしょうね!?」
「“多分”!」
「……!」
その言葉に、リザも覚悟を決めた。
「ったく、信じたわよ!」
「うん!」
キッと前方へ目を凝らし、掴まっているフレイと共に態勢を整える。
周りのエアル達もすでに着地態勢だ。
「いっけえーーー!」
「わふぅーーー!」
そしてそのまま、彼らはぽふんっと雲の上に着地した。
「う~んっと!」
太陽が照りつける空の下、エアルは背伸びをした。
今立っているのは──雲の上だ。
「気持ち良い!」
──『クラウディア雲上』。
ラビリンスの中でも、かなり下層と言われている最上級ダンジョンだ。
“雲の上”という他にはない地形を持っており、最難関の一つとも呼ばれる。
ここまで来れる探索者はわずかしかおらず、出現する魔物はほとんどがAランクだという。
「ちゃ、ちゃんと歩けるわね……」
「ぼぉ」
そんなダンジョンで、リザはフレイと手をつなぎながら歩く。
だが、まだ腰が引けており、少し不安が残っているみたいだ。
「情報屋さんがそんなんじゃ、この先心配になるわね」
「な、なにおう!?」
そんなリザへ、小言をこぼすレリア。
思わず反発されるが、彼女の思惑通りだった。
「ほら、もう大丈夫じゃない」
「あ」
言い返した時に、自然と腰が浮いたのだ。
一度慣れてしまえば、もう怖くはない。
「……あ、ありがと」
「お互い様よ。だからガイドは任せたわ」
「ええ!」
レリアもすっかり助け合う仲間である。
そんな彼女らの横で、エアルとラフィはぴょんぴょんしていた。
「おっほー!」
「わっふー!」
雲でできた地面は、トランポリンのように跳ねるようだ。
だが、先ほど彼らが空から突っ込んだ時は、ダメージもなく包み込むような感触だった。
「不思議だね!」
「……そうなのよね」
その不思議さにうなずきながら、リザが応えた。
「ほら、あれを見て」
「!」
リザが指差した遠い先には、魔物がエアルと同じような動きをしている。
しかし、その姿には明らかに違和感がある。
「え、サメ!?」
「そう。他にもたくさん水の生物がいるわ」
なんと雲の上で跳ねていたのは、サメやイルカなど、本来は水中にいるはずの種類だ。
その不思議な光景に、リザが言葉を付け加える。
「クラウディア雲上は、数あるダンジョンでも最も謎が多いの」
「……!」
「ここで私たちが探すのは──」
リザは真っ直ぐとした目で前を見つめた。
「“頂上種”の一角、白クジラよ」
ふいにエアルが、隣のリザへたずねる。
だが、返答はこない。
それもそのはず、彼らは今──空を飛んでいる。
「いま答えられるかー!!」
「えー」
飛んでいるというよりは、落ちているといった方が正しい。
エアル達は、フェニックスの里にあった“頂上の扉”を開いた。
大幅なショートカットとなると聞き、意気揚々で飛び出した一行だったが、その先は空。
地面がなく真っ逆さまだったのだ。
「フ、フレイちゃん!」
「ぼぉっ!」
鳥のようにもがくリザが助けを求める。
それにはフレイが応え、広げた炎の翼になんとか掴まることができた。
「いやっほーい!」
「わふー!」
「フフフッ、気持ち良いわね!」
対して、エアル・ラフィ・レリアは全く焦る様子はない。
むしろこの状況を楽しんですら見える。
「人外どもめ! って、あれは!」
そうして見えてくるのは、一面にずっと広がる“雲”。
半透明ではなく、しっかりとした白色を持っている様に見える。
「本当に大丈夫かしら……!」
それでも、リザは焦りの表情を浮かばせる。
普通のイメージからすれば、雲に乗るなどまず不可能。
誰もが、そのまま突き抜けてしまうと考えるだろう。
だが、次のダンジョンは『クラウディア雲上』。
その名の通り、雲の上を進んで行かなければならないのだ。
不安そうなリザには、エアルが声を上げる。
「大丈夫っぽい」
「本当でしょうね!?」
「“多分”!」
「……!」
その言葉に、リザも覚悟を決めた。
「ったく、信じたわよ!」
「うん!」
キッと前方へ目を凝らし、掴まっているフレイと共に態勢を整える。
周りのエアル達もすでに着地態勢だ。
「いっけえーーー!」
「わふぅーーー!」
そしてそのまま、彼らはぽふんっと雲の上に着地した。
「う~んっと!」
太陽が照りつける空の下、エアルは背伸びをした。
今立っているのは──雲の上だ。
「気持ち良い!」
──『クラウディア雲上』。
ラビリンスの中でも、かなり下層と言われている最上級ダンジョンだ。
“雲の上”という他にはない地形を持っており、最難関の一つとも呼ばれる。
ここまで来れる探索者はわずかしかおらず、出現する魔物はほとんどがAランクだという。
「ちゃ、ちゃんと歩けるわね……」
「ぼぉ」
そんなダンジョンで、リザはフレイと手をつなぎながら歩く。
だが、まだ腰が引けており、少し不安が残っているみたいだ。
「情報屋さんがそんなんじゃ、この先心配になるわね」
「な、なにおう!?」
そんなリザへ、小言をこぼすレリア。
思わず反発されるが、彼女の思惑通りだった。
「ほら、もう大丈夫じゃない」
「あ」
言い返した時に、自然と腰が浮いたのだ。
一度慣れてしまえば、もう怖くはない。
「……あ、ありがと」
「お互い様よ。だからガイドは任せたわ」
「ええ!」
レリアもすっかり助け合う仲間である。
そんな彼女らの横で、エアルとラフィはぴょんぴょんしていた。
「おっほー!」
「わっふー!」
雲でできた地面は、トランポリンのように跳ねるようだ。
だが、先ほど彼らが空から突っ込んだ時は、ダメージもなく包み込むような感触だった。
「不思議だね!」
「……そうなのよね」
その不思議さにうなずきながら、リザが応えた。
「ほら、あれを見て」
「!」
リザが指差した遠い先には、魔物がエアルと同じような動きをしている。
しかし、その姿には明らかに違和感がある。
「え、サメ!?」
「そう。他にもたくさん水の生物がいるわ」
なんと雲の上で跳ねていたのは、サメやイルカなど、本来は水中にいるはずの種類だ。
その不思議な光景に、リザが言葉を付け加える。
「クラウディア雲上は、数あるダンジョンでも最も謎が多いの」
「……!」
「ここで私たちが探すのは──」
リザは真っ直ぐとした目で前を見つめた。
「“頂上種”の一角、白クジラよ」
414
お気に入りに追加
1,541
あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

S級アイテムショップ店長の俺は、盗みにくる冒険者を配信しながら蹂躙する
桜井正宗
ファンタジー
異世界マキシマイズのあるアイテムショップ店長・カインは、若くして起業。自前のお店を持っていた。店長クラスしか持ちえない『ダンジョン露店』ライセンスを持ち、ダンジョン内で露店が出来た。
だが、ダンジョン内ではアイテムを盗もうとする輩が後を絶たなかった。ダンジョン攻略を有利に進めたいからだ。……だが、カインは強かった。とにかく強かった。攻撃され、一定のHPになると『大店長』、『超店長』、『極店長』へとパワーアップ出来たのであった。その店長パワーでアイテムを盗み出す冒険者を蹂躙する――。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる