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第11話 伝説の初配信(黒歴史)

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 「……!?」

 カメラの上部分が赤く光っていることに気づき、俺は焦って確認する。
 ナナミから言われた言葉を思い出したからだ。

 『ここが光ってる時は配信中なのよ』

 だけど、時はすでに遅し。
 再度パッと映し出れたホログラムには、大量のコメントが流れていた。

《お》
《やっと気づいたww》
《見てるー?》
《やっほー》
《再びこんちは~》

「!?」

 俺は頭が真っ白になりかけながらも、視聴者に尋ねてみる。

「あの、もしかして……ずっと映ってました?」

《もちろん》
《映ってたよ!笑》
《ばっちりなww》
《お姉さんこんにちは~》
《甘えてたねニヤニヤ》
《うらやましいぞ!》

「な、なんてこった……」
 
 どうやら俺は配信を切ったのではなく、コメントを映し出す設定のON/OFFを切り替えていただけらしい。
 つまり、俺が気づかない内に配信は続いてたってわけだ。

「うああああーーー!」

 俺は思わず声を上げて悶絶もんぜつした。

 じゃあさっきの抱きつかれたのも、一応もらっておいたおやつを食べていたのも、全部見られたってことかよ!
 そんなの恥ずかしぎるだろ!

《叫んでて草》
《悶絶してるww》
《たしかにちょっと恥ずいww》
《高校生だもんなあw》
《どんまい!笑》
《あー面白かったー!》
 
 やってしまった。
 俺は頭を抱えてゴロゴロと転がる。
 
「わあ。これが配信なんだね!」

 そんな中、ここぞとばかりに姉さんがカメラに近づいた。

「どうも~。ホシ君のお姉さん、エリカで~す」

《こんにちは~!》
《エリカさん!》
《やばめっちゃ美人!!》
《こんなの人見た事ない!》
《日本人じゃないよね?》
《日本語うますぎじゃね?》
《きれいな人!!》

 何やら盛り上がっているらしいけど、俺はもう頭がおかしくなってそれどころではない。
 だけど、次の言葉には耳を疑った。

「すご~い。20万人にも見てくれてるよ~」
「に、20万人!?」

 うそだろ、さっきは10万人だったはずなのに!
 俺は勢いよく立ち上がった。

「そうだよ~、ほら」
「ま、まじかあ…………」

 そんなの黒歴史確定じゃないか。
 俺は再び気を失いかけた。

 その間にも姉さんと配信は続く。
 
《お姉さんは、ホシ君とはどういう関係なんですか?》

「え、お姉さんとホシ君の関係? そうだなあ」

 姉さんは俺の方を振り向く。

「言ってもいい?」
「……もう好きにして」
「それじゃあ~」

 姉さんは、その黄緑色の髪をわざとらしくサラリをとなびかせて答えた。

「お姉さん、エルフなんです」

《エルフ!?》
《え、あのエルフ!?》
《まじかよ!》
《どおりで綺麗なわけだ!》
《これはエロフ》

「元はダンジョンにいたんだけど~、今はホシ君のお姉さんってわけだよ」

《はあ!?》
《うらやま》
《ずっる》
《ホシめ、けしからん奴だ!》
《エルフの姉ちゃんだと……》

 俺は不思議に思って尋ねてみる。

「え、でもエルフって言ってもそんなに珍しくないんじゃ」

《何言ってんだよ!》
《珍しいどころじゃないぞ!》
《普通は人型ですらない》
《ただ緑の塊って感じだよな》
《それをこんなエロ……》
《けしからん!!》

 どうやら俺の認識とは違ったらしい。
 それどころか、普通は人型ですらないとか。
 これも『魔素水』とやらの効果なのかな。

「ふふーん」

 そんなコメント欄に、姉さんはニヤリとした。

「お姉さんのすごさ分かった?」
「いや全然」
「も~いじっぱり!」
「だからくっつくなー!」

《おっふ》
《お胸さんが》
《くっそ羨ましいぞ!》
《こんな姉いたらなあ》

 そうして少しだけ話をした後、今度こそ配信を閉じる。
 この事故はのちに「切り抜き」とかいうものでさらにバズっていき、俺の黒歴史は拡散され続けるのであった。

 ていうかナナミの奴、配信見てなかったのかよ。
 見るって言ってたし、電話をくれてもいいじゃないか。

「うあああああー!!」

 こうして、俺の初配信は終えたのだった。







 その頃のナナミさん。

「女の人ぉ……」

 気絶しており放送事故に気づかず。
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