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第7話 いずれ的中する未来
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「行くよ」
じろりと見下げてくるジャイアントコング。
それに対しても、エアルは全く臆することなく向き合う。
まさに、“二体の化け物”がぶつかろうとしていた。
「グルアアアアアアァァァ!!」
巨大な咆哮と共に、ジャイアントコングは拳を繰り出した。
通常ならば一瞬でぺちゃんことなる拳だ。
だがエアルは、あろうことか真正面から張り合う。
「うおー!」
「ちょっ、なにしてんのよ!?」
やはり緊張感が感じられない声だ。
リザの心配する声の方がよっぽど迫真なぐらいである。
しかし、それに反して拳の威力は絶大。
「てやーっ!」
「グルォッ!?」
お互いの拳は、一秒とて拮抗しない。
「グルオオォォーー!!」
エアルの圧倒的な衝撃に、ジャイアントコングが一方的に押し切られたのだ。
ジャイアントコングは後方へぶっとばされ、木々をなぎ倒しながら転がっていく。
その勢いは止まることを知らない。
「うそでしょ!?」
リザは知っている。
その拳は、Aランク魔物ジャイアントコングの中でも最も警戒すべき技。
さらに、最も回避すべき技だと。
だがそれを、エアルは真っ向から打ち勝って見せたのだ。
「よーし!」
「……っ!」
情報通のリザだからこそ、驚きを隠せない。
「でも、そろそろ終えないとね」
このまま殴り合うのも良いが、エアルは戦闘を長引かせたくなかった。
後ろで怯える探索者たちを一刻も早く解放するためだ。
「ねえリザ」
「な、なに!?」
「さっき言おうとしたこと覚えてる?」
「……!」
エアルは次の準備を始めている。
何やら手に力を込めているようだ。
そんな挙動と言葉から、リザはとっさに思い出した。
自分が魔法を教えてあげた時のことだ。
あの後、なんやかんやでエアルは言いそびれていた事がある。
その時の話の続きのようだ。
「これも、その魔法ってやつなのかな」
「……!!」
エアルが手に灯すは──ドス黒い炎。
リザは直感する。
見た目、感じる魔力……自分が放った【炎】とは、何もかも一線を画すと。
「行くよ」
「グルアアアアアアァァァ!!」
再度立ち上がったジャイアントコング。
エアルはそれに真っ直ぐ手を向けた。
「──【獄炎《ヘル・フレイム》】」
「グギャアアアアアア……!!」
その瞬間、ジャイアントコングの足元からドス黒い炎柱が立つ。
どこまでも伸び、天にも届く勢いで燃え盛っている。
見ているだけで身が焦がれてしまうような迫力だ。
「な、なな……」
「なんだこれ……」
「夢でも見てるのか……?」
探索者たちは、ただただ茫然と眺めるしかない。
彼らにとっては見たことも聞いたこともない威力だ。
その中で、リザは魅入りつつも、しっかりと分析をしていた。
「……っ」
(こんなのまるで攻略組! いえそれ以上……!?)
魔法は、もし会得しても自由に扱うには鍛錬が必要である。
当然、上級になるほど、扱いはより難しくなる。
「……」
リザはごくりと固唾を飲んだ。
強い魔法は、難易度の高いダンジョンでなければ取得できない。
だが、【獄炎《ヘル・フレイム》】はおそらく最上級。
その入手先、これを完全に使いこなす技量。
何もかも次元が違う。
この魔法を前に、リザはハッキリと感じた。
(この子、やはりただものじゃない……!)
そして、【獄炎《ヘル・フレイム》】による炎の柱が晴れる。
「こんなもんかな」
「グ、ギャァ……」
ジャイアントコングの身は焦がれ、バタリとその場に倒れる。
そしてそのまま、煙を上げながらダンジョンへと取り込まれた。
これは魔物を倒した時に起こる還元現象である。
つまり、エアルの勝利だ。
「うわああああああ!」
「すごい、すごいです!」
「ありがとう、ありがとう!」
その瞬間、探索者たちはエアルに駆け寄った。
「うわわっ!」
救ってくれた嬉しさ、魔法や強さに対する尊敬。
それら全てを今すぐにぶつけたかったのだ。
また、リザもエアルに近づいて褒め称える。
「本当に……すごいわ」
「リザ! えへへっ」
不思議な点もあったが、本当にAランク魔物に勝つとは思わなかったようだ。
「あなたに付いて来て良かった」
「うんっ!」
リザはじっとエアルを見つめる。
何か彼について考えていることがあるように。
(間違いない。エアル、この子は……)
後になって考えれば、この時リザはすでに確信していたのだろう。
(ラビリンスの歴史を大きく塗り替える……!)
その的中する未来を──。
じろりと見下げてくるジャイアントコング。
それに対しても、エアルは全く臆することなく向き合う。
まさに、“二体の化け物”がぶつかろうとしていた。
「グルアアアアアアァァァ!!」
巨大な咆哮と共に、ジャイアントコングは拳を繰り出した。
通常ならば一瞬でぺちゃんことなる拳だ。
だがエアルは、あろうことか真正面から張り合う。
「うおー!」
「ちょっ、なにしてんのよ!?」
やはり緊張感が感じられない声だ。
リザの心配する声の方がよっぽど迫真なぐらいである。
しかし、それに反して拳の威力は絶大。
「てやーっ!」
「グルォッ!?」
お互いの拳は、一秒とて拮抗しない。
「グルオオォォーー!!」
エアルの圧倒的な衝撃に、ジャイアントコングが一方的に押し切られたのだ。
ジャイアントコングは後方へぶっとばされ、木々をなぎ倒しながら転がっていく。
その勢いは止まることを知らない。
「うそでしょ!?」
リザは知っている。
その拳は、Aランク魔物ジャイアントコングの中でも最も警戒すべき技。
さらに、最も回避すべき技だと。
だがそれを、エアルは真っ向から打ち勝って見せたのだ。
「よーし!」
「……っ!」
情報通のリザだからこそ、驚きを隠せない。
「でも、そろそろ終えないとね」
このまま殴り合うのも良いが、エアルは戦闘を長引かせたくなかった。
後ろで怯える探索者たちを一刻も早く解放するためだ。
「ねえリザ」
「な、なに!?」
「さっき言おうとしたこと覚えてる?」
「……!」
エアルは次の準備を始めている。
何やら手に力を込めているようだ。
そんな挙動と言葉から、リザはとっさに思い出した。
自分が魔法を教えてあげた時のことだ。
あの後、なんやかんやでエアルは言いそびれていた事がある。
その時の話の続きのようだ。
「これも、その魔法ってやつなのかな」
「……!!」
エアルが手に灯すは──ドス黒い炎。
リザは直感する。
見た目、感じる魔力……自分が放った【炎】とは、何もかも一線を画すと。
「行くよ」
「グルアアアアアアァァァ!!」
再度立ち上がったジャイアントコング。
エアルはそれに真っ直ぐ手を向けた。
「──【獄炎《ヘル・フレイム》】」
「グギャアアアアアア……!!」
その瞬間、ジャイアントコングの足元からドス黒い炎柱が立つ。
どこまでも伸び、天にも届く勢いで燃え盛っている。
見ているだけで身が焦がれてしまうような迫力だ。
「な、なな……」
「なんだこれ……」
「夢でも見てるのか……?」
探索者たちは、ただただ茫然と眺めるしかない。
彼らにとっては見たことも聞いたこともない威力だ。
その中で、リザは魅入りつつも、しっかりと分析をしていた。
「……っ」
(こんなのまるで攻略組! いえそれ以上……!?)
魔法は、もし会得しても自由に扱うには鍛錬が必要である。
当然、上級になるほど、扱いはより難しくなる。
「……」
リザはごくりと固唾を飲んだ。
強い魔法は、難易度の高いダンジョンでなければ取得できない。
だが、【獄炎《ヘル・フレイム》】はおそらく最上級。
その入手先、これを完全に使いこなす技量。
何もかも次元が違う。
この魔法を前に、リザはハッキリと感じた。
(この子、やはりただものじゃない……!)
そして、【獄炎《ヘル・フレイム》】による炎の柱が晴れる。
「こんなもんかな」
「グ、ギャァ……」
ジャイアントコングの身は焦がれ、バタリとその場に倒れる。
そしてそのまま、煙を上げながらダンジョンへと取り込まれた。
これは魔物を倒した時に起こる還元現象である。
つまり、エアルの勝利だ。
「うわああああああ!」
「すごい、すごいです!」
「ありがとう、ありがとう!」
その瞬間、探索者たちはエアルに駆け寄った。
「うわわっ!」
救ってくれた嬉しさ、魔法や強さに対する尊敬。
それら全てを今すぐにぶつけたかったのだ。
また、リザもエアルに近づいて褒め称える。
「本当に……すごいわ」
「リザ! えへへっ」
不思議な点もあったが、本当にAランク魔物に勝つとは思わなかったようだ。
「あなたに付いて来て良かった」
「うんっ!」
リザはじっとエアルを見つめる。
何か彼について考えていることがあるように。
(間違いない。エアル、この子は……)
後になって考えれば、この時リザはすでに確信していたのだろう。
(ラビリンスの歴史を大きく塗り替える……!)
その的中する未来を──。
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