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第32話 前代未聞の光景
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「ふわあー!!」
唐突に、エアルが上げた声が聞こえてくる。
それに反応して、リザがゆっくりと目を開いた。
「ん……? どこかに出たの?」
フレイを信頼していたとはいえ、火口に突っ込むなど前代未聞の無茶ぶりだ。
あまりの怖さに目を閉じていたのだろう。
「って、えええええ!?」
そうして前方を向くと、ありえない光景が広がっていた。
「なんじゃこれー!?」
「これはすごいわね……」
「わふー!」
リザに続いてレリア・ラフィも声を上げる。
そんな反応になるのも当然だろう。
一行の前に広がったのは──たくさんのフェニックス。
「ボオォッ!」
「ボッ!」
「ボボォッ!」
前方に、地上に、空に。
十字のように広がった大きな炎が、そこら中で飛び交っている。
フレイに似た見た目から、見えている全てがフェニックスなのだろう。
また、木々はないが、多少の緑が生えた平原が広がっている。
見た目は“里”のようだ。
まさに『フェニックスの里』と言う他ない。
「“頂上種”が、こんなに……」
“頂上種”の特徴として、強さ、実態の不明さなども挙げられるが、一番厄介なのが“希少さ”である。
ただでさえ立ち向かっても歯が立たない上、極端に見つかりにくいのだ。
それら全てを鑑みて、四種族は“頂上種”と呼ばれている。
「夢を見てるみたいだわ……」
それが今はどうだろうか。
穏やかな里の中、たくさんのフェニックスが自由に飛び交い、休み、会話しているように見える。
探索者でも屈指の情報力を誇るリザですら、見たことも聞いたこともない光景だ。
「本当にハイリターンだったわね……」
そうしてチラリと振り返ったのは、後方上部分にある入口。
見た目から、おそらく火口とつながっているのだろう。
ほとんど自殺行為とも言えるハイリスクの先に、“頂上種”が住まう里というハイリターンがあったのだ。
また、その時の様子をエアルが再現した。
「火口に入ってからはすごかったよ。マグマみたいなのがぶわって!」
恐れ知らずどころか、好奇心が勝ったエアルは、しっかりと目に焼き付けたらしい。
しかし、戦闘に関して常人の域を出ないリザには難しかったようだ。
「私はさすがに目を開けてられなかったわ……」
「あら、情報屋さんがそんなので良いのかしら」
「む」
それに突っかかったのがレリアだ。
ジロっとした目を向けてリザも言い返す。
「そういうあなたはどうなのよ。ちゃんと前を向いてた?」
「……」
「絶対目つぶってたでしょ!」
「……フフフッ」
対して、レリアは答えることなく、ただ不敵な笑みを浮かべた。
本人が答えないのならば、真相は闇の中である。
「わふ!」
「ぼぉっ!」
そんな中、ラフィとフレイは仲良くリズムに乗っている。
“頂上種”の一角であり、エアルとも感性が合うラフィにとっては、楽しいジェットコースターのようなものだっただろう。
「お」
そうして少し落ち着いたところで、エアルがふと口を開く。
「なんだあれ?」
「ん、あれって……?」
額に手を当てて見ている先は、奥の方の空。
明らかに他とは違う“それ”に、エアル達は思い思いに声を上げる。
「なんかデカくない?」
「そうね……って」
「こっちに向かってきてないかしら」
彼らが見ていのは、一際大きなフェニックス。
しかもそれが、全速力でこっちに向かってくるではないか。
エアルたちはとっさに身構えた。
「うわ、くるよ! ははっ!」
「ははっじゃないわよー!」
「一旦退くべきかしら!」
「わふ!」
近づいてくるほど迫力が感じられる大きなフェニックスに、一行は後方へ退避する。
「「「うわあーーー!!」」」
だが、ここは入口付近。
すでに退避する場所などほとんどない。
そうこうしている内に、すぐに大きなフェニックスに追いつかれてしまった──。
─────────────────────────
本日は一気に4話更新!
面白かったらいいね、お気に入り、コメントなど、ぜひよろしくお願いします!
唐突に、エアルが上げた声が聞こえてくる。
それに反応して、リザがゆっくりと目を開いた。
「ん……? どこかに出たの?」
フレイを信頼していたとはいえ、火口に突っ込むなど前代未聞の無茶ぶりだ。
あまりの怖さに目を閉じていたのだろう。
「って、えええええ!?」
そうして前方を向くと、ありえない光景が広がっていた。
「なんじゃこれー!?」
「これはすごいわね……」
「わふー!」
リザに続いてレリア・ラフィも声を上げる。
そんな反応になるのも当然だろう。
一行の前に広がったのは──たくさんのフェニックス。
「ボオォッ!」
「ボッ!」
「ボボォッ!」
前方に、地上に、空に。
十字のように広がった大きな炎が、そこら中で飛び交っている。
フレイに似た見た目から、見えている全てがフェニックスなのだろう。
また、木々はないが、多少の緑が生えた平原が広がっている。
見た目は“里”のようだ。
まさに『フェニックスの里』と言う他ない。
「“頂上種”が、こんなに……」
“頂上種”の特徴として、強さ、実態の不明さなども挙げられるが、一番厄介なのが“希少さ”である。
ただでさえ立ち向かっても歯が立たない上、極端に見つかりにくいのだ。
それら全てを鑑みて、四種族は“頂上種”と呼ばれている。
「夢を見てるみたいだわ……」
それが今はどうだろうか。
穏やかな里の中、たくさんのフェニックスが自由に飛び交い、休み、会話しているように見える。
探索者でも屈指の情報力を誇るリザですら、見たことも聞いたこともない光景だ。
「本当にハイリターンだったわね……」
そうしてチラリと振り返ったのは、後方上部分にある入口。
見た目から、おそらく火口とつながっているのだろう。
ほとんど自殺行為とも言えるハイリスクの先に、“頂上種”が住まう里というハイリターンがあったのだ。
また、その時の様子をエアルが再現した。
「火口に入ってからはすごかったよ。マグマみたいなのがぶわって!」
恐れ知らずどころか、好奇心が勝ったエアルは、しっかりと目に焼き付けたらしい。
しかし、戦闘に関して常人の域を出ないリザには難しかったようだ。
「私はさすがに目を開けてられなかったわ……」
「あら、情報屋さんがそんなので良いのかしら」
「む」
それに突っかかったのがレリアだ。
ジロっとした目を向けてリザも言い返す。
「そういうあなたはどうなのよ。ちゃんと前を向いてた?」
「……」
「絶対目つぶってたでしょ!」
「……フフフッ」
対して、レリアは答えることなく、ただ不敵な笑みを浮かべた。
本人が答えないのならば、真相は闇の中である。
「わふ!」
「ぼぉっ!」
そんな中、ラフィとフレイは仲良くリズムに乗っている。
“頂上種”の一角であり、エアルとも感性が合うラフィにとっては、楽しいジェットコースターのようなものだっただろう。
「お」
そうして少し落ち着いたところで、エアルがふと口を開く。
「なんだあれ?」
「ん、あれって……?」
額に手を当てて見ている先は、奥の方の空。
明らかに他とは違う“それ”に、エアル達は思い思いに声を上げる。
「なんかデカくない?」
「そうね……って」
「こっちに向かってきてないかしら」
彼らが見ていのは、一際大きなフェニックス。
しかもそれが、全速力でこっちに向かってくるではないか。
エアルたちはとっさに身構えた。
「うわ、くるよ! ははっ!」
「ははっじゃないわよー!」
「一旦退くべきかしら!」
「わふ!」
近づいてくるほど迫力が感じられる大きなフェニックスに、一行は後方へ退避する。
「「「うわあーーー!!」」」
だが、ここは入口付近。
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