38 / 52
第38話 里のもふもふ達と
しおりを挟む
《では仲間と共についてくるがよい》
戦闘を通してエアルを認め、エアルの仲間達を認めた、フェニックスの長。
彼らへそう告げると、先導するように里を進み始めた。
また、他のフェニックス達に対しても声をかける。
《皆の者、心配をかけた。だがもう大丈夫だ》
里の中でも一際大きい長が戦うなど、よっぽどのことだったのだろう。
様子を見に来ていた多くのフェニックスは、その言葉にようやく安堵の表情を浮かべる。
そして長は、エアル達へバサっと片翼を向けた。
《彼らは客人である》
その言葉に、フェニックス達は声を上げる。
「ボォッ!」
「ボオォッ!」
「ボオオオオオオッ!」
彼らはそれぞれ炎の翼を収め、薄黄色のひよこのような本来の姿へと戻った。
それから一斉にエアル達へ近づいてきた。
「「「ボォ~っ!」」」
「ふわあー!」
そんな光景に、エアルは思わず目をキラキラさせる。
今のフェニックス達は、フレイと同じく可愛らしい小鳥の姿。
そんな“もふもふ”達がたくさん迫ってきたのだ。
こうなってしまうのも仕方がない。
そしてそれは、仲間達も同じのようだ。
「こ、これは……!」
普段はもふもふを「別に好きじゃない」アピールをしているレリアだが、思わずだらしない表情を浮かべてしまう。
「わふ~!」
また、フレイとすぐに仲良しになったラフィも、ぴょんぴょんと跳ねながらフェニックスと触れ合っている。
“頂上種”同士、何か惹かれ合うものがあるのかもしれない。
だが一方で──
「ひやあああああっ!」
リザだけは、フェニックス達と反対方向へ走り出そうとしていた。
しかし、膝がガクガクと震えているのか、思うように動けていない。
そんな様子はどのフェニックスよりも鳥らしく見える。
「リザ、なにやってるの?」
「まだ一気には無理なのよー!」
フレイに対してはすでに何ともないリザだが、こうも一斉に来られるとまだ体が反応してしまう。
トラウマが完全に消え去ったわけではないようだ。
「えー、みんなかわいいのになあ」
「「「ぼぉ……」」」
「その顔で見ないで!」
エアル同様、ぷくっと頬を膨らませたフェニックス達に、リザは声を上げる。
フレイを通して、鳥の少し可愛さも理解できたからこそ、却って心苦しいのかもしれない。
リザがフェニックス達に慣れるのは、もう少し後のことだった。
《ふっ、面白い連中だ》
そうこうしながらも、のどかなフェニックスの里を案内してもらうエアル達であった。
「そういえば、長さんは人と何かあったの?」
穏やかな里でフェニックス達とのんびりする中、エアルが長へたずねた。
ゆっくりと振り返った長は、不思議そうに聞き返した。
《なぜそう思う》
「“人は醜い”とか言ってたから、もしかしたらそうなのかなって」
《ふっ、そうか》
相変わらず曖昧に答えるエアルだが、彼の直感は当たる。
図星のような表情で長は話し始める。
《我もかつては、フレイのように外へ出ておった》
「僕たちが来た『マグメル火山』とか?」
《うむ。人が醜いと言ったのは、その当時の見聞からだ》
ダンジョン『マグメル火山』は、ラビリンス全体でも中~上級と言える。
その辺りに来る者ならば、きれいな探索者ばかりではない。
長はそんな者たちを見たのだろう。
《だが一つ、我が人を信じられなくなったことがあったのだ》
「聞いても、いいの?」
《……》
少し遠慮気味にたずねるエアルに対して、長は口を閉じる。
やはりあまり話す気にはなれない内容なのだろう。
しかし──
《……!》
とある物を視界に入れた瞬間、長はバッと目を見開く。
その先にいたのは、リザだ。
《お主、それをどこで!》
「え、これのこと?」
《そうだ!》
長が大きな反応を示したのは、リザが手に持っていたもの。
彼女のペンダントから出てきた、“一枚の羽根”だ。
この羽根は、フェニックスのそれと同じ見た目をしている。
だが、小さめの個体であるフレイとはサイズが合わなかったのだ。
「……あ」
そこでようやくリザは気づく。
里の中でも一際大きな長は、炎を纏っていない本来の姿も少し大きい。
だからこそ、いま手に持っている羽根がぴったり同じサイズではないかと。
《まさか》
対して、長もサイズが合うことを自覚しているようだ。
それどころか、何かを思い出すように空を見上げている。
そして話す気になったのか、長は再びエアル達へ顔を向けた。
《その羽根は……とある人物にあげた物だ》
戦闘を通してエアルを認め、エアルの仲間達を認めた、フェニックスの長。
彼らへそう告げると、先導するように里を進み始めた。
また、他のフェニックス達に対しても声をかける。
《皆の者、心配をかけた。だがもう大丈夫だ》
里の中でも一際大きい長が戦うなど、よっぽどのことだったのだろう。
様子を見に来ていた多くのフェニックスは、その言葉にようやく安堵の表情を浮かべる。
そして長は、エアル達へバサっと片翼を向けた。
《彼らは客人である》
その言葉に、フェニックス達は声を上げる。
「ボォッ!」
「ボオォッ!」
「ボオオオオオオッ!」
彼らはそれぞれ炎の翼を収め、薄黄色のひよこのような本来の姿へと戻った。
それから一斉にエアル達へ近づいてきた。
「「「ボォ~っ!」」」
「ふわあー!」
そんな光景に、エアルは思わず目をキラキラさせる。
今のフェニックス達は、フレイと同じく可愛らしい小鳥の姿。
そんな“もふもふ”達がたくさん迫ってきたのだ。
こうなってしまうのも仕方がない。
そしてそれは、仲間達も同じのようだ。
「こ、これは……!」
普段はもふもふを「別に好きじゃない」アピールをしているレリアだが、思わずだらしない表情を浮かべてしまう。
「わふ~!」
また、フレイとすぐに仲良しになったラフィも、ぴょんぴょんと跳ねながらフェニックスと触れ合っている。
“頂上種”同士、何か惹かれ合うものがあるのかもしれない。
だが一方で──
「ひやあああああっ!」
リザだけは、フェニックス達と反対方向へ走り出そうとしていた。
しかし、膝がガクガクと震えているのか、思うように動けていない。
そんな様子はどのフェニックスよりも鳥らしく見える。
「リザ、なにやってるの?」
「まだ一気には無理なのよー!」
フレイに対してはすでに何ともないリザだが、こうも一斉に来られるとまだ体が反応してしまう。
トラウマが完全に消え去ったわけではないようだ。
「えー、みんなかわいいのになあ」
「「「ぼぉ……」」」
「その顔で見ないで!」
エアル同様、ぷくっと頬を膨らませたフェニックス達に、リザは声を上げる。
フレイを通して、鳥の少し可愛さも理解できたからこそ、却って心苦しいのかもしれない。
リザがフェニックス達に慣れるのは、もう少し後のことだった。
《ふっ、面白い連中だ》
そうこうしながらも、のどかなフェニックスの里を案内してもらうエアル達であった。
「そういえば、長さんは人と何かあったの?」
穏やかな里でフェニックス達とのんびりする中、エアルが長へたずねた。
ゆっくりと振り返った長は、不思議そうに聞き返した。
《なぜそう思う》
「“人は醜い”とか言ってたから、もしかしたらそうなのかなって」
《ふっ、そうか》
相変わらず曖昧に答えるエアルだが、彼の直感は当たる。
図星のような表情で長は話し始める。
《我もかつては、フレイのように外へ出ておった》
「僕たちが来た『マグメル火山』とか?」
《うむ。人が醜いと言ったのは、その当時の見聞からだ》
ダンジョン『マグメル火山』は、ラビリンス全体でも中~上級と言える。
その辺りに来る者ならば、きれいな探索者ばかりではない。
長はそんな者たちを見たのだろう。
《だが一つ、我が人を信じられなくなったことがあったのだ》
「聞いても、いいの?」
《……》
少し遠慮気味にたずねるエアルに対して、長は口を閉じる。
やはりあまり話す気にはなれない内容なのだろう。
しかし──
《……!》
とある物を視界に入れた瞬間、長はバッと目を見開く。
その先にいたのは、リザだ。
《お主、それをどこで!》
「え、これのこと?」
《そうだ!》
長が大きな反応を示したのは、リザが手に持っていたもの。
彼女のペンダントから出てきた、“一枚の羽根”だ。
この羽根は、フェニックスのそれと同じ見た目をしている。
だが、小さめの個体であるフレイとはサイズが合わなかったのだ。
「……あ」
そこでようやくリザは気づく。
里の中でも一際大きな長は、炎を纏っていない本来の姿も少し大きい。
だからこそ、いま手に持っている羽根がぴったり同じサイズではないかと。
《まさか》
対して、長もサイズが合うことを自覚しているようだ。
それどころか、何かを思い出すように空を見上げている。
そして話す気になったのか、長は再びエアル達へ顔を向けた。
《その羽根は……とある人物にあげた物だ》
360
お気に入りに追加
1,541
あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

S級アイテムショップ店長の俺は、盗みにくる冒険者を配信しながら蹂躙する
桜井正宗
ファンタジー
異世界マキシマイズのあるアイテムショップ店長・カインは、若くして起業。自前のお店を持っていた。店長クラスしか持ちえない『ダンジョン露店』ライセンスを持ち、ダンジョン内で露店が出来た。
だが、ダンジョン内ではアイテムを盗もうとする輩が後を絶たなかった。ダンジョン攻略を有利に進めたいからだ。……だが、カインは強かった。とにかく強かった。攻撃され、一定のHPになると『大店長』、『超店長』、『極店長』へとパワーアップ出来たのであった。その店長パワーでアイテムを盗み出す冒険者を蹂躙する――。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる