ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第34話 エアルVS頂上種

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 「ここは、僕が!」

 敵対の意思を向けてくる一際ひときわ大きなフェニックスに、エアルが単身で前に出る。
 エアルの指示通り、熱風に包まれたリザ達はフレイが守る形となっている。

「わふ! わふわふ!」
「わかってるよ、ラフィ」

 普段より激しめの鳴き声に、エアルはこくりとうなずく。
 彼には「気をつけて!」と言っているのが分かったようだ。

 同じく“頂上種”であるラフィが必死に訴えかけている。
 目の前の大きなフェニックスはそれほどの存在ということだろう。

 それでもエアルは、まだ余裕を残した表情で正面を向いた。

「いくよ」
《くるがよい》

 宣言してすぐさま、その手に灯すのはドス黒い炎。

「【獄炎ヘル・フレイム】」
「「「……!」」」

 これは、エアルが得意とする魔法の一つ。
 上層で『ジャイアントコング』と戦った時から使用している、最上級魔法である。

「うおおおおおおおお──とあっ!」

 魔法を込めた手を、勢いよく天へ振り上げる。
 その瞬間、大きなフェニックスの真下からは、ゴォっと音を立てながら大きな火柱が昇った。
 ドス黒い炎が燃え盛る、超威力を持った火柱だ。

「エアル、やっぱりすごい……」
「まだまだ!」
「え!?」

 未だ見慣れない光景に感心するリザだったが、エアルの行動は終わらない。

 再度手を下げ、今度は両手をクロスするよう、もう一度高く振り上げる。
 その動きに呼応し、さらに二本の火柱が左右からフェニックスを巻き込むように昇った。

「【獄炎ヘル・フレイム】、三本柱トリプル……!」
「ちょ、うそでしょ!?」

 エアルはまだ底を見せていなかったのだ。
 今までAランク魔物ですら圧倒してきた【獄炎|《ヘル・フレイム》】が、三本。
 その同時攻撃の威力は、もはや計り知れない。

「いっけえええええ!」
「……っ」

 たしかにとんでもない魔法だ。
 だが、やはりリザは一個だけツッコみを入れたかった。

 “頂上種”フェニックスの肩書きは──『炎の化身』。
 それでもエアルが選んだのは【獄炎ヘル・フレイム】。

 リザは今の気持ちをそのまま吐き出す。

「だからなんで真っ向勝負なのよ!」
「ははっ! 火には火を、だよ!」
 
 これが変わらぬエアルの戦闘だ。
 常に相手の得意な土俵で戦い、正面から打ち勝つ。
 深い策略なのか、単なる子どもの対抗心か、どちらにしろエアルだからこそできる独特のスタイルである。 

 ──しかし、今回は相手が悪かった。

《いくらやっても無駄だ》
「!」

 魔法で隠れていた炎の翼がバサッと姿を見せ、三本の火柱は瞬時に消え去る。

《私にとってはエサでしかない》
「「「……ッ!」」」

 そして、炎の翼が再びブワッと激しく燃え上がる。
 
 火力はさっきまでの比ではない。
 明らかに激しさが増している。

 そもそもフェニックスと通常の魔物では、攻撃の受け方が違うのだ。
 攻撃に対して、通常の魔物は“耐える”しかないが、フェニックスは“吸収”する。
 これに威力は関係ない。

「ちくしょー!」
『もう終わりか?』

 珍しく悔しさを見せるエアルだが、今のはほんの準備運動に過ぎない。

「いいや、まだまだこれから!」
『そうこなくては』

 ぐっとエクスカリバーを握り直し、その場をり出す。
 速すぎる移動により、戦は況瞬時に空中戦へ切り替わった。
 
「うおおおおおお!」
《ふんっ》

 だが空中戦こそ、鳥系魔物の頂点であるフェニックスのどくだんじょうである。
 
「とおっ! たあっ!」
《甘すぎる》

 宙をるという、エアルのとんでも体技をもってしてもかすめることすらできない。
 そんな状況を見守るレリアは、たらりと冷や汗を流した。

「エアル君の剣には“型”なんてないものね」
「……そうね」

 型とは、剣の動きの基礎きそのことだ。
 どんな一流の剣士であれ、激しく動いているように見えて、全ての動きはこの型がもとになっている。
 
 だが、エアルに剣の師匠は存在しない。
 野生で好き勝手に生まれ育った弊害へいがいが、ここにきて表れ始めていた。

《その程度か》
「くうー!」

 中々攻撃を当てることができないエアル。
 しかし、彼が浮かべている表情にはリザは違和感を覚える。

(なんでそんな余裕そうに……ていうか、この状況を楽しんでる!?)

 彼女の予測は当たっていた。
 
「あははっ!」
《何がおかしい》
「なんだか故郷を思い出してさ!」

 ラビリンスの頂点“頂上種”を相手にしてなお、エアルは楽しそうに戦闘をしている。
 エアルにしてみれば、久しぶりに・・・・・手に汗握る相手なのかもしれない。
 彼の笑顔が絶えないのだ。

「どんどんいくよ!」

 そして、徐々に風向きが変わり始める──。
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