ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第17話 彼女の決意

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「なんで本当に付いてくるのよ」

 エアルが一戦を交えて少し、リザが口を開く。
 視線を向けたのは──隣の人物だ。

「フフフッ、いいじゃない別に」

 その先にいるのはレリアだ。
 どうやら本当にエアル達に付いてきている。
 
「大丈夫。レリアは悪い人じゃないと思う」
「あら、エアル君は物分かりがいいのね」

 彼女の提案には、エアルが許可をしたようだ。
 謎に説得力のある言葉に、リザも渋々了承。
 だが、未だに懐疑の目は向けている。
 
「そうかねえ……」

 性格上とも言えるが、これは使命感のようなものも起因する。
 人を信じるのがエアルの役目ならば、疑うのは自分の役目だと感じているのだろう。

 それでも、エアルなりの根拠も一応あるよう。

「そうだよ。だってレリアさん、さっきは一瞬火を出したでしょ?」
「あら、バレてたかしら」

 それはレリアが魔法を宿した時の事。
 ほんの一瞬の出来事をエアルは見逃さなかった。

「でも、火が自然に燃え移っちゃうことを考えて引っ込めた。そんなの優しい人にしかできないよ」
「フフフッ」
 
 肯定も否定もせず、レリアはただ視線を逸らした。

「エアルがそう言うならいいけど……」

 そうして、リザは最後に彼女へたずねる。
 
「あの攻略組がこんな場所に何の用かしら」
「別にいいじゃない。あなたも私のことは多少知っているのではなくて?」
「……まあ」

 レリアは攻略組の中でも最も謎が多い。

 出身は不明。
 武器・装備も詳しくは知られていない。

 そして、一番の謎が彼女の活動だ。
 レリアは最前線に潜る攻略組にもかかわらず、固定パーティーを持たない。
 それどころか、ソロで潜る姿すらよく見かけられるという。

 一歩進めば危険が降ってくるような最前線において、そんな者はまずいない。
 ゆえに不審であり、煙たがられる存在でもある。

 そんな背景もあり、“不敵のレリア”の他、鬼の探索者、悪魔の単独探索者ソロなど、様々な呼ばれ方をされている。
 どれもあまり良い意味ではないのはたしかだ。

うたぐり深いのね、リザさんは」
「あなただからよ」

 そんなこんなで、一行はキリが良い所までの探索を終える。
 予定していた時間となり、一度ツヴァイへ戻るのだった。







「……ただいま」

 とある暗い部屋の中、レリアが帰ってくる。
 エアルと会った時とは違い、フードを深く被っているようだ。
 ここへ来る際、顔を見られたくないのかもしれない。

「ま、返事はないわよね」

 フっと乾いた笑いを浮かべたレリアは、ベッドで横たわる人に目を向ける。

「お母さん」

 そこにいたのは年配の女性だ。
 レリアが帰ってきても目を閉じたままだが、彼女はそのまま語りかける。
 
「今日はいいカモ・・を見つけたわ。ワタシと同等の実力か、それ以上の奴よ。あんなの攻略組にもいないわ」

 フフフっと不敵な笑みを浮かべるレリア。
 だが、その表情はどこか寂し気にも見える。

「あいつに付いて行けば、“何でも願い”が叶う最下層も見えてくるかもしれない」

 思い出しているのは、エアル達のことだろう。
 エアルの実力をじか計ったのは、強さを確かめるためだったようだ。

「ワタシは絶対にお母さんを元気にするから」

 レリアは崩れていた毛布を女性にかける。

 そうして次に覗かせたのは、ギロリとした目付き。
 彼女なりの覚悟を持った目だ。

「たとえ鬼と呼ばれようと、悪魔と呼ばれようとも……ね」
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