ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航

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第一章 ホシとペットと仲間と

第33話 正妻戦争

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 後日。

「なにこれ」

 綺麗なテーブルクロスが敷かれたテーブルの上で、ホシは不思議そうな顔を浮かばせながらつぶやいた。
 ここはホシの家、リビングだ。

《うおおおおお!!》
《きたああああ!!》
《盛り上がって来たぜ!!》
《企画から神だろ》
《だよなあ》
《正 妻 戦 争》
《ヒカリちゃんも呼べばなあ》
《ヒカリちゃんの復帰はまだでしょ》
《じゃあ何でホシ君は普通にいんのw》
《ホシ君いないと企画成立しないだろ》

 配信は始まっており、すでに視聴者数は10万人を超える。
 行っているのはホシのチャンネルだ。

「あの、お二人さん? 気合い入り過ぎでは?」

 ホシは目の前の二人にそーっと尋ねた。
 
「当たり前じゃない!」
「当たり前でしょ!」

 答えたのはエリカ、そしてナナミだ。

《めっちゃ気合い入ってるww》
《これは負けられない戦い》
《でもナナミンに勝機あるんか?》
《正直あんま見えない》
《敵が強大すぎる》
《でも未知数っちゃ未知数》
《ナナミンがんばれー!!》
《お姉さん応援してる!》
《エリママ~》
《ナナミちゃん!!》

 二人の様子にコメント欄も大盛り上がり。
 今日の配信タイトルからワクワクが隠せていないのだ。

 ホシはふぅと一息つき、椅子に背中を預けた。

「まあいっか。美味しければ・・・・・・

 配信タイトルは『天の川ナナミVSエリカ 料理対決』。
 ナナミが提案したのは、まさかのエリカとの直接対決だった。

「キュイ」
「ワフ」

 審査員はホシ、めろん、わたあめ。
 それぞれ出された料理で、どちらの方が美味しかったかを判定する。

 だが、エリカとナナミの想いは一つ。

(ホシ君に選んでほしい!)
(ホシに選ばせてやる!)

 二人は早速料理に取り掛かる。
 しかし、コメント欄はいきなりの不穏。
 
《うわあ!》
《まじかあーーー》
《これは大人げねえ》
《勝負あったかもな》
《さすがに……》
《ナナミン;;》

 その様子に、ナナミはチラッとエリカの行程を覗き見る。

(なに? って、あれは……!)

「ふんふふ~ん」

 エリカは丸い赤身のものを作っている。
 間違いない。
 十八番おはこの「エリカのハンバーグ」だ。

 エリカは当然ナナミの視線にも気づいている。

(勝負あったかしら。待っててね、ホシ君♡)

 すでに勝ちを確信しているようだ。
 それでもナナミは手を止めない

(そんなの知ってたことだ!)

「わたしだって……!」

 そうして、両者の料理が出揃った。

 「わたしだって……!」

 隣のエリカが、ホシの大好きなハンバーグを作っているのも分かりながら、ナナミは諦めずに料理に向かう。

 そうして、両者の料理が出揃った。

「はい、ホシ君!」

 先に皿を並べたのはエリカ。
 やはり料理は「エリカのハンバーグ」のようだ。

 庶民的料理からダンジョン産高級料理まで、ありとあらゆるものをこなす凄腕の料理人エリカの、十八番おはことも呼べる料理である。

《出たああああ》
《エリカのハンバーグ!!》
《ハンバーグの罪は重いよ》
《うまそおおお》
《食べてえ……》
《ずるいぞホシ君!》

 すでに界隈でも伝説になりつつあるこの料理。
 言わずもがな、「ハンバーグの罪は重いよ」というホシの名(迷)言から神格化されている料理だ。

 ホシのSNSのDMダイレクトメッセージには、毎日何百件も「通販してくれ」と届くほどである。

「熱いからゆっくりね♡」
「はいはい」

 るんっとした笑顔を浮かべるエリカ。
 ホシはテキトーにあしらいながらも、ハンバーグを口に運んだ。

「どうかな?」
「……お、美味しいよ」
「やったー!」
「ちょっ、離れてって!」

 エリカの口角はぐいーんと上がり、いつものように抱き着く。
 ホシにしか見せないであろう甘いお姉さんの表情だ。

《ホシ君照れてる》
《お姉ちゃんめっちゃ嬉しそうw》
《ずりいぞ!!》
《俺も抱き着かれてー!》
《これは……》
《さすがに勝負あったか?》
 
 コメント欄でも決まったかのような雰囲気が流れる。
 そんな中で、次はナナミの料理のお披露目ひろめだ。

「……っ」

 きゅっと口に力が入りながら、ホシの前に料理を出す。
 だが、エリカとは違い、ナナミは少し恥ずかしげだ。

「わ、私は……これ」
「おお~」

 そうして、ナナミがテーブルに並べたのは──。
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