ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第30話 フレイちゃん

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 「ぼぉぉ……」

 炎に顔がついたような魔物からの奇襲に、フレイがリザを守るようかばった。
 非力な姿からエアル達は声を上げるが、フレイはすぐに力を取り戻す。
 それどころか、いま受けた炎を自らの力に変えるように羽ばたいた。

「ぼおおおおおおぉぉぉっ!」
「「「……!」」」

 まばゆくすら映る炎は、まるで不死鳥のごとく。
 その姿を目の前にして、リザは思わず言葉を漏らす。

「この炎……まさか──」

 口にするのは、“頂上種”が一角。

「『炎の化身』フェニックス……!!」

 ──『フェニックス』。
 鳥系魔物、炎系魔物、その両方で頂点に君臨する“頂上種”だ。
 どんな攻撃を受けようと即座によみがえり、さらに自身の炎として力に変換するという。

 また、それぞれ肩書きが存在する四種類の“頂上種”。
 フェンリルが『陸の王者』ならば、フェニックスは『炎の化身』だ。

「こんな、小鳥だったなんて……」

 希少さから謎が多き“頂上種”だが、フェニックスについても同様だった。
 わずかな目撃情報は、炎が大きな十字のように広がっている姿のみ。
 そのため、巨大な魔物なのではないかと言われていたほどだ。

 偶然か必然か、エアル達が出会った小さな鳥。
 見た目はひ弱な小鳥こそが、フェニックスの正体だったのだ。

「ぼおおおおおお!」
「グオッ!?」

 その名にふさわしく、フレイは火力を上げていく。
 すでに目の前の魔物の火など目ではない。

「ぼぉ」
「グ、オォ……」

 そして、そのまま上から抑えつけるように、炎で形作った手をそっと魔物にえた。
 魔物は成す術もなく、ただ包み込まれるのみ。
 炎が退いた跡には、何一つ残っていなかった。

「……っ」

 そんな光景に、リザはすとん尻持ちをつく。
 情報通の彼女が、理解が追いついていなかったのだ。
 
「ぼぉ」

 そうして、身にまとった抑え、フレイはゆっくりと振り返った。
 姿はさっきまでと同じ小鳥のはずが、今はとても凛々りりしく映る。

 ペタンと地面にお尻をつけているリザは、すでに動ける状態ではない。
 目の前に迫ったフレイから逃げることすらできないのだ。

「ぼぉ」
「……!」

 だが、それがかえって二人の距離を縮めた。
 
 リザも頭では理解していた。
 フレイは悪意を持って近づいてくるわけではないと。
 それでもトラウマというものは中々ぬぐえなかった。

 しかし、この状況になって初めて、リザはじっくりと目の前のフレイの姿を見る。
 そして自然と口からこぼれたのは、今まで一度も呼んでこなかった“名前”だ。

「フ、フレイちゃん……?」

 まだ恐る恐るのリザの言葉。
 対して、フレイは出会った時と同じように両翼をぴょこっと広げた。

「ぼぉっ!」
「……!」

 自ら名前を呼んで、フレイが応えた。
 この経験はリザのトラウマを拭うのに十分だった。

「フレイちゃん!」
「ぼぉぉ~!」

 初めてフレイを「かわいい」と認識したリザは、ぎゅっと抱きしめる。

 まだ少し炎がチラついているフレイだが、熱くないのは分かっていた。
 むしろ“ぽかぽか”しており、ずっと抱いていたくなるような気持ち良い温かさであった。
 フェニックスの実態は謎に包まれているが、もしかすると感情によって温度を変化させるのかもしれない。

「かわいい!」
「ぼぉ~!」

 そんな姿を、後方からエアル達が眺める。

「よかったね」
「ええ、これで苦労はなくなるわ」
「わふ~!」

 どうするべきか迷っていた一行だが、リザとフレイは自ら仲を深めた。
 これに越したことはないだろう。
 
 それから、ひとしきり抱かれたフレイは、コンコンとリザの胸元の“ある物”をつつき始めた。

「フレイちゃん?」
「ぼぉっ!」

 はっとしたリザは、服の下に隠していたペンダントを表に出す。
 母から継ぎ、追っている謎のカギとなる物だ。

 同時に、リザは今までのフレイの行動に予想を立てる。

「もしかして、始めからずっとこれが気になっていたの?」
「ぼぼぉっ!」

 フレイが大きな反応を見せる。

 フレイは出会った時から、リザの胸元によく飛び込もうとしていた。
 その理由は、母の遺物であるペンダントが気になっていたかららしい。
 
 だがこれは、開かないまま託された謎の遺物だった。
 しかし、それが今──

「ぼぉーっ!」
「うそ……!」

 両翼をバサっと広げたフレイに反応し、ゆっくりと開き始める。

 輝かしい光を放って開かれたペンダント。
 中から出てきたのは──薄黄色の羽根。

「ぼぉっ!」
「まさかこの羽根……!」

 その色は、フレイの羽根とぴったり同じ色をしている。
 
「これ、フェニックスの羽根だったって言うの?」
「ぼぉっ!」
「でも……」

 だが、大きさが合わない。
 正確には、出て来た羽根の方が大きい・・・のだ。

「ぼぉっ!」
「あ」

 フレイがぴょこんとリザの膝から飛び降りる。
 それから、片翼を広げて先導し始めた。

 その合図には、エアルの『野生』が反応した。
 
「付いてきて、だって」




─────────────────────────
初日未参加のファンタジーカップ順位ですが、ここ2日でぐんぐんと伸びて現在12位まで上がっております!(昨日は27位ぐらいだったかな?)
皆様、本当に応援ありがとうございます!!

本日はまだ更新あります!
これからも応援のほど、よろしくお願いします!
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