ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第33話 僕が応える番

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 「「「うわあーーー!!」」」

 たくさん見える中でも、一際大きなフェニックスがエアル達に接近してくる。
 それに気づいた彼らは後方に退避するも、すでに入口付近にいるために追いつかれてしまった。
 
「「「……っ」」」

 ちょうど真上に来た大きなフェニックスは、バサっバサっと炎を羽ばたかせながら彼らをじろりと見る。
 その迫力ある姿には、彼らも立ち止まるしかない。
 
 そうして──

《お主らは人間だな》
「「「……!」」」

 神々しくも聞こえる声が、大きなフェニックスから聞こえてくる。
 なんと人語で話しかけてきたのだ。

 予想だにしないまさかの行動に一行が驚いていると、そばからフレイが飛び立つ。
 フレイはそのまま、エアル達の盾になるように両翼を広げた。
 
「ぼぉっ! ぼぼぉっ!」
《……お主か》

 口ぶりから、二匹は顔見知りなのだろう。
 大きさで言えば親子にすら見える。

 だが、大きなフェニックスはギロリとエアル達に視線を向けた。

《ならばなおさらだ》

 フレイが何かうったえかけたのは分かったが──交渉は決裂。

《こやつらはここで排除しなければならない》
「「「……ッ!」」」

 大きさフェニックスは、バサっと炎の翼を羽ばたかせる。

「うわっ!」
「くぅっ!」

 一行に向かってきた熱風は、エアルとレリアがとっさに防ぐ。
 振り回した『エクスカリバー』に、『桜吹雪』の“無数の斬撃”だ。
 
「きゃあっ!」

 それでも大きな衝撃が伝わってきた。
 なんとか耐えきったリザ達だったが、再び目を開いた景色は──まさに一変。

「こ、これは……!」

 辺りは焼け焦がれ、熱風を防いだ一行を避けるように地面がくり抜かれている。
 空気は明らかに重く、熱気を帯びているように感じる。

 たった“一振り”。
 生活するに必要なその動作を行っただけで、周辺の環境を変えてしまった。
 この大いなる力こそが“頂上種”だ。

『防いだのは見事なり。だが──』

 大きなフェニックスは、今なお鋭い眼光で睨みつける。
 
『次はない』
「「「……ッ!」」」

 その威圧感は、今までの魔物と明らかに一線を画する。
 彼らが初めて“頂上種”を相手にした瞬間だった。

「ぼぉ! ぼぼぉっ!」
《お主は黙っておれ》
「ぼぉっ!」

 同じ種族のはずのフレイの言葉も、大きなフェニックスには通じない。
 上下関係があるのだろう。

 ならばと、ひとりの少年がみんなを守るように横へ腕を伸ばした。

「リザ達は下がってて」
「ちょっ……!?」

 エアルだ。
 そして、宙で飛んでいるフレイにも声をかけた。

「フレイ、みんなをお願いできるかな」
「ぼ、ぼぉ……」
「大丈夫」
「……! ぼぉっ」

 一瞬心配そうな顔を浮かばせたフレイだったが、「大丈夫」の一言で地上へ降りてくる。
 そのまま、リザ達を守るように炎の翼を広げた。 

「リザ、わがままを聞いてくれてありがとう」
「エアル……!」
「だから今度は僕が応える番だ」

 まだ余裕を残しつつも真剣な表情のエアルは、抜いていたエクスカリバーを前に構える。
 その先は──大きなフェニックス。

「ここは、僕が!」
《ほう》

 フェンリルの時も行われることはなかった、エアルと“頂上種”の戦い。
 それが今、ここで幕を開ける──。
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