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第46話 訪れる異変

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数日後。
 ここは、以前ヒカリが挑んだダンジョン『原初ダンジョン』上層。

『日向さん、聞こえてる?』
「バッチリです」

 ヒカリの耳元に聞こえてくるのは、責野の通信。
 浮遊型カメラはヒカリの後ろで浮いているが、今回は配信ではなく、ギルドと協力してダンジョン内を調査するようだ。

『こんなことをお願いしておいてだけど、無理はしないでね』
「わかってます」
『……それは分かっていない顔よ』

 ヒカリの様子は、カメラによってリアルタイムでギルドに送られている。
 責野の言葉に対して、ヒカリは苦笑いで返した。

「でも、死ぬわけにはいきませんから」
『そうね。それに今回は討伐ではなく、あくまで調査が目的。魔核を確認できればそれでいいのよ』
「最後に確認ですが、本当に討伐をしなくて良いんですか?」

 責野はゆっくりとうなずく。

『いいのよ。本部からは地上にエサがない限り・・・・・・・・・・、ダンジョン外へは出てくることはないとの判断よ』
「分かりました」

 一応の納得を示すヒカリ。

(エサ、か。……まさかね)

 なんとなく嫌な考えを振り払い、責野に向き直った。

『私も危険が見えたらすぐに撤退てったい指示を出すわ。くれぐれも先行しないように』
「はい。責野局長」

 そうして、ヒカリが調査を開始した。




「はああああッ!」
「グギャッ!」

 ヒカリの華麗かれいな太刀筋の前に、鬼型の魔物【オーク】は倒れる。

 ここはすでに下層、奥底の領域。
 すぐそこには大きな扉がある。

『順調ね』
「はい、全然問題ありません」

 ここまではいつもと変わらない様子に、まだ余裕を残すヒカリ。
 そんな彼女に責野は慎重に尋ねた。

『……先、行ける?』
「大丈夫です」

 目の前の大きな扉。
 これを開けると、ヒカリが【死霊剣士・スケルトンキング】と戦って敗れた場所がある。

 責野の言葉は、その時の事を考えてのものだ。

「むしろリベンジをしたいです。その上で先に進みます」
『分かったわ』
 
 力強い言葉と共に、ヒカリは扉をゆっくりと開く。
 片手には本気の装備、聖剣【ヒカリ】も持ち合わせている。

(覚悟しなさい。今度こそ……)

「──って、え!?」

 だが、その目の前の光景に目を疑った。

「グギャアアア!」
「ブモオオオオ!」

 そこにいたのは、魔物の群れ。
 そして、すでに食われている・・・・・・スケルトンキング。

「どういうこと!?」

 この光景はありえない。

 スケルトンキングを食べているのは、緑色の魔物【ゴブリン】や、豚の顔をした【オーク】。

 この魔物たちはFランク、もしくはせいぜいEランクがいいところ。
 いくら束になったからといって、スケルトンキングには勝てるはずがない。

 動揺するヒカリに、責野の言葉が届いた。

『日向さん! こいつらは魔核持ちだわ!』
「えっ!?」

 ギルドでは、カメラから送られてくる映像をリアルタイムで解析している。
 その中で、ゴブリンやオークからは考えられない数値が出たのだ。
 
 となれば答えは一つ。
 これらが魔核を持って強くなっている。

 責野は迷わずヒカリに告げる。

『撤退よ!』
「……」
『日向さん!? 早く!』
「……! は、はい!」

 しかし、一瞬どこかを見上げていたかのようなヒカリ。
 彼女は上の方に何か異変・・を感じたようだ。

(今の気配は……まさか、もうすでに!?)

 撤退の道を辿りながら何かに勘づくヒカリ。
 そんなことはないと思いながらも、必死に頭を動かす。

(もし私の勘が本当なら、地上にエサが? でも、魔物のエサなんてどこに……)

「……!」

 そこでヒカリは気づく。

 エサならあるじゃないか。 
 この街の山奥に、特大のを吊り下げたダンジョンが一つ。

 ヒカリはすぐに責野に伝えようとする。

「責野局長! もしかしたら魔核持ちがすでに地上に──」
『日向さん! 前!』
「!?」







 同時刻、地上。
 ここは街中にあるショッピングモールだ。

「……? あれ、今なにか……」

 後ろを振り返り、そうつぶやいたのはナナミ。
 何か違和感のようなものを感じたみたいだ。

(なんだろう。今どこかで感じたことのある気配が──)

「……! なにっ!?」

 そうして、考え事をしている中で聞こえてくるいびつな音。
 地中の方からゴゴゴゴという、何かが迫ってくるような音が聞こえるのだ。

「なんだこれ!」
「どこからだ!」
「何の音!?」

 周りも当然気づいている。
 さらに、その音はだんだん大きく、近づいてくるような雰囲気がある。

 そして、

「止まった……?」

 一瞬のせいじゃくの後、それは一気に勢いを増す。

「「「グオオオオォォ!!」」」

 地中から、ダムが決壊するように魔物があふれだした──。
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