ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第19話 突然の事態

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 「『ダンダン丘』自体が巨大な魔物なのかも」

 立ち上がったエアルが口にした。

「地面の奥底から、鼓動のようなものが聞こえるんだ。これは魔物のものだよ」
「……っ」

 あまりに突飛な言葉だが、エアルの表情は真剣そのもの。
 その顔を見れば、リザも頭ごなしに否定はできない。

 リザは知っているのだ。
 エアルの『野生』の勘は当たると。

「でも……!」

 リザはバッと辺りを見渡す。
 視界に広がるは、丘が連なる広大なダンジョン。

「そんなことが……」
 
 ラビリンスの歴史は、もう何百年と続く。
 そんな中で『ダンダン丘』が魔物だという記録は残っていない。
 本当にここが魔物だとすれば、もう何百年も眠っていた未知の超巨大魔物が目覚めたことになる。

 だが、そう考えれば状況に納得がいくのも事実だ。

「ギャーギャー!」
「ギャオオオオ!」
「ブモォーーー!」

 先程の地震に加え、魔物が暴れている。
 魔物は気が立つと同時に、怯えているようにも見えるのだ。

 そんな中、レリアが大きく目を見開いた。

「……ッ! 待って……」

 視線を向けているのは、探索者街ツヴァイの方角。

 ツヴァイは、ダンジョン間のつなぎ目・・・・に作られている。
 『ガラル密林』と『ダンダン丘』の間の“森林”を開拓して作られた街だ。

「それはダメ……」

 そんな森林の方へ、魔物が一斉になだれ込もうとしている。
 本能的に退避しているのかもしれない。

 言うならば、“大氾濫スタンピード”だ。

「……ッ!!」
「あ、レリアさん!」
 
 レリアは一心に走り出す。
 守らなければならないものがある。
 そんな迫真の表情を浮かべながら。

「エアル、私たちも!」
「待って! 人の足音がたくさんある! 気が立った魔物におそわれてる!」
「……!」

 エアルが『野生』の耳をませている。
 彼もまた決意の目を浮かばせた。

「全員助けるんだ!」







 探索者街ツヴァイ、『ダンダン丘』側の入口付近。
 
「うわあああああ!!」
「きゃあああああ!!」

 人々が魔物から逃げ惑っている。
 また、入口を死守しようと武器を持つ者たちも見られる。
 
「頼む、こっちに来てくれ!」
「無理だ!」
「とにかく数が多すぎる!」

 ツヴァイの門番、街中にいた探索者、その他の有志など、多くの者が武器を持って応戦している。
 相手は──大量の魔物だ。

「ギャーギャー!」
「グギィーー!!」
「シャーーー!」

 押し寄せるのは『ダンダン丘』からの魔物たち。
 どれもたぎっており、気性がいつもより激しく見える。

「何がどうなってんだ!?」
「分からねえ!」
「さっきの地震が原因か!?」

 先ほどの地震はこの街にも伝わっていた。
 それを機に『ダンダン丘』から人や魔物がごった返し、ツヴァイは大混乱におちいっている。

 そして、また一人探索者が逃げて来た。

「助けてくれー!!」
「おい、後ろ!」

 だがその探索者に、気が立った魔物が迫る。

「グギャー!」
「しまった……!」

 その魔物を──突如現れたエアルが斬った。

「うりゃあ!」
「ギャギャッ!」

 まさに間一髪。
 ギリギリでエアルの剣が間に合ったのだ。
 
「大丈夫ですか!」
「あ、ありがとう! 助かった……」

 それから、エアルは走ってきた『ダンダン丘』の方に視線を向けた。
 そこには引き連れた多くの探索者が見える。

「みなさん、こっちです!」

 彼らを先導するのはリザだ。
 エアルとラフィが道を切り開き、リザが探索者たちを先導してきたようだ。
 三人は『ダンダン丘』に残っていた探索者を助けて回ってきたのだ。

「みんな、とにかく街の中へ!」
「わふ!」

 そうして、魔物がいない隙に探索者を街へ入れる。

「ありがとう!」
「助かりました!」
「俺はここで魔物と戦うぞ!」

 探索者たちは次々とツヴァイへ入って行く。
 エアルの『野生』の耳を頼りに、ダンジョンに残っていた者を全員拾ってきたみたいだ。
 逃げ遅れた者はいない。

「……っ」

 だが、エアルは辺りをきょろきょろと見渡す。
 一人だけ行方不明の者がいるようだ。

「レリアさん……」

 一足先にツヴァイへ向かったはずのレリアだが、彼女の姿が見当たらない。
 さすが攻略組と言うべきか、足音を完全に消しているのだ。
 エアルの『野生』の耳でも音を拾うことができない。

 だがそんな中、リザが口元に手を当てている。

「……まさか」

 何か心当たりがありそうなリザは、エアルへ顔を向けた。

「エアル、ここはあなたに──」
「任せて」

 だが、全て言い切る前にエアルが了承する。

「レリアの居場所、心当たりがあるんだよね」
「ええ!」
「ここは僕とラフィが守るから!」
「わふ!」

 エアルとラフィ、これ以上心強い者をリザは知らない。
 ここは彼らに任せることにした。
 
「頼んだわ!」
「うん、そっちもね!」

 そうして、リザはその場をり出した。
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