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第一章 ホシとペットと仲間と
第26話 つなぐもの
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「こいつは俺がやるよ」
周りは二匹のペットに任せ、ホシは構えを取る。
スケルトンキングと一対一をするつもりのようだ。
しかし、その姿にヒカリは思わず声を上げる。
「あなた武器は!?」
「そんなの持ってない!」
「──ヴオオオオォォォォ!!」
振り下ろされるスケルトンキングの大剣。
ホシは……全くその場を動かず。
「突き指は嫌だからね」
「ヴオオッ!?」
「けっこう頑丈なんだよね~頭」
そのまま頭で大剣を受け止める。
(バ、バカなの……!?)
コメントもヒカリと全く同じ気持ちのよう。
《いや避けろやww》
《なんでわざわざ受けるw》
《挑発してる?w》
しかし、意外にもホシにも考えがあったようで。
大剣を振り下ろした隙を付き、ホシは懐に潜り込む。
「うおおおお!」
何をするかと思えば、勢いのまま足を強く踏み込む。
サッカーのコーナーキックのような構えだ。
「せいっ!」
「ヴォアッ!?」
スケルトンキングは骨で形作られた巨体。
ホシが蹴った部位はポーンと勢いよく飛んでいき、スケルトンキングの頭がガクンと下がった。
「おお、いけそう!」
「そんなアホな……」
それはまるで日本の伝統的遊戯のよう。
ヒカリ同様、コメント欄にも衝撃が走る。
《だるま落としwww》
《だるま落としで草》
《なんじゃそりゃww》
《Sランク魔物で遊ぶなww》
《ウッキウキで蹴っててワロタ》
そう、だるま落としのように倒すつもりのようだ。
「たあっ! ふんっ! せいー!」
「ヴォッ! ヴゥッ!? ヴォー!」
一本一本の骨が蹴りで吹き飛ばされる度、リズミカルにスケルトンキングの頭の位置が下がっていく。
ヒカリ専用剣──聖剣【ヒカリ】ですら崩せなかった骨を、ホシは遊び感覚で飛ばしていく。
《なんだこいつww》
《アホすぎて草》
《これが攻略法なのか……?》
《ホシ以外に誰ができんだよww》
《腹いてえw》
《ヒカリちゃんの剣でも斬れなかったのに》
先程まで緊張感が走っていたはずの配信は、一瞬で彼のショータイムへと化す。
まさに理不尽なまでの強さであった。
「ふい~」
「ギャウ」
「ウォフ」
汗を拭って気持ちよさそうにするホシ。
めろんとわたあめも戦闘を終えたのか、ホシに寄って来ていた。
気が付いてみれば、そこは掃除済のフロアだったのだ。
《こいつらやばすぎwww》
《レベチで草》
《え、深層の魔物だよな?笑》
《スケルトンキングやぞww》
《二匹も知らぬ間に瞬殺してらw》
現在の視聴者数は100万人。
滅多に見ないような数字がこの伝説となるであろう配信を見に来ていた。
だが、ふいにうめき声が聞こえてくる。
いち早く気づいたのはヒカリ。
「……彦根ホシ!」
「ん?」
「スケルトンキングが!」
死霊剣士・スケルトンキング。
強さはもちろんのこと、最大の特徴は「不死身」なこと。
バラバラになった骨同士が引かれ合い、また体を形成しようとする。
「うーわまじかあ」
「何をボーっとしてるの!」
「待っててって言ったのに」
「!?」
しかし、ホシは不思議な発言。
それを証明するように女性の声が聞こえた。
「ホシ君。ゴミはちゃんと縛らなきゃ」
どこからともなく黄緑のツタが現れ、スケルトンキングの骨を縛り上げていく。
「ヴォアッ!? ヴ、オオォ……」
骨は一括りにされ、身動きができなくなる。
これで元通りになることはない。
スケルトンキングは再生を諦め、ダンジョンに取り込まれていった。
「これでよしっと」
その声と共に現れたのはエルフのお姉さん、エリカだった。
《お姉さーん!》
《姉ちゃんきたあ!》
《お姉さんまでww》
《ママぁ》
《ママ~》
《ママきたあ!》
《エルフのお姉さん!!》
コメントにはお姉さんに加え、「ママ」の文字が並ぶ。
巷ではその呼び方も流行りかけているようだ。
ホシは頭をかきながらエリカに目を向ける。
「なんできたの」
「ハンバーグを届けるためだよ!」
「わざわざ?」
「当たり前だよ。ホシ君のいる場所がお姉さんのいるべき場所なんだから」
「あーはいはい」
つーんとした口を見せるホシだが、どこか嬉しそうな表情は隠せていない。
そんな態度は、ホシ視聴者にはバレバレ。
《照れてる》
《かわいい》
《食べれたじゃん!》
《嬉しかったね~》
《お姉さん来て良かったね~》
「べ、別にっ!」
ホシはとぼけた声を上げる。
彼が一番感情を出すのはお姉さん絡みのことかもしれない。
「まあいいや」
そうして、ホシはヒカリにもう一度手を差し伸べる。
腰を抜かしてしまっていたらしい。
「とにかく助かって良かった」
「……! あ、ありがとう」
「ううん。ハンバーグも届いたし何も問題ないよ」
「……」
どんだけハンバーグにこだわるのだろう。
ヒカリがそう思ったのは内緒だ。
「良かったら一緒に食べる? 元気出るよ」
「え?」
「ほら姉さん。この子にあげてよ」
そう促すホシだが、エリカはムッと目を細めた。
「女に?」
「そう言わずに」
「チッ」
「……!?」
その視線にヒカリはビクっとしてしまう。
(え、今、舌打ちされた?)
そんな態度は取りつつも、エリカは仕方なくハンバーグを取り出す。
わざわざ袋に入れてくれたみたいだ。
「ホシ君からあげて。私はやーよ」
「なにそれ。まあいいけどさ」
「あ、あの……?」
「気にしなくていいよ。はいどうぞ」
そうして、ヒカリの口にハンバーグを運ばれた。
「どうかな?」
「……!」
モグモグと味わうヒカリ。
優しい味、それと合わせて今の状況を改めて考えると心から安心する。
彦根ホシが来てくれなければ、今頃自分はいなかった。
これを食べる事も、どこかで見ているかもしれない母に、自分の姿を届ける事もできなかった。
そうなるはずがこうして助けられた。
その安心感から、ヒカリの頬を一粒の雫が伝う。
「おいしい、です……!」
周りは二匹のペットに任せ、ホシは構えを取る。
スケルトンキングと一対一をするつもりのようだ。
しかし、その姿にヒカリは思わず声を上げる。
「あなた武器は!?」
「そんなの持ってない!」
「──ヴオオオオォォォォ!!」
振り下ろされるスケルトンキングの大剣。
ホシは……全くその場を動かず。
「突き指は嫌だからね」
「ヴオオッ!?」
「けっこう頑丈なんだよね~頭」
そのまま頭で大剣を受け止める。
(バ、バカなの……!?)
コメントもヒカリと全く同じ気持ちのよう。
《いや避けろやww》
《なんでわざわざ受けるw》
《挑発してる?w》
しかし、意外にもホシにも考えがあったようで。
大剣を振り下ろした隙を付き、ホシは懐に潜り込む。
「うおおおお!」
何をするかと思えば、勢いのまま足を強く踏み込む。
サッカーのコーナーキックのような構えだ。
「せいっ!」
「ヴォアッ!?」
スケルトンキングは骨で形作られた巨体。
ホシが蹴った部位はポーンと勢いよく飛んでいき、スケルトンキングの頭がガクンと下がった。
「おお、いけそう!」
「そんなアホな……」
それはまるで日本の伝統的遊戯のよう。
ヒカリ同様、コメント欄にも衝撃が走る。
《だるま落としwww》
《だるま落としで草》
《なんじゃそりゃww》
《Sランク魔物で遊ぶなww》
《ウッキウキで蹴っててワロタ》
そう、だるま落としのように倒すつもりのようだ。
「たあっ! ふんっ! せいー!」
「ヴォッ! ヴゥッ!? ヴォー!」
一本一本の骨が蹴りで吹き飛ばされる度、リズミカルにスケルトンキングの頭の位置が下がっていく。
ヒカリ専用剣──聖剣【ヒカリ】ですら崩せなかった骨を、ホシは遊び感覚で飛ばしていく。
《なんだこいつww》
《アホすぎて草》
《これが攻略法なのか……?》
《ホシ以外に誰ができんだよww》
《腹いてえw》
《ヒカリちゃんの剣でも斬れなかったのに》
先程まで緊張感が走っていたはずの配信は、一瞬で彼のショータイムへと化す。
まさに理不尽なまでの強さであった。
「ふい~」
「ギャウ」
「ウォフ」
汗を拭って気持ちよさそうにするホシ。
めろんとわたあめも戦闘を終えたのか、ホシに寄って来ていた。
気が付いてみれば、そこは掃除済のフロアだったのだ。
《こいつらやばすぎwww》
《レベチで草》
《え、深層の魔物だよな?笑》
《スケルトンキングやぞww》
《二匹も知らぬ間に瞬殺してらw》
現在の視聴者数は100万人。
滅多に見ないような数字がこの伝説となるであろう配信を見に来ていた。
だが、ふいにうめき声が聞こえてくる。
いち早く気づいたのはヒカリ。
「……彦根ホシ!」
「ん?」
「スケルトンキングが!」
死霊剣士・スケルトンキング。
強さはもちろんのこと、最大の特徴は「不死身」なこと。
バラバラになった骨同士が引かれ合い、また体を形成しようとする。
「うーわまじかあ」
「何をボーっとしてるの!」
「待っててって言ったのに」
「!?」
しかし、ホシは不思議な発言。
それを証明するように女性の声が聞こえた。
「ホシ君。ゴミはちゃんと縛らなきゃ」
どこからともなく黄緑のツタが現れ、スケルトンキングの骨を縛り上げていく。
「ヴォアッ!? ヴ、オオォ……」
骨は一括りにされ、身動きができなくなる。
これで元通りになることはない。
スケルトンキングは再生を諦め、ダンジョンに取り込まれていった。
「これでよしっと」
その声と共に現れたのはエルフのお姉さん、エリカだった。
《お姉さーん!》
《姉ちゃんきたあ!》
《お姉さんまでww》
《ママぁ》
《ママ~》
《ママきたあ!》
《エルフのお姉さん!!》
コメントにはお姉さんに加え、「ママ」の文字が並ぶ。
巷ではその呼び方も流行りかけているようだ。
ホシは頭をかきながらエリカに目を向ける。
「なんできたの」
「ハンバーグを届けるためだよ!」
「わざわざ?」
「当たり前だよ。ホシ君のいる場所がお姉さんのいるべき場所なんだから」
「あーはいはい」
つーんとした口を見せるホシだが、どこか嬉しそうな表情は隠せていない。
そんな態度は、ホシ視聴者にはバレバレ。
《照れてる》
《かわいい》
《食べれたじゃん!》
《嬉しかったね~》
《お姉さん来て良かったね~》
「べ、別にっ!」
ホシはとぼけた声を上げる。
彼が一番感情を出すのはお姉さん絡みのことかもしれない。
「まあいいや」
そうして、ホシはヒカリにもう一度手を差し伸べる。
腰を抜かしてしまっていたらしい。
「とにかく助かって良かった」
「……! あ、ありがとう」
「ううん。ハンバーグも届いたし何も問題ないよ」
「……」
どんだけハンバーグにこだわるのだろう。
ヒカリがそう思ったのは内緒だ。
「良かったら一緒に食べる? 元気出るよ」
「え?」
「ほら姉さん。この子にあげてよ」
そう促すホシだが、エリカはムッと目を細めた。
「女に?」
「そう言わずに」
「チッ」
「……!?」
その視線にヒカリはビクっとしてしまう。
(え、今、舌打ちされた?)
そんな態度は取りつつも、エリカは仕方なくハンバーグを取り出す。
わざわざ袋に入れてくれたみたいだ。
「ホシ君からあげて。私はやーよ」
「なにそれ。まあいいけどさ」
「あ、あの……?」
「気にしなくていいよ。はいどうぞ」
そうして、ヒカリの口にハンバーグを運ばれた。
「どうかな?」
「……!」
モグモグと味わうヒカリ。
優しい味、それと合わせて今の状況を改めて考えると心から安心する。
彦根ホシが来てくれなければ、今頃自分はいなかった。
これを食べる事も、どこかで見ているかもしれない母に、自分の姿を届ける事もできなかった。
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