ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航

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第一章 ホシとペットと仲間と

第30話 責野の苦労

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<三人称視点>

 ホシ家の隣に新設された家にて。

「はぅあっ!」

 玄関をガバっと開けた責野は、ようやく安心できたと言わんばかりにその場に倒れ込む。
 その音を聞き、家の中からはドタドタと人が出てきた。

「局長!」
「大丈夫ですか!」
「気を確かに!」

 責野任子──彼女の正体はギルド職員の局長だ。

「な、なんとかね……」

 その返事に、周りの者もそっと胸をなでおろす。
 この家にいる者は、引っ越し作業員を含めて全員がギルド関係者。

 ギルドは対象「彦根ホシ」を調査するため、わざわざ隣に家を建てたのだった。
 ギルド本部からの金・ダンジョン産の素材や機械を存分に使い、それはもうありえない急ピッチで。

「それにしても局長、よくお一人で」
「私がやらなくて誰がやるのよ……」

 その中でもギルド局長の責野任子、彼女は人一倍責任感が強かった。
 部下たちに全てを任せられないと、本作戦にも率先して名乗りを上げている。
 ……その分、胃は痛めているようだが。

 責野はなんとか態勢を起こしながら、職員たちに聞く。

「それより、会話内容は録音していたかしら」
「はい、ここに!」
「ありがとう。彼との会話一つすら、今後の対策の材料になるわ」

 そうして、周りの職員が支えながら、責野共々リビングへ。
 一息ついたところで職員が尋ねた。

「そういえば局長。あの懐中時計って、彼が配信でタカラミミックからドロップさせた物ですよね」
「ええ、間違いないわね」

 話題はホシが持っていた懐中時計へ。

「あれは一体なんですか?」
「……あれは『魔素の計測時計』ね。Sランクドロップアイテムよ」
「Sランク!?」

 責野は口元に手を当てながら答える。

 ホシの前では誤魔化ごまかしたが、責野は確信を得ていた。
 これもギルド局長という役職を隠すためである。

「それで、どういった物なんですか?」
「使い方は色々・・あるわ。でも、分かりやすいものとしては……魔物や探索者の強さを計る、かしらね」

 責野の言う通り、ホシが持つ『魔素の計測時計』は対象の強さを計ることができるSランクドロップアイテム。
 中に刻まれた100のメモリの内、対象者がどれほど強いかを計ることができるのだ。

 ちなみに、めろん・わたあめを計った時は80辺りを指した。

「でも、彼によると壊れていたんですよね」
「……いいえ」
「え? ホシ君の戦闘力は計れなかったんじゃ」
「そうではないわ」

 責野は目を細めながら答える。

「針は細かく動いていたわ。どこを指すか迷うようにね」
「それって?」
「あの反応は……」

 責野はまた胃を抑える。

「測定不能よ」
「「「……ッ!!」」」

 職員たちは頭を抑えながら質問を続けた。

「局長、確認なんですけど……」
「なにかしら」
「あの二匹のペット、めろんとわたあめって魔核持ちのSランク魔物ですよね」
「そうね」

 膨大な魔素を吸収してごくまれにできる『魔核』。
 それを持つ魔物はダンジョン外でも生活でき、とんでもない強さを持つという。

 あるデータによると、「Aランク魔物」と「Dランク魔核持ち魔物」が同等レベルだそうだ。

 そして、なんとも恐ろしいことに、めろんとわたあめは「Sランク魔核持ち魔物」。
 その強さは想像を絶するほどである。

 そんな二匹が80辺りの中……ホシの戦闘力は「測定不能」。
 最低でも・・・・101以上なのだ。

「「「…………」」」

 その事実に、職員たちも責野に続いて天を仰ぐ。
 彼らが考えていることが同じだろう。

(とんでもない仕事を回されてしまった……)

 すでに分かり切っていたことではあるが、いざ目の前にさらなる事実を突きつけられると、何も考えられなくなる。

 ──だが、災難はこれだけでは済まない。

 ピンポーン。

「「「……!?」」」

 突如として、家のチャイムが鳴る。

「誰か人を呼んだ?」
「いえ」
「呼んでないです」
「僕も」

 責野が確認を取るが、誰も予定はないと言う。
 彼女は「はーい」と声高々に返事をしながらも、警戒心を最大にして玄関を開けた。

 そこには……

「こんにちは~。私、エリカっていいます♡」
「あ、あぁ……」

 エルフでありホシの姉的存在──エリカがニッコリとした笑顔で立っていた。
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