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第13話 猿山の思惑
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<三人称視点>
「よう。お前ら」
夕暮れの中、一人の男が浮遊しているカメラに向かって話しかける。
ホシに絡んできた男──猿山だ。
《きたきたw》
《今日は何をするのやら》
猿山は配信を開始していた。
ホシのクラスメイトも言っていた通り、猿山は配信者だったのだ。
早速、配信内容について話し始める。
「最近、随分と話題になった物があったよなぁ?」
《話題?》
《なんのこと》
《もしかして》
「たしか……魔素水、だったか?」
《彦根ホシの配信じゃん!》
《やっぱかよ!》
《何する気だよ》
「今日はあれを取りに行こうとおもいまーすw」
《いいねw》
《やっちまえ》
猿山の同時接続数は1000人を超えている。
ホシに比べると霞んでしまうが、一般人よりは多い数字だ。
要因は、猿山が迷惑系配信者だったから。
悪い事をすれば目立つのは配信も同じ。
だがそうなると、当然ホシに魅了された者も見にくる。
《は?》
《おいやめろ》
《彦根ホシ好きだからやめて》
「うっせえ!」
そんなホシを擁護するコメントに対しては即ブロック。
二度と配信にコメントできないようにする。
「彦根、彦根って、黙ってろよ信者共が!」
《荒れてんなあw》
《いいぞやっちまえw》
《あいつ好きじゃなかったから嬉しいわ》
《通報します》
《切り抜いておくわ》
《これは晒し上げ案件です》
それでも意見は半々といったところ。
これも迷惑系の宿命なのだろう。
《そもそも泥棒なのでは?》
「はっ。んなことも知らねえのか? 自宅だろうがダンジョンはダンジョン。そこで手に入ったもんは俺の物なんだよ」
正確には違う。
要は「自宅ダンジョンに入る許可をもらえれば持ち帰っても良い」というルールだが、猿山にはこれを満たせる自信があった。
「そろそろ行くかぁ」
入りを終えたところで猿山は歩き出す。
ここはすでにホシの家の近く。
チャリで帰って行った方を追って来ていたのだ。
「おぉ?」
そうして歩き出してすぐ、大きな家が見えたところで一人の女性を見つける猿山。
すぐにコメントが宙に映し出されるホログラムをOFFにし、隠し撮りのような配信に切り替えた。
その瞬間、女性が猿山の方を振り返る。
「あら」
「……!」
猿山は目を見開いた。
(こいつ! エルフの姉とかいう!)
嫉妬をしつつも、ちゃっかりホシの配信は確認していた猿山。
すぐにそれがホシの姉代わりである「エリカ」だと気づく。
突然のことに切り口を探す猿山だが、エリカがニコっとした顔を見せた。
「もしかして、ホシ君のお友達さん?」
「……!」
その言葉に、猿山はニヤアっとした。
「そうなんすよ」
「まあ! やっぱり!」
エリカは両手を胸の前で合わせる。
「でもごめんね。ホシ君、さっき出かけちゃって」
「ああ、そうなんすか」
「もしかして、ホシ君と約束していたのかな?」
「……!」
(大チャーンス)
どんな言い訳をしようかと思っていたが、まさかの向こうからの誘い。
猿山は全面的に話にのっかる。
「そうなんすよ。あいつ、地下ダンジョンを案内してくれるって話で~」
「そうなんだあ!」
「でも、さすがに無理っすよね? 彦根の野郎……彦根君がいないんじゃ」
煽るようにエリカに尋ねる猿山。
「ううん! ホシ君との約束だったら良いのよ!」
「……!」
(バカがよぉ!)
「いいんすかぁ?」
「もちろんよ~。ホシ君のお友達だもん!」
「はんっ。あざす」
猿山はもう笑いが堪えるのに必死だ。
ルールは満たされたからだ。
これで猿山は、ホシの自宅ダンジョン内の物を持ち帰ることができる。
(おいおい楽勝だなぁ?)
そうして猿山は、エリカに付いてホシの家へと入って行くのであった。
自分が陥れられているとも知らず──。
「よう。お前ら」
夕暮れの中、一人の男が浮遊しているカメラに向かって話しかける。
ホシに絡んできた男──猿山だ。
《きたきたw》
《今日は何をするのやら》
猿山は配信を開始していた。
ホシのクラスメイトも言っていた通り、猿山は配信者だったのだ。
早速、配信内容について話し始める。
「最近、随分と話題になった物があったよなぁ?」
《話題?》
《なんのこと》
《もしかして》
「たしか……魔素水、だったか?」
《彦根ホシの配信じゃん!》
《やっぱかよ!》
《何する気だよ》
「今日はあれを取りに行こうとおもいまーすw」
《いいねw》
《やっちまえ》
猿山の同時接続数は1000人を超えている。
ホシに比べると霞んでしまうが、一般人よりは多い数字だ。
要因は、猿山が迷惑系配信者だったから。
悪い事をすれば目立つのは配信も同じ。
だがそうなると、当然ホシに魅了された者も見にくる。
《は?》
《おいやめろ》
《彦根ホシ好きだからやめて》
「うっせえ!」
そんなホシを擁護するコメントに対しては即ブロック。
二度と配信にコメントできないようにする。
「彦根、彦根って、黙ってろよ信者共が!」
《荒れてんなあw》
《いいぞやっちまえw》
《あいつ好きじゃなかったから嬉しいわ》
《通報します》
《切り抜いておくわ》
《これは晒し上げ案件です》
それでも意見は半々といったところ。
これも迷惑系の宿命なのだろう。
《そもそも泥棒なのでは?》
「はっ。んなことも知らねえのか? 自宅だろうがダンジョンはダンジョン。そこで手に入ったもんは俺の物なんだよ」
正確には違う。
要は「自宅ダンジョンに入る許可をもらえれば持ち帰っても良い」というルールだが、猿山にはこれを満たせる自信があった。
「そろそろ行くかぁ」
入りを終えたところで猿山は歩き出す。
ここはすでにホシの家の近く。
チャリで帰って行った方を追って来ていたのだ。
「おぉ?」
そうして歩き出してすぐ、大きな家が見えたところで一人の女性を見つける猿山。
すぐにコメントが宙に映し出されるホログラムをOFFにし、隠し撮りのような配信に切り替えた。
その瞬間、女性が猿山の方を振り返る。
「あら」
「……!」
猿山は目を見開いた。
(こいつ! エルフの姉とかいう!)
嫉妬をしつつも、ちゃっかりホシの配信は確認していた猿山。
すぐにそれがホシの姉代わりである「エリカ」だと気づく。
突然のことに切り口を探す猿山だが、エリカがニコっとした顔を見せた。
「もしかして、ホシ君のお友達さん?」
「……!」
その言葉に、猿山はニヤアっとした。
「そうなんすよ」
「まあ! やっぱり!」
エリカは両手を胸の前で合わせる。
「でもごめんね。ホシ君、さっき出かけちゃって」
「ああ、そうなんすか」
「もしかして、ホシ君と約束していたのかな?」
「……!」
(大チャーンス)
どんな言い訳をしようかと思っていたが、まさかの向こうからの誘い。
猿山は全面的に話にのっかる。
「そうなんすよ。あいつ、地下ダンジョンを案内してくれるって話で~」
「そうなんだあ!」
「でも、さすがに無理っすよね? 彦根の野郎……彦根君がいないんじゃ」
煽るようにエリカに尋ねる猿山。
「ううん! ホシ君との約束だったら良いのよ!」
「……!」
(バカがよぉ!)
「いいんすかぁ?」
「もちろんよ~。ホシ君のお友達だもん!」
「はんっ。あざす」
猿山はもう笑いが堪えるのに必死だ。
ルールは満たされたからだ。
これで猿山は、ホシの自宅ダンジョン内の物を持ち帰ることができる。
(おいおい楽勝だなぁ?)
そうして猿山は、エリカに付いてホシの家へと入って行くのであった。
自分が陥れられているとも知らず──。
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