ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航

文字の大きさ
上 下
24 / 78
第一章 ホシとペットと仲間と

第24話 “罪”

しおりを挟む
 「ど、どうして……」

 仕留めたはずのスケルトンキングに、ヒカリは冷や汗を流す。

「──ヴオオオオオオオォォォ……!」
「なに、あれ……」

 そして、目にしてしまったのだ。
 スケルトンキングの胸あたりに「光る心臓」を。

 つまり、この個体はイレギュラー。
 『魔核持ち』だったのだ。

「ヴオオオオッ!!」
「くうぅっ!」

 だが、世間には知られていない魔核の存在。
 ヒカリも魔核の知識はなかった。

(急に強くなった……!?)

 今のスケルトンキングは、めろん・わたあめでいう巨大化の状態。
 通常時で互角だったヒカリに勝ち目はない。

「ヴオオオッ!」
「なっ!」

 しかも、入口を扉を破壊されてしまった。
 これでは地上へ戻ることはできない。

《ヒカリちゃん!》
《なんだよこれ!》
《勝ったんじゃねえのかよ!》
《逃げて!》
《後ろしかない!》
《ちょっとコメントしてくる!耐えててくれ!》

「でも、後ろは……」
「──ヴオオオオオオッ!!」
「くっ!」

(仕方ない……!)

 ヒカリは後ろへ飛び込んだ。
 しかしそこは──深層への入口。




「ハァ、ハァッ!」
「──ヴオオオォォォッ!」
「まだ追ってくるの……!」

 深層へ入り、命からがらに逃げ惑うヒカリ。

《ヒカリちゃん!》
《どうにかならないのかよ!》
《こんな場所無理だろ!》
《誰か呼びに行ったんじゃねえのか!?》
《誰がこんなとこ来るんだよ!》

「……ッ!」

 腹を抑え、足を挫きながらでは限界も近い。
 思い返すのは配信をする理由だ。

(お母さん……)

 ヒカリがここまで目立つことにこだわるのは母。

 彼女の母は幼い頃にいなくなる。
 育ての親の元へ預けられたのだ。

 その時は捨てられたのだと思った。
 だけど、年数が経って自分の家が貧乏だったことに気づいた。

 ヒカリは考え直した。
 もしかしたら、みじめな思いをさせないために、わざと違う家へ置いて行ったのではないかと。

(届けなきゃ。私の今の姿を……!)

 だから、今もどこかで見ているかもしれない母に向けて。
 自分が頑張っていることを届けるため、彼女は常に一番・・でなくてはならない。

 だが、

「ヴオオオォォォッ!」
「ヴォアアァァァッ!」
「ガアアアアアアッ!」

 スケルトンキングに加え、周りにはさらなる深層の化け物たち。

「……ハァ、ハァ」

 逃げ場はもう無い。
 ヒカリの足は止まってしまった。

 最後に思うのは母に向けての言葉。

(今までの活動が届いたらいいな)

 そう心に思って目を閉じた。

「──ヴオオオォォォッ!」

 大きく振りかぶったスケルトンキングの大剣。
 それはヒカリに届く──ことはなかった。

──カァァンッ!

《!?》
《え?》
《何の音?》
《おい、うそだろ……》
《まじかよ》
《そんなことが》

 すでに「残虐描写モード」をONにしていたカメラが、すーっと高画質に変わっていく。

「大丈夫?」 
「……え?」
 
 聞こえるはずのない人の声が聞こえ、ヒカリは目を開く。
 視線の先にいたのは──

「彦根、ホシ……?」

 ライバルの彦根ホシだった。

《うわああああああ!!》
《彦根ホシ!?》
《まじで!?》
《きたあああああ!》
《ありがとう!!》
《まじで泣いてる》
《本物かよ!!》
《お前しかいねえ!》

 彼の登場にコメントがあふれかえる。
 それを気にすることなく、ホシはヒカリに手を差し伸べた。

「立てる?」
「え、ええ……」

 でも、おかしい。
 彼は違う場所で配信を行っていたはず。
 ヒカリはその疑問をぬぐいきれない。
 
 けどそれ以上・・・・に、気になる事があった。

「ちょっと待ってて」
「……!?」

 配信の時とは違った少し静かな雰囲気のホシ。
 その声は怒っているようで、どこか悲しみも持っているかのようだ。

 魔物たちを見上げたホシは口を開く。

「ハンバーグの罪は重いよ」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。 そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。 それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……? のんびりほのぼのとした現代スローライフです。 他サイトにも掲載中。

ダンジョンが出現して世界が変わっても、俺は準備万端で世界を生き抜く

ごま塩風味
ファンタジー
人間不信になり。 人里離れた温泉旅館を買い取り。 宝くじで当たったお金でスローライフを送るつもりがダンジョンを見付けてしまう、しかし主人公はしらなかった。 世界中にダンジョンが出現して要る事を、そして近いうちに世界がモンスターで溢れる事を、しかし主人公は知ってしまった。 だが主人公はボッチで誰にも告げず。 主人公は一人でサバイバルをしようと決意する中、人と出会い。 宝くじのお金を使い着々と準備をしていく。 主人公は生き残れるのか。 主人公は誰も助け無いのか。世界がモンスターで溢れる世界はどうなるのか。 タイトルを変更しました

アイスさんの転生記 ~貴族になってしまった~

うしのまるやき
ファンタジー
郡元康(こおり、もとやす)は、齢45にしてアマデウス神という創造神の一柱に誘われ、アイスという冒険者に転生した。転生後に猫のマーブル、ウサギのジェミニ、スライムのライムを仲間にして冒険者として活躍していたが、1年もしないうちに再びアマデウス神に迎えられ2度目の転生をすることになった。  今回は、一市民ではなく貴族の息子としての転生となるが、転生の条件としてアイスはマーブル達と一緒に過ごすことを条件に出し、神々にその条件を呑ませることに成功する。  さて、今回のアイスの人生はどのようになっていくのか?  地味にフリーダムな主人公、ちょっとしたモフモフありの転生記。

処理中です...