31 / 52
第31話 導かれた先
しおりを挟む
「ぼぼぉっ!」
リザの危機を身を挺して守ったことで、彼女と仲を深めることができたフレイ。
そんなフレイが先導して向かった先は──火山。
「ここは……」
ダンジョン『マグメル火山』の最奥に佇む、大きな火山だ。
入った瞬間誰もが目にするが、誰もが避ける場所である。
「リザは“行かない”って言わなかったっけ」
「……ええ、そうよ」
その理由は、火山がダンジョンのゴールではないからだ。
本来のルートでは、北にある火山に向かわず、東へ進む。
その先に次のダンジョンへつながる場所があるという。
加えて、火山付近は温度も高い。
火をエサとするここらの魔物は、火山に近づくにつれて強くなる傾向にあるのだ。
あるのはデメリットのみ。
目印にはするもの、なるべく近づかないのがセオリーだ。
つまり、今までのデータには存在しないルートを辿ったことになる。
「ぼぉ! ぼぼぉっ!」
「へーそうなのか!」
フレイのボディランゲージに、エアルがうなずく。
『野生』で培った感性で、なんとなく話したいことがわかるようだ。
「この先に“何か”あるって」
「ぼぼぉ!」
「え、この先って……」
目の前にあるのは火山のみ。
つまり、火口から飛び込もうと言うのだ。
「いやいや!」
あまりに無茶な提案に、リザはレリアを覗き見る。
「レリアは賛成なわけ……?」
「そうねえ。エアル君が行くというなら行くわ」
「……っ」
「ま、どちらにしろあなた次第だけど」
その返事に、リザは口元に手を当てる。
(でも、そんなの……)
情報に抜かりが無いリザは、このパーティーの司令塔だ。
時に危険を察知し、時に「NO」と言うべき責任がある。
さらに、リザが最も信頼していたのは“データ”だ。
ただですら自殺行為に近い行動の上、今までの探索データにも無いときた。
戸惑ってしまうのも無理はない。
加えて、火口に潜る手段もないのだ。
「火口に入れば、一瞬で火だるまよ?」
ダンジョン全体に暑さをもたらすほどの火山だ。
その中心である火口など、どれだけの熱さかなど分かったものじゃない。
だが、それにはフレイが元気に両翼を広げた。
「ぼぉっ!」
「おー! それはフレイが守ってくれるって」
「そんなこと……──ッ!」
そうして思い出されるのは、フレイがリザを守った先ほど一連の流れだ。
フレイは魔物に対しては、炎で何も残さぬほど燃やし尽くした。
だが、リザに対しては「あたたかい」と感じる程度だった。
そこから予測されるのは、フレイは“感情によって炎の温度を操れる”ということ。
聞いたこともない事象だが、“頂上種”フェニックスならば、そのぐらいできても不思議ではない。
それらから考え抜き、リザはエアルに再び向き直った。
「エアル、本当に大丈夫なのね?」
「多分ね!」
「……! ふふっ」
そして、ふぅと一息つく。
この状況においても、曖昧な返事をするエアル。
だが今まで、彼の“多分”は外れたことがない。
どんな異常事態が起ころうと、エアルの多分は全てを解決してきた。
「どうかな、リザ!」
その上、命すら惜しくないほど、未知に惹かれているエアルの目。
キラキラした眼差しは、まさしく探索者のそれだった。
「わかったわ」
「リザ……!」
ようやくリザは首を縦に振る。
それが意外だったのか、レリアは「へえ」と彼女を覗き見る。
「情報屋さんも、意外と情に流されるのね」
「ま、直感も大切だって学んだから」
「フフフッ、そうね」
二人が同時に見つめるのは──エアルだ。
レリアはすっかりエアルを信頼している。
また同時に、リザの中で最も信頼するものが、「データ」から「エアルの直感」へと移り替わろうとしていたのだ。
そしてリザは、頼みの綱であるフレイをひょいっと抱き上げる。
「頼める? フレイちゃん」
「ぼぉっ!」
元気な返事を上げたフレイは、バサっと両翼を広げる。
それと共に、大きく眩い炎を灯し始めた。
「ぼおおおおおおおおおっ!」
「「「……!」」」
先ほどの比ではない。
縦に横に、真っ直ぐ十字に伸びる炎は『炎の化身』と呼ぶにふさわしい。
まさに“頂上種”フェニックスの姿だ。
「ぼぉ」
「みんな、一か所に固まってって!」
通訳のエアルが手招きをする。
「ええ!」
「フフフッ」
「わふ」
全員が集まると、フレイは大きな炎で彼らをそっと包み込む。
見た目と反し、やはり炎は全く熱くない。
それどころか、心から温められるような不思議な感覚だ。
「ぼおぉっ!」
包み込んだ炎でエアル達を持ち上げると、フレイは一気に飛び立つ。
「いけーフレイ!」
「わふっ!」
「フフフッ」
「くぅっ……!」
少年のような眼差しのエアルとラフィ。
不敵に笑うレリア。
必死に炎に掴まるリザ。
反応はそれぞれながら、みんな前方から目を離せない。
「ぼおおおおおおおおおおっ!」
そして、炎を纏ったフェニックスの姿のまま、ぐつぐつと音を立てる火口へフレイは突っ込んだ──。
リザの危機を身を挺して守ったことで、彼女と仲を深めることができたフレイ。
そんなフレイが先導して向かった先は──火山。
「ここは……」
ダンジョン『マグメル火山』の最奥に佇む、大きな火山だ。
入った瞬間誰もが目にするが、誰もが避ける場所である。
「リザは“行かない”って言わなかったっけ」
「……ええ、そうよ」
その理由は、火山がダンジョンのゴールではないからだ。
本来のルートでは、北にある火山に向かわず、東へ進む。
その先に次のダンジョンへつながる場所があるという。
加えて、火山付近は温度も高い。
火をエサとするここらの魔物は、火山に近づくにつれて強くなる傾向にあるのだ。
あるのはデメリットのみ。
目印にはするもの、なるべく近づかないのがセオリーだ。
つまり、今までのデータには存在しないルートを辿ったことになる。
「ぼぉ! ぼぼぉっ!」
「へーそうなのか!」
フレイのボディランゲージに、エアルがうなずく。
『野生』で培った感性で、なんとなく話したいことがわかるようだ。
「この先に“何か”あるって」
「ぼぼぉ!」
「え、この先って……」
目の前にあるのは火山のみ。
つまり、火口から飛び込もうと言うのだ。
「いやいや!」
あまりに無茶な提案に、リザはレリアを覗き見る。
「レリアは賛成なわけ……?」
「そうねえ。エアル君が行くというなら行くわ」
「……っ」
「ま、どちらにしろあなた次第だけど」
その返事に、リザは口元に手を当てる。
(でも、そんなの……)
情報に抜かりが無いリザは、このパーティーの司令塔だ。
時に危険を察知し、時に「NO」と言うべき責任がある。
さらに、リザが最も信頼していたのは“データ”だ。
ただですら自殺行為に近い行動の上、今までの探索データにも無いときた。
戸惑ってしまうのも無理はない。
加えて、火口に潜る手段もないのだ。
「火口に入れば、一瞬で火だるまよ?」
ダンジョン全体に暑さをもたらすほどの火山だ。
その中心である火口など、どれだけの熱さかなど分かったものじゃない。
だが、それにはフレイが元気に両翼を広げた。
「ぼぉっ!」
「おー! それはフレイが守ってくれるって」
「そんなこと……──ッ!」
そうして思い出されるのは、フレイがリザを守った先ほど一連の流れだ。
フレイは魔物に対しては、炎で何も残さぬほど燃やし尽くした。
だが、リザに対しては「あたたかい」と感じる程度だった。
そこから予測されるのは、フレイは“感情によって炎の温度を操れる”ということ。
聞いたこともない事象だが、“頂上種”フェニックスならば、そのぐらいできても不思議ではない。
それらから考え抜き、リザはエアルに再び向き直った。
「エアル、本当に大丈夫なのね?」
「多分ね!」
「……! ふふっ」
そして、ふぅと一息つく。
この状況においても、曖昧な返事をするエアル。
だが今まで、彼の“多分”は外れたことがない。
どんな異常事態が起ころうと、エアルの多分は全てを解決してきた。
「どうかな、リザ!」
その上、命すら惜しくないほど、未知に惹かれているエアルの目。
キラキラした眼差しは、まさしく探索者のそれだった。
「わかったわ」
「リザ……!」
ようやくリザは首を縦に振る。
それが意外だったのか、レリアは「へえ」と彼女を覗き見る。
「情報屋さんも、意外と情に流されるのね」
「ま、直感も大切だって学んだから」
「フフフッ、そうね」
二人が同時に見つめるのは──エアルだ。
レリアはすっかりエアルを信頼している。
また同時に、リザの中で最も信頼するものが、「データ」から「エアルの直感」へと移り替わろうとしていたのだ。
そしてリザは、頼みの綱であるフレイをひょいっと抱き上げる。
「頼める? フレイちゃん」
「ぼぉっ!」
元気な返事を上げたフレイは、バサっと両翼を広げる。
それと共に、大きく眩い炎を灯し始めた。
「ぼおおおおおおおおおっ!」
「「「……!」」」
先ほどの比ではない。
縦に横に、真っ直ぐ十字に伸びる炎は『炎の化身』と呼ぶにふさわしい。
まさに“頂上種”フェニックスの姿だ。
「ぼぉ」
「みんな、一か所に固まってって!」
通訳のエアルが手招きをする。
「ええ!」
「フフフッ」
「わふ」
全員が集まると、フレイは大きな炎で彼らをそっと包み込む。
見た目と反し、やはり炎は全く熱くない。
それどころか、心から温められるような不思議な感覚だ。
「ぼおぉっ!」
包み込んだ炎でエアル達を持ち上げると、フレイは一気に飛び立つ。
「いけーフレイ!」
「わふっ!」
「フフフッ」
「くぅっ……!」
少年のような眼差しのエアルとラフィ。
不敵に笑うレリア。
必死に炎に掴まるリザ。
反応はそれぞれながら、みんな前方から目を離せない。
「ぼおおおおおおおおおおっ!」
そして、炎を纏ったフェニックスの姿のまま、ぐつぐつと音を立てる火口へフレイは突っ込んだ──。
391
お気に入りに追加
1,541
あなたにおすすめの小説

俺だけ2つスキルを持っていたので異端認定されました
七鳳
ファンタジー
いいね&お気に入り登録&感想頂けると励みになります。
世界には生まれた瞬間に 「1人1つのオリジナルスキル」 が与えられる。
それが、この世界の 絶対のルール だった。
そんな中で主人公だけがスキルを2つ持ってしまっていた。
異端認定された主人公は様々な苦難を乗り越えながら、世界に復讐を決意する。
※1話毎の文字数少なめで、不定期で更新の予定です。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

S級アイテムショップ店長の俺は、盗みにくる冒険者を配信しながら蹂躙する
桜井正宗
ファンタジー
異世界マキシマイズのあるアイテムショップ店長・カインは、若くして起業。自前のお店を持っていた。店長クラスしか持ちえない『ダンジョン露店』ライセンスを持ち、ダンジョン内で露店が出来た。
だが、ダンジョン内ではアイテムを盗もうとする輩が後を絶たなかった。ダンジョン攻略を有利に進めたいからだ。……だが、カインは強かった。とにかく強かった。攻撃され、一定のHPになると『大店長』、『超店長』、『極店長』へとパワーアップ出来たのであった。その店長パワーでアイテムを盗み出す冒険者を蹂躙する――。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています

寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる