ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第4話 初めてのラビリンス

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「おおおー!」

 視界に広がった景色に、エアルは思わず声を上げた。
 彼には見たこともない、幻想的な風景だったようだ。

「すごい!」

 上を見上げれば、一面晴れ渡る青空。
 点在する雲からは滝が落ち、地上で湖を作っている。
 また、湖からはさらに川が流れ出し、周りを自然の緑が埋めていた。

「きれいだなあ……!」

 ──『はじまりの平原』。
 ラビリンスの入口に位置するダンジョンだ。
 ランクは一番下のFランクである。

「ふふっ」
「ん、リザ?」
「ごめんなさい。エアルが初々ういういしくて」

 そんなエアルに、リザがニコっとした笑顔を浮かべる。

「ここは見慣れた人が多いから」
「あ」

 そう言われ、はっとしたエアルは周りをチラりと確認する。
 すると、興奮している彼の姿に微笑ほほえましくクスクスしている人達がいた。

「うぐっ」

 事あるごとに田舎者が出るエアル。
 恥ずかしさから、つい手で顔をおおってしまう。

 そんなエアルを微笑ましく見ながら、リザは優しく声をかけた。

「大丈夫、その内慣れるわ」
「そうかな」
「ええ。では行きましょうか」
「うんっ!」

 そうして、エアルはリザと共に進み始めた。




「待って、リザ」
「え?」

 平原を進む中、エアルがふと足を止める。
 
「何か来る」
「……!」

 そう口にした次の瞬間、足音の正体は現れた。

「「「グギャギャッ!」」」

 飛び出してきたのは魔物たちだ。
 その姿にリザは声を上げる。

「こいつらは『ゴブリン』よ!」
「「「グギャー!」」」

 緑色の人型魔物──ゴブリン。
 ここらでは、『スライム』と並んで最も遭遇そうぐうする魔物である。
 ランクは最低層のFランクだ。

「いきなり数が多いわね」
「みたいだね」

 リザとエアルは背中合わせの態勢を取る。
 数の多さに、いつの間にか囲まれてしまっているようだ。

「エアル、あなたは戦える?」
「もちろん!」
「じゅあそっちは任せたわ!」
「了解!」

 簡単にコンタクトを取ると、二人は同時にその場をり出した。

 リザの方は、懐からクナイを取り出す。
 どうやら思惑があるようのだ。

(エアル、あなたの実力見せてもらうわよ)

 それは──エアルの実力の分析である。

 昨日の話から、リザはエアルに違和感を抱いている。
 そんな彼に対して、まずは観察から始めるつもりのようだ。

 そのためにも、まずはこちら側のゴブリン達を一掃する。
 
 探索者にランクは存在しないが、リザはBランク程度の魔物にも引けを取らない。
 最上位ではなくとも、上位十%以内の上位探索者と言える。 
 いくら数が多いとは言え、ゴブリンには苦戦しない。

「食らいなさい!」
「「「グギャアアア!!」」」

 リザは狙いを定め、複数本のクナイを同時に投げた。
 刃の先には毒がついており、ゴブリン程度ならかすっただけで致命傷となる。

「っと」

 リザの正確な投てきに、ゴブリン達はバタっと倒れる。
 一本一本、それなりの値段がする優れた武器だ。

 だが、さっさと済ませ、エアルの戦闘を見る為ならば惜しくない。
 それほどに彼は不思議な存在のようだ。

「さて、エアルあっちの方は──って、は?」

 しかし、振り返った途端、リザは思わず声が漏れる。
 そこに広がっていたのは、大量に倒れたゴブリン達。

「あれ、張り切り過ぎたかも」
「……っ」

 ありえない。
 リザはわざわざ高価な武器を使い捨て、五体ほど狩った。
 その間、およそ三秒。

(これ、何体いるのよ……!)

 そんなわずかな時間で、エアルは二十体近くを倒していた。
 何をどう考えても不可能だ。

「……っ」

 若干疑いながらも、リザはたずねることをしない。
 今は観察にてっすることを選んだようだ。

「よし、先に進もう!」
「……え、ええ」

 リザは倒れたゴブリン達を横目に、エアルについて行くのだった。
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