ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第10話 そこにいたもの

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 「ねえリザ」
「なによ!」

 エアルが唐突に口を開く。
 聞き返すリザだが、大体何が言いたいかは分かっていた。

「なんか魔物多くない!?」
「私も驚いてるところよ!」

 二人が魔物に囲まれているからだ。

「ウキャキャー!」

 先ほど遭遇した、サル型魔物のサーベルモンキーだ。

「バォ!」
「シャー!」

 さらには『トッシンピッグ』に『マジックスネーク』など、ありとあらゆる魔物が二人におそかってくるのだ。

「こんなに魔物が多いダンジョンなんだね」
「本来は違うわよ!」

 ここ──『カナル密林』は、『はじまりの平原』と比べれば魔物は多いが、これは明らかに普通じゃない。
 リザがすでに危機感を抱いていたように、何か・・が起きている。

「でも、退く気はないんでしょ? エアル」
「もちろん!」
「言うと思ったわ!」

 それでも2人は突き進む。
 一般的には考えられないハイペースだが、今日中にはここを抜けたいと考えているようだ。

 ──だが、そんなところに大きな声。
 
「クォ~~~~~~~~~~~ン!!」

 密林中にひびき渡るような“遠吠え”だ。

「……!」
「なんなの!?」

 それには、思わず二人の動きも止まる。
 また魔物も同様のようだ。

「ウキャ……」
「バォ……」
「シャァ……」

 むしろ、魔物の方が面を食らっている。
 本能的に“危険”を察知したのかもしれない。

「エアル、今のって──」
「リザ……!」

 しかし、戸惑うリザに対して、エアルは声を上げた。

「急ぎたい。今すぐに遠吠えの方角へ!」
「い、行くの!?」

 先ほどの遠吠えは、まるで『近づくな』と本能的に訴えかけるものだった。
 それでも、エアルはあえて行きたいと言う。

「何か、あるのね」
「うん……!」

 エアルはいつになく真剣な眼差しだ。
 その目に応えて、リザも心に決める。

「行きましょう」
「ありがとう!」

 二人は遠吠えの方角へ加速した──。




 『ガラル密林』、最奥地。

「クォ~~~~~~~~~~~ン!!」

 一匹の魔物が、二度目の遠吠えを上げる。

 白銀の毛を持った、巨大なおおかみだ。
 その姿形は、魔物の“頂点”を思わせる。

 これは『近づくな』と本能に訴える警告。
 また、それでも近づく・・・・・・・魔物に対する威嚇いかくでもある。

「グオオオオォォ!!」
「グギャアアァァ!!」
「ギャウウウゥゥ!!」

 白銀の狼に近づくのは、いかにも強力な魔物達だ。
 どれもAランクは下らないだろう。
 ジャイアントコングと同等、もしくはそれ以上の力を持っている。

「クォン……」

 彼らは狙っているのだ。

 白銀の狼が弱っている・・・・・今を。
 自らが頂点に立つことを本能的に夢見て。

 そして、一斉に襲い掛かる。

「グオオッ!」
「グギャァ!」
「ギャオッ!」

 ──そこに、ひとりの少年が姿を見せる。

「ちょっと待ったー!」
「「「……!?」」」

 ドガアアアアと轟音ごうおんを立て、少年は空から降ってくる。
 まるで隕石のような衝撃だ。
 やがて土煙の中から、声が聞こえてきた。

「倒したいのは分かるけどさ」

 つちぼこりを払い、中から出てきた声の主は──エアル。
 彼は人間ながら、白銀の狼の状態・・を確信しているようだ。
 
今は・・我慢してあげてよ」

 エアルは白銀の狼の盾になるよう、前に立つ。
 だが、後ろからポコっと頭を叩かれた。

「私を殺す気かー!」
「いてっ!」

 エアルは急ぐため、リザを背中に抱えてきたようだ。

 そしてそのまま、隕石がごとく勢いで地上に着地した。
 リザがびっくりするのも当然である。
 
「でも、本当に……」
 
 後ろの白銀の狼に振り返ったリザ。

 あれほどの遠吠えだ。
 狼型魔物の中でも最上位だとは考えていた。

 だが、その姿にリザは目を見開く。
 その巨大な姿には聞き覚えがあったのだ。

「あの『フェンリル』がいるなんて……!」 

 白銀の狼の正体は、“頂上種”──フェンリルであった。
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